色々なIF集   作:超人類DX

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続き。


立派な魔法使いじゃなくて、立派な喧嘩師に改造されちまう魔法先生


肉体派フラグだらけな魔法先生

 敵を殺す気の戦いという意味での本気は体験したが、殺して生き抜く(・・・・・・・)為の『全力』の解放はこの世界に流れ着いてからはただの一度も無い。

 

 そもそも他所の世界という時点で自分の命が常に狙われているだとか、生きる為に世界そのものに喧嘩を売っているといったのっぴきならない(・・・・・・・・)状況に追い込まれてたりはしていないからなのだから当然の事である。

 

 

「タカミチ先生達の話じゃあ、魔法関連やらその他諸々の事情について一般人に知られるのは極力避けるべし――って聞いてたんだけど」

 

「はい、その通りです……」

 

「ネギの兄貴とイッセーの大兄貴が担当しているクラスのお嬢ちゃん達が妙に鋭いんですよこれが」

 

「そういや修学旅行の時も朝倉にバレてたな。

その内ウチのクラス全員にバレるんじゃあないか?」

 

「そうはならないようにはしたいですけど……」

 

 

 

 運が良いことに、この世界で出会った人達が軒並み親切であるからというのもあるし、一番はやはり『命を奪われる』だけの力を持った敵とこの世界ではまだ出会していないというのが大きいのだ。

 

 

「薄情な物言いにはなるけど、キミの背景が誰にバレちまおうが俺は精々今の職をクビにされるかも程度だろうけど、ネギ先生の場合は割りと重いペナルティかなんかあるんじゃなかったか? ……ほら、オコジョにされるとかなんとか」

 

「はい……」

 

「大方バレた場合の回避策として、神楽坂とかと結んでる契約とやらをすれば魔法使いの従者って形にして誤魔化せるってのは聞いた気はするが、従者なんてそんな何人も増やして良いのかよ?」

 

「ま、まあ制限は特にありませんから」

 

「その分ネギの兄貴の負担は増えますがね」

 

 

 

 死の淵に追い込まれた幼少期、その精神に生きる事への執念という名の業火を灯したその瞬間から掴んだ異常性(アブノーマル)(サガ)はあれどだ。

 

 

 

「それでその……綾瀬さんと宮崎さんはイッセー先生の事も魔法使いのような力を扱う方だと思っているようでして……」

 

「修学旅行の時に鬼神を大兄貴がスゲー姿になってぶちのめしてた辺りで確信したみたいですぜ」

 

「つまり俺のせいでもあるのか……。

どうもあの地域に居る間はイラつきが凄まじいせいでそこら辺の配慮が一切頭に無かったわ。

でもよ、俺は別に誰に何をバレようがどうでも良いってか、しょっゅう古菲の喧嘩買ってる場面その他大勢に見られてたし今更じゃないか?」

 

 

 ネギに『生きる為に敵を殺す術』を文字通りに身体に叩き込み始めてから数日。

 何故かは知らないけど最近妙にエヴァンジェリンが挙動不審である事を除けば特に大きな事件も無い平和な日々であったのだが、特に大きなポカはやらかしていないのだが、どうやらネギが魔法使いであることが、二人がそれぞれ担任と副担任として受け持つ生徒にバレていたらしい―――という相談を缶ジュース片手に駄弁りながらしていた。

 

 

「そんなに不安なら俺が記憶消去(物理)をして来ても良いけど……」

 

「(物理)って辺りに物騒感が半端ねーんですが……?」

 

「ちょっと頭を揺らして脳みそをシェイクしまくるだけだぞ? 大丈夫だ、間違って首の骨をへし折ったのは最初の頃だけで今は調整も完璧だぜ?」

 

「切実にやめてあげてください!」

 

 

 綾瀬夕映と宮崎のどか。

 副担任目線では『図書館探検部』を名乗るグループに所属する生徒達である………のだが、残念な事にアスナ、古菲、楓と同じバカレンジャー呼ばわりされる夕映とはある程度の話はしたりするが、前髪で目線が隠れ気味な見た目通り大人しいのどかとはほぼほぼまともに話はしていないし、イッセー的にもかなり印象が薄いと思っている。

 

