色々なIF集   作:超人類DX

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まあ、そんな内容。

絶対的故にほのぼの


天使と堕天使の修羅場

 計画が失敗し、そのまま悪魔達に殺されるという末路を辿る筈だった私は……いや私達は生きている。

 計画の駒としか思ってなかった一人の人間から繋がった、我等低級堕天使からすれば最も恐ろしく、最も強い力を持った堕天使。

 

 アザゼル様やシェムハザ様と同じ最高位の堕天使でありながら、正直あんまり話題にならない怖い顔をしたあの方にまさか私達がと思い返すと、生きてるというのは良く解らなくなってくる気がするわ。

 

 運に見放されたと思えば、そうでも無い……。

 本当に……分からないものだわ。

 

 

 

 

「種族の力だけを過信するな! 地力を伸ばせ! 最後にものを言うのは己の精神と肉体だ!」

 

 

 グリゴリから恐らく完全に抹消されてからの私達は、グリゴリを自ら脱退した堕天使……コカビエル様のもとで修行する日々を送っている。

 我等堕天使を象徴する漆黒の翼を広げ、コカビエル様に言われた通り種族としての力以上に肉体を鍛える。

 

 

「ドーナシークよ、少し俺と遊べ」

 

「コ、コカビエル様の言う遊びの場合、私にしてみれば命懸けなのですが――いえ、全力で食らい付かせて頂きます!」

 

「ふっ、それで良い」

 

 

 苛烈を極めるとはまさにこの事だ。

 これまで如何に自分達が種族としての力に傲っていたのか……それをコカビエル様との修行の日々で何度も思い知った。

 

 

「ぐっ!?」

 

「どうした、俺は右手しか使ってないぞ?」

 

「この……! まだ……まだぁ!!」

 

 

 仲間の一人であるドーナシークが全力を出して挑むのを、コカビエル様は薄く笑いながらその場から動かず……もっと言えば凸ピンだけで子供扱いしている姿を私とミッテルトとカラワーナは、まだまだ縮まらないコカビエル様との差を嫌でも痛感させられる。

 

 

「やっぱり戦闘狂人と呼ばれてるコカビエル様は強いッスねー……」

 

「こらミッテルト!

失礼な事を声に出さない……!」

 

「でも、グリゴリ所属者の間ではそんな呼び名が広まってたのは本当の事なのよねぇ……」

 

 

「そぉら、弐撃目だ!」

 

「がふっ!?」

 

 

 指先ひとつで何とやら……。

 ドーナシークの額にコカビエル様指による突きを貰い、白目を剥きながら失神してる光景を見ながら、噂というのはあまり当てにならないものなんだなと、私はぼんやりと考える。

 

 

「ドーナシークがやられちゃったっす」

 

「人差し指の突きだけでって所に差を感じるわね」

 

「………」

 

 

 至高の堕天使を目指して文字通り何でもやってきたつもりだった。

 アザゼル様とシェムハザ様の寵愛を受けたいからと、人間の力を奪ってまで走ったつもりだった。

 けれど結果は破滅で、本当ならあのままグレモリー達に消滅させられていた筈だった。

 

 

「ふむ、次は……」

 

「私がやります」

 

 

 けど私達は今生きている。

 そして、フリードという人間を架け橋に拾ってくださったコカビエル様により私達は強くなろうとしている。

 

 

「レイナーレか……ふっ、良いだろう、何処からでも来るが良い」

 

「はっ!」

 

 

 復讐(リベンジェンス)なのか、それとも挑戦(チャレンジ)なのか……それはイマイチ私の中で決まっては無い。

 

 

「っ!? コカビエル様が翼を広げたっす……!」

 

「私達の中で一番伸びてるのがレイナーレだからかしら……?」

 

「……。(ピクピク)」

 

 

 けど私は何れグレモリー達に勝つ。

 勝って、もっと強くなって……。

 

 

「やぁっ!!」

 

「カハハハハ! フリードと『アイツ』の時以来だな……原石を見つけられたのはァ!!」

 

 

 コカビエル様の様な堕天使へ……。

 

 

 

 

 ミッテルト、カラワーナ、ドーナシーク…………そしてレイナーレ。

 人を利用した事への代償から逃れた四人は、自分達よりも遥か上の堕天使であるコカビエルにより、恐ろしい速さで進化していた。

 

 その速さたるや、恐らく今の四人であるならアーシアを利用した事により討伐に来た当時のグレモリー達を逆に下せるだろう実力にはなっている事御墨付きであり、そこから更に実力を伸ばしている。

