色々なIF集   作:超人類DX

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まあ、当然外堀は埋める。
そしてなまじ前より物理的な距離も近いので……


外堀は埋められて……

 最初というか当然というか、俺が眷属になるつもりなんて無かった。

 だってひんぬー会長は元の時代でも眷属居たし、てっきりこの時代でも同じ眷属を集めると思ってたから、俺は時期が来たら保護して貰ったシトリー家とさよならする予定だったんだ。

 

 まあ、その予定も早々に崩れて今じゃあのひんぬーの部下だぜ部下? 俺の知るヴァーリと曹操が見たら腹抱えて笑うだろうさ。

 オーフィスは――多分怒るかなぁ。

 

 

 

 

 

「コカビエル? 何それ?」

 

 

 今となってはあのバカ二人にバカにされるのも、オーフィスが癇癪起こすのも懐かしい……いや、寧ろ目の前に現れて笑うなり癇癪起こすなりして欲しいとすら思う今日この頃。

 何故か『前の時代の記憶』を持つ匙と一緒にひんぬー会長の下僕ライフを送らされ、ついこの前誰が仕組んだかもわからん『ひんぬー会長婚約破棄の為のゲーム』を、どこぞのボンボン貴族悪魔を三人でぶちのめして破棄し、初夏を向かえたこの日の事だった。

 

 せっせと人手不足のままかろうじて機能する生徒会の仕事を片付ける最中、急にリア充野郎こと匙が聞き覚えが全然無い単語を思い出したかの様に呟き出した。

 

 

「いやほら、そういえば前の時はこの時期辺りにコカビエルって堕天使がこの地で何かやって無かったっけか……と思い出してさ」

 

「バラバラになった聖剣をひとつにまとめて戦争を仕掛けるという事がありましたね」

 

「いやだから待てや。なんだそのコカビエルってのは?」

 

 

 判を押すだけの簡単な仕事なのだが、これが地味に苦行だったりする作業を中断してまでひんぬー会長も加わり、なにやら二人で若干難しそうな顔をしてるのは良いが、俺からしてみれば何の話だか全然わからないし、そもそも誰だよって話だった。

 

 

「オメーがオーフィスと一緒にフラりと現れて、輪ゴムか何かで射殺した大物堕天使だよ。覚えてねーのかよ?」

 

「んー……全然覚えてねーや」

 

「まあ、哀れに思うくらいの瞬殺具合でしたからね。

その時は不覚にもアナタに恐怖を抱いてしまいましたし、私にとっても良い思い出ではないわ」

 

 

 どうやら俺が殺ったらしいのだが、余程インパクトが無かったのか記憶に無い。

 ひんぬー会長が謎すぎる化け方をする前の事らしいけど……うーん。

 

 

「良いんじゃね? ほっとけよそんなの」

 

 

 無いものは無いので俺は気にしないことにした。

 ひんぬー会長がバストアップにあれこれ手を尽くしても無駄な努力で終わっちゃった様に、元の時代と照らし合わせても不確定になりすぎてるこの今の事を考えれば、そのコカビエルとやらについて考えても仕方ないのだ。

 

 ひんぬー会長が無駄な抵抗をしようが、所詮はひんぬー会長なのである。

 

 

「んな事よりいい加減眷属くらい増やしたらどうっすか? いくら前の時代の連中が勧誘不可能な状況だとしても、流石に俺と匙だけってのはなぁ?」

 

「えー?」

 

 

 いや『えー?』じゃねーよこの貧乳眼鏡。

 怠惰にも程があんだろーが。

 

 

「だって椿姫達はあの御劔って人と幸せにしてるから勧誘がしようが無いし、だからといってアナタと匙クラスの実力者なんていないし……」

 

「いや、俺はともかくとしてコイツクラスなんて居る訳無いじゃないですか……」

 

 

 会長席に座り、俺の言葉に対して口を3の字にしながらやる気の無い態度をするひんぬー会長に匙も呆れ顔だ。

 そらまあ確かに元の時代の仲間達とまたやり直したいって思ってた矢先に調べてみればみるほどあの御劔とか言う奴が出てくるのだからやる気が失せるのも仕方ないっちゃあ仕方ないが。

 

 

「つーかアレはどうしたんよ? ルー……ルールーだっけ?」

 

「ルーさんは探したけど見つからなかっただろ?」

 

 

