色々なIF集   作:超人類DX

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続き。
なんかここでぶちあげてくる存在が……


畑山愛子には小さな秘密があったりする

 

 

 本当の普通を十数年過ごすことが出来たというのに、結局引き戻されるのは、そういう星の下に縫い付けられているからなのか。

 

 それとも、全能者ぶって見下ろす(カス)の悪意からなのか。

 

 今となってはその答えを知りたいともおもわなくなった。

 

 日常だろうが非日常だろうが、俺は最早そのどちらも『生きている』という実感が薄くなってしまっているのだから。

 

 

 ………。とはいえ、そんな俺にも所謂『生の実感』を少しだけ感じる事はある。

 

 例えばそうだな……。

 

 

「おーおー、一人を袋叩きにしてた時や俺に啖呵きった時の威勢はどこいったんだガキ共? それとも薄気味悪いただのストーカー野郎のパンチは効かねぇか?」

 

「ひっ!?」

 

「や、やめ――い、いや止めてください!! お、オレ達が悪かったですから!!」

 

 

 目障りに思った奴を面白半分にぶちのめしてやる時なんかな……くくく。

 

 

 

 

 

 異世界に召喚されてしまった事で、再び非日常の日々へと逆戻りさせられてしまった赤龍帝であった青年ことイッセーは、後輩と呼べる学年の生徒達に混ざって、まあまあ適当に基礎訓練をこなしていた。

 

 あまりにもこの世界の人間達が信仰しているとされるエヒトなる神が胡散臭いのと、そもそも神という概念に対して殺意しか無かったりするといった理由で、他の生徒達やら社会科教師が登録したステータスプレートの登録をどさくさに紛れてしなかったままの訓練だ。

 

 元々、イッセーの肉体的な強さは同姓同名同容姿として生まれ変わっても尚『超越者』と呼べる領域に到達しているので、いくらでも誤魔化しなぞは利くので、これまた適当に周りに合わせる形でやっていたのだが、とある生徒のグループが一人の生徒を『訓練だから』という理由で囲んで魔法やらなにやらの的にしていたのだ。

 

 

 生憎その行動を止められる社会科教師は別件にて訓練には参加していないし、他の生徒の殆どもその行為を『見てみぬフリ』をしている。

 その見てみぬフリの中にイッセーも入り、当初はガン無視を決め込むつもりだったのだが、その袋叩きにされている生徒がある意味で一方的に知っている生徒だったのだ。

 

 なので、その訓練で放たれた魔法の余波で適当に服が少し焦げたという理由をでっち上げる形で、イッセーからすればヤンキー崩れ以下の評価を降した、名前も覚える気すらないグループに因縁を吹っ掛け――――――――――――取り敢えず殺さない程度にぶちのめした。

 

 

「ほらほらどうしたんだガキ共? 俺は何もしないぞ? 彼の時みたいに遠慮なく魔法でもなんでも使ってみろよ?」

 

「ひっ……ひぃっ!」

「も、もう勘弁してください!!」

 

 

 少し撫でただけで呆気なく精神を折った不良崩れグループは、既に泣きながらイッセーに対して地面に額を擦りつけながら勘弁して欲しいと懇願している。

 

 そのあまりの光景――具体的には当初逆上した不良グループ達の放つ魔法の全てを真正面から食らった癖に傷ひとつすら負わない雫のストーカー男に対して、見てみぬフリをしていた他の生徒達にほんの少しずつの『恐怖』を植え付け始める。

 

 

(す、スゴい。檜山達の攻撃の全てが先輩に効いてない。

多分凄まじく防御系のステータスが高いのかもしれないし、さっき先輩は檜山をデコピンだけで20メートルくらい吹っ飛ばしていたから、もしかして身体能力全般のステータスが高いのかもしれない……!)

