色々なIF集   作:超人類DX

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続きっつーか結局オマケっつーか


其々の気持ち

 

 

 隠れ用務員と保険医の二人の学園内での立ち位置は絶妙に微妙であったりする。

 特に『裏側』と呼ばれるであろう界隈においては、持っている力以上にその『中身』があまりにも異質であるが故に、裏の事情を知る多くの魔法先生達は二人を――特に用務員である青年を腫れ物のように見なしていた。

 

 だからこそ、彼が中等部の教室を盛大に破壊するという騒ぎを起こした時は、彼を毛嫌いする者達は鬼の首でも獲ったかの如く彼を学園から追い出すべきだと学園長に嘆願したのだが……。

 

 

『別に用務員を解雇にして欲しいのなら、本人にそう説明して辞めて貰う事は可能じゃぞ? 辞めたその瞬間に儂個人の代理人として再雇用し直すまでじゃし。

それに、別にお主等に無理矢理理解して貰う必要も無いのじゃが、あの二人にはこれまで散々助けられたこともある』

 

 

 当の学園長自身が、あの怪物二人に対して信頼を寄せてしまっている。

 

 

『そんなに不満なら本人に直接話してみたらどうじゃ?』

 

 

 果てにこうまで言われてしまう始末に、多くの者達は『それが出来るのならとっくにやっている』と、特に一度線がキレたらそれこそ野良犬よろしくに誰彼構わず噛みちぎろうとしてくる狂暴性を秘めた用務員に対して苦い顔にさせられる。

 

 

 

『あの二人が常に動くお陰で、『仕事』の殆どが事前に防がれるお陰でお主等の負担が軽減されているということを頭に入れた上で言うべきじゃと個人的には思うがの?』

 

 

 そんな程度にはイッセーとリアスの存在は一般魔法先生界隈から腫れ物扱いをされているのである。

 

 

 

「大分嫌われてるようじゃの。特にイッセー君」

 

「ああ、そっすか」

 

「嫌われる事には大分慣れてしまってますから……」

 

「すまないね。私の方からも言いはするが……」

 

「別に良いですよ。

自分が『例外』やら『害悪』になり得てるって自覚はしてますし」

 

「ましてや私は悪魔ですからね……」

 

 

 本人達は全く気にも止めてないわけだが。

 

 

 

 

 

 深く知れば知るほど。

 もっとずっと近くに居たいと思う程、近づけるだけの『土台』が無い無力感にさいなまれる。

 

 強すぎて出禁キャラ扱いされている用務員への想いを密かに強めていく宮崎のどかは、京都でのイッセーの暴れっぷりを目の当たりにし以降、弟子を自称する刹那や木乃香が自分よりもずっと先にイッセーに近い場所に居ることに少しばかりの劣等感を抱いていた。

 

 

「あ、あのー……新作の漫画なんか描いちゃったりしたんだけど、良ければ感想なんか聞いてみたかったりしたいなー……なんて?」

 

「おう、良いぞ」

 

 

 最近――というか先日の幽霊騒動の件以降、友人の一人であるハルナが完全にこっち側に入ってきた事もある。

 

 

「補習になったら用務員室(ここ)に来れる時間が皆より少なくなるので久し振りに本気で頭を回転させたらとても疲れました。

でもお陰で補習は回避できたので誉めてよしよしさせる権利をプレゼントしちゃいます」

 

「なんじゃい、その俺に一ミリの得にもならないプレゼントは――っておい……」

 

「はぁ……やっぱり座り心地が良いです、イッセーさんのお膝は」

 

 

 一番無さそうな夕映も普通に懐いている。

 こうなってくると、積極性か無い自分はどんどん置いていかれるか追い抜かれてしまうという意味でのどかは密かに焦る訳で。

 

 

「しかしエヴァンジェリンさんって凄く頑丈というか、全然懲りないですよね。

誰に聞いたのかは知りませんけど、イッセーさんに悪戯で幽霊の真似をして脅かそうとしてくるとは……」

 

