色々なIF集   作:超人類DX

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どんどんと勢力図が変化しちゃうという混沌


果てしない進化

 今まで見えなかった壁が目の前にそびえ立つ。

 

 勿論その壁自体が本当にそびえ立っている訳じゃなく、俺だけにしか見えない幻の様なものだ。

 

 けれどだからこそ俺にしか見えないその壁は、俺にのみ道を阻む様に立っていて、決して壁の向こう側にあるだろう世界を見せてはくれない。

 

 

(なるほど、これが進化の壁……)

 

 

 その壁を初めて見せてくれたのが、いや、実は見てみぬフリをしただけで本当は見えるんだと教えてくれたのが、俺をめだかちゃんに追い付ける為の修行を見てくれると言った男、兵藤一誠。

 

 兵藤は最初に言った。

 

 

『完璧である事を目指すは良いのかもしれないけど、決して己を完璧へと完成させる事なかれ。

完成や完璧に到達した所で最早意味なんてありはしない、それはより更なる進化を否定してしまう』

 

 

 完璧や完成で満足はするな。常に貪欲に壁を乗り越え続けろ。

 めだかちゃんのスキルをまるで否定するかの様な言い回しだけど、俺は何故か兵藤の言葉に一種の目覚めを感じた。

 

 完璧とは、完成とはそれ以上の成長を失う。それは絶望であり、停滞であり、終わりとなる。

 だからこそ完成や完璧という概念を否定する事で、またその領域に侵入する事への放棄によって、その二律背反と戦う。

 

 それが兵藤一誠という男の生き方であり、人外たる理由。

 

 俺はそんな男の教えを受ける事で、本当の自分を知って受け入れる事で、壁を乗り越えなければならない苦悩と乗り越えた時の快楽を知ってしまった。

 

 最早後戻りは出来ないし、その覚悟もしている。

 

 例え俺がめだかちゃんに嫌われてしまおうが構わない……今までの様な関係で無くなっても構わない。

 俺はこの先一人で突き進むだろうめだかちゃんの道の先となる壁となり続ける為に、自分の壁を乗り越え続ける。

 

 完成を越え、無限を越えた先にあろう(ゼロ)となり続ける為に、俺は挑戦し続ける道を走るんだ。

 

 

 

 

 

 

 どうであれめだかが善吉に敗北し、その善吉がめだかを見限った様な発言をした。

 その事実は生徒会はおろか彼等に親しい者達にも衝撃を与えるに十分であり、当初は安心院なじみと共に善吉の味方となっていた者達も、この先の善吉をどうすべきか……そしてその背後に居る男を消すべきかを真面目に考えていた。

 

 

「いやーあの人ふっつーに良い人だよねー! 焼き肉美味しかったー!☆」

 

『………………』

 

 

 ただ一人を除いて……だが。

 

 

「焼き肉に行ったのかい不知火さん? 人吉君と例の男と?」

 

「そーそー、最初人吉に誘われた時はびっくりしたし、あの人も居るってのにも驚いたりもしたけど、奢ってくれる時点で良い人間違いなしだったね」

 

「……。それは不知火さん基準じゃないのか?」

 

 

 元々は安心院なじみ先導の下で善吉をめだかの対抗馬とする集まりだった者達の中の一人である不知火半袖の実に満足そうな言葉に、集まっていた他の者達は閉口するしか無かった。

 

 確実に善吉を変質させた元凶にあっさりと餌付けされて懐柔される程バカじゃないと信じてたのに、これではピリピリしている自分達はいったい何だったのだろうか……。

 

 

「それと人吉と話したけど、アイツ別に何も変わってませんでしたよ? 何でも黒神さんに対しての態度は焚き付ける為の演技だったとか」

 

「……! それは本当かい? 根拠は?」

 

「昨日例の人と焼き肉行った時に、終始その人と反省会してました」

 

 

 私も少し安心しましたよー と人を喰った様な態度を崩さずに昨日の事を語る不知火半袖に善吉味方チームはこぞって難しそうな顔を続ける。

 

 結局の所、例の男が何のマジックを使ってめだかをも越える領域に善吉を進ませたのか……味方チームの一人であり、解析者である黒神真黒すらも理解出来ない手腕を持つ一誠が実に不気味なのだ。

 

 

