色々なIF集   作:超人類DX

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特にない!

強いて言うなら魔改造!


赤龍帝王学

 与えられて来てばかりだった俺がよもやお伽噺として聞いていた人相手に教える真似をするなんてのは中々どうしてな気持ちだ。

 

 

「よーっし、此処なら誰も来ないだろ。てか来ないようにしてある」

 

「此処って時計塔の地下十三階……? 都城先輩と戦った……」

 

「都城? と言うと確か人心支配の異常を持つ人でしたっけ? よくは知りませんが、この場所封鎖されてたみたいなんで利用してるんすよね実は。

ほら俺、この時代だと種という概念すら無いから戸籍とか無いし」

 

「は!? じゃあお前こんな所で寝泊まりしてたのかよ!?」

 

「そっすよ? 上の階に風呂場もあるんでクソ便利っすよ」

 

 

 人吉善吉さん。多分最も俺が憧れてる相手に俺が獲たものを教える。

 この世界の癌であるこの俺が、この時代――いやこの世界に存在しない知識を植え付ける。

 幸い修行場所の確保も時計塔の地下フロアという場所を無断で使う事で困る事も無いし、予め監視カメラなんかも破壊してるので外部に漏れる事もない。

 

 そしてこの時代のアイツにも仕込みを続けてるので干渉も不可能。

 

 ふふ、確かアイツの話じゃアイツが人吉さんに与えて色々やってたみたいだが、ふふ……。

 

 

「で、早速俺はどうすれば良い? どうすればめだかちゃんと肩を並べられる?」

 

「ええ、あまり時間はありませんのでお望み通り早速始めましょうか」

 

 

 なぁ、なじみ。俺がこうするのもお前の予想か?

 

 

 

 

 

 人吉善吉は今、自称平行世界の未来人を自称する人外である兵藤一誠と、黒神めだかを越える為の修行を『日常』を失った原因のあり、一つの決着の場所でもあり、めだかの異常性が発覚された時計塔地下十三階という場所で修行をする事となった。

 

 元々安心院なじみ以上に訳がわからないという事もあったので、強いか弱いかと言われたら多分強いのではないのかなといった程度の予想をしてはいた善吉だったのだが、取り敢えずの修行始めとして一誠と手合わせした結果……。

 

 

「凄いっすね人吉さん。足技がまたエグいエグい」

 

「………………」

 

 

 誉める言葉を言われてるのとは裏腹に、善吉は一誠に文字通りの意味での指一本で得意とする足技の全てを弾かれ、凸ピンひとつで地下十三階の壁際まで吹き飛ばされてしまった。

 

 

「お、お前はピッコロ大魔王かよ……! ゆ、指一本でここまで虚仮にされるのは初めてだ……」

 

「まあ、暇さえありゃ鍛えてましたからね。お陰でオツムが残念な事になっちゃいましたけど」

 

 

 利き腕じゃない方の人差し指だけで善吉を叩きのめした一誠がヘラヘラしながら頭は悪いと返すものの、その頭の悪さがハンデにならないレベルの力を持つ時点で十分である。

 しかもスキルもドライグの力も一切使わないでとなるほどの領域だ。額を赤くさせながら壁際に背を預けて崩れてる善吉はこの時をもって『めだかちゃんみたいな奴……いや、もしかしたらそれ以上の――』とある種の確信を獲る。

 

 

「さて、軽いスパーはこの辺にして、早速善吉さんには進化をして貰いましょうか。

その第一歩として、まずは善吉さんにはひとつ『自分を知って受け入れて』貰います」

 

「自分を知る……?」

 

 

 少し前まではフラスコ計画の中枢であり、フロア全体にスパコンが並べてあった地下十三階も、今や凍結に伴いただの床だけの部屋となっており、その薄暗いフロアにて一誠の声が響き渡る。

 

 

「そう、自分を知る。人ってのは自分を知ってるつもりでも全然知らない。

そして大半はその事に気付く事無く生を終える訳ですけど、極一部はそれを知る事であるものが自分の中に宿る。

……それは、黒神さんの傍で修羅場を潜ってきたアナタならわかる筈」

 

「……………。めだかちゃん達の様な異常、球磨川達の様な過負荷の事か?」

 

「正解です、まぁこれは簡単でしたね。

まあ、取り敢えずざっくばらんに言うとですよ、人吉さんには今から『自分を知って』貰います。これが修行の第一段階であり、これが出来なければアナタは一生涯黒神さんを追い越す事は不可能になる」