 

 

 そんな中、檜山と呼ばれる不良グループに袋叩きにされていた

南雲ハジメは、助けられたという状況もあるお陰で恐怖というよりは、自分の前に立つイッセーの『強さ』に対する尊敬のような感情を抱いていた。

 

 

「チッ、少し小突いたら直ぐに泣きに入るとはな。

所詮半チクコゾーだったか……」

 

 

 正直言動や態度だけを見たら、余程檜山達よりもヤンキーやっている感は否めないと誰もが思う中、顔やら何から鼻水やら何やらでぐちゃぐちゃになっている檜山達に向けて吐き捨てたイッセーが、ボキボキと指の関節を鳴らしながら、一歩前へと踏み込む。

 

 

「心配すんな。

精々二度とテメーの歯で物が食えなくなる程度で済ませてやるからよ」

 

 

 異世界なんて訳のわからない場所で、非日常に引き戻された事への若干の八つ当たりを込めたイッセーの『処刑宣告』に檜山達の恐怖はピークに達したその時だった。

 

 

「そこで何をしているっ!!」

 

 

 ベストなのか、それともバッドなのか、ともかく今まさに檜山達の永久歯が総入れ歯に魔改造されかけたそのタイミングで、別の場所で訓練をしていた天之河光輝が、近しい者達と共にやって来たのだ。

 

 

「こ、光輝ィ~!!」

 

「だ、だずげてぐれ!」

 

「なっ!? ひ、檜山達……?」

 

 

 少なくとも檜山達的には命拾いした最高のタイミングだったので、ここぞとばかりにすがりつくと、光輝は困惑しながらも目の前に目のハイライトが基本的に消えぎみの――正直言えば忌々しいと昔から思っていた先輩が居ることに気付く。

 

 

「兵藤先輩……檜山達と何を?」

 

 

 大事な幼なじみに付きまとう奴。

 何故かクラスどころか学年も違うのに自分達と同じくこの世界に召喚された男の拳を振りかぶった状態で止まっている姿と、檜山達の姿を交互に見た光輝は、ある程度ここでなにがあったのかを察する。

 

 ボロボロにされているハジメの姿には気付いてすらおらず、気付いていたのは共に訓練をしていた雫と香織だけであり、特慌てて香織がハジメに駆け寄っている。

 

 

「そうか。貴方が檜山達をこんな風に怯えさせたのですね? 理由はなんですか?」

 

「…………………」

 

 

 ちゃっかり香織がハジメに治癒師としての呪文をかけつつ、別にそこまで必要は無いのに、無駄に身を寄せている事に気付いてない光輝がイッセーを睨みながら理由の説明を求めるが、その前に檜山達が『完全な被害者ムーブ』的な言葉を並べ始める。

 

 

「お、オレたちが南雲に訓練をつけてたら、急にコイツが来てオレたちのことを……!」

 

「なに? …………そうなのか皆?」

 

 

 ここで漸く気付いて香織に回復させて貰っているハジメの存在に気付いた光輝だが、彼とて檜山の言葉をそっくりそのまま信じる訳ではないので、彼らの姿をみていたと思われる他のクラスメート達に確認の意味で問い掛ける。

 

 

「い、いやその、確かに見ただけだと突然先輩が檜山達の所に行って喧嘩を吹っ掛けてたように見えなくもないけど……」

 

「その前に檜山達が南雲に対して明らかにやり過ぎだったし……」

 

 

 見てみぬフリをしてしまった事への多少の罪悪感もあって、檜山達の肩を持つつもりは無い証言をするクラスメート達に、光輝はなるほどと呟きながら取り敢えず檜山達に口を開く。

 

 

「お前達が南雲達に過剰な訓練を施していたという話は本当らしいな?」

 

「っ!? そ、そんなつもりはねぇ! そ、そもそも南雲のステータスがオレたちと違って一般人程度だったらしいから、生き残らせる為にと思っただけだ!」

 

『………』

 

 

 普段の檜山達のハジメに対する虐めを知る生徒達の殆どは彼等の『物は言いよう』的な言葉を完全に『嘘』と思いつつも、突然イッセーが檜山達を半殺しにしたのも事実だったので黙っていた。

 

 

「そうか、お前達なりに南雲の為だと思っての事なんだな?」

 

 

 その選択が間違いだったのか、普段からハジメをただの弱い奴と認識していた光輝は、元々イッセーのことが根底で気にくわなかったこともあり、檜山達の証言を信じてしまうと、鋭い目付きでイッセー――――ではなく、まだ動けずに居たハジメに向けた。