 

 

「誰にも言い触らさないと約束してくれましたから!」

 

 

 

 そんな対照的ながらも仲の良い二人にネギの正体―――と、ついでにイッセーについてがバレてしまったという話を聞かされた訳だが、当人は知られた所で別に困らないものの困るというのなら記憶消去(物理)を提案するが、ネギから見てもか弱い女子にそんな事はさせてはならないと全力でその申し出を断る。

 

 

 

「そこまで言うのなら宮崎と綾瀬の事は一旦置いておくよ。

で、話はまた変わるけど例の親父さんの手掛かりってのは見つかったのか? あの迷路みたいな図書館にあったらしいじゃん?」

 

「はい……あ、いえ正確には手掛かりがあると思われる場所の前まではたどり着けたのですがね……」

 

(ドラゴン)が居たせいで中には入れなかったんですよ大兄貴」

 

「ほう? ドラゴン……。ドラゴン――ねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネギの正体を知ったと同時に、用務員上がりの副担任の正体が確信に変わった宮崎のどかと綾瀬夕映から見た教師としての二人の仲は別に悪くは無いし、なんなら教師といえどまだ子供でしかないネギのフォローをしたり、何やら年の離れた先輩と後輩のような感覚で話をしていたりしているのを何度も見ていたので、多分仲は悪くない……と思っていた。

 

 

「契約執行・180秒間!

ネギの従者(ミニストラエ・ネギイ)、近衛木乃香! 宮崎のどか! 神楽坂明日菜、桜咲刹那!」

 

「……………」

 

 

 まあ、実際は仲が悪いという訳ではないだろう。

 実際魔法使いとしての修行をするに辺り、こうしてイッセーが修行の相手になってくれているのだから。

 

 

「エヴァとかの詠唱とか聞いてて毎度お思うけど、そんな横文字だらけの詠唱でよく舌噛まないな。

早口言葉とか得意だろ?」

 

「へ? え、ええまあ……魔法使いとしての最初の一歩は詠唱を間違わずに繰り返し発声する練習があったりしますから」

 

「俺には一切無い引き出しなせいか、素直にスゲーと思うわそういうのは」

 

 

 正式には従者ではないものの同行している古菲や楓や夕映――そして何故か絶妙にここ数日様子が変なエヴァンジェリンが見ている中、正式契約を結んだ四人の女子達とネギの前に立つイッセーは、魔法っぽい魔法をやっているネギに改めて素直な感想を呟く。

 

 

「エヴァから魔法使い的な修行の一部を聞いてきたぜ。

ええっと四人の従者とその状態になっている状況でまずは対物魔法障壁ってのを全方位に全力で展開してるだとさ」

 

 

 そんなネギの修行は今までの物理とは違い、根性を見せたネギへのイッセーなりの応えという形で、おこづかいを減らす事を条件としつこいくらい頼み倒した事で聞き出した魔法修行であった。

 

 

 

「んで、その状態のまま今度は……あー、アンチ……? おいエヴァ? これなんて読むんだっけ?」

 

「……。対魔・魔法障壁(アンチ・マジックシールド)だ」

 

「おうサンキュー。

聞いてた通りだネギ先生、それも全力で展開させて3分まずはそのまま」

 

「うぬっ!? は、はい!」

 

「で、3分後によくまる魔法の射手ってのを空に向かって199本くらい撃つんだと」

 

「うぇ!? ………は、はいぃ!!!!」

 

 

 

 メモ用紙を読みながら指示を出すイッセー本人はあまりわかっていないようだが、魔法使い側であるネギからすればかなりキツい事を言われているのだが、せっかくなんやかんや頑張って修行を見てくれるまでに漕ぎ着けたのだからと、言われた通りにするネギ。

 当然ながらこれはネギ自身に秘める魔力に負荷かける為の事であり、言われた通りにしたネギはあっという間にへばってしまう。

 

 

「チッ、この程度でガス欠か。

ナギの倅譲りの魔力を秘めておきながら、殆ど使いこなせんとはな……」

 

 

 別に条件も満たしていなければ面倒も見る気もないエヴァンジェリンは、すぐにガス欠を起こして気絶し、木乃香達に介抱されているネギに対してそこそこ辛辣だ。

 

 

「よーよー、この修行を考えてくれたっぽいエヴァンジェリンさんよー兄貴はまだ10歳なんだぜ?

