色々なIF集   作:超人類DX

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何かホント急に……うん。

※短いと思い、少し継ぎ足しました……5000字程


ヴァーリくんの受難……始まり編

 一緒に居るからだとか、そのままの姿で居ることを強要しているからだとか、卑猥な事を言わせてるだとか……。

 

 そんな風評が勝手に広まっている内に、気付けば俺はロリコン呼ばわりされていた。

 

 勿論俺はロリコンじゃないし、寧ろ好みはムッチリボインの女の子だ。

 

 だというのに、何処の誰が広めてくれたのかは知らんが、世界を跨いでも俺はロリコンと後ろ指を指されていた……ちきしょう。

 

 

 

 

 とある街のとある職仲介施設(ギルド)にて、本日より新たに登録を完了した者が生まれた。

 

 

「では此方にお名前と年齢をお願いしまーす」

 

「ふむ……」

 

 

 暗い銀髪、深い海を連想させる蒼い瞳。

 身長がちと低いかもしれないという点以外では割りとイケメンなのかもしれない少年は、愛想の良い職安のお姉さんに促される形で、出された用紙に自分の名前、年齢、その他を記入していく。

 

 何でもこの記入による登録を経て、個人の能力を審査し、それに見合った職を断定させるものらしい………と、事前に聞かされていた少年は一瞬本名で大丈夫なのか? と心配になり、取り敢えずラストネームを省いて記入した。

 

 

「書いたぞ、これで良いのかい?」

 

「はーい、ではお預かりしまーす!」

 

 

 職安のお姉さんにプロフィール記入済みの書類を返還し、敢えてすっとぼけた顔で待ってみる。

 するとどうやらラストネームを省いても問題無かったらしく、受けつけのお姉さんは笑顔で職安(ギルド)カードの作成と能力審査を開始する。

 

 

「ええっと……新人さんを早速審査してみた所、全ての能力が平均より若干下回っているといった感じですね。

となると、上位職はいきなり無理にしてもどの下位の職業なら何でもこなせると思います」

 

「…………ほう」

 

 

 能力が平均以下。そう下された銀髪の少年は特に悔しがるでも無く淡々とした表情だった。

 が、しかしその内面は……。

 

 

(……。ということは散らばってるアイツ等も相当弱体化しているのか? チッ、あのよくわからん女神とやらのせいで散々だぞ)

 

 

 忌々しげに舌打ちをしながら、この場所に立つ理由を回想し、もう一度舌打ちをする。

 元々の力そのままならとっくに『終わらせて』からゆっくりと同じ理由でこの地のどこかに居るだろう友達を探そうと思ってたのに、現状元の力の1000億分の一以下にまで抑えられてしまってる始末。

 

 自慢の相棒の力も基礎の基礎しか使えないし、もっと言えば飛行するにも相当な労力を強いられるにまで弱くなってる。

 

 

(まあ、鍛え直して力を取り戻せば何の問題も無い。

アイツ等に笑われたくないしな)

 

 

 だからこそ少年は色々と考えた結果『実戦経験』が詰めそうなこの職安(ギルド)にて、地道で堅実に戦闘の勘を取り戻してやろうと、今こうして登録を勘力させようとしていたのだった。

 

 

「……。ふむ、全てが平均ならこの冒険者とやらで良い」

 

「え、よろしいのですか? 言っては何ですが、余りお勧めは……」

 

「構わないさ、昔から友達に器用貧乏呼ばわりされていたからね」

 

「は、はぁ……」

 

 

 ぶっちゃけ職なんて何でも良かった銀髪の少年は、基礎職である冒険者での登録をこれにて完了させる。

 そしてお次は待ちに待った実戦勘取戻しの為の職紹介…………の、筈だったのだが。

 

 

「えっと、新人さんのレベルだとこの辺りが妥当かと」

 

「……。薬草採取、鉱石堀り、…………土木建築の手伝いだと?」

 

「は、はい……流石にいきなり高レベルのクエストをご紹介する訳にもいきませんので……」

 

「……そうなのか」

 

 

 紹介された職は少年の目的とはかけ離れた安心安全低賃金なものばかりであった。

 とはいえ、受け付けのお姉さんの言ってる事もまた正論だし、たった今登録を完了した奴にいきなり高レベルのクエストを紹介して死んだともなれば、この職安全体の信頼にも関わる。

