色々なIF集   作:超人類DX

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恐らくきっと続き。

異次元に精神がブレないのでフラグが……


南雲ハジメは『異常』こそ『正常』

 

 

 本当のオタクの人達に対して失礼になると思っている訳で、僕は自身の趣味をオタクとは思わない。

 

 徹夜でしょっちゅうマコトと親に怒られないかとハラハラしながらゲームをしたりラノベを読んだりするのは本当にただの趣味なんだ。

 

 世間からすればそれらも引っくるめて『オタク』の括りにされてしまうのであろう。

 事実学校なんかでは僕の趣味については鼻で笑われてバカにされがちだ。

 

 けれど、それでも僕は自分のことをオタクとは思わない。

 

 本当の――本物のオタクの人達にすれば僕の趣味なんて所謂『いっちょ噛み』に過ぎないのだからね。

 

 

 

『オレ――じゃなかった、私が飲み物買ってる間に随分と面白い事してるじゃないの?』

 

『げっ!? ひょ、兵藤……!?』

 

『お、お前、職員室に行ってたんじゃ……』

 

 

 

 とまあ変な前置きはここまでにして、他称『オタク野郎』こと僕、南雲ハジメには幼馴染が居る。

 男である僕以上に男らしく、小さな頃から僕なんかと一緒に居てくれた大切な幼馴染。

 

 虐められていて、抵抗する事も出来なかった僕の前に立ち、虐めてきた奴等をちぎっては投げまくるパワフルな幼馴染。

 

 誰よりも我が道を行き、自分の決めた道を駆け上がり続ける――――僕にとって誰よりも近いけど遠い幼馴染。

 

 

『誰が吹いた話だそりゃあ? ―――ま、んな事ァどうでも良いな』

 

『うっ!? お、おいやべーって。

兵藤って普段は普通の女口調だけど、ああやって口調が変わったら……』

 

『う、うるせぇ!! こんなチビの男女なんか怖かねー!!!』

 

 

 

 ひ弱で、軟弱だった僕に『誰よりも自由で、誰よりも楽しく、誰よりも狂った生き方』を教えてくれた―――

 

 

『ハジメは優しい奴だからなぁ? 本当ならオメー等なんぞ秒で挽き肉に出来るのに、オメー等が『なんだか少し可哀想にも思えるし……』なんて言って無抵抗だからなぁ?』

 

『や、あのマコト? それは本人達に言わないであげた方が……』

 

『!? (な、なんだ!? な、南雲の野郎! あれだけ殴ってやったのに平気な顔で立ち上がった!?)』

 

『まあ、それがハジメのやり方だってんなら私―――ああ、もう今は良いか――――――オレは否定しねーよ。

だがな……オレァ今、飲み物を買いに行ったら、好物のつぶつぶ白ブドウジュースが売り切れてて、頗る機嫌が悪いんだわ?』

 

 

 世界の何物にも代えがたい―――僕の大好きな人。

 

 

 

『運が悪かったんだよお前等はなァ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 早い話が、『本来ある筈なんて無い出会い』により、南雲ハジメは趣味や趣向こそ『本来』の物語とほぼ変わらないが、その『精神構造』はかなり変質している。

 兵藤マコトという女として生まれ変わったかつての『本来の道筋が歪に逸れてしまった道を走り抜けた元・赤龍帝』との出会いと、彼女が示した『生き方』を知る事で、彼は表面こそ『冴えないオタク趣味少年』としてその日を生きているが、その内面に宿った『精神』はまさに『異質で異常』だった。

 

 その精神は一言で云うならば『マコトという幼馴染が全て』という、頑固な職人親父よりも頑固で強固で――ある意味では度を越えた我が儘さだ。

 

 

「異世界転生ってラノベだけの話だと思ってたけど、まさか本当に体験させられることになるなんて……」

 

「昨日遅くまで一緒になって異世界転生物のアニメを観てたせい……って訳でもねーなこりゃあ」

 

