色々なIF集   作:超人類DX

138 / 1033
これで最後…。
ぶっちゃけこれ以上やるなら『戦争』レベルの災害が発生しちゃうので……


村人AとBの為に脅す大人げなさ

 何とか白音の発情を落ち着かせた……といっても一誠が一言言っただけなのだが、とにかく何とか落ち着かせられる事に成功した。

 

 この時点で飛鳥、耀、ジンは精神的な疲労が半端無く、またカフェ店内も色んな意味でシーンとなった訳だが……。

 

 

「おんおや、誰かと思えば東区角の最底辺コミュニティ “名無しの権兵衛” のリーダーであるジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

 

 

 今来たばかりなのか、先程のネトネトした空気を知らずにやって来た何者かにより、話は加速していく事になる。

 

 

「僕らのコミュニティは『ノーネーム』です。 フォレス・ガロのガルド=ガスパー。それと貴方の同席を認めたつもりは――」

 

「別にお前の許可なんて求めるつもりはねぇよ、黙ってなジン=ラッセル」

 

 

 出で立ちからしてイロモノキャラを感じさせる男の嫌味しか感じられない挨拶に対し、ジン少年は怒りを孕んだ声で訂正させようと睨む。

 しかしサイズが全然合ってないタキシードを着込むイロモノキャラ――ガルド=ガスパーは、そんなジン少年の言葉を軽く流し、寧ろ更に見下している。

 

「ちょっと待ちなさい。何やらお互いに険悪な空気を放ってるのは察するけど、そこの貴方は何処の何方なのかしら?」

 

「おおっと、これは失礼お嬢様方。

私はコミュニティ“フォレス・ガロ”のリーダーを勤めさせて頂いております。名をガルド=ガスパー、以後お見知り置きを」

 

 

 そんな空気を察して飛鳥が間に入ろうとガルドなる者に何者かと尋ねると、途端に愛想笑いを込めながら飛鳥と耀……そして然り気無く店のメニューの品を全部頼んでムシャムシャとマイペースに食べてた一誠と白音な挨拶をする。

 

 

「それで? そのガルドさんが私達に何のご用?」

 

「ええ、単刀直入に申しますとアナタ達を我がコミュニティに勧誘しようと思いまして……」

 

「っ!? な、何を言い出すんだガルド=ガスパー!?」

 

 

 勧誘……つまりまだ加入前の飛鳥達の引き抜きにやって来たと別コミュニティのリーダーであるジンの目の前で言ってのけたガルドに、ジンは大声を挙げて抗議の声を出す。

 しかしやはり子供のせいか、ガルドはそんな彼をフンと鼻を鳴らしながら一蹴しつつ口を開く。

 

 

「黙れジン=ラッセル。

そもそもテメェが名と旗印を新しく改めていれば最低限の人材はコミュニティに残っていたはずだろうが。

それを貴様は過去の栄華に縋りたいのか何だか知らねぇが、自分のコミュニティがどういう状況に置かれているのか理解できてんのかい?」

 

「っ……」

 

 

 ガルド畳み掛ける様な言葉にジンは言葉を詰まらせる。

 するとそこにきて、コミュニティの状況という言葉に飛鳥が反応し、黙り込んでしまったジンに質問を投げ掛けた。ちなみに一誠と白音は一応聞いてはいるものの、呑気にムシャムシャと食べてる。

 

 

「どういう事かしらジン君? コミュニティが置かれてる状況というのは?」

 

「そ、それは……その……」

 

 

 飛鳥の鋭い視線にジンは圧倒されてしまう。

 だがそれが言い難いものなのだろうか、ジンは中々話そうとせず、それを見ていたガルドがフンと彼を見下しつつ飛鳥に自分が代わってお教えしようと、ジン=ラッセルがリーダーを勤めるノーネームコミュニティの現状を話始めた。

 

 

「ではレディ達はコミュニティについての説明は?」

 

「先程『ある程度』説明を受けたから結構よ」

 

「失礼、では一応確認の為にコミュニティは活動するうえで箱庭に『名』と『旗印』を申告しなければいけません。

 特に旗印はコミュニティの縄張りを主張する大事な物。この店にも大きな旗が掲げられているでしょう? あれがそうです」

 

 

 と、ガルドはこのカフェに掲げられていた六本傷の旗を指す。

 

 