「ねー? もっとも、イッセーさんに二秒で蹴り飛ばされた挙げ句更にボッコボコに殴られて後半泣いてたけどさー?」

 

「あのさ、やった俺が言う事じゃないかもしれないけど、良い年した野郎が見た目だけは子供でしかも女を殴ってるのを見ておいてそのリアクションはどうなんだよ……? 普通は引いて二度と近寄ろうなんて思わないだろ……」

 

「えー? だって普段のイッセーさんってそんなに短気じゃないってわかってるし」

 

「ああなる場合って大体喧嘩を売られたからだって知ってますし……」

 

「だ、大体私達が何かされるとああなるってわかりますし……」

 

「………。別にキミ等が理由じゃないんだけどな――変な子達だなホント」

 

 

 高すぎる壁があるが、それを恐れずに乗り越えた先に見えるイッセーの本質を知ってしまった者達が少しずつ増えていく事にのどかは若干の複雑さを感じるのである。

 

 

「てーか学祭の準備は大丈夫なのか? 俺が破壊した教室と校舎の一部は学園長とタカミチ先生とリアスちゃんの協力で夜なべで何とか修復は出来たけどよ……」

 

「一応は大丈夫です」

 

「とはいえ結構ギリギリだから皆で昼休みや放課後も使って準備してるけどねー?」

 

「お化け屋敷……だったか? 俺は学生ってのをやったことが無いからわからないけど、定番なんだっけか? あまり良い趣味とはいえ思えないんだが……」

 

「あははは、イッセーさんは幽霊苦手だもんね?」

 

「は? 苦手じゃねーけど? 脊髄反射的にぶちのめしたくなるだけだし」

 

「それなら当日は遊びに来ても良いですよ?」

 

「……………。ひ、暇だったらな……。

ほら、用務員って暇そうで意外と暇ではなかったりするし」

 

 

 何とかしなければ……しかし良い方法が今のところ思い付かない。

 

 幽霊の件でハルナと夕映に弄られて軽くムキになるイッセーを見つめながらのどかは御年頃のように悩むのである。

 

 

 が、そんな悩める女の子は迫る学祭の準備に追われている際、すっかり先日の幽霊騒動における『イッセーの存在』における記憶がさっぱり消されているクラスメート達からもたらされる半分迷信にしか聞こえない話を聞く事でちょっとだけ前進をする事になる……のかもしれない。

 

 

「ねーねー! これ見た!? 麻帆良スポーツ! 世界樹伝説の効果ホントにアリ! だってさ!」

 

 

 幽霊騒動が冷めやらぬ中にもたらされた新たなる話題。

 それはどこぞのトキメキなメモリアル的ゲームの初代にもあった話に酷似しており、なんでも学園内にデカデカと立っている世界樹なる大木の下で告白をすれば結ばれます――的な記事だった。

 

 

「えー……? これ本当かな?」

 

 

 当然多くの生徒達は半信半疑――いや、ほぼ偽に感じていたとだが、偶々聞いていた一人が、二つ上の先輩が告白したら即OKだったという話を聞いた事で、同じように聞いていた何人かの女子達が反応をした。

 

 その何人かの女子の中には当然のどかもおり、なんなら何気なく聞いていたハルナや夕映までピクリと反応していた。

 

 

「絶対に無理でも成功……かー」

 

「試してみたくはある……。

ちょうど例が居るし」

 

「でもイッセーさんだしなぁ……」

 

 

 

 知り合った時点で既に完成されている相手が居る青年の姿を思い浮かべながら、世界樹について盛り上がるクラスメート達の話に耳を傾ける三人。

 のどかに至っては無意識に名前まで出している中、同じように何気なく話を聞いていた刹那と木乃香が話に入ってくる。

 

 

「いままでは何となくで敢えて聞かんかったけど、皆はつまりリアスおねーちゃんしか全く見えとらんイッセー君にそういうことなんやな?」

 

「むぅ、気づけばこんなに師匠を慕う者が増えてしまったか……」

 

「い、いやー……だってこの前の幽霊騒ぎの時にさぁ」

 

