書いてる内に思った……あれ、これって――
村人Aと村人Bにしてくれるなら大人しく付いていくと、黒ウサギにしてみれば思い描いた未来とは外れた目的を持つ二人の少年? と少女? に内心『どうにかして引っ張り出せないか』と悩みながら残りの問題児達を案内していた。
「今度手に入れるお家はベッドに拘りましょうよ?」
「拘ってどうするんだ? どうせヤってる内にどうでも良くなるだろ……」
「確かにそれは否定できませんね」
「「「………」」」
「防音設備がきちんとしてたらいいんですけどねぇ……せめて」
「気付けば二日経ってただなんてザラだからな」
「仕方ないですよねこればかりは……。だって気持ち良いですもの」
「チッ、俺は何時から猿になっちまったんだろうか……」
「「「…………」」」
黒ウサギを先頭に、春日部耀、久遠飛鳥達が続き、最後尾を懐かしき駒王学園時代の制服に身を包む一誠と白音が呑気にくっちゃべりながら歩いているのだが、何というか、会話の内容は女子三人にしてみれば生々しい事この上ないものだった。
「あ、あの……そろそろ到着するのと、我々のコミュニティのリーダーはまだ齢十一になりたてなので、そういった会話は少しだけ控えて貰えると……」
「? あ、はいわかりました」
「……」
意を決した黒ウサギの言葉で一応生々しい会話はそこで止まったものの、微妙に気まずい空気は緩和もヘッタクレも無かったのだったか。
そんな空気のまま、箱庭外門のまでやって来た黒ウサギは、門前に待機していた緑髪の幼い少年を目にするや否や、ホッとしたような安心したようなやらの気持ち一杯になった。
「ジン坊っちゃん! 新しい方を連れて来ましたよ!」
「うん黒ウサギ、そちらの四名が?」
妙にホッとしてる黒ウサギに少年は内心首を傾げるものの、それよりも新しく加わってくれると最早信じてやまない異世界からの来訪者の数を口にしたのだが……。
「あ、あれ? もう一人いませんでしたっけ? 何か“俺問題児!”ってオーラを放っている殿方が……」
四人じゃなくて五人の筈だと、後ろを振り向いた瞬間カチン、と固まってしまう黒ウサギは金髪の少年の姿が忽然と消えてる事に今更ながら気がつく。
「ああ、十六夜君の事? 彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”とか言って駆け出して行ったわよ?」
そんな黒ウサギと同じく、最後尾にて生々しい会話をしていた二人に微妙な気分にされていた飛鳥が、軽い調子で自分達が呼び出された際に上空4000mから見えた断崖絶壁を指差す。
その瞬間、少年はサッと顔を青ざめさせ、黒ウサギも同様に慌てだす。
「な、何で止めてくれなかったんですか!?」
「止めてくれるなよ、と言われたもの」
「そ、それならどうして黒ウサギに知らせてくれなかったんですか!?」
「黒ウサギには言うなよ、と言われたから」
「う、嘘です! 絶対嘘です! 実は面倒臭かっただけでしょう!? あのお二人の会話とかそんな理由で」
「「まぁ、うん……」」
「で、ですよねー……………じゃない!!」
二人の微妙に息の合った返事に一瞬納得しかける黒ウサギだが、切り替えの早い性格でもしているのか、直ぐに首を横に振りながら、今度は呑気に外門を二人して眺めていた一誠と白音に居なくなった十六夜少年について問い掛けた。
「お、お二人はお気づきに?」
「あのヘッドホンの人ですか? あぁ、そういえば何処か行っちゃいましたね」
「ふわぁ……」
しかし返ってきた返事はある意味、耀と飛鳥よりも酷いものだった。
「ど、どうでも良さそうですねお二人とも?」
「見た限りじゃ言っても聞きそうも無いタイプですし?
保護者が必要なお歳でも無さそうでしたので」
「どうでも良い。つーかそもそも名前も知らねぇ小僧に気を回す程親切じゃない」
「Oh……」
最悪死んでても本人の責任だろと言わんばかりの態度に先程と同じく黒ウサギはそれ以上追求する気分を一気に削り取られてしまう。
しかしそういう訳にもいかず、一刻も早くあの十六夜少年をひっぱたいてでも連れ戻さないといけないと、立ち直った黒ウサギは髪を緋色に染め……。
「黒ウサギは問題児達を捕まえに参りますので、ジン坊っちゃんはお二人のご案内をお願いします!
