俺達にとってすれば忌々しいとさえ思えた世界。
いっそ滅んでしまえとすら思えた世界。
そんな世界を生きるクソッタレ共から自由になる為には文字通り『死』を覚悟しなければならなかった。
だから俺は、初めてドライグという存在が俺の中に宿っていて、話をすることが出来た時から聞かされていた事があった。
赤い龍などとどこぞの誰かに呼ばれるオレと同じように、白い龍などと呼ばれるドラゴンがオレのように神器としてこの世界のどこかの誰かの中に宿っているという話を。
俺よりも前に赤龍帝と呼ばれていた者達――つまり俺にとっては先代に当たる人達は何度も白い龍を宿した存在であり白龍皇と呼ばれた者達と『殺し合った』らしい。
つまり何れは俺も世界のどこかに白い龍を宿した白龍皇と呼ばれる誰かと『惹かれ合うように邂逅』し、殺し合う事になるかもしれないのだと。
そんな話を初めて聞かされた時の俺はといえば、明日どころか今日すら生きられるかもわからない極限状態の日々だったのもあって、話半分にしか聞いちゃ居なかったし、リアスちゃんと出会ってからの俺はすっかりその話を忘れていた。
というのも、俺は結局リアスちゃんと世界から抜け出すまでの間に一度もその白龍皇とは会わなかったのだ。
それがまさか、他所の世界に流れ着いた現在となっては、最早ドライグすら忘れかけていた因縁として目の前に現れてくるとは思わなかった。
しかも何より―――
「「ガァァァァァァッ!!!!!!!」」
『Boost!』
『Divide!』
白龍皇を名乗ったこのガキ――確かフェイトだかヴァーリだっか? どっちが本名かもわからんこの小僧、割りとマジで……この世界では本当に初めてまともに『苦戦』を感じさせられるくらいに強い。
「グ……ギギギィ……!!」
「グ……グゥゥゥゥ……!!」
さっきまでの楽勝ムードの内に完全に殺しておけば良かったと後悔してしまうし、自分の『勘』の鈍りに苛立ちすら感じながら、さっきまでのガキとは思えない膂力で俺とまともに押し合える白龍皇に、俺は思いきり上体を逸らしてから勢いづけたヘッドバッドで鼻をブチ折ってやろうとするが、向こうも同じ事を考えていやがったのか、奴は俺と同じようにヘッドバッドをする形で防いでくる。
「ウラァッ!!」
「ウォォォッ!!!」
何度か互いが互いの両手を押さえ込む様に封じながら、額を叩きつけ合った後に、一度お互いに飛び退き、今度は殴る殴られるの乱打戦に持ち込むが、奴はそれにも応じるどころか普通に殴り返してくる。
「やるな赤龍帝……!」
「いい加減くたばりがれ……!!」
奴の拳が脇腹に刺さるが、ハッキリ言って普通に痛いし、普通に苦しい。
腹を貫かれるどころか、まともなダメージなんて本当に久々なせいか、奴の攻撃が骨の髄まで伝わってくるし、血なんて流すこと自体もまた久々だ。
しかし、これだけやれるという事はつまりまともなダメージを負うのはコイツも同じである筈なんだけど、このガキめ……。
歯を折ってやろうが確実に腕の骨を何回か折ってやろうが、俺と同じくらいの回復―――いいや、ここまで来ると再生力か? とにかく壁を何度も乗り越えてきた俺と同等の回復力で即復帰して来るし、殺り合うのが寧ろ楽しいと言わんばかりに笑ってきやがる。
「楽しいぞ赤龍帝! やはり実力が同等同士の戦いはこうでなくてはつまらない!!」
「こっちは全然楽しくないんだよ。
クソが、あの眼鏡の女に何かされる前にテメーをとっととブチ殺すべきだった……」
「ふっ、それはオレがキミのお眼鏡に叶ったという解釈で良いのかな?」
『チッ、貴様も歴代で最高峰の宿主を引き当てたようだな赤いのよ?』
『互いにな白いのよ?
まさかイッセーがこれほど苦戦を強いられるとはな……!』
『当然だヴァーリは――いや、ここではフェイトだな。
アイツは才能から精神力に至るまで間違いなく歴代最強だ……!』
ちくしょう……。今ならリアスちゃんと組んで攻め込めば殺れるが……。
それじゃあ俺一人では勝てないって認めるようなもんだし、生き残る為ならその方が正解に決まってるのに、何故かそんな気になれねぇ。
「さぁ、そろそろ第二ラウンドと行こうか……!」
「黙れ、最終ラウンドだッッ!!」
確実に言えるのは――コイツは絶対にぶちのす!