「六本の傷が入ったあの旗印は、この店を経営するコミュニティの縄張りである事を示します。

そしてもし自分のコミュニティを大きくしたいのであれば、あの旗印のコミュニティに両者合意の上で『ギフトゲーム』を仕掛けて勝利する。

私のコミュニティはそうやって大きくしました」

 

 

 と、自慢げにガルドは己のコミュニティ旗印が印されたタキシードの胸元を見せる。

 その旗印を見た飛鳥達は、このカフェに入る前に散策していた街の至る所に掲げられていた事を思いだし、ガルドに尋ねる。

 

 

「この街に入り、このカフェに入るまでの間にその紋様が掲げられていた建物を見たけど、縄張りを示すというのならこの近辺はほぼ貴方達のコミュニティが支配していると考えていいのかしら?」

 

「そうなります。

ちなみに、この店のコミュニティは南区画に本拠があるため手出しはしておりません。

が、この外門付近で活動可能な中流コミュニティはすべて私の配下です。

残すは本拠か他区か上層にあるコミュニティか、奪うにも値しない名もなきコミュニティぐらいです」

 

「………く」

 

 

 嫌味の籠った視線をジンに向けつつ話すガルド。

 

 

「これでも実は貴女達の所属しようとするコミュニティは、数年前までこの東区画最強のコミュニティだったんですよ?」

 

「へぇ、それは意外ね」

 

「勿論当時のリーダーはジン君ではありませんでしたけどね。

比べ物にもならい優秀な男だったそうな」

 

「っ……ぐ!」

 

 

 ガルドの言葉にジンが怒りと悔しさを抑えるように自身の服の裾を掴んでいる。

 

 

「しかしそれでも、『魔王』による攻撃でほぼ壊滅。

名も、旗印も、主力陣も全てを失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。

これでもし彼がリーダーとなった時点で新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたのでしょうが、現状はこの通り……今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありませんよ」

 

「なるほど、つまり “魔王” というのはこの世界で特権階級を振り回す神様等を指し、ジン君のコミュニティは彼らに玩具として潰されたというこのなのね?」

 

「そういう事です。なので私はアナタ方を勧誘しに来たのですよ」

 

 

 フッと笑みを浮かべて勧誘理由を話終えたガルド。

 だがそこでやっと我慢の限界が来たのか、それまで何も言えなかったジンが大声でガルドに向かっていく。

 

 

「ふざけないでくださいガルド=ガスパー! この人達は――」

 

「お前の一存で名を残したコミュニティの存続が危うくなったら異世界から人材を呼び出す。

確かに異世界から呼び出した者なら、今のテメーのコミュニティの現状を知らせないまま取り込めるかもしれねぇのは良く考えてるとは思うが、結局それは黒ウサギと同じ苦労を負わせると同義だろ?」

 

「そ、それは……!」

 

「それに、どのコミュニティ加入するかまで、レディ達はこの箱庭で三十日間の自由が約束されている。

だったら勧誘する事自体何も悪くはねぇ……違うか?」

 

「う……」

 

 

 しかし一瞬にして封殺されてしまい、またしても言葉を詰まらせてしまったジンをガルドはそれ以上相手にしないと視線を切ると、黙って見ていた飛鳥達に再び勧誘の言葉を送ろうとしたのだが……。

 

 

「折角だけど、私は遠慮するわ」

 

 

 まず一人、飛鳥がガルドの勧誘を断った。

 一瞬面を喰らった表情を浮かべるジンとガルドだが、笑みを崩さぬよう勤めながらその理由を問う。

 

 

「理由をお聞かせ頂いてもレディ?」

 

 

 だがそんなガルドの問いを無視した飛鳥は、飲んでいた紅茶を飲み干すと、同じく静観していた耀に笑みを溢しながら話しかける。

 

 

「春日部さんはどうかしら?」

 

「私は別に、元々来た理由も友達を作りたかったからだし」

 

「あらそうなの。じゃあ私が友達一号に立候補してもいいかしら? 私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするわ」

 

「……うん、アナタは私の知ってる人達とはちょっと違うから大丈夫かも」

 

 

 唖然となるガルドの目の前で、飛鳥と耀が友達となり、その流れで飛鳥はガルドに告げた。

 

 

「と、いう理由だから、私と春日部さんはジン君のコミュニティで間に合ってるわ。何せどちらでも良いし……でしょ?」

 

「うん」

 