 

 故に少年は多少不満だったけど、こればかりは地道に経験を積んでからじゃないと駄目かと納得する事にして、紹介された仕事の中でも身体を動かせる仕事は無いかと吟味する。

 

 

「まともに運動できそうなのが土木作業員だけか……」

 

 

 が、どう探しても新人職人である少年に適した仕事でマシなのが土木作業員の手伝いしか無く、少年の眉尻もへの字に下がってしまう。

 

 それを見かねた……というよりは、『母性本能』を擽られてしまった受け付けのお姉さんは、本当は贔屓しちゃいけないと分かっていながらも、銀髪碧眼の少年に対して小声で口を開いた。

 

 

「えっと、本当はこういうのはダメなんですけど、サービスで一つ上のクエストを紹介しましょうか?」

 

「……! ほ、本当か!?」

 

 

 その瞬間、それまでちょっと凹んでた少年の表情がまんま子供のそれと同じ様にパァと明るくなった。

 お姉さんの知るところでは無いが、この少年……実の所仲間内では最も子供っぽく、服の趣味もまた子供だった。

 

 故にそんな純粋とも言える表情を向けられたお姉さんは、一気に少年に対して猛烈な気持ちを抱いてしまう訳なのだが、そこは一応プロなので、取り敢えず心を落ち着かせつつ、わくわくした表情をする少年に一枚の職詳細の紙を手渡す。

 

 

「繁殖期となっている巨大蛙の討伐です。

五匹の討伐が最低条件で、一匹討伐につき報酬も上乗せになりますよ?」

 

「巨大蛙……ふむ、確かに運動にもなりそうだ。

よし、それなら――」

 

「ただし!」

 

 

 土木作業員の手伝いよりよっぽど良いと少年は直ぐにこの仕事を選ぼうとしたのだが、その前にお姉さんが挟む様にしてこう言った。

 

 

「このクエストを受けるには、最低二人のパーティを新人さんには組んでいただきます。

勿論レベルが上がればソロでも構いませんが、やはり新人さんなので……」

 

「む……なるほど」

 

 

 つまり、一人でも組んでその人物を介しての紹介なら可能……と遠回しに告げるお姉さんに少年は案外アッサリと納得した。

 

 

「よしわかった。それなら誰か組んでくれる人物とまた此処に来るから、待っててくれ」

 

「はい、お待ちしてます♪」

 

 

 よくわからい世界だし、安易に逆らうべきじゃないと少年は早速自分と組んでくれそうな他の冒険者に次々と声を掛けるのだが……。

 

 

「あん? 俺達と組めだぁ? おいおい、今登録したばかりの初心者なんかお断りだぜ」

 

 

 

「うーん、プリーストかウィザードなら良かったんだけど冒険者はちょっと……」

 

 

「なんだ男か……」

 

 

 

 

 

「………。新人というのは何処でもこんなものなんだな」

 

 

 やはり新人であることと、職の中でも最も嘗められがちな冒険者だというのもあり、中々少年とパーティを組んでくれるという者は見つからなかった。

 

 

「やはり土木作業員の手伝いから地道にやるしか無いのか……」

 

 

 これがもし友であるアイツ等が一緒だったら……と、散り散りになって今は気配すら掴めない友達を思い出し、ちょっとナーバスになる少年は、後一人声を掛けて断られたら、大人しく土木作業員の手伝いの仕事を貰おうと、職安内をもう一周歩き始める。

 

 

「ん?」

 

 

 すると先程一周した時には見なかった……いや、気付かなかっただけなのかもしれないが、とにかく少年の目に少し変わった様子の人物が止まった。

 

 

「でさー」

 

「へー?」

 

「…………ぅ」

 

 

 その人物は職安内の隅をウロウロしては、そこを通る他の職人達に声を掛けようとしては失敗し、また声を掛けようとしては失敗しの繰り返しで、何とも哀愁漂う姿で座り込んでしまっていた。

 

 

「………」

 

 

 その姿に誰も気づかれず、どんどんと存在感が薄れていく様に見えた少年は、最後に声を掛ける相手をその人物に決めた。

 これで断られた大人しく土木作業員だと内心苦笑いしながら……。

 

 

 

 