既に実家の殆どを『破壊』されている近衛木乃香は、慕っている兄貴分であるイッセーがまともに苦戦していて、まともにダメージを負っている姿に親友の刹那同様にひたすら驚かされていた。
「あのフェイト――もしくはヴァーリって人、ほんま強いわ。
イッセーくんがあないに苦戦するなんて初めて見たわ」
「ええ、それに白龍皇と名乗っていたのも嘘ではないようですからね……」
エヴァンジェリンの魔法すら腕組みしながら平然と受けて無傷だったイッセーを知っているからこそ、息こそ切らせて居ないものの、頭や口の端から血を流し、内出血をしている今の状態に驚きを禁じ得ないし、それほどのダメージを与えるあのフェイトだかヴァーリだかなる少年の強さに同じく驚かされる。
それは目の前のあまりにも非現実じみた光景にまだ見慣れていないのどかやハルナや夕映とて同じであり、徐々にだがイッセーが心配になってしまう。
「だ、大丈夫なのでしょうかイッセーさんは?」
「私はまだイマイチ今のぶっとんでる状況が上手く飲み込めてはないんだけど、それでもイッセーさんってめちゃくちゃ強いってイメージだったからさ、あんな怪我してるところ初めて見るよ……」
「それだけ相手が強いということなのでしょうけど……」
ノーモーションのドラゴン波を放つイッセーに対し、白銀の龍の翼を背にしたフェイト(ヴァーリ)がファールボールを打ち上げるが如く拳で弾き飛ばしている光景を見ながら、傍に居るリアスに問い掛ける三人。
そんな三人にリアスは『大丈夫』と微笑む。
「ええ、確かにあの白龍皇の彼は強いわ。
でも大丈夫……それでもイッセーは負けないわ」
長年共に歩んできた夫婦を思わせる絶対的な信頼を寄せているようなリアスの言葉に、のどか、ハルナ、夕映……そして木乃香と刹那はその言葉に安心するのと同時に、ちょっとだけ悔しいと思った。
どんなことがあってもイッセーを信じるとそのブレなさに……。
「す、凄い……」
「ば、バケモンだあの二人……」
ちなみにネギは『戦いの基本は格闘だ。武器や装備や魔法に頼ってはいけない』と言わんばかりの、激しい両者の肉弾戦の応酬に、武者震いをしながら見つめていて、割りと感性的にはまともなカモはドン引きしている。
「う…おぉっ……! 師匠がまともに殴られて血ィ出すのを見るのも初めてでびっくりやけど、なんちゅー戦いや! 俺が理想とする喧嘩そのものやで……!」
「しかし、本当に強いどすな……あの赤龍帝の人は。
フェイトはん――いや、ヴァーリはんがあんなに傷だらけになるなんて……」
「ヴァーリ……」
反対側から見ていたフェイト(ヴァーリ)曰く、『割りとノリと気の良い奴等』である、犬上小太郎、月詠、天ヶ崎千草の三人もまた、本来の力を発揮できる状態のヴァーリの強さを知っているだけに、そんなヴァーリとまともに殴り合える赤龍帝の青年の強さにただただ驚く。
「何年か前に東の長が、無名ながら異次元の力を持つ傭兵を抱え込んだという噂はあったけど……」
「間違いなく彼とあちらの赤い髪の姉ちゃんで間違いないで」
「………」
だからこそ、三人――特に千草は『殺す』と赤龍帝の男の宣言があった以上、ヴァーリが殺されやしないかと割りと本気で心配になる。
「ええかお前達、いざとなったら目眩ましでもなんでもしてヴァーリ連れて全力で逃げるえ」
「「………」」
「? なんや……?」
「いや、思ってたより師匠のこと心配しとるやなぁ……って」
「復讐よりヴァーリはんを取る辺り、大分変わられましたなぁ?」
「ぐっ! さ、さっきも言ったけど、別にそんな意味ちゃう! ヴァーリはウチ等の中では最高戦力なんえ! ここで無駄に死なれたらそれこそ復讐も出来んくなると思っただけであって、他に意味なんて無いわ!」
率先してヴァーリが危なくなったら玉砕覚悟で挑んで、全力で逃げると、己の復讐よりもヴァーリの命を選ぶ発言をする千草に、小太郎と月詠はヘラヘラと笑い、そんな二人にこれでもかと全力否定する千草だが、完全に言葉使いからなにからテンパり過ぎて説得力に欠けている。
「…………ふー」
「ここまでジリ貧になるとはな。
これでも『師』に恵まれたお陰でオレはここまで強くなれたと自覚はしていたが、キミは一体どうやってそこまでの力を……」
そんな互いの仲間達から見守られながらの殴り、殴り返されるの肉弾戦の応酬に一区切りがついたのか、一旦距離を置いて呼吸を整えながら構える。
「なんだ冥土の土産に聞きたいってか?」