「アイツの目的は『僕への嫌がらせ』だ。

つまり、僕のたくらんでた事に横入りして、僕以上の結果を短時間でやったったぜザマァ(笑) みたいな事を人吉君を介して僕に伝えてるだけなんだろうさ。

相当未来の僕に仕返ししたかったらしいしね」

 

『…………』

 

 

 味方チームの話し合いを少し離れた場所から見ていた安心院なじみの言葉に全員が何とも言えない顔をする。

 ひょこっと現れて、ひょこっと修行の面倒を見て、本当にめだかを越えさせたのが地味に気に入らないのだ。こんな顔を誰しもがするのだって仕方ないのかもしれない。

 

 

「あ、じゃあアタシはこの辺でー」

 

「あ? この辺って、どの辺に行くつもりだよ?」

 

 

 その上ある種何を考えてるのか分からない不知火は協調性の欠片も無く、一人この場から去ろうとする始末ばかりか……。

 

 

「いやー、人吉にスカウトされちゃったんでそっちにでも行こうかなーって。

対黒神めだか&安心院なじみチーム的な?」

 

「え!? 人吉君に!? なんで!? 私は!?」

 

「さー? 江迎さんについては特に何も聞いてないし、アタシは知りませーん?」

 

「な……!」

 

「ちょっと待て。アイツに引き抜かれたのか?」

 

「いえいえ、例の人は特に何も言ってませんよ? 決して『集まって緩い空気醸し出しながら放課後毎日色んな食べ歩きする』って言われて心が震えたとかありませんから!」

 

 

 あっさり食い物で懐柔されたとケタケタと笑いながら言い、スタコラサッサと逃げてしまう始末。

 

 

「……………。本当に僕に対して地味に効くボディブローの様な嫌がらせばっかりしやがるな」

 

「あの不知火さんを引き抜くなんて……」

 

「彼女だけはそうならないと思ってただけに色々と対策が大変ですねこれは」

 

 

 ポツンと残された者達からしたら、一誠が元凶となってやらかしてるとしか思えず、本人の知らぬ所でますます警戒されてしまうのも無理は無い話だった。

 

 本人にそんな意思は無いにしてもだ。

 

 

 

 

 壁を乗り越える挑戦をし続け、完成や完璧とは程遠い貪欲な領域へと進化し続ける道を選んだ善吉のその頃はというと……。

 

 

「目安箱に依頼が投書されてんぞ。

ええーっと『学園内の草むしりの手伝いを頼みたい』だとよ」

 

 

 驚く面子を無視して普通に生徒会庶務として現れ、昨日の事なんて忘れたとばかりに発足初期編よろしくに日常的な生徒会のお仕事をしていた。

 

 

「『……』『善吉ちゃんや』」

 

「んぁ、何だよ球磨川?」

 

 

 そのあまりにもあんまりな態度というか、神経の図太さというべきか、めだかがさっきからチラチラチラチラと善吉ばっかり意識してるにも拘わらず、ガン無視しているという態度に、球磨川が代表して話し掛けてみた結果、何と善吉は今までと何ら変わらない態度で普通に球磨川――だけでは無くて喜界島や阿久根にも返答行動をしていた。

 

 

「昨日あれだけの事をしたからてっきり来ないと俺は思ってたんだが……」

 

「昨日? あぁ、アレは単に個人的なやり取りでしかありませんしね。一応生徒会の任期がまだある以上は投げ出さずに庶務は続けますよ」

 

 

 本人は最後まで生徒会の仕事を続ける意思表明を見せるものの、めだかとの会話がまるで無い。

 喜界島と阿久根はそんな善吉に何か言いたげな顔をするものの、昨日のインパクトがあまりにも強すぎて言うに言えずにいると、流石負完全と呼ばれるだけある球磨川が平然と二人のぎくしゃくし続ける仲に対してブッコミを入れる。

 

 

「『善吉ちゃんのせいでめだかちゃんがめんどくさくなってんだけど』『その辺早くなんとかしてくれないかな?』『ほら見なよ今のめだかちゃんを』」

 

((あ、呆気なく言ったこの人ー!!)