 

 

 かつて己が這い上がる第一歩として与えられた最初の一歩を今度が自分が他者へと与える。

 進化の核となる最も重要な知識を……。

 

 

「だけど自分を知るなんてどうすれば……」

 

「だから俺が居るんですよ人吉さん。

俺自身を信用しなくても良い、ですがこの時限りは俺が口に出した事は百パーセント吸収してください」

 

「………」

 

 

 年齢的には一誠の方が年上なのに、不思議な事に敬語口調という珍妙さはあれど、この時は真剣な面持ちであり、善吉も彼がマジで言ってるんだと、この時は思えた。

 故に善吉は一撃でガタガタになった身体に鞭を与え、足腰に力を入れながら立ち上がると……。

 

 

「わかった……俺はお前を信じる」

 

 

 強制進化とはまさに次元の違う真の進化となる条件……信頼関係の構築を開始した。

 これこそが一誠の数あるスキルの中でも最初に発現した無神臓(インフィニットヒーロー)の力。

 

 『信頼し合う者へ与える本当の進化』であった。

 

 

「聞いていた通り過ぎて俺は感激ですよ人吉さん。

やっぱりアンタは最も俺側ですよ……!」

 

 

 そしてその信頼関係の構築こそが……。

 

 

「さぁ、自分に嘘はつくなよ!!」

 

「上等だ!!」

 

 

 この世界において唯一になる進化の体現者となるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「善吉は何処に行ったのかだと?」

 

「うん、まああんな事があったからだしキミが知ってるとは思えないけど一応ね。

僕も僕で色々と用があるんだよ」

 

 

 それから僅か二日後の事だった。

 生徒会室の隣の空き教室がすっかり更衣室化し、黒神めだかや喜界島もがな、それから五人の悪平等の中学生が普通に着替え場所として使用している最中、片腕だけが封印から解放されて動かせる様になっていた安心院なじみがやって来て開口一番にそうめだかに質問する。

 

 

「そういえば生徒会も欠席していたな……誰か善吉の居場所は知らんか?」

 

「い、いえ私達にも……」

 

 

 だがめだかとて善吉の居場所は知らない。いやそれどころか、善吉に対して何故か無関心な態度であった。

 その態度はオリエンテーションのエンディングにて突如発生したものであり、喜界島も五人の中学生も、このあまりにも善吉に対して淡白なめだかの態度に動揺しつつも知らないと首を横に振る。

 

 

「皆知らないらしいぞ安心院なじみよ。悪いが他を当たってみたらどうだ?」

 

「あ、そう。まあ、分かってた事だけど、やっぱりアイツが連れ回してるのか……………僕のスキルの殆どを使用不能にしたまんま」

 

『え!?』

 

 

 最後ボソッと話した安心院なじみのその言葉に五人の中学生が特に驚愕する。

 アイツ……それはつまり悪平等なら誰しもが知るとある人物に対しての呼称であり、またそのアイツが厄介過ぎて手に負えない奴であるだけに、アイツが善吉を連れ回してるという事を聞いた時、五人の中学生は一気に善吉が心配になってきた。

 

 てのも、あまりにもそのアイツという存在が何を考えてるのかがわからないのだ。

 安心院なじみの邪魔をしたいと言うのだけは本当なのかもしれないけど、考えてみたらその他の事についてはほぼ会話した事すら無いので解析もへったくれも無かった。

 

 故に安心院なじみがスキルの殆どを使用不能にされたと悪態付いた事もそうだが、善吉を連れ回してるという話も平行して心配なのだ。

 

 

「探しても見つからないし、考えてみたら普段どこで寝泊まりしてるのかも知らない。9999兆9999億9999万9999個のスキルが封じられてる今、探ろうにも探れないから困ったねこれは」

 

「なに、貴様の言っているアイツというのがあの男だと予想しているが、そんな真似をしたのか?」

 

「まぁね、多分球磨川君の却本作りのこの螺子を抜き差して遊んでた時に仕込まれたんだと思う。

ったく、ムカつくぜアイツは」

 

 

 腹部に刺さる螺子を見ながら安心院なじみはらしからぬため息を吐く。

 その気になれば全部封じれるというのに、あまり実用性が無いスキルだけを残して封じてきた辺りが、また嫌味にしか感じられないのだ。

 

 

「まあ良いや、本当は僕がやるつもりだったんだけど、この分じゃ何にもしなくともアイツがやってくれそうだし、僕は暫くその辺でケータイでも――――」

 