4人同時契約3分に加えて魔法の矢199本も撃たせればガス欠も当然だっての。

寧ろ並の術者だったらこれでも――」

 

「そうか。確かにそれなら仕方ないのでここで辞めて貰っても私は一向に構わんぞ?

元々このぼーやは私のつけた条件を達成すらせず、イッセーのお情けでなあなあにして貰っているに過ぎんしなぁ。

第一、こんな事をさせているのもイッセーの奴がそこのぼーやに代わって私に下げんでも良い頭まで下げて来たから応じてやってるだけだ。

自分の月の小遣いすら要らないから魔法式のトレーニングを少し教えてれとな」

 

「え……?」

 

「おいおい、それを言うなよエヴァ。

だせーじゃんか」

 

 

 カモのフォローを一蹴しつつ、ネギの修行方法の一部を提供した理由を話すエヴァンジェリンに、何も知らなかった女子達やカモがイッセーを見る。

 

 

「イッセー、アンタそこまでしてくれてたの……?」

 

「別に善意とかじゃねーぞ? 良い根性してるし、飲み込み早いからその内俺とタイマン張れるくらい強くなったらちょっと楽しそうだなと―――あーくそ、俺も俺で親友の一人(ヴァーリ)の戦闘バカが移っちまってるし、小遣いしばらく月3000円にはなる……まあ小遣いは別に良いんだけどよ」

 

 

 恥ずかしそうにポリポリと後頭部を掻きながら目を逸らすイッセーに、アスナ達は勿論夕映やのどかは特に驚き、茶々丸やチャチャゼロ――そしてそのチャチャゼロに後ろから抱きつかれて迷惑そうな顔全開な人形モードのドライグと共に見ていた後方理解者顔をしている古菲と楓。

 

 

「金がなくなったら私達が貸すぞイッセー?」

 

「返済はしなくても良いアル」

 

「……………。気持ちだけ貰うわ。

てか小娘に心配されちゃあおしめーよ」

 

 

 妙に優しい顔で言ってくる楓と古菲に苦笑いを浮かべるイッセーは目を回して気絶して聞いてないネギに聞かれんで良かったと思うのだった。

 

 

「変な気とか使うなよな。

俺も俺でそれなりの対価ってのを期待した上でやってることなんだからよ。特にこのことはネギ先生には言うなよ? ただでさえエヴァに暴露されてかっこわりーのによ」

 

「別にカッコ悪いとは思いませんが……」

 

「寧ろイッセー君の性格を思ったら納得やもん」

 

「うるせーうるせー、単なる小娘共に褒められてもちっとも嬉しくないぜ。

ムチムチボインの人妻オーラムンムンのおねーさんになら褒められたいがな!」

 

「………………」

 

「いででで!? 何だよエヴァ!? 急に俺のふくらはぎにローキックを連打するなや!?」

 

 

 

 

 

 

 ネギ先生を俺と正面から殺り合えるまでに成長させ、更に進化をすればお前への借りはもっと返せる。

 

 出た給料も一切手を付けず渡すし、暫くナンパも辞めるし、吸血の量も増やして良い。

 

 損しか無い条件を対価にエヴァンジェリンから魔法式トレーニング方法の一部を聞き出した事で始まった魔法修行の次は――純粋な格闘術、否、敵をぶちのめして生き残る術という名のイッセー式トレーニングだ。

 

 

「前に言ってた俺の朝練を続けた事で少しは基礎体力は上がっている。

だから引き続き基礎のトレーニングを続けながら、俺からは『敵をぶちのめす喧嘩のやり方』を教える」

 

「はい!」

 

「………」

 

 

 魔法だけではなく、あらゆる敵の攻撃を突破できる肉体も重要であると修学旅行での挫折で思い知ったネギは、真剣に頷くのだが……。

 

 

「あ、あのー……質問良いですか兵藤先生?」

 

「ん、なんだ宮崎に綾瀬?」

 

 

 おずおずと挙手をするのどか――というか全員が疑問だった。

 

 