「口では厄介者扱いしてくる癖に、本気で追い払うということもしないし、なんなら危ない時は黙って助けてくれるし……」

 

「………」

 

 

 リアスという、正直並び立てる事も出来ないと思わされる程の存在がある上でもそう思ってしまった――見方を変えたらある意味被害者の会とも言えるだろう。

 

 

「そこなんよなー……リアスおねーちゃんやドライグも言っとったけど、イッセー君って一度でも『受け入れた』相手に対しては簡単に自分の命なんて二の次にしてまで尽くす様になるんよ」

 

「それと良くも悪くも一切偏見の目を持たない。

私の身の上話を聞いても『それがなんだ』とばかりに一切変わらなかった。

気を使うでもなく、腫れ物扱いをするでもなく、ただ今までと変わらずに接してくれたし、私の中身についてあれこれ言ってきた者に対して、まあバレバレなんだけど師匠は黙って『対処』してくれたしな……。

正直、世の中探してもあんなタイプの人は居ないと思う」

 

「「「…………」」」

 

 

 照れ混じりの困ったような笑みを浮かべながらイッセーからの『被害』を話す木乃香と刹那に、ハルナ、夕映、のどかの三人は『思っていた通り過ぎる』理由に頬が緩む。

 

 

「リアス先生が羨ましいよねー……」

 

「そのリアス先生は割りと私達がイッセーさんに思っている事に対して否定するどころか肯定しつつ背中まで押してくれます」

 

「リアスおねーちゃんが言うには、イッセーくんの性格を分かった上で恐れたり嫌ったりしないかららしいで?」

 

「つまり大人の女性の余裕という奴でしょう」

 

「じゃあ後はイッセーさん次第……?」

 

「実質的にはな。

せやから正直これ以上は増えてほしゅう無いってのが本音や。

まさか本屋ちゃん達が知らん間にイッセー君と知り合ってたのは誤算やったし」

 

 

 実はこっそりイッセーから塩どころかとうがらし的な対応をされている真名が聞き耳を立てている――という事は気づきつつも何となく気を遣ってスルーしながら、イッセーという割りと難攻不落な青年にどう受け入れられるかについての話し合いをしていく5人は、当初の話題である世界樹の件はどうだろうかという話になる。

 

 

「世界樹の魔力程度じゃあイッセー君は揺らがないと思うで?」

 

「なんなら世界樹の魔力に『適応』してはね除けるでしょうしね」

 

「う、やっぱり……?」

 

「適応という意味はちょっとまだわからないけど、そういう小細工をしたら逆に失望されかねない……?」

 

「や、そうはならんやろうけど、効果については期待できんやろなー」

 

「じゃあやっぱり正攻法……?」

 

 

 世界樹の魔力程度ではイッセーの精神は動かないという、別の意味での信頼があるので、下手な真似は止すべきだという話になりつつあるものの、だからといってこのままという訳にはいかないというのが5人の気持ちである。

 

 

「あ、そういえば去年の学祭の最終日に世界樹の上で、赤い髪の凄い美人な人と同い年くらいの茶髪の男の人が抱き合ってたって噂があったよーな……」

 

「「「「「………………」」」」」

 

 

 というか、既にやられていたらしいので……。

 

 

 

 

 

 結局、良い方法等は特に浮かぶ事も無いまま放課後を向かえたのどか達は、学祭の準備もきちんと行いながらも日課というか最早生活の一部と化している用務員室へと行くと、そこには実に優しげな表情で身を預けてながらうたた寝をしているリアスの頭を撫でていたイッセーが居た。

 

 

「「「「……………」」」」」

 

「? なんだ、揃って変顔なんぞして? 別に入っても良いけど静かにな?」

 

 

 リアスが甘えモードに入っているからなのか、何時もより微量ながらの優しさがあるイッセーにそう言われてしまったのどか達は、心地良さそうに眠るリアスを羨ましいと思いつつ、言われた通り静かに入る。

 

 

「久し振りに見たな。

リアスおねーちゃんのこの姿……」

 