 

 

「南雲、今そうやって香織に回復をして貰うのは仕方ないにしても、前にも言った通り香織の優しさに何時までも甘えるのはよせ」

 

「う……」

 

「そ、そんな! 私は――」

 

 

 突然矛先を向けられて身体中がまだガタガタなハジメは言葉を詰まらせると、即座に香織が否定しようとするが、光輝は全く聞く耳を持たない。

 

 

「香織が優しいのはよく知っている。

だが、ここは異世界で元の世界よりもより危険と隣り合わせなんだ。

南雲自身も自立しなければこの先生き残れず、誰かを危険に晒してしまうかもしれないだろう?」

 

「…………」

 

 

 

 ペラペラと知った風な口でさも正論っぽく語る光輝の持ちうるカリスマ性がそうさせているのが、それまでどちらかと言えばハジメは被害者だろと思っていた他の生徒達の考えが、『そもそも南雲が弱すぎなのが問題じゃないのか?』というものに刷り変わる。

 

 

 

「現に今こうやって、訓練に耐えきれずに端から見たら一方的な攻撃に晒された南雲を見て勘違いした兵藤先輩が誤解をしてしまった。

兵藤先輩も南雲の姿を見て止めたつもりなのでしょうが、貴方のそのやり方は正直到底褒められるものではない」

 

「…………………。(なんだこのガキ? 前々から思ってはいたけど、『つまらなさ』に拍車が掛かってるぞ)」

 

 

 ハジメに対して知った風に説教じみたことを言いながら、イッセーに対してまで『間違っている』と言う光輝。

 あまりにも『つまらなさ』にイッセーも元々自分のやったことに対して正当化するつもりもないし、なんなら『目の前でうざくてムカついたから』とでも言うつもりだったので反論せずに居ると、それまで香織と一緒にハジメの手当てをしていた雫が少し『ムッ』とした顔をしながら口を開く。

 

 

 

「ちょっと待ちなさい光輝。

イッセーが黙ってるから代わりに言うけど、イッセーは理由も無く喧嘩はしないわ。

寧ろ極端な話、目の前で『他人』が殴りあってても、お菓子食べながら『おーおー、なんかやってらぁ』って言うタイプよ。

つまり、イッセーが檜山君達と喧嘩をしたのは―――もぷっ!?」

 

『!?』

 

「し、雫!?」

 

 

 何故かほぼ当たり同然の事を口走った雫だったが、最後まで言う直前になって、いつの間にか背後に移動していたイッセーによって手で強引に口を塞ぐ。

 

 

「お、おい! 雫に何をしてる!?」

 

 

 突然の行動に、光輝と同じく雫の幼なじみである坂上龍太郎が雫を助けんと身構えると。

 

 

「目の前で、鬱陶しい事してた挙げ句に俺の服をそこの小僧が焦がしたからぶん殴った。それが理由だ」

 

「もがもが……!!!」

 

「そ、それが理由で……? い、いやそんな事よりも雫から離れろ!」

 

「もがもがもが………もが……」

 

「………………!」

 

 

 最初は何か言いたそうにもがいていた雫を見て、焦る光輝達だったが、段々と雫が落ち着くと同時に何故か『ビクッ!』としたイッセーがほぼ突き飛ばす同然に雫を解放すると、本気で嫌そうな顔をしながら、雫の口を押さえていた方の手をブンブンと振っている。

 

 

「だ、大丈夫か雫?」

 

「? ええ、大丈夫よ。

イッセーは照れ屋さんだから、本当の事を言わないつもりらしいから私も言わない事にしたから、理由は今イッセーが言ってた通りの理由で良いわ……………ふふふふ」

 

 

 何故か妙に艶かしい声と表情に加えて、若干頬を紅潮させている雫が、全力で嫌そうな顔をしながら此方を睨みつつ何故か外壁に手のひらをすり付けているイッセーに向かってチロリと舌を出す。

 

 

(ふふふ、つい無理矢理口を押さえ込まれてしまったから、イッセーの手を舐めちゃったわ)

 

(こ、このガキ、正気を疑うぜ……)

 

 