「マコト、口調。

うん、多分寝ぼけてる訳でも夢でもないね。

だってほら、向こうに居る人達の出で立ちがまさにラノベっぽいよ」

 

 

 表面上では、冴えないオタクで、何故か周囲からやっかまれて、たまに暴力まで振るわれる虐められっこ――なのが南雲ハジメだ。

 

 

「ぐぬ……。悪い、でも何時までも慣れないんだよなぁ、女の子口調」

 

「まあ、檜山とかにはバレちゃってるからそこまで気にすることも無いとは思うんだけどさ―――正直言うとあんな奴等にマコトの『素の一部程度』とはいえ、知られてると思うと、闇夜の晩にうっかり暗殺してしまいたくなるというか……」

 

「………。たまにハジメの判断基準がわからなくなるんだけど。

普段はアイツ等に何されてもわざと受けっぱなしなのに」

 

「前にマコトが言ってたでしょ? 『わざわざ飛んで服にくっついた塵を払った後に踏みつけるなんて無駄だ』ってさ。

波風立てない為にもそれを実践しているだけさ」

 

 

 そんな――大好きな幼馴染の為なら文字通り鬼にでも悪魔にでもなれる覚悟を常にガン決めしているハジメは現在、幼馴染であるマコトと共に、謎に古めかしい建物にて、騒然としているクラスメートと教師一人が、ヤバそうな新興宗教の教祖みたいな格好をしている老人を相手にやいのやいのと大騒ぎしている様を、どこか他人事のように眺めながら、先日徹夜で鑑賞した異世界転生物のアニメ的な状況に陥っていた。

 

 クラスメート達(他人)や、社会科教師(担任ではないし、やはり他人)が、それこそ非現実的な状況にあーだのこうだのと騒いでは、怪しい老人に説明を受けている訳だが、なんでもここは「トータス」とかいう世界で、そのトータスなる世界に自分達を呼び出したのはエヒトとかいう神らしい。

 

 

「聞くだけなら普通にヤバいクスリにでも手ェ出してる不審者の戯言だね」

 

「まぁな……って、なんか何時もより毒づきが強くないかハジメ?」

 

「やだなぁ? 別にそんなことはないよマコト?

今日は新作ゲームの発売日で、本当なら今頃とっくに手に入れてマコトと一緒に遊んでたのになぁって思うと、そのエヒトだかなんだかって神を張り倒してやりたいなぁ―――なんて思ってないよ?」

 

 

 建物の外を見せられ、どう見ても日本じゃない景色を前に、異世界であることが現実であることを突き付けられることで唖然とするクラスメート達を他所に、ハジメはここが本当に異世界だろうがなんだろうがどうでも良いし、なんなら新作のゲームがこの先二度とマコトと一緒に遊べない事に、良い笑顔で毒づいている。

 

 

「確かにオレも正直この異世界ってのか? この場所はあんま居心地は良く感じないな」

 

「? どうして?」

 

「なんつーか、人間じゃねぇムカつく気配が感じるっつーの? ある意味懐かしい畜生共の気配がよ……」

 

 

 そう目付きを鋭くしながら山頂にそびえ立つ城から見える景色を最近また『デカくなって邪魔になった』と言っていた胸のせいで上手く腕組みが出来ないでいるマコトの言葉に、ハジメは『そっか……マコト、組むなら胸の前より下で組んだら?』と、然り気無いアドバイスを送っておく。

 

 

 

「昔は普通に腕組み出来たのに……」

 

「ま、まあまあ、落ち込まないでよマコト? 腕組みできなくてもマコトはマコトなんだからさ? (………………む、今何人かの男子がマコトの胸を見てたけど、流石にこの状況でソイツ等の目を潰すのはよしたほうが良いか……?)」

 

 

 クラスメートの男子達の一部視線がマコトの背丈に反して成長し続ける胸に向けられている事に気付き、普通に物騒な事を考えながら。

 

 

 

「…………………」

 

 

 そして、そんなハジメに対して実はずーーーーーっと見ていた女子が居ることなどには気付かず。

 

 

 

 

 