 

 

 めっちゃヘラヘラしながら平然と空気をぶち壊す球磨川に、阿久根と喜界島はハラハラしていると、それを受けた善吉は今もチラチラチラチラチラチラチラチラと様子を伺ってくるめだかを一瞥する。

 

 

「ぜ、善吉……!」

 

 

 まさか球磨川が突っ込んでくれたお陰で……! と善吉からやっと視線を向けられためだかの表情が一瞬にして捨て子犬から歓喜へと変化したのだが――

 

 

「この依頼どーすんだよ黒神? 誰もやらないなら俺行くけど良いよな?」

 

「え……あ……」

 

 

 その歓喜の表情は一瞬にして粉々に砕かれてしまった。

 淡々と今回投書されていた草むしりの件の事しか話さない善吉のせいで。

 

 

「良いよな? じゃあ行くわ」

 

「……………うん」

 

『………』

 

「『空気ぶち壊しだね』」

 

 

 結局業務的な事しか言わない善吉に凹まされてしまっためだかは放置プレイとなり、ただ黙って送り出すしか出来ずに撃沈してしまった。

 何もかも昨日の……いやもっと言えばオリエンテーションの時にやった己の行動が原因となってしまったとするなら、何故自分はあんな真似をしてしまったのか……そうめだかはとっとと草むしりに出て行った善吉無き後の生徒会室にて、盛大に落ち込むのだった。

 

 

「………。やっべー、今更引くに引けなくなっちまった」

 

 

 本当は別にそんな事は無いというのに……不憫な子である。 

 

 

 

 

 物理的な意味でなら間違いなくドライグの力はオーバーキルである……という理由でこの世界では一切使おうとしない一誠。

 というかそもそも安心院なじみに嫌がらせして満足したら適当に帰る予定だったというのに、何の火が着いてしまったのか、善吉を自分の進んだ領域へと引きずり込んでしまったが故に無責任に帰る訳にもいかなくなっていた。

 

 

『どうするつもりだ? 人吉善吉を引きずり込んだまま帰る訳にはいかんだろ』

 

「あぁ、でも分かってても見てられなかったからついさ…。自分でもバカで余計な真似だったと思うぜホント」

 

 

 時計塔地下六階は何故か温泉施設になっていて、地下十三階を密かに根城にしていた一誠によって勝手に使われてるこの温泉に浸かりながら一誠は、小さい頃からずっと一緒の相棒と会話していた。

 勿論内容は善吉のこの先についてだ。

 

 

「じゃあ後は大丈夫っすねー……なんて言うわけにもいかないし、まあ、こうなったら自分で出来る限りの事はするっきゃねーだろ」

 

『まあ、お前の憧れ人だからな。そう言うとは思っていたし俺も特に何も言わんが、そろそろ俺を使って欲しいんだが』

 

「いやいや、ドライグ使ったらオーバーキルどころか大陸ごとぶっ飛ぶじゃん。

この世界に神器の概念も無いし……」

 

『むぅ……』

 

 

 時計塔のとある地下フロアにあった、自分にちょうどサイズの合っていた箱庭学園の制服をまでも失敬し、すっかり時計塔の地下を根城にしてしまった一誠を咎める者が不思議と存在しない。

 

 それは一誠自身が時計塔の地下全体に『仕込み』を行っており、これにより誰もが一誠の行方を基本的に掴めなくしてたりするのだ。

 

 だからこそ呑気に風呂なんて入れる訳であり、現状唯一正確に一誠の居場所を突き止められるのは、彼によって進化を果たした善吉ただ一人だった。

 

 

「てか善吉さんどうするんだろ。仲直りできたかな?」

 

『……。多分、引くに引けなくなって黒神めだかにだけ態度を変えてないかもな』

 

「だとしたらとてつもなく責任感じるんだけど俺……」

 

 

 乳白色の湯船に浸かりつつ、最初から拗れてしまってたとはいえ、二人を更に拗れさせてしまったと少しどころか相当罪悪感を感じる一誠。

 安心院なじみの邪魔目的以上に、善吉自身がこの先待ち受ける不知火の闇を相手にめだかを守れる様になって欲しいからと動いてしまったが、考えてみたらそれも余計な真似でしかなかったと思う訳で……。

 

 

「風呂上がりのフルーツ牛乳は超美味いけど……なんか複雑だわ」

 

『一々言ってたってもう遅いだろ』

 

「そりゃそうだけどよぅ……」

 

 