 

 しかしそれでも、当初とは根本的に色々と予定がズレたとはいえ、自分の代わりに善吉をめだかにぶつけるように焚き付けてくれるというのであるなら、自分は適当にそのお手並みを拝見と洒落込むのも悪くないかもしれないと、更衣室化した空き教室を出ていこうと入ってきた扉へと振り返ったその瞬間だった。

 

 

「ちわーっす、三河屋でーっす……………………わぁお!」

 

 

 その噂の男、暗い茶髪で顔はそこそこの男、兵藤一誠がどこぞの海産物一家によくやって来る酒屋店員みたいな口上と共に扉を開け、姿を見せたかと思ったら中の様子を見て一気にスケベ小僧の如く鼻の下を伸ばした。

 

 

『きゃぁぁぁっ!!!??』

 

 

 当然騒ぐ中学生達並びに喜界島。

 

 

「む、噂をすればなんとやらだぞ安心院なじみ。奴がきたぞ?」

 

「……。みたいだな」

 

 

 そして下着姿だけど無駄に堂々としたまんまのめだかと、凄い微妙な顔となってしまう。

 何せ居場所知りたいと思うとピンポイントで現れるのだ。

 

 

『きゃぁぁぁっ!!! 覗き!!』

 

「あ? おいおい、小便臭い小娘なんて興味無いから安心しろ。あ、でも喜界島さんは逆に見れて感激してるけど!」

 

「見ないでよ! 見たければお金払って!!」

 

 

 騒ぐ中学生五人に見た癖に心底シラケた顔で興味無いと言い捨て、それがまた顰蹙を買う中、一誠は喜界島からビンタされつつ真ん前に居た安心院なじみ――――じゃくて、その安心院なじみを一言『ちょ、邪魔』と押し退けると、無駄に堂々としていためだかの前に立つ。

 

 

「おお、上から下までパーフェクトっすね黒神さん」

 

「む、この練り上げた肉体の良さがわかるのか?」

「そりゃ勿論! アイツがこんなんだったら毎日が楽しかったのに……ねー? そこんとこどう思うよ?」

 

「……。僕を押し退けるばかりか、胸見て半笑いな顔するのはやめろよ……てかお前僕にやった仕込みを何とかしろよ」

 

 

 めだかと比べると慎ましい安心院なじみを見ながら小バカにした顔をする一誠に笑顔ながらもカチンとする安心院なじみだが、そのカチンに対しても一誠は全く相手にもせず、めだかへと向き直る。

 

 

「えっと、取り敢えず一言……善吉さんがアンタに勝負挑むってさ」

 

「……!」

 

『!?』

 

「………。それはお前の修行が終わったって事か? 随分と早いじゃないな」

 

 

 善吉というの名前に全員の顔つきが変わる中、安心院なじみの質問に対して一誠は一言『途中だけどそれでもお釣が来る』とだけ返すと、自分が入ってきた開けっぱなしの扉に向かって……。

 

 

「善吉さん、出番っす」

 

「…………」

 

 

 善吉を呼び寄せる。

 するとその声に呼応するかの様に、明らかに二日前とは『顔つき』が変わってる善吉がめだかを真っ直ぐ見据えながら姿を現した。

 

 

「え、人吉先輩?」

 

「な、なんか違う……」

 

(どういうこと? 一昨日黒神さんに言われて凹んでた人吉とは明らかに違う……)

 

 

 その出で立ち、放つオーラ。何もかもが一昨日の時とは別次元に変わっている善吉に、五人の中学生も喜界島も……そして安心院なじみも大なり小なり驚く。

 

 

「善吉か? 何しに来た?」

 

「………………………。宣戦布告」

 

 

 変化した善吉と向き合うめだかの問いに、ただ一言そう告げる。

 

 

「お前は間違ってる。これはお前と一緒に居て今まで何も出来なかった者の責任として、だから今言う――――――人間ってのは正しすぎてはダメになるんだ」

 

『………』

 

 

 めだかの持つ常日頃の主張に対しての真っ向否定の言葉と共に宣戦布告をした善吉に動揺の影は一切見えない。

 それを受けためだかはさぞショックを受けたと思いきや――

 

 

「そうかそうか! やっと貴様も私の敵に回るのだな!?」

 

 

 寧ろ嬉しそうに、心の底からそうであって欲しいとばかりの笑顔でその宣戦布告を受け入れた。

 