 

 即答する耀。

 勧誘を蹴ったという二人の意思にジンの表情も明るくなる。

 

 

「だから残念だけど――」

 

 

 帰れと宣言しようとした飛鳥はこの時点で誰もガルドのコミュニティには入らないだろうと思っていた。

 理由は無いが、何と無くそう思っていた……。

 

 

「別に私と先輩はそちらに入っても構いませんけど」

 

 

 

 そう、既に食べ終えていた二人の気紛れな超越者が発言してしまうまでは……。

 

 

「な、なんですって!?」

 

「!?」

 

「!? よ、よろしいのですか?」

 

 

 バカな!? と飛鳥は今まで浮かべていた余裕だって表情を崩しながら、山の様な食器を前に平然としてる一誠と白音を睨む。

 

 

「な、何でかしら?」

 

 

 この流れなら普通ジン君のコミュニティでも構わないだろ!? と思いつつ動揺しながら質問する飛鳥に対し、相変わらず無口になってしまった一誠の代わりに白音が答える。

 

 

「別に理由なんてありませんが、強いて言うならそこの人のコミュニティの方が良い暮らしが出来そうな気がするだけですよ」

 

 

 あくまで快適な生活の為だと話す白音に、既に自分達以上に異常な二人が敵に回ったらマズイと考える飛鳥は、らしくもなく二人を説得する。

 

 

「そ、そんな理由で……?

いえ、そもそもアナタ達はギフトゲームに参加しないつもりなんでしょう? だったらこのガルドのコミュニティに入ればギフトゲームをやらなければいけないかもしれないのよ?」

 

「あー……それは確かに嫌ですね」

 

「で、でしょう? それなら――」

 

「俺からすれば、そこのガキのコミュニティとやらに入ろうとも似た様な展開になりそうなもんだがな」

 

 

 一瞬考え直す素振りを見せた白音だが、ここに来てまさかの一誠が口を挟む。

 

 

「確か一ヶ月近くはどこにも所属しなくても良いんだろ? だったら今すぐ決める事もねーだろ。

つーか、そこのガキのコミュニティとやらも、そこのガルドとか言った奴のコミュニティとやらも両方とも地雷な気がしてならねぇ」

 

「あー確かにですね。そこの紳士ぶってる人から『大量の血の匂いが』しますしねぇ? 殺しの片棒なんて担がされたく無いですよね」

 

「っ!?」

 

 

 白音がニタァとしながら口走った言葉に、身に覚えがあるかの様に硬直するガルド。

 

 

「ねぇ、紳士さん? アナタ、昨日何人殺しをしましたか? ねぇねぇ、教えてくださいよぉ?」

 

「っ!? うぐ……な、何の事だか……!」

 

 

 最初は別に入っても良いと言われ、少し喜んだガルドだったが、ハッキリと今後悔していた。

 小柄な少女の妙に甘えたイントネーションで、隠し事について突つかれ、茶髪の少年共々『得体の知れない』雰囲気に吐き気まで覚える。

 

 

「何だ教えてくれないのか……ならお前の所もやめとくか」

 

「ええ、この人も地雷な気がしますし」

 

「っぷ!? お、おげぇぇぇ!!!」

 

 

 何だこの二人は? 何だこの吐き気は? 何だこの寒気は!? 気付けばガルドは店内で盛大に胃の中のものを吐き、膝を付く。

 

 

「ジ、ジン=ラッセルぅぅ……!! く、黒ウサギは何を呼び出したぁ!?」

 

「わ、わかりませんよ僕だって!? お、お二人はこのお二人の事を何か知らないんですか!?」

 

「わ、私にだってわからないわよ……な、何なのよ……」

 

「………ぅ」

 

 

 寧ろ精神に異常をきたさないだけ、ガルドを含めた四人の精神力は高い方とも言える。

 しかし、最早それも限界に近かった。

 

 

「なぁ、ガキ? お前のコミュニティとやらが絶滅しようが知った事じゃねーが、あの黒ウサギとかいう女が俺と白音を呼び出した以上、同コミュニティのリーダーであるお前にはある程度責任を取って貰わないといけないんだよ……わかるよなぁ」

 

「く……うぷっ!?」

 

「あ、吐いたらダメですよ坊や?