 キンキンに冷えてやがるフルーツ牛乳も美味いけど少しだけ美味くなかった。

 けれどこの態度を善吉に見せる訳にはいかないと思った一誠は、半分ほど残っていたフルーツ牛乳を一気に飲み干して空ビン入れに入れると、失敬した箱庭学園の指定制服に袖を通し、地上へと続く階段へとゆっくり向かう。

 

 

「喰う事の意味でも今日は教えようかな」

 

『お前、そんな事まで教えるつもりか? 正喰者(リアルイーター)の小娘が居るからって……」

 

「いやもうどうせなら俺をぶち抜いて欲しくなってきたというかさ……」

 

 

 善吉がめだかと肩を並べる姿を思い浮かべながら……。

 

 だが外に出れば――

 

 

「ま、そうなるでしょうね」

 

「…………」

 

 

 待ち受けるは癌である故の代償なのだ。

 

 

「どうも黒神さん。元気……には見えないね」

 

「あぁ、お陰様でな」

 

 

 時計塔を出たその瞬間、隠すつもりの無かった気配が滲み出ることでそれを察知した黒神めだかが一誠の前へと現れた。

 それは勿論『歓迎』という意味では無い事ぐらい一誠にも分かってるし、めだかの顔を見ればこの先何が起こるのかも大体は予想していた。

 

 

「善吉を変えたのは貴様だな? 何故変えた?」

 

「その内その質問は来ると思ってたけど、実際責め立てられるとキツいね色々と。でもまあ、そう解釈されてもしょうがないし、実際問題善吉さんは劇的に変わったからな……教えてやるのが俺の義務なのかもしれないね」

 

 

 鋭く見据えるめだかに対して、一誠は苦笑いしながら自分が変えたという部分を認める。

 

 

「そうか、なら――」

 

「しかしながら、キミに教えるにはまだ早いな」

 

「――――なんだと?」

 

 

 けれど一誠はハッキリとめだかに対して『今は教えない』と宣言する。

 その宣言にめだかの目元がピクリと動き、声も更に低くなっていく。

 

 

「教えないのは何故だ? 私に知られて困る事でもあるのか?」

 

「困る事は困るな」

 

「なら私が無理矢理口を割らせる手段に出ても良いのか?」

 

「おっと、聞いてた黒神さん情報らしからぬ強引さだねこりゃ……」

 

 

 髪の色が真っ黒となりながら低く構えだしためだか。

 

 

「『改神モード』か……」

「……。貴様は色々と知っている様だな。ならこれはどうだ?」

 

 

 それを見て一誠は一瞬にして見破ると、めだかはムッとなりながら自分の右から半分の髪を真っ白にする。

 

 

「混神モード……。強さと弱さを兼ね備えた私の最新だ」

 

「へぇ……?」

 

 

 流石の成長の速さに一誠は少しだけ笑みを深めた。

 師から聞いたおとぎ話の通り、黒神めだかはどこまでも黒神めだかである事が、状況の変化があれど変わらない事が一誠にとっても楽しいのだ、

 

 だからこそ一誠はそれを受け――

 

 

「完成で満足してたら俺には勝てないよ黒神さん」

 

 

 流れる空気を『しゃく……!』っと言う謎の咀嚼音をさせながら喰うと、犬歯を光らせながら獰猛に嗤って抑えていた闘争心を、巨大な重圧と共に解放した。

 

 そしてその重圧に本能的な恐怖を覚えてしまっためだかが地を蹴り飛び掛かって来たのを、人差し指……いや中指……いや薬指――――否、小指だけを立てると……。

 

 

「善吉さんはまだまだ強くなる。だからキミも負けるな」

 

「……!!」

 

 

 その眉間にピタリと当て、大気が荒れ狂う程の勢いで突撃しためだかの動きそのものを完全に止めた。

 

 

「っ……!!」

 

 

 勿論めだかも驚いて固まるという訳じゃなく、咄嗟に身体をずらして側頭部目掛けてのハイキックを放つ。

 

 

「ん」

 

「!?」

 

 

 だがその脚も一誠の小指一つで防がれたばかりか、気の抜ける声と共に反対側の手を使ったデコピンを額に打たれ、めだかの身体はマネキン人形の様に吹き飛んだ。

 

 

「はっ……! はっ……! ハーッ……!」

 

 

 たったひとつのデコピンひとつだというのに、身体を起こそうと思えば思うほど全身の震えが邪魔をして上手く立てないめだかに、ゆっくりとした足取りで一誠が近づいてくると、静かに語り始める。