「よく『寧ろ甘えるのは私の方から』とは言っていましたけど……」

 

「頼れるはずだった人達に一瞬で『裏切られた』反動って奴だよ」

 

 

 イッセーの身体に抱きつくように眠るリアスについてそう話すイッセーの目は何時もの懐かない野良犬のようなそれとは正反対に、どこまでも優しげだった。

 

 

「それって、『悪魔』であるリアスおねーちゃんが、一応は『人間』であるイッセーくんと人間の世界で暮らしている理由……?」

 

「一応ってな……まあ、そう思われても仕方ないか。

ああ、お前達はリアスちゃんが生粋の悪魔なのは知ってるだろ?」

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

 イッセーの言葉に頷く5人。

 

 

「悪魔にも親や兄弟――友達は居る。

リアスちゃんも昔はそういった人達に囲まれて普通に悪魔として生きてきた。

でも、ある時を境にその『当たり前』は一瞬で壊された。

ソイツはもっと前に俺の親を俺ごと殺そうとしたある男だった……」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「理由はくだらねぇ理由だったんだろうし、見ての通り俺は生き残ってしまった。

とにかくその男は俺にとっちゃあクソろくでもない野郎でな。

多分分類上は人間なんだが、あろうことかそのクソ野郎は悪魔の社会に溶け込みやがった。

そしてこの子を――リアスを邪魔者のように扱い、この子の親兄弟から仲間に至るまでを『懐柔』し、追い出しやがった」

 

 

 

 空いている手を固く握り締めながら、過去の一部を語るイッセーに、全員が聞き入る。

 

 

 

「この子は所謂悪魔としては『純血』でね。

純血の数は多くないという理由で………言葉は悪いがどこぞの純血の男悪魔に宛がって産む機械にさせられかけていた。

それを嫌って人間界に逃げた所に、クソ野郎に復讐しようと力を蓄えていた俺と出会した」

 

「そんな事があったんや……」

 

「それが二人の出会いなんですね?」

 

「ああ……追われてボロボロで、目立たないようにこの綺麗な赤い髪を切り落としていたリアスが追い込まれていたのを見た俺は………まあ、今にして思えば完全に下心しかないんだが、割って入って助けたんだよ」

 

「で、出会い方まで劇的なんだね」

 

「か、勝てる見込みがますます遠退く気分……」

 

「そ、それでどうなったんですか?」

 

 

 気づけば全員がイッセーとリアスの出会いについて興味津々といった顔をするのを、イッセーは苦笑いをしながら口を開く。

 

 

 

「最初は大変だったなぁ。

純血種の悪魔を殺しちまったもんだから、悪魔側から指名手配されて毎日命狙われるし、戸籍も金も全然ねーから塹壕みたいな穴倉に潜んで暮らしたり……。

まあ、辛いと思った事なんてひとつもなかったけどな?」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 

 ニッと初めてかもしれない『子供じみた笑顔』を見せるイッセーに、またしても心が惹かれる5人。

 

 

(あ、あんな笑い方するイッセーくん初めてや……)

 

(おっふ……イッセー師匠……)

 

(ふ、普段は仏頂面なせいか反則レベルだよこんなの……)

 

(む……む……困った……非常に困ったことに……)

 

(うぅ……どっちかというと今のイッセーさんが本当のイッセーさんなんだよね……)

 

 

 5人の思春期女子を普通に拗らせている自覚は残念ながら無いイッセーは、引き続きリアスの頭を撫でている。

 

 

「親を殺したあのクソ野郎を殺す事しか頭に無かった俺に、違う生き方を教えてくれたのはリアスだった。

同じ『傷』を持った者同士の傷の舐め合い――かもしれないし、そんな傷を負ったこの子の心の隙間に入り込んだ卑怯もんとも言えるだろうよ。

だって考えてもみろよ? 俺みてーな住所不定の社会不適者が、この子みたいな悪魔の社会でも貴族階級で兄貴が魔王の一人っつースーパーお嬢様に本来なら近寄ることなんて出来やしないんだぜ?」