 こうして微妙な空気のままこの件も曖昧に終わることになった――というのが数日前の話であり、そこからは少なくともイッセーが近くに居る時は檜山達もハジメに対してちょっかいをかけることはなくなり、この件を境に少しの勇気を出したハジメがお礼を含めて常に一人か近寄ろうとする雫からナチュラルに逃げるか、畑山愛子から話しかけられているイッセーと『会話』をするようになったのだ。

 

 

 

「へぇ、親父さんがゲームクリエイターで、お袋さんが少女漫画家なのか」

 

「一応二人から色々教わったりはしますけど僕自身は素人ですけどね?」

 

 

 

 話をしてみると、寧ろイッセーは普段のイメージとは裏腹に結構なお喋りであり、何なら話しやすい。

 なので元々友人と呼べる存在がクラスに居なかったハジメは異世界に召喚されたことで得た『先輩』に懐いていた。

 

 

「改めてありがとうございます。

あの日以降、少なくとも先輩と居る間は檜山達に絡まれなくなりました」

 

「そりゃあ良かったな……別に助けたつもりじゃあないんだがよ」

 

「あはは、先輩はそう言いますけど、僕が勝手に助けてくれたって思っているだけです。

でもこのままではダメなのはわかっているつもりです。少しでも強くならないと……」

 

 

 はじめてのダンジョン潜入を明日に控えるこの日の夕方。

 既によく居る先輩後輩的な会話をするようなったハジメとイッセーは、夕飯も共にしつつ消灯までの間に他愛の無い会話をするようになっていた。

 

 

(八重樫のダチの子がずーっと物陰から見てたりするんだが、これは言わない方が良いのか?)

 

「もし元の世界に帰れたら、一緒にゲームとかしてくれたらなぁ……なんて」

 

「ああ、ゲームは結構好きだからな。(で、ついでに八重樫も見てるし……放っておくか)」

 

 

 その会話の最中、物陰から見てくる二人の視線にハジメは気付けてないので、取り敢えず黙っておく事にしたイッセー。

 こうして夜は更ける事になったのだが、話は此処からある意味で加速し始める。

 

 

「し、白崎です。南雲くん、起きてるかな……?」

 

「!?」

 

 

 召喚者達に用意された宿屋のハジメの部屋にて香織が訪問していた頃、別の部屋の前では―――というかイッセーの部屋には先程親友の背中をグイグイ押してきたばかりの雫がやって来ていた。

 

 

「まだイッセーは寝ていない筈だ。

ふふふふ、香織が南雲くんとの仲を進展させている間に私はイッセーと……」

 

 

 これを見てどっちが一体ストーカーなのかと言いたくなる程度には噂と事実が反対過ぎるのがイッセーと雫の関係性であり、イッセーに関しては自己主張が激しすぎる雫が、これから起こるであろう色々なTo loveる――もといトラブルを夢想しながら、何時もの様にノックをしようとした時であった。

 

 

「…………」

 

「……………………」

 

(え? イッセー以外の声がする……?)

 

 

 何故かイッセー一人である筈の部屋の中から誰かと話をしているイッセーの声が聞こえた。

 しかも声の質からして明らかに同性ではない。

 

 

「い、イッセー!」

 

 

 その瞬間、一気にスイッチが切り替わった雫は恐ろしい程に馴れた手付きでヘアピンのような金具を取り出して鍵穴に押し込み、ものの二秒で解錠すると、既に半泣きになりながら勢いよくドアを開け放つ。

 

 

「あ?」

 

「え、や、八重樫さん?」

 

「…………」

 

 

 そこに居たのは、テーブルに座ってお茶を飲みながら向かい合っているイッセーと社会科教師の畑山愛子だった。

 

 突然の事に愛子は勿論、イッセーも少しだけ固まっているのは、鍵をかけていたのに雫が半泣き顔で入ってきたからなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 正直、こんな夜更けに生徒の部屋を訪ねるのは倫理的にどうなのかとは思ったのだけど、やはり心配の方が勝ってしまった畑山愛子は、先日の訓練の際に一年の生徒と喧嘩をした唯一の二年生であり、去年自分が受け持った初めてのクラスの生徒だった兵藤一誠の居る部屋を訪ねた。

 

 