 じゃあ男ならと思って、前の時代でも割りと影の薄い印象だったルーさんこと戦車の狼男は探したけど見つからなかったという舐めたオチだったと匙は言うけど、その皺寄せがモロに俺に来てるんだぜ? 前の時代からしてもどんだけオーバーワークさせる気なんだクソが。

 

 

「この前のレーティングゲームで人手不足を感じたっつーのに……あーだりぃ」

 

「張り切ってゲーム相手の駒を一人一人ぶちのめしてた癖に怠いも何も無いだろう」

 

「そうよ、私は寧ろアナタのハツラツとした姿でその晩15回は――」

 

「聞きたくねーよそんなの! ったく、あのゲーム相手のボンボン貴族の目は腐ってるのかよ? こんなのの何処におしとやかさを感じるんだ? 言われた時は窒息するかと思うくらい笑っちまったぞ」

 

 

 会話の通り、こんな穴だらけのメンバーで行ったレーティングゲームは死ぬほど怠かった。

 そもそも始まりが、どこぞの貴族のボンボンがよりにもよってこの貧乳の婚約だからなんだかを迫りに来たってのが始まりだった訳だが、その破棄をする為に行わされたレーティングゲームがまぁ怠いの何のって。

 

 世間知らずで節穴なボンボンに現実を叩き込むって意味合いで、仕方なく匙とひんぬー会長の三人でチェスに見立てるもへったくれも無く全員突撃かまして開始45秒というレーティングゲーム史上最速で終わらせたは良いけど、あんなのがこの先何度もあると思うとぶっちゃけやりたくない。

 

 殺さないように蟻を踏む作業程色んな意味で疲れるのだ。

 

 

「つーか今更だが、何であのボンボンはアンタに惚れたんだろうな?」

 

「さぁ? どうでも良いわそんなの。私にとって全てなのは一誠にメチャメチャにして貰う為にどうするかを常に考えなきゃいけないし」

 

 

 あー……早くメンバー揃えよ。頼むから。

 

 

 

 

 拗らせたせいで、所謂超越者と呼ばれても可笑しくないレベルに達しているソーナ。

 異常なまでの覚醒の理由は勿論、出会ってから今まで変わらずに自分を貧乳とバカにしてケタケタと笑う少年の影響による所が強い――というか100%そうである。

 

 それ故、プライベートだろうが、公共の場だろうが少年に対する信頼の置き方は尋常では無く、またシトリー家界隈ではソーナが拾ってきたという体になってる少年の異常な力に肯定的な意味で認識していた。

 

 

「さて、イッセーもそろそろ良い歳だし、この前の婚約破棄騒動でそろそろ腹を括って貰いたいのだが……どうかね?」

 

「いやどうかねって言われても……。俺そこら辺雑種なんですけど」

 

「ウチのソーナと同じ目線で立てる男という時点で逆に頭を下げてでもアナタと一緒にさせたいのよ。

ソーナもその気だし……」

 

「いや俺、巨乳の人が……」

 

 

 お陰でほぼ外堀はソーナによって埋められた処か、蟻地獄状態であり、結婚不可能っぽい長女に元士郎という春到来ほぼ確定済みと同様に、ソーナの両親によって毎度帰省する度に詰め寄られていた。

 

 

「大体、仮に俺が了承したとしても、純血完全に途絶えるじゃないですか」

 

「純血に拘る時代はとっくの昔に終わってる。少なくとも私達はその考えだ」

 

 

 自然に囲まれたシトリー領の中枢、シトリー家の城。

 一誠にとっても色んな意味で実家化してるこの城に戻ると高確率で両親に呼び出されてはこの話をされ、内心かなりげんなりしてしまう。

 多分この両親も察しているのだろう、このまま我が子達を放置してたら完璧に行き遅れになるという事を。

 だからこそ、姉妹に見合う確かな実力を既に持つ二人を逃してなるものかと、推してくる訳だが、互いに好き合ってるセラフォルーと元士郎は兎も角として、一誠はソーナと添い遂げる気になれない。

 

 いや決して嫌いじゃないし、前の時代から友達と思ってはいるし、露骨なまでに好かれてる自覚もあるが、だからといって添い遂げろと言われたら何か引いてしまう。

 

 

「この前、娘さんに体操着盗まれたし……過激すぎると言いますか」

 

「な、なに? そんな事をしたのかソーナは?」

 