 

(それは多分違うと思うでイッセーくん……)

 

(普通は付け入ったとしても、リアス先生の為だけに全てを敵に回そうとはしませんよ……)

 

(ぐぅ……ますますの強敵っぷりだわ)

 

 

 

 あくまでも己を卑下する言い方をするイッセーに、木乃香達は内心絶対に違うとリアスの気持ちを察する。

 

 

 

「でもこんな俺をリアスは受け入れてくれた。

だから俺はリアスが大好きだし、絶対に裏切らない。

裏切るくらいなら死んだ方がマシだ」

 

「「「「「……………」」」」」

 

 

 

 あまりにも強すぎる繋がりにのどか達は折れそうになりながらも、その繋がりを羨ましく感じるし、皮肉な事にますます惹かれる。

 

 

「って、何をベラベラと語っちまってんだか俺は……。

はぁ、やっぱリアスちゃんの事になるとつい口が軽くなっちまうぜ……」

 

「んん……いっせー……?」

 

「っとと、ごめんごめん、起こしちゃったな。

この子達が来たからさ……」

 

「んぅ……? ああ、このか達ね……? いま起きるわ……」

 

 

 大切な人の為に命を張り、それが間違いであろうとも世界そのものに喧嘩を吹っ掛けられる程の青年に。

 

 

「はぁ……ごめんなさいね? ちょっとお仕事が立て込んでいて眠くなっちゃって……」

 

「別にええよ。

ただ、やっぱしリアスおねーちゃんが羨ましーなーって思っただけや」

 

「師匠に愛されてるんだなー……と」

 

「ただ者じゃないとは思ってましたけど、リアス先生も大分苦労されてたんですね……」

 

「? もしかしてイッセーから私について聞いたの? あははは、今となっては昔の事だし、寧ろあんな結果になって良かったというか、菓子折りでも渡しながらあの男には感謝してあげても良いくらいよ」

 

「それはやっぱりイッセーさんと会えたから……ですか?」

 

「ええ。

どうせイッセーの事だから私との出会いに対して下心があったから所詮あの男と変わらないなんて卑下してたんでしょうけど、私はそうは思ってないし、今が一番幸せよ」

 

「つ、強すぎる。

流石大人の余裕って奴……」

 

 

 そして、どこまでも青年と肩を並べて歩める赤き髪の悪魔の女性に。

 

 

 

「去年世界樹で師匠と先生が抱き合ってたという噂が出たのですけど……」

 

「え? え、ええ……良い年して世界樹の恋愛ジンクスにはしゃいで試したのよ。

考えてみたら別に告白しようとしまいと関係は変わらないから意味無いわよね?」

 

「や、やっぱり……良いなぁ」

 

「んー……だったら貴女達もイッセーと世界樹の下で抱き合えば良いんじゃない?」

 

「えっ!? い、いやいやいや! 流石に今の話を聞いてからは無理だって!」

 

「えー……? 私は全然構わないわよ? いっそ一回くらいキスでもすれば――」

 

「き、キスぅ!?」

 

「あ、でも一度でもイッセーとしちゃったら多分色々な意味で抜け出せなくなるかも。

ほら、イッセーって凄いから……」

 

 

 思春期女子達の苦悩はまだ続く。

 

 

終わり

 

 

 

オマケ

 

その頃の白龍皇と愉快な仲間達。

 

 

 

 世界を越えた宿敵との邂逅と戦闘は、フェイトとしての肉体強度が本来のヴァーリとしての肉体強度より遥かに劣るが故に、100%の実力を引き出せなかったが故の完全敗北だった。

 

 身体の半分が消し飛ばされるという再起不能レベルの重症を負ったフェイト(以後ヴァーリ)は、治療と死にかけたことによるヴァーリとしての『悪魔の血』が覚醒した影響――――なにより愛してやまないラーメンのお陰で奇跡の復活を遂げた。

 

 

 

『Divide!』

 

「お前達の治療とラーメンお陰でなんとか復活できたぞ」

 