 マコトに関してに限り、普段の性格が豹変して『狂犬』のような物騒さと漆黒の意思を搭載するハジメが、他の野郎共に対してプチ殺意を抱いている間に、何故かいつの間にか異世界の危機の為に戦う事にされていた。

 クラスの中におけるカースト最上位である天之河光輝達が、やると言い出したからに他ならない。

 勿論、殆ど流れ弾同然に異世界に飛ばされてしまった社会科教師の畑山愛子は反対しようとはするのだが、本人達がやる気になってしまったので、次第に反対することも出来なかった。

 

 

「一方的に呼び出しておいて、帰れる方法は神にしかわからないって、随分と勝手な話だよ。

しかも結局魔人族ってのと戦争させられることになったし……」

 

「目の前に居たら是非ぶち殺してやりたいもんだぜ、そのエヒトってドグサレはな……」

 

 

 勝手に一致団結をしているクラスメート達に対して、どこか冷めた目で他人事のように見やるハジメとマコトもまた、この異世界がどういう情勢なのかも解らない以上は、ある程度彼等の行動に合わせる事に決め、王国の騎士団長らしき男性の先導の下、唐突に始まった異世界生活に馴染む為のお勉強を開始するのであった。

 

 

 

「へー、ステータスプレートだって」

 

「し、新作ゲームの件は根に持つにしても、ちょっとワクワクしてきたよマコト……!」

 

「だよな。てか、本当に異世界だなこりゃあ」

 

 

 まず全員に渡されたのが、ステータス・プレートなるカード的なそれであり、文字通り登録した者の『ステータス』が名前やら天職などやらが表記されるのだ。

 ここにきて、RPGゲームのお約束的モノを前に、ゲーマーでもあるハジメとマコトはそれまでのイライラを一時的に忘れて、ワクワクしながら騎士団長のメルドに言われた通り、自身の血を与えてプレートの登録をしてみる。

 

 

 

「天之河光輝、天職は勇者です。

表記されているステータスは全て100で、技能とか沢山あります」

 

『おおっ!』

 

 

 カースト最上位所属の人達が次々と初期ステータス当たりを引き出したことで周りを騒がせている隅っこで、ハジメとマコトはお互いのステータスプレートの見せっこをしている。

 

 

 

「うーん……?」

 

「これは……どう思う?」

 

「多分、色々と間違ってるとは思うよ? だってさ――」

 

 

兵藤命 女 16歳

 

 天職・【Unknown】

 

筋力・000000000

 

体力・000000000

 

耐性・000000000

 

敏捷・000000000

 

魔力・0

 

魔耐・000000000

 

 

技能【言語無視】【並行進化】【破壊】【Unknown】

以下全てUnknown表記

 

 

「マコトの能力値がオール0っておかしいよ……。というか、0なのに桁が多く表記されてるのも変だし、そもそも天職すら読めないし」

 

「え、やっぱりそうなのか? でもハジメも――」

 

 

 南雲ハジメ 男 16歳

 

 天職・錬成師

 

筋力・00000010

 

体力・00000010

 

耐性・00000010

 

敏捷・00000010

 

魔力・00000010

 

魔耐・00000010

 

技能【錬成】【言語無視】【一途】【Unknown】

以下、残りの技能全て【Unknown】

 

 

「天職はちゃんと錬成師ってのが読めるけど、似たり寄ったりだぞ」

 

「そうなんだよね。

しかもさ、マコトの『アレ』もそうだけど、僕もある『アレ』の方は全く書かれてないよ」

 

「技能とは違うからとかじゃないのか? それに……オレはもう『アレ』では無くなっちまってるからな……」

 

 

 お互いのプレートを見せ合いつつ、ハジメに触れられた箇所に対して遠くを見るような――そしてどこか『寂しそう』な表情を浮かべるマコト。

 

 

「ま、今はハジメが『こっちに来てくれた』からな。

『アイツ』にはちと悪いが、独りじゃないよ」

 

「マコト……うん、そうだ。

僕は絶対にマコトを独りにはしないよ」

 