「兵藤先生の修行は魔法とは違うというのはなんとなくわかりますけど、何故ネギ先生だけではなく私達もするのですか?」

 

「私に至ってはネギ先生の従者ですらまだ無いのに……」

 

 

 そう、ネギのみならずネギの従者に始まり、見物人の夕映――果てにはカモまでもがイッセー式トレーニングにほぼ強制的に参加させられたのだ。

 これには引っ込み思案なのどかですら嫌な予感しかしない。

 

 

「ネギ先生の正体を知り、従者とやらになったら終わり――それで皆ハッピーだと思ってるのなら、今すぐ脳みそをシェイクしてネギ先生に関する記憶をグチャグチャにして消し飛ばすつもりだが、それで良いか?」

 

『』

 

「? おいおい、何を『なんでそこまでされなくてはならないんだ?』って顔してるけど、普通に考えてみろよ。

テメーの好奇心でネギ先生の正体を突き止めて、彼の抱える領域に土足で踏み込んで知っておいて、『ネギ先生は魔法使いなんですね~!素敵ー! 頑張ってください、応援だけはしますね? キャピキャピ♪』で済むと思ったら大間違いだぞガキ共?」

 

「うっ……」

 

 

 

 普段の女に貢がされたり、妙齢の女にだらしなく鼻の下を伸ばしてド下手なナンパをしまくる副担任とは思えない迫力に、一瞬で精神的に潰されかけてしまうのどかと夕映。

 当然そんな二人を見てネギはオロオロしながら口を挟もうとするが、色々と察しているのか意外にもカモがそれを止めている。

 

 

「お前等もネギ先生同様に子供だから見逃せる部分はあるが、ひとつ覚えておけ、人の隠している事に踏み込むにはそれ相応の『覚悟』をしなくてはならない。

そうでなければ自分(テメー)の好奇心を満たす為に人様の中に土足で踏み荒らし、下手すりゃあ殺されても文句なんて言えないもんだと俺は思っている」

 

「……」

「………」

 

 

 おちゃらけ副担任とは思えない、それこそ先日図書館で出会した竜っぽい生物なんか比にすらならない――――赤い血の様な龍の幻影がイッセーの背中から見える程の圧力を放ちながら物騒極まり無い台詞を吐かれたのどかと夕映は小さく震える。

 

 

「綾瀬が今後どうするのかは知らんが、宮崎はネギ先生と従者の契約を交わしてるんだろうが。

ということは互いに『信頼』をしていると俺は解釈している。

信頼ってのは大事だし、俺もガキの頃は信頼する友達が居たし今も居る」

 

 

 震える二人から視線を外し、此方を見るエヴァンジェリンと人形モードのドライグを一瞥してから再び視線を戻す。

 

 

「これは誰かの受け売りだが、この世で大切なものが『信頼』というのなら、忌むべきものは『侮辱』することだ。

良いか、信頼を侮辱するってのは、その人の名誉を傷つけるばかりではなく、その後の人生や生活を抜きさしならない状況に追い込む事になる」

 

「………」

 

「普段の俺はご覧の通りだし、誰に何を言われようが、それこそ石だろうが汚物だろうが投げつけられてもヘラヘラ笑って流そうと思っている。

だが、俺は俺の好きだと思った相手が『侮辱』された場合、それがどんなに些細な事でも命を張る。

そして侮辱した相手を何があろうと、どんな手を使ってでも全力で殺す……!」

 

「っ……」

 

 

 ギラギラと血走った目と共に発せられた言葉にのどかと夕映は普通に泣きそうだ。

 

 

「まあもっとも? ネギ先生は良い子だからな。例え逃げ出したとしても許してくれるだろうよ。

けど、その人の良さに漬け込んで甘ったれたままのつもりなのなら俺は許さん。

教師としてのネギ先生以外の全ての事に関して二度と関わらせることもさせない。

だからここが最後の選択で、今なら引き返せる上で、ただの副担任として聞くぞ宮崎に綾瀬? …………本当に最後まで関わるんだな? 関わるのならお前等にもそれ相応の覚悟をさせるが、それでも良いんだな?」

 

「「わ、私は――」」

 

 