 具体的には文句なく種族としては上級に位置出来るレベルには……だ。

 

 

「コカビエル様、フリードとルフェイの二人は何処へ?」

 

 

 特にレイナーレに至っては四人の中で一番成長しており、何と彼女の背にある翼の数が増えたという事態にまでなっていた。

 それもこれもコカビエルのお陰……そうレイナーレは思っており、初めは尊敬以上に抱いていた恐怖は無くなり……。

 

 

「あの二人なら『野暮用』だが……何だ、二人に用でもあるのか?」

 

「い、いえそういう訳では無くて……」

 

「?」

 

 

 それ以上にコカビエルに敬愛の念を抱いていた。

 恐怖から憧れへ……そしてそれはやがてほのかな想いへ。

 戦闘狂人という先入観をぶち壊し、真逆ともいえる本質を持っていたそのギャップが彼女をそうさせたのかは定かでは無いが、今のレイナーレはコカビエルに尊敬以上の念を抱いているのは間違いなく、ミッテルトとカラワーナとドーナシークに上手いこと言って何処かにやり、人間界での持ち家の一室でのんびりとスポーツ紙を読んでるコカビエルと二人きり……という状況に嬉しんでる辺りがまさにそうだった。

 

 まあ、コカビエル本人はそんな彼女の想いに対して良く分かってない態度だが……。

 

 

「わ、私……お茶とかいれてきましょうか?」

 

 

 フリードとルフェイは野暮用で居ない。

 ドーナシークとミッテルトとカラワーナは自分が適当言って外に追い出した。

 今この家に居るのは自分と、新聞を読んでるコカビエルの二人だけ。

 以前赤龍帝の少年を騙し討ちする為に人間に化けてそれっぽい台詞を吐いてたとは思えない態度のレイナーレにコカビエルは新聞を畳ながらフッと笑う。

 

 

「別に気は使わなくて良い。

それよりお前も暇なら気晴らしに何処かに行ったらどうだ? 俺と居たってつまらんだろうに」

 

「い、いえ、私はそんなことを思いません! む、寧ろ逆といいましょうか……」

 

「そう、か? 無理をしてる様にしか思えないんだが……」

 

 

 噂なんてクソだとレイナーレはかつて鵜呑みにした自分に吐き捨ててやりたい気分だった。

 何がなりふり構わない戦闘狂だ、面倒見は良すぎるし、強いし、ちょっと顔怖いけどそれが逆に良いじゃんか……等々、全身が熱くなるのを感じながらコカビエルの後ろ姿をポーッと見つめるレイナーレの中には最早アザゼルやらシェムハザやらは消えており、ただただコカビエル自身の都合勝手で自分の事を……とすら真面目に思ってるレベルに狂信している様だ。

 

 

(今こそコカビエル様との距離を縮めるチャンスよレイナーレ!)

 

(凄い見てくるが……何かしたのか俺?)

 

 

 二枚舌で赤龍帝を嵌めたレイナーレは一体何処に……。

 嵌められた本人が見たらさぞ驚くだろうレイナーレのモジモジとした態度に、当の本人は意図が分かって無さそうにレイナーレの違和感についてを呑気に考えていると……。

 

 

「お邪魔しますよコカビエル」

 

「む」

 

「っ!?」

 

 

 そんな空間の中、玄関から入ってくる一人の女性にレイナーレはギョッと目を見開く。

 ウェーブの掛かった金髪はレイナーレにとって堕天使人生のターニングポイントとなったアーシアを思い出させるが、それ以上にレイナーレも認めざるを得ない程の美貌とスタイルを持つその女性が、まるで当たり前だとばかりにこの家の中に入ってくる事がレイナーレにとって悔しさを助長させる訳で……。

 

 

「あらレイナーレさん、コカビエルと二人きりの所、……申し訳ありませんでしたわ……おほほほほ!」

 

「いえいえ、お気にならさらずガブリエル様。おほほほほ!」

 

 

 堕天使の自分達とは色々と逆な存在……天使・ガブリエルの先制ジャブ的発言に、内心腸が煮えくり返る気分を笑顔で誤魔化すのであった。

 

 

「お前か。ミカエルから何か伝言か?」

 

 

 そんな二人の美女が自分のせいで変な事になってるとは考えもしてないコカビエルは、嘗ては同族であり、今は共に高め合う同志であるガブリエルの来訪に新聞を片付けながら用件を聞く。