 少女はコミュ障だった。

 しかも中々に致命的なコミュ障だった。

 折角故郷から出て、魔法使いとして頑張って、ライバルを見返したりとか色々と目標を持っていた筈だったのに、現実はコミュ障の自分に頗る厳しく、結局職安に居ても誰からも気づかれず、声を掛けようとしても途中で声が出なくてパーティを組めもしない。

 

 

「………」

 

 

 結局自分はこんなザマのまま終わるのだろうか……とネガティブ一直線な思考のまま今日も職安の隅っこで体育座りするだけの一日となると思っていた……その時だった。

 

 

「失礼」

 

「…………?」

 

 

 声が聞こえた気がした。

 いや、これはどうせ幻聴か、もしくは自分の隣に居る誰かに話しかけたに違いない。

 そう決め込んで俯いていた少女なのだったが……。

 

 

「失礼、そこで体育座りしてる人」

 

「…………え?」

 

 

 違う、今完全に声の主は自分の事を言った。

 思わず勢いづいて顔を上げた少女は、ひゅっと呼吸を忘れて目の前に立って己を見下ろす男性に目を奪われた。

 

 

「もしだ、もしもの話だし、半分諦めてるつもりなんだが言わせてくれ。

新人冒険者なのだが、どうか俺とパーティを組んで今から仕事をしてくれないか?」

 

 

 暗い銀髪、空を思わせる蒼い瞳。

 顔立ちは整っていて、それはまるで何処ぞの王子の様な……。

 

 

「え……ぁ……わ、私、ですか?」

 

「あぁ、新人冒険者のせいか何処も相手にされなくてね。

正直これでダメなら諦めるつもりなのだけど……」

 

「わ、私で良いんですか……」

 

「? うん、キミさえ良ければだが……」

 

 

 自分で構わないと頷く少年に、思わず目頭が熱くなる。

 やっと……やっとお友だちが……苦楽を共に出来る仲間が……独りじゃないんだ。

 

 少女はそれはそれはもう、断る理由なんて無く、即座に首がもげそうな程に首を縦に振って少年の申し出を受けた。

 

 

「お、お願いします! わ、私なんかで良かったら、な、何でもします! ………グスッ」

 

「本当か!? やったぞ、これでまともな仕事が受けられる!」

 

 

 それぞれの思惑は別にして、こうして少年はこの地にて初の仲間を手にしたのであった。

 

 

「ふむ、となると早速仕事をやりたいのだが、一応名乗っておこう。俺はヴァーリ、職は冒険者だ」

 

「ヴァーリさん……ですね? えっとその……私は……あの……その……」

 

「? どうした?」

 

「いえその……引かないでくださいね?」

 

「うん?」

 

「わ、我が名はゆんゆん。族長の娘にして、やがて引き継ぐ者!」

 

 

 

「……………うぅ! や、やっぱり変ですよね? で、でもこれが故郷での名乗り方なので……」

 

「別に変とは思わないが、なんだ、ゆんゆんというのは本当の名前なのか?」

 

「は、はい……これも変ですか?」

 

「いや別に。

変わってるなとは思うが、笑うつもりは無いよ。

というか、人の名前を笑うなと義父に言われてるしな」

 

 

 

 ヴァーリ

 職・低レベル冒険者

 スキル・無し

 ステータス・平均以下

 

 

 補足……散り散りになった友達と合流する為、1000億分の1にまで弱体化した力をまずは取り戻そうと地道に頑張る白龍皇。

 

 

「何、アークウィザードなのか?」

 

「は、はい……一通りの魔法は覚えてます」

 

「なのに俺と組んでくれたのか? 不思議な奴だな、キミ程の者なら寧ろ周りから誘われそうなものなんだが……」

 

「あの……その……私、こんな性格なので……」

 

「なるほど……という事は俺は中々運に恵まれている様だ」

 

 

 裏補足……ロリコンの風評被害者二号予備軍。

 

 

 

 

 

 

 さてと……一々この世界とやらのルールに従うのは癪だが、洒落にならないレベルの弱体化を女神と自称してた訳のわからん女のせいで、されている内は大人しく思い通りになってやりつつ取り戻して見せるさ。

 一誠も曹操もオーフィスもソーナ・シトリーも居ないしな……。

 

 

「お友達……ですか?」

 

「あぁ、もし見掛けてたらで良いんだが……」

 