 古菲や楓、アスナや木乃香や刹那……そしてネギですらイッセーの放つ重苦しい圧力に固唾を飲み込む中、のどかと夕映は震える己の身体を抑えながら、爬虫類を思わせる目になっている副担任に向かって口を開くのだった。

 

 

 

 その結果――

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ……ぁ……ぅ……」

 

「し……しぬ……」

 

 

 戻ってしまえば即座に地獄行きへの道を選択するのだった。

 

 

「ただの学生だったお前らは最初はこんなもんだろ。

寧ろ意識があるだけマシだよ――特に宮崎、お前も案外根性据わってるじゃねーか?」

 

 

 常人が行えば暫く寝たきり確定の鬼畜脳筋トレーニングにより、どこぞのガス欠後の爆裂魔法使いのように地面にひっくり返った姿で動けないのどかと夕映に、イッセーは先程までの殺意が嘘のような何時ものヘラヘラ顔で笑って見下ろしている。

 

 

「こ、こんなトレーニングをネギ先生だけじゃなくて、アスナさん達もやっていたなんて……」

 

「は、半端な覚悟じゃないんですね……」

 

 

 確実に明日は全身重度の筋肉痛が確定するのを文字通り全身で味わうのどかと夕映は地面にひっくり返った姿のまま、古菲と楓を相手に肉弾戦をやっているアスナや刹那を見る。

 

 

「さて、休憩は終わりだからさっさと立てガキ共。

まだ腹筋、腕立て、背筋200回と10

㎞全力疾走マラソンが残ってるんだからな」

 

「え゛……」

 

「わ、私達は所謂インドア派という部類なんですよ……? も、もう少し手加減を――」

 

「手加減ってなんだぁ……?」

 

「「」」

 

 

 どちらかと言わずともインドア派であるのどかと夕映からしたら鬼畜にも程があるトレーニングに反抗する声すら上げられず、地獄への道へと強制参加させられる。

 ちなみに木乃香は何故かエヴァンジェリンからなにかを教わっているらしく、カモはほぼ初対面の人形状態のドライグとチャチャゼロの二人からしごかれ中だった。

 

 

「多少素早い程度なぞ話しにならんぞモルモット?」

 

「も、モルモットじゃなくてオコジョだっつーの!! アンタの声、聞き覚えがあるぜ! 確か大兄貴の腕についていた籠手の声――ひょえ!?」

 

「ケケケ! ドライグトオレノコンビハ『無敵』ダゼ!」

 

「ぎゃぁぁっ!!?」

 

 

 

 そして其々が真剣に修行をする中でも一番満身創痍なのは、のどかと夕映――ではなく、ネギだった。

 

 

「げほっ! ぐ……ぎぎ……!」

 

 

 のどかと夕映がぴくりとも動かずにうつ伏せに横たわるのを背に、古菲によって体得した八極拳を以てして挑んだネギに対して、イッセーはそれこそ街に蔓延るチンピラがやりそうな喧嘩殺法をベースとした完全なる我流で叩き潰している。

 

 

「ま、まだ倒れてません! 続けてください!!」

 

「良いね。この前よりタフさが上がったな?」

 

 

 一方的なのは変わらないし、正直何度見てもショックな程ネギはボコボコに殴られまくっている光景にのどかも夕映も自分の事のように悲痛な気分だ。

 しかしイッセーはそんなネギに対して殺さないまでも加減はせずボッコボコに――それもえげつなさの光るやり方で叩きのめし続ける。

 

 

「フンッ!」

 

「うぐぁ!?」

 

 

 体重の差もあるせいか、矢のような回転蹴りをガードしても吹き飛ばされてしまうネギが地面に激しく背中を打ち付けたかと……。

 

 

「キィッ!!」

 

「ごぶぇあ!?」

 

 

 思いきり体重の入った膝がネギの胸元に追い討ちのごとくめり込み。

 

 

「ひゅー……ひゅー……! ご、こふ!」

 

「すぅー……」

 

「うぁ……!? (つ、強……!速……!避け……! 否……!死……!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」

 

「ヤッダーバァアァァァァアアアアア!!?」

 

 

 それでも意地で立ち上がったネギの全身に速すぎて無数に増殖しているかのように錯覚するほどの拳が叩き込まれるのだった。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 のどかと夕映は、まさに『燃えるゴミは月・水・金』の如くぶっ飛んでいくネギやら、別の場所で体術合戦を繰り広げている古菲と楓、アスナと刹那を見ながや思った。

 

 

((魔法ってなんだっけ?))