 するとレイナーレ相手にニッコニコとしていたガブリエルはより一層……例えるなら『ニコー』なら『にぱー☆』にレベルの上がった……世の男共がそれだけで前屈みにでもなりそうな笑顔をコカビエルに向けると、容姿に違わないふつくしい……でも若干低めの声で言う。

 

 

「あらコカビエル、私が用も無いのに来ては何か不都合でも?」

 

「あ、あぁ?」

 

「………」

 

 

 世の男共なら一撃で前屈みになるガブリエルの様子だが、数百年以上も関わりの深いが故に逆に引いてしまったコカビエルは意味が解らないと内心首を傾げつつ、何故か全然目が笑ってない笑顔のレイナーレと交互に見ながら小さく首を横に振る。

 

 

「……い、いや別にそうは言ってないだろ。

だがルフェイなら今フリードと野暮用で居ないというか……」

 

「あらそう、じゃあ待ってても良いわね?」

 

「お、おう……」

 

「………………チッ」

 

 

 ニコニコしながら居座ると宣うガブリエルにコカビエルは別に抵抗感は無いものの圧される形で許可し、レイナーレは小さく舌打ちをする。

 そう……天界の女性天使――否、天使史上最強のガブリエルの存在はレイナーレにとって実に目の上の瘤。

 

 聞けば周囲に知られないまま数百年も密会してたとかいう事実はショック以上に悔しく、また今の自分では実力ともにどう逆立ちしても勝てないのもあって、レイナーレにしてみれば色んな意味でガブリエルは敵だった。

 

 

(何で堕天しないのよこの女……)

 

(フッ、同族といえど所詮は子供……)

 

(……………。コイツ等何で仲悪いんだ?)

 

 

 空気を変えようとお茶を煎れたコカビエルは、ニコニコしつつも、その下で睨み合ってる様にしか見えない二人に妙な居たたまれなさを覚えながら静かにお茶を飲む。

 

 

「処でコカビエル。前の修行中に私の胸を鷲掴みにしてくれた責任は一体何時取るのかしら? それと一年前にシャワーを浴びてた私の全てを見た責任も……」

 

「なっ!?」

 

「な、何だ急に? アレはどっちも事故だったとお前に説明したじゃないか。

それに風呂の件はフリードに嵌められたと……」

 

 

 そんな空気のまま、全員してテーブルを囲って正座していた状況でぶちこまれたガブリエルからの全力殺人投球にレイナーレは驚愕し、コカビエルな気まずそうに目を逸らしながら語尾を弱めていく。

 

 ガブリエル。

 嘗ては戦争して殺しあった敵種族の一人であり、それ以前は同族でもあった。

 そんな彼女と縁があって一緒に修行して、気付いたら何か普通に気安くなれて……。

 

 

「そう、事故。確かに事故だったわ。

しかしたかが事故、されど事故……アナタに激しく押し倒された挙げ句強く掴まれた感覚はまだ私の胸に残ってるし、アナタに文字通り全部を見られたあの恥ずかしさもずっと頭の中なのよ」

 

 

 コカビエルにしてみれば友人である事は間違いなかった。

 

 

「こ、コカビエル様……」

 

「お、おい……未来ある俺の同族がドン引きしてるからあんまりそういうのは……」

 

「ふふん、言い訳しないのは誉めてあげるわ。

責任逃れは許さないけど」

 

 

 けれどガブリエルからすればそうじゃない。

 顔は悪人、戦闘バカ、格上だろうと無謀に突撃するという野蛮極まりない性格でガブリエルからしたら当初は寧ろ嫌いなタイプな男だったのに、縁があって一緒に高め合う間柄になり、そこから知った面倒見の良い本質に触れて……年月を経ていく毎に惹かれていって……。

 

 

「俺にどうしろと言うんだ……」

 

 

 それなのに堕天使の小娘が横から現れた? そんなもの天使であろうと納得出来るわけがない。

 コカビエルの見た目で敬遠され、女性の影なんて欠片も無かった故に気楽に構えていたガブリエルは、今かなり焦っていたのだ。

 日を経つ毎にコカビエルを見る目が熱っぽくなる堕天使の小娘に、偶々修行中に出現した某龍神と対峙した時より焦っていたのだ。

 

 

「そろそろ良い歳だし、互いに何時死ぬか解らない。

だからコカビエル……」

 

 

 故に勝負してやろうとガブリエルは決めた。

 堕天使の小娘を一気にぶち抜く為に、内心恥ずかしくて堪らない気持ちを押さえ付けながら、座るコカビエルの隣に赴き、その白い手を取って自分の乳房に押し当てながらガブリエルは言った。