 

 巨大蛙の討伐という仕事を受け、街の外へと出て現場に向かう俺は今、先程この仕事を受ける上での条件となる為に必要だったという理由で組む事になった少女に、先の四人の特徴を説明しつつこの街で見かけなかったかと聞いてみる。

 

 というのも、あの意味不明な女のせいでこの世界に来た際岩場に居たのだが、四人の姿が何処にも無く、また気配も感じられなくなっていた。

 一応あの訳のわからん女神とやらの話を信じるならアイツ等もこの世界の何処かに居る筈なので、一刻も早く合流して修行相手になって貰いたいと思っているので、取り敢えず駄目元でこの魔法使いの少女……ええっと、ゆんゆんとやらに四人を見掛けたかを聞いてみたのだが……。

 

 

「えっと、多分無い……です。ごめんなさい……」

 

 

 どうやら見たことは無いらしく、やけにオーバーに落ち込みながやわざわざ謝られてしまった。

 別に謝る事じゃないのだが……と思ったが、そういえばこの少女は引っ込み思案なタイプで、また妙にネガティブな面が短すぎる付き合いの中でチラホラ伺えたのを思い出す。

 

 

「見掛けなかったら別に良い。

どうせその内嫌でも合流するのだし、ゆっくり探すつもりだしな」

 

 

 俺の知ってる『女』ってのは、どれもこれも自己主張の激しいというべきか、サンプルがあのオーフィスとソーナ・シトリーのせいかこの手のタイプは妙に新鮮な気がする。

 ………ふと気付いたが、一誠がもしこの少女を見たらはしゃぎそうな気がするな……何と無く。

 

 

「話は変わるが、キミは幾つになったんだ?」

 

「えっと……13歳です」

 

「ほーう、13か……くく、やっぱりアイツが見たらはしゃぐだろうな」

 

「へ?」

 

 

 うん、間違いない。

 あのロリコンの事だから恐らくはしゃぐに決まってる。

 何せ無限の龍神を人と変わらない肉体に変異させる決断をさせ、挙げ句成長させないままに留めさせてる程の筋金入りだからな。

 

 まあ、そんな事を本人に言ったら五度は殺されてしまうので言いたくても言えないが。

 

 

「あ、あの……ヴァーリさんのお年は?」

 

「俺か? 俺はもうすぐ17で、友人達の中では最年少だな」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。

まぁ俺達の中に年齢差なんてあって無い様なものだけど」

 

 

 ……ふむ、しかし俺は何でこの少女にこんな話までしてるのだっけ? あぁ、そうか俺な年齢を彼女に振ったからだったな。

 現場まで黙って歩くのも何か悪いと思ってつい話し込んでしまったぞ。

 

 

「さてと此処が現場なのだが……なるほど、アレが巨大蛙か」

 

「ジャイアント・トードです。そこまで危険ではありませんが、ああして家畜を舌を伸ばして捕獲して丸飲みにするので注意はした方が良いかも……です」

 

 

 なるほど……確かに3匹程のデカい蛙がこの少女――ゆんゆんの言うとおり家畜を丸飲みにしている辺り、それなりの注意は必要だ。

 

 が、所詮蛙は蛙……流石に弱体化したとしても、サクッと片付けてしまうだけの力は残っている筈。

 

 なので此処は……。

 

 

「一誠流・先手必勝!!!」

 

 

 試すつもりで一匹狩らせて貰う。

 早速、信じられない程に重く感じる身体で地面を蹴り、ぬぼーっとしていた蛙に接近した俺は、そのどてっ腹を貫こうとパンチを繰り出したのだが……。

 

 

「ぬお!?」

 

「ヴァーリさん!?」

 

 

 信じられない事に、俺のパンチは蛙のどてっ腹を貫く事は無く、そのままぐにょっとした感触と共に威力共々吸収されてしまう。

 いくら弱体化したとはいえ、こんな程度の両生類すら倒せない事に軽くショックを隠せなかった俺はついそのまま茫然としてしまい……。

 

 

「ぬわーーーっ!?!?」

 

 

 気付けば蛙の舌に捕らえられていた。

 

「こ、この……アルビオン!!!」

 

 

 子供の時の俺ですらやらない失態。

 というかアイツ等とアザゼルが見てなくて心底助かった。

 こんな蛙に捕らえられていた自力で脱出すら出来ないとか間抜けも良いところだからな。

 