 

 お互いがお互いにしか解らない笑みを浮かべ合うマコトとハジメ。

 そんな光景を実は物陰からハンカチでも噛んでそうな顔で睨んでいるとあるクラスメートが居たりするのだが、二人はそれに気付くこと無くお互いのプレートを返そうとしたその時だった。

 

 

「よぉ、南雲ォ? お前のプレート見せてみろよ?」

 

 

 背後からどう聞いても好意的には聞こえない声と共にハジメのプレートが背後から奪われる。

 奪った者の正体は、クラスメートの中でもハジメにしつこくちょっかいをかけ、ヤンキー崩れとマコトに揶揄されている檜山であった。

 

 どうやらちょうど良い感じに小柄なマコトが檜山の方からは死角になっていて見えなかったらしく、ハジメが一人だと勘違いして絡みに来たらしい。

 

 

「あ、それ――」

 

「うわっ!? なんだこのステータス!? オール0って最早カス以下じゃねーかっ!? ヒャハハ! お前真っ先に死ぬな!」

 

 

 と、ハジメのプレートだと勘違いし、そのステータスが全部0であると知った途端、周りに聞こえるように嘲笑う。

 

 

「しかも天職がUnknownで? あれ? 0は0だけどやたら桁が多いのはなんでだ? なんだこりゃ――――え、ひょ、兵藤……命……?」

 

 

 が、その天職……そしてネームを見た瞬間、檜山と檜山と一緒になって嘲笑っていた取り巻きの顔が青ざめる。

 そう、名前が――別の場所に居るとてっきり思っていた悪夢みたいな女子の名前だったのだから。

 

 

「それ、マコトのだから……」

 

「おうおう半チクコゾー? 朝っぱらからご機嫌だなオイ?」

 

 

 そして恐る恐るハジメの丁度影になっていた箇所を見てみれば、小柄だけど無駄に戦闘力を両胸に搭載した女子がチンピラ丸出しな口調で両指を鳴らしていた。

 

 

「っ!?」

 

「や、やべーよ……ひょ、兵藤居るじゃねーか……!?」

 

「だ、だからやめとけって言ったのに……! お、おい兵藤! お、俺はちゃんと止めたからなっ!?」

 

 

 黙っていればそこそこ美少女ではあるマコトに、檜山達の顔は青ざめ、一人に至っては普通に檜山を売るような事を言い出す。

 

 何せ、このマコトに檜山達は一度ボコボコにされたあげく、下水道に投げ捨てられたのだから。

 

 

「ば、ばか野郎! よく見ろ! 表記は変だがコイツのステータスはオール0! つまりここじゃ雑魚なんだよ! 今なら俺達の方が逆にヤれる!」

 

「! そ、そうだよな!?」

「は、はは……そうだ、こんな男女なんか怖くねぇ!」

 

 

 だというのに、余程オール0のステータスにすがりたいのか、檜山達はこれまでの恨みとばかりにマコトに対して色々と言ってやろうとしたのだが。

 

 

「三秒くれてやるから、そのプレートをさっさと返してオレとハジメから半径10メートルは近づくなよ? この地面みてーにテメー等の頭蓋骨を踏み潰されたくねーならな」

 

「「「」」」

 

 

 その勢いは、振り上げた足で軽く地面を踏み砕き、広範囲に渡ってヒビを入れるマコトによって一瞬で壊された。

 

 

「そこ!! 何をしている!?」

 

 

 軽い地震すら発生させる脚力に、騒ぎに気付いたメルドや教師の畑山愛子によってその場はなんとか収まったが、檜山達は完全にマコトに怯えてしまい、言われた通り逃げるようにハジメから離れていくのだった。

 

 

「いきなりクラスメートが魚の餌にならなくて良かったと思うべきなのかな? けどやっぱりマコトの数値は絶対に嘘だよ」

 

「ある程度鍛えりゃあこれくらい出来るし、ハジメだってやれるだろ?」

 