 

 

 魔法っぽい修行がほぼ最初だけで、あとは全部脳筋な光景にメルヘンな想像は消え去るのだった。

 

 

 こうしてイッセー式トレーニングは伝染していくのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、イッセーに頼まれたからという理由で仕方なくネギの魔法側のトレーニング方法の一部を教えたエヴァンジェリンは決してネギを弟子と認めたわけではない。

 

 ただ、タカミチと学園長に対してイッセーが放った言葉を聞いちゃって以降、エヴァンジェリンは若干イッセーに対してテンパってしまうようになったせいで頼まれると以前より聞いてしまうだけだ。

 

 

「いたたた……」

 

「気絶せずに居られたか。

確実にタフネスさは成長しているな」

 

「てへへへ……」

 

「キミの好物のハーブティなんて洒落たもんじゃねーが、オレンジのジュースなら飲めるだろ?」

 

「あ、ありがとうございます! エヴァンジェリンさんから貰えるお小遣いが3000円しかないのに御馳走して頂けるなんて……」

 

「改めて思い返すとちょっと凹むから3000円の話はやめてくれよ……」

 

 

 散々ズタズタのメタメタにされたのはこれまでと変わらないが、今日のトレーニングではなんと魔力のガス欠時を除いて一度も意識を手放さなかったネギは、感心するイッセーにボコボコにされて痛む顔面に笑みを浮かべており、買ってきた缶ジュースで乾杯中だった。

 

 

「という訳で、近衛木乃香。

お前はまず己に秘める大きな量の魔力を制御し、扱えるトレーニングを重点的にやれ。イッセーの言っていた通り、これ以上ぼーやに肩入れするつもりであるのならな」

 

「うん、わかった」

 

 

 見てるだけでは退屈だったので、ネギの従者の中でも魔力の総量が凄まじい木乃香に魔力とはなんぞやと教えていたエヴァンジェリンは加わってきたアスナ、古菲、楓、のどか、夕映達と何故かトランプゲームの大富豪をして遊び始めるイッセーをチラチラと見ている。

 

 

「ヒーハー!! トドメにQのダブル! これで上がりっ! 俺が一位ッッ! つまりは大富豪ッッ!! ひゃっほーい!!」

 

 

 二十歳になる男とは思えないハシャギっぷりで、大富豪になったと小躍りまでしているイッセーにアスナ達は軽く引きながら呆れている。

 

 

「ほっほーぅ、最下位――つまり大貧民は神楽坂になったか。

ほぅら、神楽坂大貧民さんは早くトランプを集めて皆さんにお配りしろ?」

 

「ア、アンタねぇ……! 自分で大人気ないって思わないわけ!?」

 

「まーったく思わんなァ?

今のお前等の声なんぞ負け犬貧民共の雑音にしか聞こえぬわ!!」

 

「だったら次で蹴落としてやるわ!!」

 

 

 何時もの通り、トランプであろうが年下の女子相手に大人気なく勝ち誇りまくるイッセーにアスナや古菲といった女子の何人かは見事に煽りに乗っている。

 

 

「ほんま、さっきまでは怖いくらいやったのに、もう普段のイッセー君やなぁ」

 

「どっちもアイツの素みたいなものだ。

自分の事をアイツは『大人になりきれない拗れたガキ』と言っていた」

 

 

 木乃香からすれば、今アスナや古菲を煽り倒しているイッセーのあの姿の方がなじみがあり、修学旅行の時や今回のトレーニングで見た『女子供相手だろうが情け容赦なくボコ殴りにする』側面の方が違和感を覚えるくらいである。

 

 

(もしもネギ君達と敵対する立場にイッセー君が居たら……)

 

 

 エヴァンジェリンの言葉を耳に入れながら、魔法も戦闘もまだまだ素人である木乃香から見てもイッセーは確かに『異質』だ。

 ネギや自分が持つ『魔力』とは違う、されど古菲が口にする『気』とはまた違うナニかを感じる。

 