 

「まあ、お前ならそう言うだろうと思ってたよ。お前はそういう奴だからな」

 

 

 それに対して善吉も底を伺えない無表情で言う。

 

 

「今なら解る。なんでお前が都城先輩や球磨川との戦いの方が楽しそうだったのか。

そうだよな、お前は居なかったもんな? 守る仲間は居ても守られる奴は誰一人として」

 

「ほう? 随分と知った様な口を叩くな善吉? そこの男に何か入れ知恵でもされたのか?」

 

「そうだが、アイツ……一誠によって獲た事でやっと本当の意味で理解出来ただけだ。そして――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 お前にはガッカリしたってな。

 

 

 

 

 

 

 

『……!!』

 

 

 まるで上から押し潰すかの様な言い方に全員が絶句する。

 それは絶句とまではいかなかったが、安心院なしみすらこの短期間で此処まで善吉の精神構造を変化させたという意味で、薄く笑う一誠を見て思っており、直接言葉を向けられためだかは更に笑みを深める。

 

 

「ガッカリか……ほう、それで? ガッカリしたなんて大口を叩いた事に対してお前は私に何をしてくれるんだ? 改心か?」

 

 

 そしてその言葉を放ったと同時に善吉へと飛び掛かる。

 それはある種の戦いのゴングだった。

 

 

「く、黒神さん!?」

 

 

 飛び掛かるめだかが善吉の頭を掴んで床に勢い良く叩き付けると、喜界島が悲痛の声をあげながら止めようとする。

 だがめだかは止まる事は無く、床に叩き付けた善吉に対して言葉を放つ。

 

 

「どうした善吉? 私は間違ってるのだろう? だったら私が他の者にしたように、お前が私を改心させてみろ。

それとも出来ないか? 出来ないならお前はやはり庶務として私の―――――っ!?」

 

 

 挑発にも取れる言葉を放ち、善吉の出方を伺ったつとりだっためだか。

 しかしその瞬間、今度はめだかの身体が宙を舞い、空き教室の壁際へと勢い良く背中から叩きつけられた。

 

 

『な……!?』

 

 

 驚く面々を気にも止めず、ヌッと身体を起こした善吉の顔に傷はひとつも無く、無表情もそのままに壁に持たれて修行一日目の善吉みたいに崩れ落ちてるめだかを、立ち上がって見下ろす。

 その姿はめだかに潰されると予想していた者達を驚愕させるに充分であった。

 

 

「改心だと? 誰がお前にそんな事するんだよ。悪いが俺はパスだ。

そんなお前を支持する奴等も居る以上、口を挟むつもりはねぇよ」

 

 

 ひび割れた床のタイルを踏み潰しながら、やはり一昨日とは大きく変化し過ぎてる善吉に誰もが息を飲む中、項垂れる様に崩れていためだかの全身がフルフルと震え、やがてその藍色の髪の色が真っ白に染まる。

 

 

「やってくれたな善吉、私は嬉しいぞ。これなら新技を使う相手として不足は無い。この廃神モードのな……!」

 

 

 全身から発せられる負オーラと共にめだかは立ち上がり、変化した善吉に対して心の底から歓喜をしながら廃神モードへとなると、間髪入れずに善吉にまたしても飛び掛かる。

 

 

「私の敵となったのなら遠慮はいらぬ! 存分に――」

 

 

 だからこそめだかは計れなかった。

 善吉がたった二日と言えど地獄ともいえる特訓の果てに至った真の進化の大きさを。

 そして今や強さも弱さも兼ね備えためだかすらも――

 

 

「嫌だ。

俺はこれから飯を食いに行くからお前とごちゃごちゃやるつもりはねぇ」

 

「あがっ!?」

 

 

 文字通り『指一本で』黙らせられるという事を。

 

 

「え……!?」

 

「……。なるほど」

 

 

 人差し指たった一本だけで飛び掛かってきためだかに対してカウンターの凸ピンをした瞬間、めだかの視線は真後ろへと急激に変わり、仰け反った体勢のまま再び壁に叩き付けられた。

 しかも今度は海老反りに仰け反った体勢の為、顔面からである。

 

 

「これがお前の与える進化って奴か?」

 

「高々二日程度で蚊トンボを獅子へと変える。

進化とはそういうものだと教えたのは未来のお前だぜなじみ」

 

「………。あの時僕に刺さっていた球磨川くんの螺子を抜き刺しして遊んでた時に何かしたな? お陰で今までスキルの殆どが封印じゃなくて消え去ってた」

 