 そう思って即座に相棒であり俺の力の一つである神滅具・白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の名の通り、その背にアルビオンの翼を展開し、多分人生で一誠にマジギレされて曹操共々チェーンソー振り回しながら追いかけ回された時並みに必死になって蛙の全てを半減させ、拘束を無理矢理抜ける。

 

 

「え……ヴァーリ……さん?」

 

「うぉぉぉっ!! 一誠流奥義・黒神ファントム!!!」

 

 

 ゆんゆんにアルビオンを見られてしまったが、そんな事を気にしてる暇も無く、一誠流格闘術の奥義の一つである黒ファントムで蛙に体当たりし、蛙を四散爆破させてやった。

 

 

「ふははは!」

 

『……。何をやってるんだお前は? 頭は大丈夫か?』

 

 

 その際変なテンションになってしまい、アルビオンから物凄く頭の心配をされてしまったりもしたが、蛙に無様に負けるよりかはマシだ。

 というか、素で蛙に負けるという現実から完全に逃避したいだけなのだけど……。

 

 

「ぎっ!?」

 

『アホ、散々弱体化したと自分で自覚してるのに、一誠の技なんて使うなよ……。

反動で全身の筋肉がズタズタになるというのに』

 

「い、今思い出したよ……ぐ、ぐぅ……」

 

 

 そ、そうだった。

 一誠の技というのはどれも滅茶苦茶な威力を保証される代わりに、すさまじい反動があるのを忘れていた。

 しかも弱体化までしてる身だ……死ぬほど身体が痛い。

 

 

「ヴァーリさん! だ、大丈夫ですか!? っ……待っててください、残りは私がやりますから……!」

 

 

 さっき知り合ったばかりの少女に物凄く心配されてしまうこの体たらく……。

 

 ふふ……あの意味わからん女神とやらめ……この代償は高くつくぞ。

 

 それにしても……。

 

 

『あの小娘……程度は低いかもしれんが、中々堅実的な戦い方をするな。

魔術師らしいというか……』

 

「み、みたいだね。正直助かったかも……」

 

 その場に倒れながら眺める少女――ゆんゆんの魔法攻撃は元の世界で見慣れてるものだったので新鮮味は無いが、アルビオンの言うとおり派手さもそこそこながら確実に蛙にダメージを与えて次々と倒している。

 

 

「ライトニング!!」

 

 

 特に雷系統の魔法は中々強いかもしれない。

 俺には一誠の様に他者を引き上げる様な力は無いし、曹操みたいに人材コレクターでも無いから解らんがな。

 

 

「お、終わりましたけど……あ、あのだ、大丈夫ですか! ポーションなら持ってますけど……」

 

「すまん……」

 

 

 ただ、こんな無様なオチは流石に恥ずかしいぞ……。

 

 

 

 一誠から完コピした黒神ファントムで見事に初戦を自爆で敗退してしまったヴァーリ。

 案の定、ゆんゆんが持ってきていた回復ポーションを飲んでも反動による傷はほぼ治らず、結局肩を借りての帰還となった訳だが……。

 

 

「…………………」

 

「だ、大丈夫ですか……?」

 

「…………………うん」

 

 

 ヴァーリのメンタルはある意味ズタズタになっていた。

 理由は勿論、蛙ごときにアルビオンの力を使ったり黒神ファントムで自爆したり……では無く、少女に肩を借りてピョコピョコと歩いてる己の情けなさにである。

 

 ゆんゆんとしては初心者冒険者なのに、ジャイアント・トードを粉々にした時点で普通に凄いのではと思ってたりするが、ヴァーリ本人の表情は全然浮かばれやしなかった。

 

 

「あ、あの……先程ヴァーリさんの背中に翼みたいなものが見えた気が……それに誰かの声も……」

 

「……」

 

「あ、いえ! 余計な質問でしたね……あは、あははは……」

 

 

 ズーンとブルー全開のヴァーリに気を使い、それ以上の質問はやめることにして、支える事に集中するゆんゆん。

 よくは解らないが、ヴァーリは何かの種族なのかもしれない……そう勝手に納得しながら。

 

 

「………。街に戻って報酬貰ったら、全部持っていって良いぞ」

 