「先生……? こんな時間にどうしたんですか?」

 

 

 彼のことはあらゆる意味で忘れられない生徒だった。

 一年生の頃から周りに馴染もうとはせず、かと言って不真面目な学生ではなく、寧ろ授業等は真面目に聞いてくれる。

 

 だが、彼はどこか他の子達とは違う。

 

 

「すいません、こんな時間に……。少し兵藤君が気になって様子を見に来まして……」

 

「はぁ、わざわざどうも。取り敢えず入ります?」

 

「え? あ、は、はい……ではおじゃましますね?」

 

 

 

 どこか超然とした所がある。

 そして『手負いの獣』を思わせる鋭さ。

 

 

「どぞ」

 

「い、いただきます」

 

 

 それ故に彼は周りと馴染もうとはしないのではないか。

 教師としては若い彼女はそんな彼に対して、周りの生徒に馴染んで貰おうと、今にしてみれば『自分の価値観』を押し付けてしまった。

 それに気付かされたのは、自分の小柄さが故に、ある災難にあった時だった。

 

 

「檜山君達とはあれからは……?」

 

「さぁ? 正直奴等には興味なんて無いんですが、ひとつ言えることは近寄りはしねぇって所ですかね」

 

「そうですか……。

話は南雲君から聞いてます。教師としては表だって言えないですけどその………」

 

「あーはいはい。無理して言わんで良いですよ。そもそも俺は別に南雲君を助けた訳じゃあ―――」

 

「…………ふふ」

 

「あ? なんすか?」

 

「いえごめんなさい。

『そういう所』は本当に変わらないなぁって……。

私の時も『偶々通りがかって、偶々イラついてただけなんで』って言い張り続けてる所なんかは特に」

 

「………。本当の事ですからね」

 

 

 タチの悪い人達に絡まれてしまった時、偶々通りかかったイッセーが、それまで愛子が禁忌と思っていた『暴力性』で助けられた事があった。

 無口で、誰とも馴染もうとしないだけの生徒だと思っていたイッセーの『怪物(ビースト)の側面』を目の当たりにしてしまった愛子は、勿論助けられた事への感謝はしつつもその暴力性は良くないと言ってしまった。

 

 だが、イッセーは言ったのだ。

 

 

『何も出来なくて『奪われる側』の人間の戯言だ。

アンタは弱かったから奪われかけた。そこに偶々『抗える奴』が通り道の雑草を刈ってくれたから助かったんだ。

弱いだけで吠えるだけの犬以下が偉そうに講釈なんぞ垂れるなよ?』

 

 

 現代日本人とはとても思えない言葉に、愛子はまさに『奪われる寸前』だったこともあって何も言えなかった。

 

 

「何回話をされても俺は俺を変えるつもりなんて無いですよ」

 

「わかっています――――だから今ここに居るのは教師としての私じゃなくて、ただの畑山愛子としてです。

なので、あの時のようにもっと砕けた話し方にして欲しいなぁ……なんて」

 

「………………。アイツといい、アンタもやっぱ変な女だぜ。

まともな神経してる奴はまず俺の『姿』を見たら二度と近寄りたくなくなるってもんなのに」

 

 

 教師としての自分は、やはりイッセーの生き方は全てを肯定できない。

 だが畑山愛子個人としては、イッセーの暴力性に助けられた上に、不思議にも引き込まれてしまう。

 

 

「ああ、八重樫さんの事ですね。

大分慕われているみたいだけど……」

 

「アンタと同じだ。

寄るなって何百と言っても変わりゃしない奴なんだ」

 

「ふふ、それはそうでしょうね。私は八重樫さんの気持ちが何と無くわかるもの?」

 

 

 だからそのしゃべり方も自然と砕けたものになる。

 

 

「正直不安なの。

この異世界で生徒達を守れるのかが……」

 

「そりゃあそうだろうし、そう思うのが普通だから別に気にしなくても良いだろ。

アンタは一々抱え込み過ぎるんだよ」

 

「私も兵藤君――ううん、イッセー君のように強ければ……」

 

 

 教師としては失格なのはわかっている。

 だけどどうしても、不安を感じてしまうし、彼もまた生徒だとは解っていても……。

 