「何故そんなことを?」

 

「そんなの俺が聞きたいよ――じゃなくて、聞きたいですよ」

 

 

 割りとシトリー夫婦に懐いては居る一誠が思わずタメ口になりかけ、ハッとして言い直すが、夫婦二人から『普段の口調』で良いと笑って言われると、一誠は張っていた肩の力を抜き、夫婦に対して愚痴る様に言い出す。

 

 

「体操着もそうだけど、あの人事あるごとに俺の私物掻っ払うんだぜ? この前なんて人の脱いだワイシャツ脱衣場から持ってて部屋に籠ったかと思ったら、アレしてたし……」

 

「アレ……とは?」

 

「アレはアレだよ……おっちゃんなら察しつくだろ?」

 

「あー………うむ、多分何となく……」

 

 

 オレンジジュースをチビチビ飲みながら、王であるソーナのやらかしについて愚痴る一誠に、父親は横目でキョトンとする妻の若き頃の事を思い出して何とも言えない顔をする。

 血は争えない的な意味で。

 

 

「世話になってる恩はあるし、ぶっちゃけそんな事されても今更過ぎて引きはしないけどさぁ……胸が足りねぇんだよなぁ……圧倒的に」

 

「寧ろ引かない時点でソーナはお前に任せるしか無いと確信してしまうのだが……」

 

「胸ですか……。

確かにセラフォルーと比べると慎ましいですが、無い訳じゃないでしょう?」

 

「いやぁ、手から溢れんばかりのサイズじゃないと……」

 

 

 仮にも娘の両親相手に対しての会話とは思えない最低な会話だが、一応付き合いも長いのと、それだけ互いの信頼関係が強いお陰か、咎められる事も無く話は進む。

 

 

「あの貴族のボンボンとのゲームにわざと負けた方がよかったかもしれないと思うけど……」

 

「いや無理だ。彼程度ではお付き合い開始半日で根をあげるだろう」

 

「そもそもあの子より実力が遥か下の時点で無理がありすぎますしね」

 

「でっすよねー……なーんであんな強くなっちゃったのか」

 

 

 若手の中では既に超越者クラスとも密かに噂されるソーナの力こそ、一誠による無限進化の異常による覚醒が原因であり、その力も一誠に対する一切ぶれが無い想いによる進化の異常と、いっそ反則ともいえるマイナスがあってこそであり、まともな攻略は一誠しか出来ないとすら言われ、真正面からやりあえるのも一誠だけ。

 

 それもこれも一誠が前世から彼女を半端じゃないレベルまで拗らせたのが原因であり、記憶を保持してしまったが故にこんな事になった訳なので、とっとと責任なりなんなり取れよという話である。

 

 

「ともかくお前しかあの子に釣り合えないんだ。ソーナもお前しか見ないし……頼むよホント」

 

「私に似て一途なんですから……ね?」

 

「いや『ね?』 って言われても……一途通り越して変態なんだけど」

 

 

 外堀まで完全に埋めてくる徹底さに、果たして一誠は何時までのらりくらりで済ませられるのか……。

 いや、最早逃げるのは無理なのかもしれない。何せ拗らせた彼女は本当に半端ないのだから。

 

 

 

 

 こうして夫婦に説得されまくる一誠。

 なまじホームレスやってた自分を普通に迎えてくれたので、夫婦に対して懐いてるからこそ下手に無下には出来ないと考えてしまってるので、どうしたら良いのかと割りと真剣に今後のソーナとの関わりを考えるが、考えても考えても、黙って逃げても追いかけ回される未来しか浮かべず、ほぼ詰みを連想させられてしまう。

 

 

「ひんぬー会長とねぇ……オーフィスがキレちまうよ。この世界のオーフィスは違うけどさ」

 

 

 夫婦に別れの挨拶を交わし、シトリー家所属のお手伝いに勝手に若様呼ばわりされながら城を出て人間界へと戻った一誠は、既に暗くなっていた地元の道を自宅目指してテクテク歩きながら、何やかんやで前時代合わせて長い付き合いであるソーナとのつきあい方に頭を悩ませる。

 

 確かに貧乳だし、そういう接し方しかしなかったので異性としての認識がほぼ皆無な為、今更そんな目で見ろと言われても難しい。

 しかしながら夫婦に言われた通り、ソーナは紛れもなく自分の同類で、皮肉な事に誰よりも互いを『理解(わか)ってしまう』。

 それこそかつてのオーフィスと同じくらいにだ。

 