 

 

「俺は確かにスキルを持っている。だからこそキミにしてみれば俺の持つスキルを完成させれば俺を越えられるという算段なのかもしれないけど、それは間違いだ。

 確かにキミの持つ完成はスキルを完成させる事で問答無用に相手の上を行くのかもしれないが、事前に仕込みさえすれば俺は相手にスキルを模倣させる事を不可能に出来る」

 

「く……」

 

「それでも俺は一つだけそんな仕込みをしてないスキルがある。

そのスキルは無神臓と言って、無限の進化をするスキルなんだけど……何故キミが既に完成により取り込んでるにも拘わらず一切使えないかわかるか? それは俺のこのスキルは『完成させた瞬間に無意味となって消え失せる』スキルだからさ。

そう、無限に進化するスキルを完成というスキルで完成させる事は出来ない……それは進化を放棄するという事になるからな。

故に黒神さんはこのスキルを取り込む事は不可能であり、言ってしまえば未完成である事が完成であるスキルなのさ」

 

 

 黒神めだかのスキルでは致命的なまでに相容れないスキル……無神臓についてを聞かされ、膝を付きながら何も返せないめだかに一誠は更に続ける。

 

 

「だがもしキミが完成の先へと進めたら……ふふ、善吉さんは再びキミを見てくれるかもね?」

 

「……え?」

 

 

 師に似てるというべきか、それとも自然に飴と鞭が上手いのかは分からないが、二度目となる敗北を与えられて打ちのめされてるめだかに対して一誠は一筋の光明を与える言葉を放つ。

 

 

「善吉……が……?」

 

 

 冷たくなってしまった善吉と元に戻れるかもしれないという一誠の言葉に、当初は変えた理由を問い質そうとしていためだかがすがるような顔へと変わる。

 

 

「ど、どうすれば……!」

 

 

 それは生徒会長であり常に堂々としていた彼女らしからぬ姿であったが、幸運な事にその姿を見られる事は無かったし、本人にしてみれば善吉との仲直りしか頭に無かった。

 

終わり

 

 

オマケ・嫌がらせの先は……。

 

 

 完璧である事を放棄することで、ある種安心院なじみとは別の人外とも言える男。

 その男にとって安心院なじみというのはある意味特別であるのは間違いなかった。

 

 

「めだかちゃんにまで引き上げるつもりか? 何が目的なんだ?」

 

「元々俺はお前に嫌がらせして、満足したら適当に帰るつもりだったんだけどね……気付いたらえげつなくなっちゃった」

 

「なっちゃったじゃないよ。お前のせいでフラスコ計画が完全ゴチャゴチャしちゃったじゃないか。

どう責任取ってくれる訳? 他の代わりなんて居そうで居ないんだぞ」

 

「なるほど、ではお前は困ってるって訳だ……………………………………ザマァ!(笑)」

 

 

 特別が故に、色んな顔が見たいとか。普段見ない面が見たいとか。

 小学生男子が女子にやるアレみたいな感じだったが故に、この時代の安心院なじみは被害だらけだった。

 

 

「こうなったらお前を使ってフラスコ計画を完成させるしか――」

 

「嫌どす。てかこの時代のお前ってどんだけその計画に拘ってるんだよ? 俺の時代のお前は全然拘ってねーのに」

 

「未来の僕はお前が居るから計画がある種完成したからなんだろうけど、僕は違うんだよ、悲願なんだよ。なのにフラフラ現れて計画めっちゃくちゃにしやがって」

 

「お、良いねその困り顔。写メにして待ち受けにしたら毎日満足した気持ちになれそうだぜ?」

 

 

 フラスコ計画の価値を紙屑同然にした男に対して、そしてこの先自分が拾える可能性は無いと、実は未来の自分に言われて地味に焦ってるが故に、密かに一誠を取り込んでやろうと動き出した訳だが……。

 

 

「ムリ! 無っ理~!」

 

 

 両手を顔の横に置いてパーにしたりグーにしたりしながら無理と心底腹の立つ顔で拒否られる。

 

 

「そんな計画とか俺どうでも良いし、つーかこう言えば嫌がらせだし、全力で拒否らせて貰う意味で………無理ぃ!」

 

「……」

 

 

 ビンタすらしてやりたい。安心院なじみはただただ思うのであったとか。

 