 

 背に白銀の光翼を広げ、試運転を完了させたヴァーリは、自身を助けてくれた気の良い奴ら――犬上小太郎、月詠、天ヶ崎千草の三人に改めて頭を下げながらお礼を言う。

 

 人からなにかをされたらきちんとお礼をしろ――という義父であったアザゼルからの教育の賜物だろう。

 

 

「身体の半分が吹っ飛んだというのに、こんな短期間で完全に再生するなんて、流石やなぁヴァーリ師匠は」

 

「しかも前より確実に強うなっとりますなぁ?」

 

 

 ヴァーリを師と慕う小太郎や、最近完全にお気に認定している月詠の言うとおり、今のヴァーリの姿は生まれ変わった姿であるフェイトではなく、力を完全解放した際に変化するヴァーリの姿であり、以前よりもより長くヴァーリとしての姿で居られる事にただただ感心していた。

 

 

 

「ああ、それに――正直喜んで良いのかは微妙だが、ヴァーリとしての悪魔の力が前より更に馴染んでいる。

俺にとっての師の一人であったコカビエルと『同じタイプの異常』がそうさせたのか、コカビエルも死の縁から復活するとより強くなっていたからな」

 

「まるでサ○ヤ人みたいやな」

 

「うふふふ……これでますます楽しめますわぁ。

既に楽しみ過ぎて実は身体が熱くて下の方も……うふふふフフ♪」

「? 下? 下って何の事だ?」

 

「っ……!? ふ、ふふふ……そういうお子様な面もたまらんわぁ。

知りたいのならお部屋で早速見せて――あいたっ!?」

 

 

 師のせいで戦闘バカ過ぎて変に知識が疎いヴァーリと、普通に子供な小太郎が揃って仲良く首を傾げていると、更にゾクゾクと身を震わせながら頬を紅潮させた月詠が、割りと凄い力でヴァーリを薄暗いお部屋に連れ込もうとした所で、顔を真っ赤にした千草が月詠の頭をハリセンでひっぱたく。

 

 

「月詠! 何をしようとしとんのや!」

 

「突っ込みが激しいなぁ千草はんは。

何って、間違いなく未経験なヴァーリはんを大人にする儀式的なものをするだけやないですかぁ?」

 

「あかんわ!」

 

 

 顔を真っ赤にして怒る千草とは正反対にヘラヘラする月詠に、ヴァーリと小太郎は互いに視線を合わせながらはてと首を傾げている。

 

 

「女同士の話はたまによくわからないな……」

 

「俺もや師匠。

それより例の赤龍帝は麻帆良って学校に居るみたいやけど……」

 

「ああ、情報によればその学校でサーゼクスの妹は保険医で、兵藤一誠は用務員として働いているらしいが……」

 

「京都で会ったあのネギっちゅー奴もや。

どうする師匠? 近々祭があるらしいから、それに乗じて乗り込んでリベンジするか?」

 

 

 ギャーギャーと千草と月詠が言い合いをしている声をBGMに、赤龍帝へのリベンジについて話すヴァーリと小太郎。

 

 

「正直、今のオレではまだ勝てない。

そうでなくても向こうは下手をすれば今のオレ以上の実力を持つサーゼクスの妹――リアス・グレモリーも居るとなるとまた同じように返り討ちにされるのが関の山だろうな」

 

「む……ヴァーリ師匠がそない言うなんて、やっぱごっついんやな赤龍帝は」

 

「ああ……せめてこちらもオレ並の力を持つ相棒が居れば奴等と同じ土俵に上がれるのだがな……」

 

 

 いくら復帰して力を馴染ませ、以前よりも長くフルパワーを解放可能となったとはいえ、相手は自分と同等以上の仲間が居る。

 だからこそリベンジをしたいという気持ちを押さえ込み、ここは今より更に本来の力を取り戻し、更に先へと到達する事を優先することを選ぶと、基本脳筋系である小太郎もそれに同意する。

 

 

「とにかくヴァーリにはまだ早い!!」

 