 

「はぁ……ぁ」

 

 

 全力で戦える唯一の相手。更なる進化を感じられる相手。声に出さずとも連携できる相棒適正。全てにおいてソーナは適任過ぎる相手なのは間違い無いし、何より全幅の信用も出来る。

 しかしだからといって今更貧乳だ貧乳だとバカにして遊んでた相手にあんなセラフォルーと元士郎みたいな羨ましい関係を築けと言われても……。

 

 夫婦に頭まで下げられて絶賛お悩み中の一誠は、自然と溢れたため息と共に、到着した自宅マンションのドアを開けて中に入る。

 

 じゃんけんに負けて通う事になった人間界の学校の為にわざわざ用意した自宅マンションで、シトリー家の支援のせいかそこらのマンションと比べてもレベルは高い。

 そんな家に住む事に不満なんてある訳は無いのだが、一つ挙げるとするなら、自分がドアを開けて入るや否やパタパタとスリッパの音をさせながら出迎える悩みの種ぐらいだ。

 

 

「あらおかえりなさい。どうだったのお父様とお母様からの呼び出しは?」

 

 

 そう、ソーナと同じ空間に居るという事くらいだった。

 

 

「べつに、ただの世間話っすよ―――――って、アンタその格好はなんだよ?」

 

「あ、これ? どうかしら? アナタが私の目を盗んで入手したエッチな本にあったから、真似したのよ?」

 

「どうかしらって……コメントのしようが無いんすけど」

 

 

 この際一緒なのは目を閉じるにしても、勘弁して欲しいと思うのは、入手したエロ本の内容を丸々トレースして一々迫ってくるのは本当に勘弁して欲しい。

 これじゃまるでオーフィスと同じであるし、今もドヤ顔で全裸エプロン姿で出迎えられてどう反応して良いのかかなり困ってしまう。

 

 

「胸が無い時点でナノの魅力も感じねぇ……」

 

「むー……」

 

 

 そもそも巨乳フェチの自分とは真逆のスタイルな時点でアレだし、何か見てて色んな意味で悲しくなる。

 オーフィスの時もそうだったが、何故一々エロ本のトレースをするのか……やるなら巨乳になってからやって欲しい。

 一応ひとつ年上なのでかなり砕けた敬語口調混じりに冷めた態度で突き放そうとする一誠に、ソーナは若干頬を膨らませるが……オーラが三十路向かえた喪女を彷彿とさせるので、色々とアレだった。

 

 

「ところでアナタがお父様とお母様に顔を見せてる間、匙の予想した通りコカビエルが出てきたみたいよ?」

 

「へ? あぁ、この前の奴か。それで?」

 

「教会からの使いである悪魔祓いと少し会談をしたわ。何でも盗まれた聖剣を奪還する間は悪魔である私たちに一切の干渉は許さない……との事よ。これは前の時代とあんまり変わってないわね」

 

「ほーん?」

 

 

 部屋着に着替えたソーナと小難しい話をしながら、下手くそだったのを矯正させる事に成功した彼女の手料理を食べる。

 

 

「リアス達にも干渉を許さないと向こうは言ったと思うんだけど、確か記憶によると思いきり干渉したのよね」

 

「なんで?」

 

「リアスの眷属に木場君という騎士が居るでしょう? 確かその子が聖剣との因縁があって…………あー……イマイチ思い出せないわね。匙の方が多分そこら辺は詳しいと思うわ」

 

「ほー?」

 

 

 こうして見ると、出来た夫婦にも見えなくも無い辺りが何とも皮肉なやり取りである。

 

 ちなみにこれが元士郎とセラフォルーだったら青汁をイッキ飲みしたくなる程の空間を作り上げたりするのだが、今は関係無いので置いておく。

 

 

「ごっそさん。悪くないレベルになれてひと安心っすよ」

 

 

 そうこうしてる内に料理を全部平らげた一誠が、皮肉混じりにソーナに言う。

 

 

「アナタに調教されたのだから当然よ」

 

「何時調教したんだよ……」

 

 

 そんな皮肉にもソーナはにっこりしながら返す。

 これが当初は貧乳と言われただけで真っ赤になって怒ってたのだから、信じられない成長である。

 