一刻程で戻ります! 皆さんは箱庭ライフを御堪能くださいませ!」
一気に走り出し、弾丸の速度を持ってあっという間に四人の視界から消え去って行った。
その様子を飛鳥が感心した様に呟く。
「へぇ、箱庭の兎は随分と速く跳べるのね」
「はい、ウサギ達は箱庭の創始者の眷属ですから」
感心する飛鳥に緑髪の少年……ジンが黒ウサギのルーツを説明しながら、引き継ぎの案内人を名乗り出る。
「あ、僕はコミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。それで四人のお名前は?」
「私は久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えている人と、茶髪と白髪の人が……」
「春日部耀。よろしく」
「搭城小猫です。で、彼は兵藤一誠」
「…………」
「では自己紹介も済んだ所で、箱庭の中をご案内致します」
相変わらず名乗ろうとしない一誠の態度に若干顔をしかめる飛鳥だが、白音がフォローすることで波風を立つことも無くジン少年先導で外門を潜るのであった。
『お、お嬢! これは凄いで! 外から天幕の中に入った筈なのに、御天道様が見えとる!』
「本当だ、空から見た時は箱庭の内側なんて見えなかったのに」
へー? 中々の仕掛けですね……あの三毛猫さんも騒いでますよ。
「村人AとBになれる条件としては良いですね此所」
「後は食い扶持の確保か……また農業でもやるか?」
外敵から身を守る仕掛けだったのでしょうか、最初に空から落ちた時はこんな街並みは見えなかったというのに、門を潜れば街がある。
仕掛けとしては中々良いものだと思う私としては、これから先輩と村人AとBになれると少し期待が持てる。
「わあ、獣人達がいっぱい……」
「はい、この箱庭には人間や獣人は勿論、修羅神仏や精霊、悪魔等様々な種族が住んでいます。先程の吸血鬼も同じですね」
「箱庭って本当に凄いわね」
三毛猫の人がそう呟くその周囲には、確かに頭に獣の耳を生やした獣人達が大勢とその街並みを賑わせていますけど……。
「………」
「先輩どうします? 耳出してあげましょうか?」
「別にいらねーよ」
本当に間が良いというかなんといいますか……。
五千年くらい前の先輩が今見るこの光景を見てたら、多分間髪いれずに破壊して回ってたんだろうなぁ……と懐かしくも思いますよ。
何せ私のせいで獣人タイプは大嫌いでしたからねぇ……。
「ほら先輩、あんな人達より私を見てくださいよ?」
「あ? ………けっ」
今はそうでもありませんけどね……。理由? 当然私ですけど?
「まだ皆さんは箱庭に召喚されてばかりで落ち着かないでしょう。この後の説明は軽く食事をしながらでもどうですか?」
「そうね。そうさせて貰うわ」
三毛猫の人と同じように……かつその意味は真逆に街を横行する人々を眺めていると、ジンとかいった子供がご飯を奢ってくれるとの事なので、お腹が減った私と先輩は黙って素直に変な模様の旗が掲げられてるカフェらしきお店に入り、それぞれ注文を始めるのですが……。
「えーと、紅茶三つに緑茶をひとつ、後は……」
『ネコマンマを!』
「はいはーい。ティーセット四つにネコマンマですね〜」
同族……いや、私自身の種族とは少し違う? まあとにかく括りとしては同じ種族とも言える猫人が店員さんに私は少しばかり懐かしさを覚えた。
先輩も気付いたのか、愛想の良いその猫人さんをジッと気づかれない様に眺めている。
「先輩、あんまり店員さんを見てると思わずしゃくしゃくしちゃうかもしれませんよ……?」
「あ? ふん、くだらねぇ」
ちょっとモヤモヤするので、何と無く言ってみれば直ぐに先輩は不貞腐れた様に視線を切ってくれました。
ふふ、前の世界でもそうでしたけど、やっぱり先輩の興味を引くものは何でもかんでもモヤモヤしますねホント。
「言葉が分かるの?」
そんな私達のやり取りとは別に、猫人の店員さんがあの三毛猫の言葉に対して普通に反応していた事に、三毛猫の人が信じられないものを見る様な目で店員の少女に問い質しています。
どうやら三毛猫さんの言ってることがわかってるのが信じられないらしい。
「そりゃ分かりますよー私は猫族なんですから」
そんな三毛猫の人の質問に店員さんはニコニコしながら己のルーツを話すと三毛猫の人はまたも驚いてます。
『ねーちゃんは、良い猫耳に尻尾やなぁ』
「お客さんったらお上手ですねぇ~」
三毛猫の褒め言葉に店員さんは上機嫌で店内に戻って行く。
「箱庭って凄いね……私以外に三毛猫の言葉が分かる人がいたよ」
『来て良かったなお嬢』
「ちょ、ちょっと待って! 貴方まさか猫の言っている事が分かるの!?」
ホンワカした表情で猫を撫でる三毛猫の人に、今度は偉そうな方の人が驚いた表情をしながら三毛猫の人に尋ねている。
「うん猫だけじゃなく、生きているのなら何でも……」
「素敵ね、ならそこを飛び交う鳥とかも?」
「うん、きっと出来ると思う?