 

「えと、ごめんなさい。様子を見に来たなんて言っておきながら、私ったら弱音ばっかりで……」

 

 

 この先も忘れることは無い生徒を頼ってしまう。

 

 

「別に良いさ。

アンタの融通のきかなさは一年の頃に嫌でも知ったからな」

 

 

 イッセーはぶっきらぼうに返しながらお茶を飲む。

 

 

(ああ、やっぱり――どうしても安心する。

他の誰よりもこうしてイッセー君とお話すると……)

 

 

 生徒で、しかも勿論年下に対して思うべきではないのは頭では解っている。

 だけどどうしても、『頼りになる安心感』を感じてしまうし、想えば想う程胸の奥がじんわりと暖かくなる。

 

 そんな事を思いながらも、少しでもイッセーにお返ししたいとも思っていた愛子があることをイッセーに提案しようとしたそのタイミングで、鍵を掛けた筈のドアが勢い良く開けられ、半泣き顔の雫が飛び込んできたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 なんか非常にダルい事になっている。

 というのが今のイッセーの心境だった。

 

 

「な、なんで先生を部屋にいれてるの?」

 

「来たから」

 

「な、なんで来たのよ?」

 

「世間話がしたかったからじゃないの? てか、だとしてもオメーには関係な―――」

 

「あるわよ!? だってイッセーのお部屋ということは自動的に私のお部屋でもあるのよ!?」

 

「そんな自動は存在しねぇ。そしてうるせぇから早く帰れ」

 

「帰らないわ!! 先生と二人きりなんて危ないし!!」

 

「あ、危ないって……。私は別に……」

 

「嘘ですね! 異世界に来るまで気付けなかったのは私のミスですけど、先生のイッセーを見る目が確実に教師の倫理を破壊するそれですしね!!」

 

 オロオロする愛子に、嘘だろというレベルで取り乱している雫が、まあまあ当たりな事を言う。

 

 

「ち、違いますよ!? け、決して私はイッセー君――――――ぁ……」

 

「い、今イッセーと名前で呼びましたよね? 普段呼ぶ時は名字の筈なのに」

 

「こ、これは別にその……!」

 

「ほ、ほらぁ!! その態度からして図星でしょう!? ダメですからね!! 何度も言いますがイッセー専用は私なんですから!! 大体先生は色々と小さくてイッセーの好みじゃないですし!!」

 

「ち、小さいは関係ないでしょう!? ね、ねぇイッセー君!?」

 

「……………………まあ、確かに先生はちっせぇなとは常日頃から思ってはいたな」

 

「んが!? そ、そんな……だ、ダメなの?」

 

「何がダメなのかは知らんけど、まあ、おもしれー女教師とは思ってるかな」

 

「! じゃ、じゃあ私は? 私のことはどう思ってるの?」

 

「アホ」

 

「なによそれ!? ぐっ、こ、こうなったら……ほらイッセー! 何時もの夫婦の営みを―――あいた!?」

 

「しねぇし、そもそもそんな事実は皆無だろうが。やっぱりアホだなオメーは?」

 

「じゃ、じゃあちょっと小さい年上の女ってどう思います?」

 

「どうと言われてもな……さぁとしか思えねぇんですけど」

 

 

 時間も忘れてキャイキャイと騒ぎ立てる二人と、微妙にダルい青年。

 

 

 

 

 

 

 

「あらら、雫ちゃんも大変だ」

 

「す、スゴい。

というか部屋が隣だから会話が丸聞こえだし、まさか先生が結構先輩に対して……」

 

「そうだね。

雫ちゃんもうかうかしていられないかも……?」

 

「あ、あの白崎さん? ひょっとして今楽しいとか思ってない?」

 

「あはは……実はちょっとだけ。南雲君は?」

 

「え? ………………い、いや僕も少しだけ実は……」

 

 

 そんなやり取りを隣から聞いていたハジメと香織の仲が皮肉にも良くなっている事に気付かず、夜は更けていく。




補足

教師としては当然イッセーの超極端な行動には反対ではある。

しかし、教師としてではない自分がその超が付く極端さに惹かれるものがある。


そのせいで八重樫さんが泣きまくる
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