「ふっ、死ぬ気は無いさ。だが気にはなる」
お互いの身が傷つき、着ていた服も所々が破けていて、既に戦場と化した関西呪術協会の総本山の殆どが戦いの余波で破壊されまくっている状況の中、思っていた以上に強い念願の宿敵に対して精神的な高揚が更に高まるのと同時に、ここまでに至った理由が知りたくなったフェイト(ヴァーリ)がイッセーに訊ねてくる。
「一々ベラベラ喋る義理なんてありゃしないんだが、まあ敢えて言うなら、死にたくないから死なないように鍛え続けたからなのと――」
そんなフェイトに対してイッセーは、何時もなら絶対にわざわざ答えたりはせず、隙あらば殺しにかかるというのに、この時は久々に感じる戦いによる『痛み』と『手応え』のせいか、無意識に精神がハイになっている影響もあり、前置きしつつも答えつつ、唐突にフェイトから視線を切ってのどか達を守るリアスへと振り向く。
「肉親を笑いながら殺したクソをブチ殺す為に生きた。
そして、肉親にも、信じた仲間達にも、同族にすら散々罵倒され、裏切られ、見捨てられた彼女と出会った事で、俺の生きる動機が彼女に自由になって欲しいに変わった」
復讐が生きる動機だった幼少期。
生ゴミや誰かが捨てた腐りかけの残飯を漁り、薄汚いガキだと時には罵倒や暴力を受けながらも、何もしていない両親を笑いながら殺した男への復讐の為に生きることを諦めなかった。
「……」
「もっとも、結局俺は野郎を殺す事も出来ず、逃げることを選択したんだけどな」
そう自嘲するように笑うイッセーをフェイトは無言で見つめると同時に確信する。
(やはりお前とリアス・グレモリーはオレと同じ『世界』で生きたと思って間違いない。
お前の言う野郎とは間違いなく『奴』だろうからな……)
彼こそがヴァーリとして生きていた頃の世界において『忽然と消えた赤龍帝とリアス・グレモリー』そのものなのだと。
「けれど俺は逃げた事を後悔しちゃいない。
ゴミ以下の畜生にも満たない俺の人生に、生きる理由をくれたリアスが居るから。
こんな俺でも心の底から好きになれるんだって教えてくれたばかりか、受け入れてくれたから……。
だから俺は、リアスとこの
邪魔をする奴等は全員ぶち殺す!!」
同志の一人にて、最後まで懺悔の念と共に一人娘の為に全てを捨てたリアスの兄の事を思い返しながら、フェイト―――否、ヴァーリ。
「そうか……なるほど、それがお前の強さの根元か。
ふふふ……ますます気に入ったぞ赤龍帝―――いいや、兵藤一誠。
やはりお前はオレの『好敵手』として相応しい……!」
惜しい。
これだけの男と元の世界でもっと早くに出会えていたら、違った未来を進めたのかもしれないと思えるだけの強さを目の前の男も――そして彼女は持っていた。
しかしいくら惜しんでも過去は取り戻せない。
それを痛いほど分かるからこそ、白き龍の皇は後悔の無い戦いへと突き進むのだ。
「ならばフェイト・アーウェルンクスとして再び生を受けてしまったオレではなく、そしてかつての『ヴァーリ・ルシファー』としてでもない―――ただの『白龍皇』として全力で戦おう……!」
理不尽な力を持つ男へ――そんな男の意のままに成り下がった世界への反逆の為に集ったかつての『師達』から受け継いだ全てをこの男にならさらけ出しても良いという決意により、白き龍の皇は再び飛翔する。
「やるぞアルビオン……!!」
かつての師達の意思を受け継ぎ、この世界で出会った――今もああして自分の戦う姿を、一人は目を輝かせて、一人は羨ましげに―――そして一人は祈るようにして見てくれている『仲間達』に不様な姿を見せない為に。
『待て! 今のフェイトとしての肉体でアレを発動するとお前の寿命が縮むぞ!?』
「構うものか! ここで己の全てを出さずして戦うなんて死んでも死にきれない!! それに寿命が縮まるというのなら、そのリスクすらもオレは越えて行く!」
『…………………Dragon Lucifer Drive!!!』
少年はかつて託された『意思』と今を生きる事で得た繋がりによる『意思』の両方を抱えて、目の前の『壁』を越えて行こうと全力を解放する。
『なるほど、白いのが歴代最強の宿主と抜かすだけある。
あの小僧、お前と同じく歴代の宿主共が到達した力を棄てた上で『凌駕』したらしい。まさにオレ達と同じだなイッセー?』
「ドライグ」
『分かっている。最早手加減出来る相手ではないからな。