 しかし本当の所、理由は嫌がらせの為とかでは無かった。

 

 

「過去の僕の誘いを突っぱねたんだって? どんだけ嫌がらせしたいんだよ?」

 

「そりゃ当たり前だろ……と言いたいけど、実際問題お前の尻追っ掛けては遊ばれるのが俺らしいと思ってるからな」

 

「へー? その心は?」

 

「お前を何時か喰う為に離れるつもりはない」

 

 

 結局の所、一誠にとっての目標は自分の知る安心院なじみただ一人。それだけの事であるのだ。

 

 

 

 

 

 その2・平行世界故の違い。

 

 

 平行世界の人間だからこそ、この世界と元の世界の微妙な違いはある。

 例えば漫画なんかは……。

 

 

「すげー! アイツの言うとおりドラゴソボールじゃなくてドラゴンボールだ! ドラゴン波じゃなくてかめはめ波だ! すげー!!」

 

 

 この様な微妙な違いがある。

 

 

「何だよドラゴソボールって……パチもんの臭いが果てしないんだけど」

 

「ドラゴン波ってのがまた偽物っぽいというか……」

 

 

 修行後のご飯にて、咀嚼系統のスキルの本能のせいで店内に存在する食材全てを喰らい尽くしてしまった暴因暴喰(ネオ)こと一誠と、正喰者(リアルイーター)こと不知火半袖のせいで出禁になってしまったというプチハプニングがあったりした。

 

 そんな中、『よし、はしごしよう!』という善吉にとってはある種の地獄の始まりとなる流れの途中で何と無く立ち寄った本屋にて、一誠はこの世界では認知されている有名漫画を手にしながらキラキラした顔をしていた。

 そう……ドラゴンボールという漫画を見て。

 

 

「アイツから話は聞いてたけど、いやーこの目で見られて感激だなオイ。

あ、でもこの漫画なら知ってるぜ?」

 

「え? あぁ、キン肉マンか……」

 

「アタシ全然知らないんだけど、確か今キン肉マンの子供が主人公で連載されてるんだっけ?」

 

 

 どれ見てもテンションが上がってる一誠が、唯一普通に手にした漫画を見て『何故にそれ?』と感じる不知火と善吉なのだが……。

 

 

「あ、それ二世だろ? そっか、ここじゃまだ二世なんだな。俺よくこの漫画だけはアイツに持ってきて貰って読んでるんだけど、知ってる? この悪魔将軍がこっちの時代の連載じゃ完全に主人公化してるの」

 

「は? 悪魔将軍がか? 想像つかねー……」

 

「いや本当なんですって。しかも実は完璧超人で、中身であるゴールドマンがその始祖メンバーの一人で……」

 

「何だそりゃ!? ちょっと待て、ますます意味がわからねーぞ!?」

 

「最後読んだ時は何と、実は師であったりした超人閻魔との一騎打ちで、この漫画では有名な超人硬度10・ダイアモンドパワーを越えた、超人硬度10♯ロンズデーライトパワーを――」

 

「ごめん、アタシ全然わかんない」

 

「俺は悪魔将軍は知ってるから何と無くわかるが……正直想像が……」

 

 

 未来にでもキン肉マンのシリーズが続行されてることもそうだけど、この時代にて描写されていた悪魔将軍が悪魔将軍なだけに、知ってる善吉からしてみれば訳のわからない事だらけだった。

 

 いや、それよりももっと驚いたのが……。

 

 

「地獄の断頭台に肘による固定を加える新技、これぞ地獄の断頭台・改である神威の断頭台じゃー!!」

 

 

 ドラゴンボールばりに好きになってたのかは知らないのか、物理法則無視マッスル技を一誠が普通に再現しているという点であった。

 

 

「すげー……」

 

「あんなの貰ったら確実にあの世だね……あひゃひゃ☆」

 

 

 まさかこれを覚えさせられるばかりか、ツープラトンを組まされるのでは? と不安になる善吉。

 

 その不安がフラグになってしまうのかは、これから先の未来にしかわからない。




補足

先日のお食事会……出禁にされるくらい喰いまくった。


その2
然り気無くこの世界の安心院さんと徒党組まれる前に釘刺ししてる。
全ては人吉君とめだかちゃんを近い未来に来る『例の男』に負けさせない為に。

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