「あぁ、アンタの困り顔の為に少しね。でも安心しろよなじみ。過程はどうであれ、ある程度お前の思惑通りにはなるんだぜ?」

 

「………………」

 

 

 ちょっと恨めしそうに睨む安心院なじみにクスクスと、自分の居る世界では絶対にみることは無い師の表情が楽しいと笑いながら、善吉の劇的過ぎて逆に引く進化について語る一誠。

 

 

「俺は切っ掛けに過ぎないだけで、ここまで至れたのはあの人自身の精神力だ。

言っとくが、今の善吉さんは強いぜ? 身も心もな」

 

「……スキル与えたのかい?」

 

「違うな、後天的に覚醒させただけだ」

 

 

 正直一誠自身の予想を大幅に越えた進化だったりする善吉を嬉しそうに眺める一誠を何とも言えない顔で見る安心院なじみとその他という構図の中、膝が一発で笑ってその場に膝を付いて立てないめだかに対して善吉は無関心顔で言い放つ。

 

 

「俺はずっとめだかちゃんを追い掛けて来た。

そしてめだかちゃんが敵を好む性質なのも、さっき敵になると宣言したその顔でわかった。だから今、お前と戦った。

結果は―――立っているのは俺だ!」

 

「ぜ、ぜんきち……?」

 

 

 二日前とは何もかもが進化し、混乱した様に膝をつくめだかを見下ろす善吉だった。

 

 

「これがお前の言ってた他人を進化させる性質という事か? 確かにこれじゃあフラスコ計画なんて必要ないのかもしれない……お前、何時僕と会ったんだ?」

 

「あぁ、そりゃ餓鬼の頃だよ。

居直り強盗宜しくなゴミカスが目の前で他種族引き連れて俺の親を殺しやがった日の夜」

 

 

 主人公めだかをも超越させる進化の手解きを見せた一誠との出会いの時期を知りたくなる安心院なじみに曖昧に答える中、流石に困惑し始めためだかに善吉は静かに口を開く。

 

 

完成(ジ・エンド)に挑戦して進化する。

俺は所詮完全とは程遠い存在だ、でもそれで良い、お前を越せるなら生ゴミ喰ってでも生き永らえてやる。

挑み、戦い、進化する……それが俺の超戦者(ジ・エンドゼロ)だ」

 

 

 それはめだかと同じ域へ……そして更にその先へと至ったという宣言。

 

 

「超戦者とは言い得て妙だな。お前が与えたのか?」

 

「まさか、そんな訳無いだろ。さっきも言ったけど俺は切っ掛けに過ぎない。掴んだのは善吉さんだからだよ」

 

 

 その手解きを解析したいなじみのアプローチを受けた一誠だが、悉くを受け流すと、勝利をもぎとった善吉へと近寄り、その肩をポンと叩く。

 

 

「善吉さん、取り敢えずこの辺にしましょう」

 

「ん……あぁ、そうだ俺が『黒神めだか』に勝ったんだから焼き肉奢れよな」

 

「「「「「「「!?」」」」」」

 

「勿論、約束ですからね。

住み家は無いけど金だけならあるからめっちゃ食わせてやりまさぁ」

 

 

 膝を付くめだかも、見ていた者達もあれだけ慕っていた善吉から飛び出た言葉に驚愕する中、善吉はショックを受けた顔をするめだかに『遥か上から見下ろすような目』をしながら一言……。

 

 

「俺はもっとショックだったよ、色んな意味でな。

お前が『この程度』だったなんてな」

 

「ぜ、善吉……! ち、違う! わ、私はまだ―――ぐっ!?」

 

「その言葉は一昨日俺がお前に向けたのと同じだし、ちょっと見苦しいぜ黒神めだか?

お前は敵が好きなんだろ? だから望み通りになってやったんだ。もっと喜べよ? 都城先輩の時みたいに、球磨川の時みたいによ?」

 

 

 オリエンテーションの時とは真逆の立ち位置でめだかを突き放すと、そのまま一誠を引き連れて去っていった。

 

 

「ま、待ってくれ! な、何だその冷たい態度は!? 確かにちょっと私も冷たかった気もするが……!」

 

「別に冷たいなんて思ってない。というか……うん、何だろうな、ガッカリし過ぎてお前を見ても何も感じない」

 

「!?」

 

「ちょ、ちょっと人吉! そ、そんな言い方……」

 

「仕方ないだろ喜界島。正直に言わないと閻魔様に舌抜かれちまうし」

 

 

 咎めようとした喜界島に対して冗談っぽく飄々と返す善吉の目は確かにめだかに対して無関心だった。

 

 

「ま、待て! そ、そもそも私はまだ負けてない!