……まさかこの世界でなることになるとは思わなかったが、これもまた宿命か』
それに対してイッセーもまた負ける訳にはいかないと、この世界において初めてとなる『全戦力』の解放を決意すると、リアスを呼び寄せる。
「リアスちゃん。
悪い、久々に『全力』を出したくなったんだけど……」
「ん、分かっているわ……」
上空で解放する白龍皇を見上げながら、背中越しに全力で戦うと宣言するイッセーにリアスは微笑みながら頷く。
「師匠の全力がまさか見られるなんて……」
「せやなぁ……」
「私達は見てるだけしか出来ないですけど……」
結局こんな血なまぐさい光景を目にしても逃げなかった変人少女達に次々声を掛けられる中、全力の解放を開始しようとしたイッセーに、のどかの無力を悔しがるような声を聞いたリアスが突然ひらめく。
「そうだわ。折角だから私だけじゃなくてこの子達にも助けて貰いましょうよ?」
「は?」
『え?』
突然のリアスの言葉にイッセーですら思わず振り向くと、リアスは少女達に説明をする。
「もし良かったらだけど、皆に宿る魔力をイッセーに渡すのよ。
そうすればイッセーは全力の状態になれるわ。
本当は私の力を渡すだけで良いのだけど、どうせならそれに+してイッセーを完全なフルパワーにするには私だけでは足りないのよ」
本当は嘘だが、無力感に苛まれた顔をしていた少女達の心を汲んでの提案に、刹那や木乃香はともかくのどか、ハルナ、夕映は己に魔力があるなぞ思ってもなかったので、半信半疑だった。
「全員で手を繋いでイッセーを囲うのよ。
そして私がアシストするかな皆でイッセーに魔力を渡せる。
そうすれば皆でイッセーの力になれるわ」
「な、なんだかよくわからないけど、何も出来ないよりは良いからやります!」
「同じく。
というか自分にも魔力があったなんて思いませんでした」
「わ、私の力も使ってくださいイッセーさん!」
「………」
あれよあれよと手を繋いだ女子達に囲まれたイッセーに断る暇もなかった。
なのでイッセーは上空で更に力が別次元へと至る白龍皇を睨みながら口を開く。
「………。皆の力を、全部俺に分けてくれ」
本当はリアスの力だけを貰うつもりだったイッセーは、腹を括ったように吠える。
「完全なフルパワー状態に戻れれば――俺は絶対に負けねぇ!!」
その言葉を放つと同時に手を繋いでいた女子達から緩やかに魔力がイッセーの身に流れると同時に傷ついた肉体が癒え始める。
然り気無くその女子達の中にネギが混ざってたのだが、最早突っ込むのも野暮と思って黙って受け入れたイッセーの身体はみるみる癒え――
「くっ……はぁ……はぁ……!」
「お、思っていたより疲れますねこれは……」
「で、でもこれで……」
「素人の私でも感じます……」
「イッセーさんからすんごい力を感じる……!」
「………。イッセー……頑張って」
フルパワー化した赤龍帝が完成する。
「行くぞ赤龍帝……! これがオレの今の全力だ!!」
「……。上等だぜ白龍皇。
俺はもうお前を見くびらないし嘗めもしない。
だからそろそろお互い、望み通りに本気を出して決戦も決戦――――超最終決戦と行こうじゃねぇか……!」
世界を越えた宿命の戦いは最終ラウンドへと移行する。
互いの放つ異次元のパワーの衝突の余波で、リョウメンスクナなる存在が然り気無くニョキニョキと生えて出て来てても本人達には見えてもないのだ。
補足
某ドッカン風紹介
【無神臓の進化】超フルパワー赤龍帝・兵藤一誠
リーダースキル
『異界からの流れ者』または『新チームD×D』カテゴリの気力+5、HPとATKとDEF250%UP
パッシブスキル【無神臓】
一度だけHP100%回復
気力+10、ATK,DEF370%UP、必殺技発動時に更にATK,DEF200%UP
ダメージを60%軽減し、登場から10ターン敵の攻撃をガード。
敵の攻撃を受ける度にATK,DEF10%UP(無限)し、全ステータスデバフ効果を無効。
敵の必殺技を一度受けた場合、二度目以降の必殺技を無効化し、超絶大な威力で反撃する。
チームに『リアス・グレモリー』が居る場合、敵のガードを無効化し、通常攻撃を受ける度に激烈な威力で反撃する
チームに『新チームD×D』カテゴリのキャラが居る場合、アクティブスキルが発動可能。
アクティブスキル【ブーステッド・ドラゴン波】
3ターンatkを大幅上昇させ、敵に壊滅的ダメージを与え、3ターン敵の攻撃を自身に集中させる
……てのは嘘です