「え、何で……ですか?」

 

「だって倒したのはキミだしな……ふふ、俺は今後大人しく土木作業員として細々と生きるさ。ふふふふ」

 

 

 遂には勝手にネガティブ化し始める始末。

 何かもう、最初見た余裕な態度が全部メッキだったのでは無いかとすら思ってしまう程の変わりようだ。

 

 

「だ、大丈夫ですよ! 1体はヴァーリさんが倒しましたし、報酬もちゃんと分けるつもりです……! だ、だから一回きりなんて言わずに、こ、これからも一緒に頑張ってみましょうよ……?」

 

「ふっ……年下のキミに慰められるなんてどこまで落ちぶれてるのだ俺は……」

 

「と、年なんて関係無いし、そ、それにヴァーリさんがあの時声を掛けてくれなかったら、私だって今頃まだ独りでウロウロしてるだけだったし……だ、だからそんな事言わずに………な、仲間なんですから……」

 

 

 しかしゆんゆんは頑張った。

 寧ろ普段は逆の立場なのに、自分以上の凹みっぷりを前にしてゆんゆんはほんの少しだけ精神的な成長を見せ、やっと作れた仲間であるヴァーリを励ました。

 

 多分ここに一誠や曹操が居てこの姿を見ていたら、揃って腹を抱えながら大爆笑という鬼畜追い込みをしてしまうのだろうが、ゆんゆんはそんな事をしない子だった。

 

 

「……………うん」

 

 

 そしてヴァーリ自身、末っ子気質があるせいか……いや、一誠と関わる様になってから趣味が戦闘以外に着ぐるみパジャマやら何やらと子供っぽくなってしまったからなのか、そんなゆんゆんの励ましにコクンと小さく頷き、無事街へと帰還するのだった。

 

 

 

終わり。

 

 

 

 弱体化した自分の脆弱さをきちんと受け入れ、その上で元の力を取り戻す決意を今一度固めたヴァーリきゅん。

 その為には堅実に実戦を経験させ、自然的に肉体の強度を高めたり、積極的にアルビオンを使って神器の精度を取り戻す事にする。

 

 

「ふぅ、今日も組んでくれて助かったぞゆんゆん」

 

「こ、こちらこそ……!」

 

 

 結果……普通に仲良くなっていた。

 というか、組む相手がお互いしか居なかったので、自然的にそうなってしまっていた。

 

 

「あ、曹操!?」

 

 

 そんなある日の事、今日も堅実にゆんゆんと討伐クエストで地道に元の力を取り戻す訓練をし、街に帰還した時だった。

 なんとそれまで見付かることがなかった友の一人……余計な一言で大体相手をすぐ怒らせる英雄の魂を持つ男、曹操と再会する。

 

 

「ヴァーリか!? ………な、何だお前? お前までロリコンになったのか?」

 

「違う! 彼女は俺の仲間になってくれただけだ! あの筋金入りのロリコンと一緒にするな!」

 

 

 が、やはりというか、一緒に居たゆんゆんを目にするなり『ムカつく』程に察した顔をしながらロリコン呼ばわりされてしまう。

 勿論、女より戦闘欲しか無いヴァーリは心外だとばかりに否定するのだが……。

 

 

「な、仲間なだけなんですね……私って……」

 

 

 何故かゆんゆんは物凄く凹んでしまった。

 

 

「!?

あ、いや、今のは言葉の綾というか……す、すまん……」

 

 

 散々世話になっていたヴァーリもこれには何で凹んでしまったのかは分からないにせよ、慌ててゆんゆんに謝るのだが、それを見ていた曹操はクスクスと笑っている。

 

 

「ぷっ! 何だお前、尻に敷かれてるのか? ロリコンに加えて?」

 

「だから違う! そもそもお前だって……」

 

「ん? あぁ、彼女ならそこで行き倒れになっていたから適当に引っ張ってきただけだぞ? というか俺は名前すら知ら――」

 

 

「んぁ? もうご飯ですか ……って、ゆんゆん!?」

 

「め、めぐみん!? な、なんでアナタが……!?」

 

 

 こうして弱体化していた友の一人と再会し、偶然にも仲間の知り合いとも出会って色々と展開する二人。

 しょうがないので曹操を加えて三人体制にしようとしたのだが……。

 

 