「……そこに至るまで、ドラゴンボールみたいな鬼畜修行をやらされて何度も死にかけはしたっけ。

まあ、全然後悔なんてしちゃいないんだけどね?」

 

 

 こうして昔と変わらず、番犬よろしくにハジメを守ろうとするマコトは強大な抑止力としても健在であった。

 

 

 

 

 軽い騒ぎを起こして注意をされてしまったハジメとマコト――――――を引き続き本人達には気付かれる事無くハンカチを噛んでそうな顔で睨み倒している女子生徒が居る。

 

 

「また、兵藤さんが南雲君とあんな近くに……!」

 

 

 彼女の名前は白崎香織、容姿は前に一度だけマコトが『ありゃすげー』と言わしめる美少女であり、学校内においても女神的な扱いをされているのだが、そんな美少女の視線の先には常に南雲ハジメ―――そしてそのハジメの隣を我が者顔で占拠し続ける兵藤マコトに向けられている。

 

 

 

 白崎香織は兵藤マコトを早い話が妬んでいる。

 

 理由は単純に、白崎香織はとある件以降、南雲ハジメに対して引くレベルの好意を抱いているからである。

 そうなれば当然、ハジメの幼馴染で、家も隣同士で互いの親同士もほぼ公認同然となっている仲であるマコトが普通に言って邪魔なのだ。

 

 

「ぐ、ぐぬぬ……」

 

 

 現実的にそんな悔し声は出ない筈だが、ハジメと何やら楽しそうに話をしているマコトを見ていると、自然とそんな声が出てしまう香織。

 そんな香織に気付いたのか、彼女の親友である女子生徒が視線だけで人でも殺しかねない目をしていた香織に声をかける。

 

 

「香織、アナタまた……」

 

 

 彼女もマコトが欲しがる身長も搭載せし、凛としたタイプの美少女であるのだが、その表情と雰囲気からはどこか振り回されて苦労するタイプの――言うなれば貧乏くじを引いてしまうような苦労人の気配が漂っていた。

 

 

 

「だって、兵藤さんがあんなに気安く南雲君に……」

 

 

 ある一件以降、南雲ハジメに対してちょっと強すぎる好意を抱いた親友に付き合わされる形で彼女――八重樫雫も彼と親友の嫉妬対象たる兵藤マコトを知ることになるのだが、正直雫の見立てでは香織に入り込む余地は完全に無い気がしてならないと思っていた。

 

 

(見ていた限り、アレはどちらかと言えば南雲君が兵藤さんに対して……って気がするのよね)

 

 

 普通に正解を引いている雫はため息混じりにじーっと二人のやり取りをぐぬぬと見ている親友を見ていると、何を思ったのか、突然香織が閃いたとばかりに呟いた。

 

 

「確かこの世界の宿屋さんに全員で泊まるらしいから、今晩南雲君の居るお部屋に行ってみよう……」

 

「あの、香織……流石にそれは……」

 

「勿論雫ちゃんも一緒に来てくれるよねっ!?」

 

「えっ!? い、いえ私は――」

 

「お願いっ!! 頼れるのは雫ちゃんだけなの! 私一人だと緊張しちゃってちゃんと南雲君とお話できないから!」

 

「…………」

 

 

 他のクラスメート達に聞かれたら、即刻ハジメにヘイトが向けられる案件だという自覚も無く、また何故ハジメがクラスでマコト以外からハブられ気味であるのかも知らずに言っている香織からの懇願に当初は、周りに知られた場合の面倒さもあってやめるように言うが、結局押しに弱い雫は頷いてしまう。

 

 

 もっとも、その決断によって手にしたチケットが、非情な『現実』を突き付けられる為の特急チケットだったのだが……。

 

 

 

 

「??? 何か?」

 

「「……………」」

 

 

 早速作戦会議(早い話が寝静まるタイミングでドストレートにハジメが寝てる部屋を訪ねる)通りに男子側のエリアであるハジメの部屋へとやって来た香織と雫なのだが、意を決してノックした扉から出てきたのはハジメ―――ではなく、小柄な癖に胸はかなり大きい茶髪の女子だった。