 

「なあなあ、エヴァンジェリンさんはイッセー君の力がどんなのか知っとるん?」

 

「一応はな。だが私の口からは言わん、知りたければ本人に聞いてみろ」

 

 

 そうつっけんどに返すエヴァンジェリンに木乃香は困った顔で笑う。

 

 

(ネギ君の事を知れば知るほど、イッセー君の力って魔法とは違って見えるんよなぁ……。

手からビーム出すし、明らかに人間場馴れした姿に変身しとったし)

 

 

 アスナ達に手を組まれた結果、見事に最下位に転落してしまっているイッセーが煽り返されていて悔しがっている姿を見つめながら、木乃香は修学旅行の時に見たイッセーを思い返す。

 

 

(よくよく思い返したらイッセー君の事全然知らないんやなぁ……)

 

 

 大貧民へと転落したイッセーが古菲に飛び付かれている姿を見ながら、ある意味でネギ以上に謎な面が多い事に気付くのであった。

 

 

「…………」

 

 

 そんな木乃香の様子を横目に、エヴァンジェリンはガキの様に騒いでいる者達に声を掛ける。

 

 

「先に断っておくが、私は別にぼーやを弟子にするつもりはない。

イッセーに片ひざを付かせるという条件も果たしてはないからな」

 

「うっ……わ、わかっています」

 

「とはいえだ、イッセーが暫く面倒を見ると言い出した以上は多少口を挟ませて貰う。

まずはこれからのトレーニングの方向性を固める為に、ぼーやには戦闘のスタイルを決めて貰う」

 

「戦いのスタイル……ですか?」

 

 

 弟子にはしないが、こうも毎日目の前でイッセーにボコ殴りにされながらも多少実力を上げ始めているネギに、エヴァンジェリンは前置きをしつつ助言のような事を言う。

 

 

「お前がこれから魔法使いとして上を目指すのなら、暫くイッセーとのトレーニングを見ていてある程度進むべき道が見えた。

簡潔に言うと、『魔法使い』か『魔法剣士』だな」

 

「魔法使いと……」

 

「魔法剣士……?」

 

 

 

 ナギの息子というのもあってか、意外とネギを見てはいたエヴァンジェリンによる魔法使いと魔法剣士の違いの説明を真剣に聞くネギとアスナ達。

 

 

「なんだかゲームみてぇだな……」

 

「トレーニングの方向性の為に大雑把に分類だと思え。

今説明した通り、どちらにも長所短所はある。

古菲とイッセーを相手に体術を齧ったとはいえ、利口なぼーやは魔法使いタイプだとは思うがな」

 

 

 そう含みのある笑みを浮かべながらネギの適正は後衛型の魔法使いタイプだと言うエヴァンジェリンに、ネギは数秒何かを考える様子を見せつつ口を開く。

 

 

「ひとつ教えてください。

サウザントマスターのスタイルは?」

 

「……。まあ知りたいよなそれは?

うむ、私や――京都でぼーやが会って少し戦った白髪の小僧の戦いを見ればわかる通り、強くなっていけばこういう分類は意味をなさなくなる」

 

 

 エヴァンジェリンの言っていた白髪の小僧というのは修学旅行の際にネギが出会った少年であるのだが、機嫌が最悪だったイッセーに両手両足の骨を砕かれた挙げ句にヘドロ満載のドブ川に頭から沈められたりしている。

 

 しかしほんの少しの間だけ相対ネギから見た彼の強さは確かなものだったのは間違いない――と、今は生きてるのか死んでるのかもわからない少年の事を思い返しているネギにエヴァンジェリンは一番ネギが知りたい父親のスタイルを語る。

 

 

「敢えて言うなら、奴のスタイルは魔法剣士だ。

それも従者を必要としない強力な側のな……」

 

「そうですか……」

 

「やっぱりか――と言いたそうな顔だな。

まあ、別に急いで考える必要はないからな。参考程度に――」

 

 

 

 父の背中を追うネギを見ながらエヴァンジェリンは少し懐かしい気持ちになっていると、それまで黙って話を聞いていたイッセーが持っていたカップを握り砕いた。

 