「ゆんゆんが良くて何で私がダメなんですかー! というかこの人を引き抜かないでくださいよ!」

 

 

 ゆんゆんのライバルであるめぐみんが、しつこく曹操を引き抜くなと言い始める。

 

 

「別にキミと組んだつもりは無いのだが。それに、キミにしてみればあの冒険者の青年以外は上位職で固められてる不思議なパーティの方が肌に合うだろ?」

 

「じゃあソーソーさんも来てください! そして一緒に爆裂魔法と聖なる槍による爆裂戦槍を……!」

 

「いや、俺はヴァーリと一緒の方が何かと都合が良くてだな……」

 

「いーやーでーすー!!!!」

 

「何だお前、何があったからこの少女はこんな難くななんだ?」

「いや、最初行き倒れで腹が減ってたみたいなんで、適当に飯を食わせたんだ。

で、その後礼と言うから一緒にクエストをやったのだが、そこで黄昏の聖槍を出したら急に……」

 

「ご、ごめんなさい、その……めぐみんはそういうのが好きというか……」

 

 

 

 妙な四人組が見てる中、揉めに揉めまくるヴァーリきゅん達。

 

 

「あ、あの……自分、佐藤和真っていうんすけど……もしかしてアンタ達も転生者っすか?」

 

「なぬ?」

 

「転生者? どこかで聞いた響きだな」

 

 

 そして交差する厄介事。

 

 

「!? アンタに流れる血の半分から嫌な気配がするわね………何者?」

 

 

 駄女神に睨まれるハーフ悪魔のヴァーリきゅん。

 

 

「その槍の柄で腹を叩くのか!? それとも切っ先でチクチクするのか!? それとも――」

 

「……。何だこれは?」

 

「すいません、持病持ちなんです……」

 

 

 元の世界に居る金髪の仲間とは真逆の金髪に引く曹操。

 

そして……。

 

 

 

 

「ハッピーかい冒険者の諸君ンンンッ!? ハッピーついでにお知らせするが、今日から俺が魔王軍の帝王だ! 逆らう奴はぶん殴ってやるぜ!」

 

 

 大量の魔王軍を従えるバカ一人。

 

 

「俺の名はイッセー! ちなみに彼女募集中! 好みのタイプはムチムチのボインボインの――」

 

「イッセー、我、お腹減った」

 

「ぐぬ!? ちょ、待てオーフィス……今折角言われた通り裏ボスっぽくしてるんだ、飯ならひんぬー会長と食いに行け。

ほらお金やるから――」

 

「そんな事よりそろそろ孕ませプレイをして欲しいんですけど」

 

「しねーよ!? 何でアンタまで訳のわかんねーこと言ってんだ!」

 

 

 

 

 

「……。何やってんだあのバカ三人は?」

 

「何でもこの世界の魔王をぶちのめして、君臨したとか……」

 

「えぇ……? 俺達の苦労はなんだったの?」

 

 

「あ、あの……あの人達がヴァーリさんのお友だちなんですか?」

 

「変わってますね」

 

「多分キミにだけは言われたくないとアイツ等も言うと思うぞ、めぐみんよ」

 

 

 無理ゲー裏ボス君臨。

 

 

「おやおやぁ? 君たちのお年は14歳だっけ? あららのら? ねぇねぇヴァーリに曹操? 凄いね、筋金入りのロリコンだな」

 

「「違う!!」」

 

「違わねーなぁ? 散々貶しておいて結局テメー等がそうなんじゃねーかバーカ! ロリコン!」

 

 

 散々貶された裏ボスはここぞとばかりに仕返しする。

 

 

「ロリコンはお前だろうが!」

 

「そうだそうだ! ヴァーリみたいに、ゆんゆんをたまに抱き枕にしてるらしいという疑惑が浮上してるならイザ知らず、俺は健全――がばっ!?」

 

「お前も余計な事を言うな!」

 

「どっちもどっちじゃ、しゃらくせぇ!!! まとめて掛かって来いやぁぁっ!!!」

 

 

 そして始まるは……ロリコン三つ巴大喧嘩。

 

 

白龍皇に祝福を……………続かない。

 




補足

特に無い。


強いていうなら、イッセーくんはまだマシに格上げされ、疑惑の深いこの二人は真性になってしまうのか? 的な問題がある程度。

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