 

 

「……………………」

 

「…………………」

 

「???」

 

 

 

 一瞬部屋を間違えたのか? と香織と雫は無言で今居るエリアが男子達のエリアであることを確認しつつ、中学生辺りから親やハジメに言われて渋々伸ばし、リスの尻尾を思わせるポニーテールである髪を降ろし、Tシャツとハーフパンツの状態で首を傾げている兵藤マコトと目が合う。

 

 

 

「こ、こんばんわ……」

 

「はぁ……」

 

「あの、ここって男子が泊まるエリア――というか南雲君が泊まっているお部屋で間違いないわよね?」

 

「? あぁ、そりゃあ間違いねー―――んんっ!! ま、間違いないわよ? おほほほほ」

 

 

 基本的にキレた時や自分とハジメの両親――そしてハジメと二人の時以外は練習した女子口調で話すマコトだったが、気を抜いてうっかり素の口調になりかけるのを慌てて訂正しながら、しょっぱい顔をしている雫の質問に頷く。

 

 

「ど、どうして南雲君のお部屋に兵藤さんが居るのかな?かな?」

 

 

 当然、香織はこれでもかお引き吊った笑顔をなんとか作りながら、何故か某『セミのなく頃に』の登場人物の少女を彷彿とさせるしゃべり方でマコトに質問をすると、マコトは「あー……」と何とも言えない声を出す。

 

 

「えーっと、最初は私も自分の部屋に居たのだけど―――」

 

 

 逆にマコトも何でこの美少女コンビがハジメの部屋に来たんだと疑問に思いつつも、ここに居る経緯の説明をしようとした時だった。

 

 

「ねー、まだマコト~?」

 

「っ!?」

 

「………」

 

 

 部屋の奥から聞こえるハジメの声に、香織はこれでもかと反応し、雫は内心『普段の南雲君とは様子が違う声だわ……』と思う。

 

 

「なんかハジメに用がある子が来たんだけど」

 

「えー? なにそれー? 誰がさー?」

 

「ええと、白崎さんと、八重樫さん―――だよね?」

 

「「………」」

 

 

 

 なんだか、ダラダラしてる彼氏の代わりに訪ね人の対応をさせられている彼女のようだわ………と、思ってしまった雫と、引き続き笑顔だけど完全に口の端がヒクヒクしている香織が来たと返すマコトに対してハジメは―――

 

 

「は? ……………なんで?」

 

「知らねー――じゃなくて知らないわよ。

用があるから来たんじゃないのかしら?」

 

「用ってなにさ?」

 

「それは自分で聞きなさい」

 

「はぁ……折角の幸せの時間だったのに……なんで邪魔されなくちゃ……」

 

 

 

 露骨に文句タラタラな声を出し、これまた露骨に嫌そうな顔をしながら漸く奥から姿を現す。

 

 

「………………………………。なにか?」

 

「「…………」」

 

 

 香織と雫の姿を視界に捉えた事で冗談ではないことを知ったハジメだが、その顔も声も明らかに『歓迎しません』がありありと出たものであり、正直言えば揃って異性からそんな態度を露骨にされる経験の無い香織と雫は普通にショックだった。

 

 

 

「あ、あの……その……」

 

「こ、こんばんは南雲君。

実は少し南雲君とお話がしたいと思って香織と一緒に来たのだけど、まさか兵藤さんが出てくるとは思わなくて……」

 

 

 『さっさと消えろ』と顔に書かれまくっているハジメのツンな態度にめげずに、本来の趣旨を香織の代わりに説明する雫。

 するとそれを聞いた瞬間のハジメは―――

 

 

「………………………」

 

((す、スゴく嫌そう……))

 

 

 某ひとつなぎの大秘宝漫画のそれを彷彿とさせる『嫌そうな顔』をするハジメに、更なるショックを受ける香織と雫。

 

 

 

「あの、何かしらの勧誘ならお断りさせて頂くので帰って貰えますかね?」

 