えぇっと、待って、断言は出来ない。
何せ鳥で話したことがあるのは雀や鷺や不如帰とかペンギンとか――」
「「ペンギン!?」」
「う、うん。水族館で知り合った。他にもイルカ達と友達」
へー……言語の壁が無い人だったんですね。
「し、しかしすべての種と会話が可能なら心強いギフトですね。
この箱庭において、幻獣種等との言語の壁というのはとても大きいですから」
「そうなんだ」
それは別に関わらなければ関係も無いような……あ、そっか、この人達はギフトなんたらをやるんでしたね。
それなら確かに言語の壁が関係なくなるのは心強いかもしれません。
『それよりお嬢、さっきお嬢はあの猫族って言ってたねーちゃんに感激してたけど、実の所その前に実は会ってんねんで?』
「へ?」
精々私と先輩の村人A&B生活の外で頑張って欲しいものです……なーんて思いながら然り気無く先輩と二人で店員さんにメニュー全てを注文し終えた時でした。
スルーされてたのでてっきり気付かれてなかったのかと思ってたのですが、例の三毛猫の人が抱えてる猫が急に私に視線を向けながら、三毛猫の人に私の正体の一つをバラシてくれました。
お陰で三毛猫の人が目を見開きながら私を見るじゃありませんか……余計な事を。
「? どうしたの春日部さん?」
「アナタも、さっきの人と同じ猫族だったの……?」
「え……!?」
チッ、釘を刺す前に三毛猫の人にバラされてしまいましたか……。
偉そうな人もジンという子供も私に向かって目を丸くしてるじゃないですか……。
先輩は……あ、ダメです、我関せずです。
「この世界の猫族というのがどんなルーツかは知りませんけど、確かに私の種族は猫又ですよ。
まさかそこの三毛猫さんにバラされるとは思いませんでしたけど」
仕方ないので観念して教えるだけ教えようと、私は普段は隠している猫又としての証を見せてあげる。
「猫耳……」
「猫又って……貴女妖怪だったの?」
「分類上は……ですがね。あ、別に悪さなんてしませんので悪しからず。ちなみに一誠先輩は雑じり気無しの純粋な人間です」
先輩と猫耳メイドコスプレご奉仕プレイの時のみしか出さない耳を見せながら、猫又という種族に驚くお三方に簡潔な説明をしておく。
人間にしてみれば妖怪なんてマイナスイメージしかありませんからね……この世界の人であるこのジンという子供はどうだか知りませんが、少なくととこのお二人には言っておかないと面倒な事になりそうですから……。
「じゃ、じゃあこの猫の言葉も……?」
「ええ、わかりますよ」
まさかこんな近くに既に居たとは知らなかったせいか、感情の起伏が微妙だった三毛猫の人が少し興奮していると、その三毛猫がニャーとお二人にとってはそう聞こえる鳴き声を放つ。
『さっきのねーちゃんと比べると、ちんまいけど、お前さんも中々良い耳しとるなぁ?』
「褒め言葉として一応受け取っておきますよ。貴方もこの人に相当可愛がられてるみたいで……」
「ほ、本当に会話出来てる……」
スゴいスゴいと小さく呟きながら妙に目を輝かせる三毛猫の人。
さっき猫族って人と会ったのにそんなに驚く事なのか? と思うけど、この人にしてみれば経験の無い事なのだから仕方ないのかもしれません。
『後でお前さんの尻尾と耳を甘噛みしても――』
ただ、地雷はダメだと思うんですよね……踏んだら。
軽い挨拶代わりのつもりだった。
そう、つもりだった。
「……………………おい」
「なに……っ!?」
三毛猫が白音に先程の猫族の店員に対してと同じ口上を白音に対して向けたその瞬間、それまで頬杖付いてシラけ顔になっていた一誠が、『まるで三毛猫の言葉が通じてる』かの如く三毛猫へ真っ直ぐ……強烈な殺意を解放する。
『な……な……!』
生物的な本能というべきか、その殺意はストレートに三毛猫の恐怖を刺激させ、また巻き込まれる形で受けた耀もその場から筋一つ動かせる事ままならず、ガチガチと全身を震わせた。
しかも器用な事に、その濃厚な殺意は周囲に影響を与えず三毛猫と耀……飛鳥とジンに向けられており、周囲の人々は何も知らず賑わっている。
「あ……ぁ……」
「ぅ……!?」