 

 

「私と……子を作りましょう?」

 

 

 永い年月の間、何度も夢想していた想いを……。

 

 

「…………は?」

 

「な、な……!」

 

 

 白い肌を薄く紅潮させたガブリエルの渾身突撃にコカビエルはポカンとガブリエルの乳房の柔らかについて特にどうも思わずに居ると、横で聞いてたレイナーレは唖然としてしまうのと同時にしまったと焦りだす。

 

 

「お前……大丈夫か? そんな真似、冗談でもしたら堕天する―――――いや、お前ならしないのか?」

 

「聖書の神のシステム……そして引き継いだシステムの理から外れてる私なら堕ちやしないわ。

いえ、例え堕ちても私は構わない」

 

「ちょ、ちょっと……!」

 

 

 異様にグイグイと迫るガブリエルに流石のコカビエルもタジタジとなるがガブリエルは止まらない。

 一体何年想い続けたと思ってるこの鈍感戦闘バカ。

 

 一体何度コカビエルの姿を激写し、自室の壁一面に張り付けてると思ってる。

 

 一体何度アナタの衣服を失敬して自室で夢想しながら『ピーッ!』したと思ってる。

 

 というか、押し倒された挙げ句胸を鷲掴みにされた時と全部を見られた時の夜なんか日が開けるまで一人でやってたんですよ!

 

 

 と、内心ながら偉いカミングアウトをするガブリエル。

 レイナーレの出現がある意味ガブリエルのヘタレハートを強化し、今まさにコカビエルと夜の融合を迫るまでになった訳で……。

 困惑してるコカビエルと更に密着するガブリエルは、その流れで彼と口づけをしようと頬を紅潮させながら瞳を潤ませ、顔を接近させようとしたが……。

 

 

「だ、駄目に決まってます! アナタは天使でコカビエル様は堕天使!」

 

 

 それをかなり必死になって止めたのはレイナーレだった。

 

 

「わ、私ならコカビエル様と同じ堕天使だし、わ、わ、私ならコカビエル様の子を……」

 

「……。え、いや何でそうなるんだ?」

 

「む……アナタは若すぎる気がするけど」

 

「そ、そんな事無い! 私は……私は……!」

 

 

 子供の我が儘の様に駄々をこねて二人を無理矢理引き剥がしたレイナーレもまた真っ赤でぶちまけ、コカビエルは『え?』となり、ガブリエルはむっとなる。

 

 

「いや……どっちも落ち着け。

俺みたいな奴にお前ら揃って吐く台詞じゃないだろ……というかレイナーレはアザゼルに言ってみろよ」

 

「ア、アザゼル様はもうどうでも良いんです!」

 

「コカビエルみたいな男じゃないと嫌です私は!」

 

「い、いや……」

 

 

 こうして勃発した修羅場。

 これもまた赤龍帝の少年が見たら嫉妬しそうな光景だが、大人になってるコカビエルからしたら『微妙に困る』と辟易する話でしか無く、ヒートアップして始まった美女天使と美女堕天使の半ストリップショーにただただため息が出るのと同時に……。

 

 

「………。ガブリエルって俺の事そう思ってたのか……しかもレイナーレも。

何故俺? アザゼルから『極悪人顔だし永遠にモテねぇな』と言われたのにな」

 

 

 目の前の二人は自分以上に変な趣味なんだと思うのだったとか。

 

 

「コ、コカビエル様! あ、あの……む、胸はお好きですか!? 宜しければ好きなだけメチャクチャに――」

 

「いや無理して乳なんかほっぽり出すなよ。風邪ひくだろ……」

 

「と、当然私は初めてなので優しく――」

 

「おい、目をぐるぐる回しながら言うなよお前も……無理するな頼むから」

 

 

 以上……清算前のひととき。




補足

ガブリーさんは変態ちゃうよ? ちょっとコカビーがスルーすまくりだからムラムラゲージ溜まっちゃってるだけよ。

洗濯のフリして失敬したワイシャツを自室で全裸に着用してアレしちゃうのだって、コカビーがスルーしちゃうからだよ。

結論はコカビーが悪い。


その2
そしてレイナーレさんの出現によりヘタレが払拭し、割りと大胆にいける様になれたとさ。

流石にそこまでコカビーさんはスルー出来なくなる訳ですけど……。


ちなみにミカエル様のコメント

『レッツゴーですよガブリエル!』


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