「か、勧誘なんてしないよ! た、ただ私は南雲君とお話が……」

 

「少しで良いから香織と話をしてあげて欲しいのよ……」

 

「いや、明日も早いですし、そもそも忙しいので……」

 

「い、忙しいって……そもそも何故兵藤さんがアナタの部屋に居るのよ?」

 

「僕が無理言って来て貰っただけですが、なにか?」

 

「ぐ、ぐぬぬぬー」

 

「お、おぉ……? 何で睨まれるんだ……?」

 

 

 ハジメの言葉を聞いた途端、香織がぐぬぬと言いながらマコトを睨み、それに困惑するマコトは思わず素の口調に戻る。

 

 

「………。もう良いですか? こんな場面誰かに見られたら、面倒で鬱陶しい事にしかならないので……」

 

「こんな夜更けの男子の部屋に女子が居る方が騒ぎになるわよ?」

 

「マコトに関しては勝手に騒がせてれば良いので……」

 

「そ、そもそもどうして兵藤さんを呼んだの?」

 

 

 意地でも追い返そうとするハジメと、意固地になって押し掛けようとする香織と雫――の間に挟まれがちなマコトという妙な構図のまま問答が繰り返されている内に香織がついに聞いてしまう。

 

 

「なんでって、ただ一緒に寝るだけですけど?」

 

「「………」」

 

 

 そんな質問にハジメは当たり前のように答えると、今度こそ香織は真っ白になって固まってしまった。

 

 

「あ、アナタ達……ま、まさかそんな関係なの?」

 

「あーいやそうではな―――」

 

「だとしたらアナタになんの関係があるのでしょうか?」

 

「………」

 

 

 真っ白な灰となり、口から人魂が半分抜けている香織の肩を持つつもりでの発言をする雫だが、それでもハジメはだからなんだとばかりに堂々と返す。

 

 

「ま、まだ学生なのよ私達は?」

 

「て、言われても……。

幼稚園くらいからやってやってたし……」

 

「はぁ!?」

 

「」

 

 

 何か誤解がある気がしてならないが、マコトの発言に今度こそ雫も驚愕してしまうし、香織に至っては天に召されかけていた。

 

 

「もう良いですよね? ほらマコト、早く戻って続きしてよ?」

「お前な――オレじゃなくて普通の女に頼めよな?」

 

「それこそあり得ないね」

 

 

 『お前はもう、死んでいる』状態の香織と、顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせている雫を然り気無く部屋の外に押し退け、さっさと扉を閉めて鍵まで閉めたハジメは微妙な顔をしているマコトの手を引き、ベッドに連れていくと、例の続きというものを再開する。

 

 

「ふー……マコトにこうして貰うのが一番癒される……ふふふ」

 

「オレの何が良いんだかなぁ。

それこそ今の女の子達の方が背丈的にも丁度――」

 

「やだね。

マコト以外の女子連中なんて全部そこら辺の『案山子』にしか見えないし。

それに、僕はマコトの匂いやこの暖かさが大好きなんだ……」

 

「はぁ、変なとこでガキのまんまだなオメーは? ったくよぉ」

「マコトと一緒ならずっとガキ良いよ僕は……へへ」

 

「っ……おいこら、くすぐってぇっつーの」

 

 

 泣いていたハジメを落ち着かせるつもりで、やってみた結果わ今になっても寧ろせがまれてしまう『マコト抱き枕』。

 それがハジメに呼ばれた理由なのだった。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 ただ彼女との未来の為に。

 

 その為だけにその精神を燃やすハジメの精神に揺れなぞない。

 

 

 

「あー、なんかよハジメ? この状態をユエとかシアもやりたいらしいんだけど……」

 

「僕が嫌だ」

 

「「がーん!」」

 

 

 どんな美少女からのアプローチだろうがブレず。

 

 

 

「キャストオフ」

 

『CAST OFF』

『CHANGE BEETLE!』

 

 

 

 自由の邪魔となるのならば、どんな手を使っても叩き潰し。

 