完全に巻き込まれただけの飛鳥とジンは、突如一誠が放った凶悪な殺意に混乱しつつ猛烈な吐き気に口を抑える中、金縛りにあったように動けない耀と三毛猫に向かって一誠は言った。
「冗談として笑って済ませてやるが、次白音にさっきの台詞吐いたら、まずその両目を抉り、手足をもいで内臓を引きずりだしてからウジ虫の餌にする……………わかったか?」
『は、はいぃ……!』
「それと飼い主のガキ。今然り気無く白音の耳に触ろうとしてたが………そんなに手首から先が要らねぇのか?」
「い、いや……その………」
意味がわからない。何で急にキレた? そう吐き気を我慢していた耀と三毛猫だったが、それまで無口だったのを急に流暢にペラペラと物騒に話す言葉を聞き、何と無く一誠の性格とキレた理由がわかった気がした。
「大丈夫ですよ先輩、別に触らせるつもりなんてありませんし」
白音のお陰でなんとか一誠は殺意を引っ込めたものの、耀と三毛猫は――特に三毛猫の方は二度と白音に冗談半分の言動は止めると心の底から誓うのだった。
「チッ……」
「あーごめんなさい。私もそうですけど、冗談半分でものを言われるのが先輩は大嫌いなんですよ」
「う、うん……」
『い、今よーくわかったわぁ……あは、あははは……』
「「……」」
何とか不機嫌無口モードに戻る一誠の代わりに白音が嫌にニコニコと……妙に嬉しそうに一誠の特性を語る訳だが、三人と一匹はただただコクコクと頷くしか出来ない。
自分の過去と現在全てを知るのは白音だけ。
そしてその白音に『敗け』を認めてしまったからこそ受け入れた全て。
それ故なのか、一誠は信じられない事に白音に対して一種の独占欲的な感情を持ってしまっていた。それは無論、白音も……。
「ちょっと待ってくださいね? 今先輩の機嫌を直すので」
只の猫にまでそれを発動する辺りが相当歪なのだが、それを訂正するつもりも、訂正させるつもりもない……ある意味でのバカップル。
一誠が嫉妬に駆られて自分に対する独占欲を見せてくれた事に白音は頬を上気させ、下腹部に熱を感じながら何も言えない三人と一匹に笑みをそう言うと、殺意は無いものの物凄く不機嫌な一誠に寄り添い、ソッポを向いていたその顔を自分の方に向けさせ……。
「んっ……」
「「「「!?」」」」
人々居まくりなカフェのど真ん中で、堂々と唇を重ねだした。
「んんっ……! はむ……! ちゅ……!」
しかも結構スゴい方の……。
「なっ……な!? み、見てはダメよ!」
「うわ!?」
咄嗟にジンの目を覆って塞ぐ飛鳥は、まだやってる二人にドン引きしつつもカァっと真っ赤になりながら目が離せない。
「ぅ……」
『ま、マジかいな……狂っとるとであの二人』
それは勿論耀もであり、三毛猫にですらドン引きさせるという快挙まで成し遂げた。
「はぁ……ぁん……♪」
「何のつもりだテメー?」
「あは……♪ 先輩大好き……♪」
「…………」
しかししょうがない……そんな人生と経験を経たからこそのバカップルなのだから。
ちなみに偶々来ていた客や働いてる店員からも見られてしまい、ある意味この瞬間顔を覚えられてしまったのは言うまでもなく……。
「あ、さっきの店員さん……休憩所システムがある宿屋さんとかここら辺にありますか?」
「え!? え、えーっと……」
「アナタも猫種族ならわかりますよね? 発情入ると我慢できなくなっちゃうくらい?」
「い、いやいやいや! まだそんな季節じゃありませんよ!? そ、それにここら辺には残念ながら……」
「そうですか……なら人気の無い場所にでも――」
「や、やめなさい!! な、何てふしだらなのよアナタ達は!?」
完全にスイッチの入った白音を止めるのに、精神的な労力を全消費する事になるのだったとか。
補足
バカップルなのでは無いのか? そう思い始めてる。
スゴいよね、もう白音たん大勝利やでホンマ。
その2
というか、一誠も一誠で白音たんを受け入れちゃったせいか、色々とぶっ壊れてる色々と酷い。
だって普通の三毛猫に嫉妬て……。
ちなみに然り気無く白音たんの中で独白してましたけど、割りとやってる内容は多岐に渡ってる。
猫耳メイドコスプレご奉仕プレイしかり
制服プレイしかり……。
まあ、この白音たんがロリエロ化限界進化なんで仕方ないね……