ほら背中を擦りますから先輩の質問にちゃんと答えましょう?」

 

 

 ガルドはそのまま自分の吐いた汚物にまみれた床に倒れ、気絶している。

 更にいえば、関係ないお客や店員も全員泡を吹きながら気絶しており、意識を辛うじて保っているのは飛鳥と耀……そして白音によって強制的に意識を保たされているジンだけだった。

 

 一瞬で出来上がったそんな地獄絵図の中、揃って嗤う一誠と白音は、涙や鼻水で大変な事になってるジンに、マイルドに言っても脅迫に近い真似を続ける。

 

 

「どうする? 俺と白音を村人AとBと迎え、ギフトゲームとやらに一切関わらせない事を今この場で誓うか? 誓えないなら今ゲロまみれになってお寝んねしてるそこの奴を叩き起こして『強制的に』誓わせちゃうが?」

 

「ぉ……が……ひ、ひぃ!?」

 

「うーん……これ多分無理ですよ先輩。

仕方ないので、このガルドって人を脅して――」

 

「ま、待ちなさい!!」

 

 

 先にフォローすると、一誠と白音は別に『何も』していない。

 ただそれまで適当に抑えていた『自分の本質』を表に出しただけだ。

 

 なので自分達が悪いことをしてるなんて全く思わないし、だったら呼ばなければ良かったんだと開き直ってすらいる。

 

 寧ろその得体の知れない恐怖と吐き気に顔を死人の様に青くしながらも、死にそうになってるジンを助けようと二人に大声をあげた飛鳥は評価に値するものだ。

 

 

「何だ偉そうなガキ?」

 

「え、偉そうって……い、いえこの際それで良いわ。

今すぐ『ジン君を解放してその気持ち悪い雰囲気を引っ込めなさい』」

 

 

 必死に精神を潰されないようにと踏ん張りながら飛鳥は己の『異常な力』を込めて一誠と白音に命令した。

 しかし……。

 

 

「お? くく、おい偉そうなガキ。お前、他人に言うことを聞かせることに絶対の自信があるようだな?」

 

「……!?」

 

 

 聞いてない……いや効いてない。

 しかもこの一回で完全に看破され、飛鳥は目を見開く。

 

 

「先輩って洗脳的な力を一番嫌うんですよねー……」

 

 

 更に地雷を踏んでしまったらしく、白音がボソリと呟いたのが耳に入った飛鳥はゾッとする。

 

 

「昔まだガキの頃、俺の力を利用したがる馬鹿に無理矢理使役させられたクソみてーな思い出があったなぁ…………当然そいつ等は種族ごと皆殺しにしてやったがね」

 

「わ、私を殺す、つもりなの?」

 

「はぁ? 何でそうなるんだ? 昔だって言っただろ? 一応今の俺は、一々払ったゴミを踏み潰してやる程、細かい性格じゃあ無いんだよ」

 

 

 しかし一誠はそんな飛鳥にくっくっくっ、嗤い掛け……ある意味プライドを踏み潰すが如く見下すと、そのまま本質を引っ込めた。

 

 

「まぁ、一々オーバーに気絶しなかっただけでもそこの小娘共々マシだっつーのはわかったよ。

だから精々これからこの小僧の為にあくせく働いてくれよ? 俺の村人A生活の為にな?」

 

「……っ、アナタ、まさか最初からそのつもりで……! 私達がジン君達のコミュニティに所属してギフトゲームをする背後で怠ける為に……」

 

「怠けるとは心外ですね。一応農業でもして自給自足で生活するつもりですよ? だって村人AとBというのはそういうものでしょう?」

 

「…………」

 

 

 睨む飛鳥達に対して一誠はヘラヘラと嗤う。

 結局、この茶番も脅しのつもりでしか無かったのだ。

 

 村人AとB生活だけしかしない、もし邪魔するなら……。

 

 

「う、うぅ、ぼ、僕は……?」

 

「「………」」

 

「後はあのウサギと小僧か……。

くく、ウサギはともかくとして、あの小僧は一筋縄ではいかなそうだな」

 

「力を持て余してる感じがしますからね……まぁ、持て余してる様なら、そんな悩みを否定してあげて解消させてあげても良いんですけどね……ふふ」

 

 

 ぶち折る。

 一誠と白音は静かに暗躍を開始するのだった。

 

 

終了。

 

 

 




補足

活動報告にどんな世界かの募集の続きをやります。


シリーズはこのままネオ白音たん勝利ルートで

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。