 

「お風呂沸いてるから入りなさいな。私は食器を洗うから」

 

「んー」

 

 

 食後のお茶も済ませ、ソーナに促される形で風呂に入る事にした一誠は、着替えを用意し、そのまま入浴タイムに突入する。

 

 

「………………。何か色々と間違ってる気がする」

 

 

 身体やら何やらを先に洗い、湯船に浸かってボーッとする最中、今更の様にこの現状の間違いさをぼやく一誠。

 前はオーフィス相手にせっせと家事やら何やらとやってのが、今じゃ殆どソーナにやって貰うというまさかのヒモっぷり。

 これでまだのらりくらりと逃げようとするのだから良い度胸である。

 

 だがそれで終わる訳が無いのが拗らせた代償である。

 

 

「お風呂プレイってどう思う?」

 

「…………………………………………………………………。巨乳美女となら最高だぜ」

 

 

 浴室という狭い空間に入り込まれたら最後、闘いのゴングは人知れず鳴るものなのだ。

 

 

「いや要らねぇよ! 出てけよ! 何でオーフィス共々そこは同じなんだし!」

 

「さぁ? でも私は理にかなってると思うけど?」

 

 

 浴室に当然の如く全裸で入ってきたソーナに一誠は割りと本気で逃げようとするが、ソーナはソーナで一誠と同等におかしな速度で進化を続けてる異次元生命体となってしまってるせいで、力技が通じず、ニコニコしながら一誠相手に力比べで拮抗している。

 

 

「いやいやいやいや、そんな関係じゃないだろうが!」

 

「廃れた関係でも良いわよ? 勿論、孕ませて貰うけど」

 

「ふざけんなこの野郎! 行き遅れた女みたいな事言いやがって……!」

 

「それほど真剣なのよ」

 

 

 グイグイと迫りくる姿は美少女だろうが怖く、異次元生命体化してる一誠に徐々に力で圧し始めてるという時点で笑えやしない。

 

 

「大丈夫よ、別に何もこの場でしてなんて言わないから」

 

「目が血走っててコエーよ!? うおっ、な、何つー力してんだアンタ……また成長しやがって……!」

 

「ふふふふ、スキルが最近調子良くて……ねっ!!」

 

「どわっ!?」

 

 

 とうとう力で勝り、一誠と共にソーナは湯船にダイブをする。

 折角張ったお湯は半分以下にまで減ってしまい、浴室は水でビチャビチャになってしまったのだが、ソーナにしてみればそんなのは二の次だ。

 面を喰らった一誠が本能的からか、もたれ掛かる自分を庇う様にして抱き締めて来ただけでソーナは色々な意味でハァハァしちゃうのだが、取り敢えずする事は決まっていた。

 

 

「んももー!?」

 

「んっ……んふぅ……!」

 

 

 壁に追い込み、そのまま面食らう一誠の唇を貪るが如く奪う。

 当然一誠は抵抗しようとするが、そうはさせないとばかりに全身を密着させ、尚も重ねる。

 逆ならまず犯罪確定レベルの無理矢理さだが、ソーナは夢中過ぎてそんな道徳感情なぞゴミ箱にポイだ。

 

 

「し、舌やめ……っ!」

 

「はぁはぁ、んっ……! ちゅ……はむ……!」

 

 

 ストーカーレベルで拗らせた少女はそらもう半端無く、遂に抗議すら出来なくなる程に力が抜けた後も、ソーナは飽きる事無く続けた。

 

 

「はぁ………はぁ……あは、好き……しゅきぃ……♪」

 

「………」

 

 

 しかも…………そのまま五時間ぶっ通しで。

 拗らせた女は本当に危険なのだ。

 

 

「あ……あぅ」

 

「さてと、大丈夫よ一誠、まだ何もしないわ。だから一緒に寝ましょう? ふふふ……好き、好き……好き好き好き! 大好きよ……♪」

 

「うぇ……」

 

 

 目がぐるぐる回る一誠を愛しそうに撫でながら、お姫様抱っこで寝室まで運ぶソーナは男らしいが、何かが完全に間違っていた。

 

 

終わり




補足

拗らせたソーナさんはヤバイです。
ガチで一誠とタイマン張ってもヤバイです。

ていうか力比べで圧倒とかマジパネェ。

ご無沙汰人妻並みのパワーなのも半端ねぇ……

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