 

『ONE』『TWO』『THREE』

 

「ライダー…キック」

 

『RIDER_KICK』

 

「ハァッ!!」

 

 

 全ては先に進み続ける幼馴染の背中に追い付く為に……。

 

 

「ハイパーキャストオフ……!」

 

『HYPER CAST OFF』

『CHANGE HYPER BEETLE』

 

 

 ハジメは走り続けるのだ。

 

 

【KABUTO THEBEE DRAKE SASWORD POWER!】

 

「準備できたよ……マコト」

 

【ALL ZECTOR COMBINE!】

 

 

「よっしゃあ、久々に本気でやってやるぜ!!」

 

【Boost!!】

 

 

 

 誰よりも大好きな幼馴染の為に……。

 

 

【MAXIMUM HYPER TYPHOON!!】

 

「龍拳・爆撃ィィィッ!!!」

 

 

 

終了




補足

ブレなさすぎて、どんな異世界美少女だろうが鼻で笑ってスルーする。


しつこいようなら【MAXIMUM RIDER POWER】という音声がどこからともなく――

何かの間違いでマコト(TSイッセー)が男からちょっかいかけられでもすれば――

【ALL ZECTOR COMBINE】


とかいう音声が………
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未来視持ちの聖女にギャン泣きされた(作者:みょん侍@次章作成中)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 ――ああ、俺たぶん死ぬわこれ。▼ 冒険者稼業で日銭を稼ぐ毎日を送っていた冒険者のロータスは、ある日未来を見る力を持った聖女にガチ泣きされて死の未来を予感する。▼ どうせ死ぬなら、昔馴染みに会いに行こう。それで酒を飲んで、積もる話もなくなるぐらいになれば、明日死ぬにしても後悔は無い。▼ なんてやってたら昔馴染みが全員曇って激重感情をぶつけてくる。▼ そんな話…


総合評価:16523/評価:8.39/連載:28話/更新日時:2023年07月13日(木) 23:06 小説情報

たとえ全てを忘れても(作者:五朗)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 ある日、一柱の女神が一人の男を拾った。▼ 色が消えた髪と、浅黒い肌の一人の男を。▼ 男には記憶がなかった。▼ 何処から来たのか、自分が何者なのかも分からず途方に暮れる男に、女神は言った。▼ 「ボクの【ファミリア】に入らないかい?」▼ これは、全てを忘れてしまった男の物語。▼ 記憶を、願いを、理想を、全てを忘れてしまった男の新たな物語。▼ 記される筈がなかっ…


総合評価:19274/評価:8.17/連載:101話/更新日時:2022年10月16日(日) 12:00 小説情報

鬼灯の冷徹かと思ったが………(作者:超高校級の切望)(原作:ハイスクールD×D)

転生+クロスオーバー


総合評価:13710/評価:7.71/連載:54話/更新日時:2020年03月14日(土) 21:29 小説情報

やはりこの生徒会はまちがっている。(作者:セブンアップ)(原作:かぐや様は告らせたい)

 自己満で作成したクロスオーバー作品です。何番煎じか分かりませんけど、作りたくなったので作りました。面白ければ見続けて欲しいですし、つまらなかったら読まなくても大丈夫です。▼ ではどうぞ、ご覧あれ。


総合評価:13613/評価:8.5/完結:115話/更新日時:2024年06月05日(水) 10:48 小説情報

ダンジョンでブラフマーストラを放つのは間違っているだろうか(作者:その辺のおっさん)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ガネーシャ・ソーマ「「何か間違っているのか?」」ヘスティア「いや、間違ってるからぁ!?」▼ダンまちって北欧、ギリシャは見かけるけどインド神話ないよねって思って書いた駄文▼初投稿なので温かい目で見てくれると嬉しいです▼ここをこうしたほうがいいとか教えていただければ幸いです▼ま、まさかあらすじを書き直すとは…▼


総合評価:7549/評価:6.88/連載:69話/更新日時:2026年04月13日(月) 00:00 小説情報


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