 

『!?』

 

「おっと、うっかり割っちまったごめんごめん」

 

 

 砕けたカップの破片を拾いつつヘラヘラと謝るイッセーだが、何故か目が全然笑ってない気がしてならないと感じるネギ達。

 

 

「急にどうしたイッセー?」

 

「いや別に……? 今言った通り、うっかり加減を間違えて割ってしまっただけで……」

 

 

 茶々丸が持ってきた袋に割れたカップを捨てながら引き続きニヘラニヘラとしているが、エヴァンジェリンはそれがただの強がりであるとすぐに見抜けた。

 

 

「お前がそうやってなにかを破壊する時は激怒した時だけだし、私が見抜けんと思っているのか? 良いから言え、何か不愉快な事でも――」

 

 

 別に機嫌を損なわれた所でエヴァンジェリンは怖くもなんとも無いが、急に不機嫌になられたらそれはそれで理由が知りたくなるものであるので、のらりくらりなイッセーを更に問い詰めると……。

 

 

「……。別に本当になんでもないっての。

ただ、エヴァがネギ先生に魔法使いとか魔法剣士とかの話をしてる時に先生の親父さんの話をしたろ?」

 

「ああ、ナギがどっち側なのかをぼーやが知りたがっていたからな?」

 

「そりゃあネギ先生は知りたいだろうし、わかる話だよ。

けどなんか知らんけど、エヴァがさっき親父さんの話を笑いながら話していたのを見た瞬間殺してやりたくなったってだけだし」

 

 

 ヘラヘラ顔から、今度は露骨に嫌そうな顔でそう吐露したイッセー

 

 

 

『……………』

 

「…………」

 

「ネギ先生の親父さんとは会ったことなんて無いし、ネギ先生から話を聞いてもムカつかないのに、エヴァの口から聞くと八つ裂きにしてやりたくなるんだよ最近。

引かれるから言いたくないけど、俺は好きだと思った相手に拘りすぎる悪癖があるんだよ」

 

 

 物騒で重いにも程がある事を呟くイッセーのせいでエヴァンジェリン宅ことログハウス内の空気と音が暫く止まったように静寂に包まれた。

 

 

「どうすりゃあこのキモい悪癖って直せるんだろうなドライグ?」

 

「………。さてな、死ぬまで直らんと思うぞオレは」

 

「えー? じゃあチャチャゼロはどう思うよ……?」

 

「ドライグト同ジ意見ダナ。

シカシ、良カッタナァ御主人? ケケケケ!」

 

 

 要はエヴァンジェリンがかつて拘っていたナギに対して無意識に嫉妬しまくっているという事であり、ネギもアスナも木乃香ものどかも夕映の誰もが内心『いや、普段アンタが公言してるタイプとは真逆な人なんですけど!?』という突っ込みを必死に堪え、古菲と楓はショックで白くなってしまっていた。

 

 

「なぁエヴァ、やっぱ引くよな? 直す努力はするけど――」

 

「今、私を見るな」

 

「え……」

 

「今お前にそんな顔して見つめられたら本当にその……困る……」

 

「……。やっぱキモいからだよな?」

 

「そ、そうではない! そうではないが……! い、今だけは見ないでくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

「え、えぇ……」

 

「ま、まさかのタイミングでまさかすぎるラブコメが始まりました……」

 

「どっちかというとイッセーが無意識に自覚し始めてるという感じだわ」

 

「わぁ、アスナちゃんのIQがここに来て急上昇しとるわぁ……」

 

「あわわわ! ど、ドキドキしてきた……!」

 

 

 

 

 

 

「だ、だから私を見るんじゃない! もう少し待て! 待たないと抱き枕になってやらんからな!!」

 

「……おう」

 

 

 エヴァにゃん、余計テンパるオマケ――終わり




補足

誓って殺しはやってません! な世界を思わせる死ぬだろとしか思えないアクションでボコボコにされても立ち上がる程度のタフネスを身に付けてるネギきゅん。

多分この時点で小太郎君には余裕で勝てるかも



その2
段々重さが出てきてる男。

この時点で雪姫化した処で


『いや、なんか違うからやめれ』って言い出すでしょう
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