参ったとも言ってないぞ!」

 

「あーそう、ならお前の勝ちで良いや。

はい俺の負けです――――これで満足か?」

「ぅ……そ、そうじゃなくて――」

 

「つー訳で一誠、終わったら焼き肉行こうぜ焼き肉。あ、不知火っつーダチとか誘えたら誘いたいんだけど……」

 

「不知火さん? って……確かめっちゃ喰う人っすよね? ……やべぇ、正喰者(リアルイーター)暴因暴喰(ネオ)でお財布炎上確定だけど、全然良いっすよ」

 

 

 食い下がろうとするめだかを突き放し、一誠に対して実質年下なのに先輩風吹かせるみたいに肩を組ながらその場を去る。

 それはある種のラスボスをも越えた裏ボスを思わせる程の風格だったとかと誰かは語るが……。

 

 

「…………………………………ぜ、ぜんきち……」

 

「!? 復元しない様に割っためだかちゃんの人吉君に対する亀裂が戻って……いや、それ以上だと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いんすか善吉さん? 俺的にはこの後握手して和解と思ってたんすけど……」

 

「良いんだよ。こうしたら『めだかちゃん』だって悔しいをバネに這い上がる筈だしな」

 

「そりゃそうかもですけど……あんな言い方までしなくても良いんじゃないすか?」

 

「……………。あ、やっぱり一誠もそう思うのか? あ、あぁ……やっぱ言いすぎたかぁ~! いや俺だってめっちゃ途中で泣きそうになったんだぞ!!」

 

「ま、まあ取り敢えずそこら辺の反省会も含めて食べましょう……ね?」

 

「お、おう……やばい、何か不安になってきた」

 

 

 それは実は全部只の善吉発案の演技で嘘であり、善吉自身の根は殆ど変わっちゃいなかった。

 が、間の悪いことにめだかが変な事になったのは気づいていなかった。

 

 その結果……。

 

 

「善吉……善吉ィ……!!」

 

「『……』『本当に善吉ちゃんがめだかちゃんと戦って勝ったの?』」

 

「勝っちゃったから黒神さんがこんなことになっちゃったの」

 

「でも何で人吉君がそこまで……いくら何でも早すぎる」

 

「善吉……善吉善吉善吉善吉善吉善吉善吉善吉善吉……」

 

「『めだかちゃんが江迎ちゃんっぽく見える気がしないでもないんだけど』」

 

「「………」」

 

 

 ある意味今のめだかの心は善吉一辺倒になっていた。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 進化の手段の引き出しだけは無駄に多い。

 

 

 しゃく……しゃく……。

 

 

「あぁ、美味い……こんなに美味い味はなじみと真正面からやりあった時に食った以来だ。

流石に味は落ちるけど、くくく……やっぱりお前は過去のなじみなんだなぁ……」

 

「僕のスキルを喰った……」

 

 

 そして特にエグいのが、悪魔を越えた悪魔と評された理由となる租借系のスキル暴因暴喰(ネオ)であり、この力によって喰われた全ては一誠の糧となる。

 

 

「なぁ、過去のなじみ?

お前を直接喰ったらどんな味がするんだ? 未来のお前じゃ無理なんだよ……なぁ、先っぽだけで良いから頼むぜ? なぁなぁ」

 

「変態かお前は……」

 

 

 そしてタガが外れると一番危険なのが暴因暴喰なのであった。

 止められるのは勿論……。

 

 

「いやーごめんごめん、僕の一誠ってこのスキル使うと見境無くなるから何時もこうなんだ。

あぁ、ちなみに食べるって意味は勿論そっちの意味じゃないから変な勘違いはやめるんだね、過去の僕?」

 

「…………………んなもん言われなくても分かってるし」

 

「きゅう……」

 

 

 未来の進化した人外のみである。

 

終わり




補足

めでたくラスボス候補化してしまった善吉ちゃん。
果たして彼の明日は何処にある!


その2
白音たんはまだ可愛らしいもんだけど、この暴因暴喰ってのはタガが外れるとマジで一番危険なスキルです。

それこそ、マジもんネオばりにヤバイ。

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