「そんなにヴァーリはんの初めてを取られとう無いんやったら、半分こにすればええでしょう?」

 

「は、はんぶんこ!? だ、大体お前は男にそんな興味無かったやろが!?」

 

「そう思ってたんですけどぉ~

なんかヴァーリはんって世の中の男共とは違うし~?」

 

「ダメったらダメや!」

 

「もー、千草はんも結構お堅いんやなぁ?」

 

 

 そんなヴァーリ達の真面目な会議とは反対に、月詠と千草は女子高生的なノリの下ネタで勝手に盛り上がっている。

 

 

「なあなあヴァーリはんは女性経験はあるんですかぁ?」

 

「は? 経験? 経験というのは具体的にどういう……?」

 

「そらもう子作りセ―――」

 

「アカーン!!!」

 

 変に天然で、義父や師の一人からの教育のせいで、女性に対して妙にズレた接し方しかしないヴァーリが毒されてたまるかと、どこかのお祭り男の失敗するフラグのフレーズを叫んで阻止せんとする千草は、必死になりすぎてついヴァーリの姿であるフェイトの顔面を胸で圧迫するように抱き締めながら月詠を睨む。

 

 

「それ以上言うたらホンマに許さんえ!」

 

「でも流石にそういう知識くらいは覚えさせた方がええよーな……」

 

「お前の知識は歪んでてヴァーリの教育に良くないんや!!」

 

「おいチグサ? 前が見えんし苦しいんだが……」

 

 

 こうして本来の時空軸とは異なり、引き続きチームとして活動するフェイト(ヴァーリ)と愉快なお仲間達の成長は続く……かもしれない。

 

 

「はあ、はぁ……悪かったなヴァーリ。

つい必死になって……」

 

「ああ、よくはわからないが……」

 

「な、なんや……?」

 

「いや、さっきお前に視界を塞がれた時に思ったんだが……。

チグサは結構良い匂いがするんだなと……」

 

「………………へ?」

 

「なんだか安心するというか……うむ、オレは好きだぞ、お前の匂い」

 

「……………………………………………………………はぇ」

 

「あ、千草はんが倒れた」

 

「おおっ! 言葉だけで倒すなんて流石師匠や!!」

 

 

 約1名が天然に振り回されながら。

 

 

「じゃあウチの匂いはどうですかヴァーリはん~? 千草はんのようにぎゅってしますえ~?」

 

「? ツクヨミは…………ああ、ツクヨミも結構好きだな」

 

「…………あ、そうですか」

 

「? どうした?」

 

「や……千草はんの気持ちがちょっとわかったなぁと」

 

「??? 嘘じゃないぞ? 何だかんだでお前にも散々助けられてきたからな。気も合うし」

 

「……。そろそろ本気で部屋に連れ込みたくなってきたわぁ」

 

 

 

 最近、その天然にやられかけてる1名も含め。

 

 

「せやったらオレはどうや!!? オレだけ仲間はずれは嫌や!」

 

「コタロウも大事な仲間だからな。

オレは好きだぞ?」

 

「お、おぉふ……」

 

 

 頂点を目指して駆け上がるのだ。

 

 

終わり

 

 

 




補足・簡易人物紹介

フェイト・アーウェルンクス(ヴァーリ・ルシファー)


 NIGHTMAREモード世界に最後まで抗い続けたチームの生き残りがフェイトとしてこの世界にて甦った白龍皇。

 フェイトとしての魔法知識を蓄えたり、出会した相手をぶっ飛ばして孤高の子供と化していたのだが、ひょんな事から金で雇われた千草と同じく雇われた月詠と小太郎との出会いが彼を再び『白龍皇』としての宿命を背負わせる。

 現在の彼はヴァーリとしての肉体ではないが故に全体の40%程しかフルパワーを解放できず、解放の際はヴァーリとしての肉体に変化する。

基本的にラーメン不足になると、どこかの寿司を愛する者のように暴走するらしく、そしてド天然過ぎてそれに嵌まる女性もちらほら。
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