色々なIF集   作:超人類DX

169 / 1033
前回の続き。

セラフォルーさんの貞操が危険だー(棒)

しっかし、ダブル・アーツを知ってる方の熱い感想の多さにオラびっくりだ。


それぞれの思惑

 ソーナ・シトリーが抱えるたった二つの眷属。

 

 兵士(ポーン)・匙元士郎。

 

 将軍(ジェネラル)・兵藤一誠。

 

 

 この二人だけしか居ないまま増える事が全く無い。

 しかるに個人戦力は(キング)のソーナを含めて『終わってしまって』おり、とてつもなく脅威だった。

 

 だから一部の……特にリアスとほぼ同時期に行われた非公式のレーティングゲームを見ていた悪魔の一部は、堕天使コカビエルを捕らえたと広まるその話を信じず、誰もがたった一人の王と二人の下僕によって捕らえたと思っていた。

 

 何せリアス本人がそう訴えるのだ。

 シトリーの次女とその右腕が生死を賭けた戦いだというのに、社交ダンスなんかしながら、しかも社交ダンスでコカビエルを陥落させたという話は馬鹿馬鹿しくも思ったが、やりかねないという一種の確信も確かにあった為、一部の悪魔達は多くに褒められるリアスとその下僕達――ではなく影に引きずり込むオーラを持つソーナ達に期待を抱いた。

 

 

「滅びの魔力ってかっこよくね? 響き的に」

 

「でもお前、破壊の技術があんじゃん。あのクソ理不尽な奴」

 

「それはあくまで技術だろ? 俺が言いたいのは、こうやって手から水ビーム出すよか、滅ビーム出した方がカッコ良くね? って意味だよ」

 

「残念ね。私の悪魔としての特性がトレースしてる以上、一誠は私と同じ水を操るしかできないわ」

 

「まさかひんぬー会長と同じ魔力性質に転生して獲るとは思わなかったぜ」

 

 

 本人達のやる気はほぼゼロだが。

 

 

 

 リアスの主張も虚しく、コカビエルの件はソーナ達では無く自分達の手柄になってしまってから数日。

 近々そのコカビエルの件で三大勢力と呼ばれる悪魔・堕天使・天使のトップが介して会合をこの駒王学園にて行われる事になった。

 

 当然各勢力のトップが出張るという事で、この地の管理を承っているリアス達は迫る会合の準備に追われ、複雑なままだがソーナ達にも力を借りる事になった。

 

 

「プール清掃の助っ人として、リアス達の手を借りる事になったわ。

二人ともちゃんとご挨拶はしなさい」

 

「ありがとうございます」

 

「本日はよしなに」

 

 

 その為にはまずこれまで殆ど関わる事のなかった互いの眷属達とひとつの作業をし、連帯感を強めなければと考えたリアスは、ちょうどプール開きが迫る関係で生徒会に依頼のあったプール清掃の手伝いを申し入れ、本日はたった二人のソーナの眷属と自分達との合同作業をしていた。

 

 

「え、君って確か教会の悪魔祓いの子じゃなかったっけ? 何で悪魔になっちゃったのさ?」

 

「うむ……実はコカビエルとの件で信仰していた神が既に死んでいたと聞いてしまってな。

ヤケクソになってそのまま騎士として転生したのだ」

 

「思いきったヤケクソっぷりだねそりゃあ」

 

 

 新たに眷属となったゼノヴィアのお陰で概ね空気は良いとリアスは一先ずホッとする。

 何となくアカヤとギスギスしていたと思ってたが、一見すればそれからは特に何がある訳でも無いのもよかった。

 

 

「アカヤ先輩。プールのお掃除が終わったら一杯遊んでくださいね?」

 

「わ、私泳げないので、出来たらアカヤさんに教えて欲しいな……なんて」

 

「あ、うん……」

 

 

 ……。もっとも、そのアカヤこと御劔赤夜は一誠と元士郎に何となく距離を置こうとしてる感はあったが。

 

 

 そうこうしている内にプール清掃も終わり、綺麗な水が張られる。

 清掃の対価として一足早くプール遊びを許可されているという事で、実はちゃっかり皆して水着を持参していた。

 

 

「よーっし! グレモリー先輩と姫島先輩の水着姿が見れんぜぃ!!」

 

「それが原動力だったなお前の……呆れるというか……」

 

「当たり前だ! でなけりゃこんな掃除ボイコットしとったわ!」

 

「は、はは……元気だね兵藤君は」

 

「………」

 

 

 脱いで履き替えるだけなので、一足早くプールサイドに出ていた一誠、元士郎、木場と御劔赤夜の男子四人は、ぶっちぎりでテンションの高い一誠に生ぬるい視線を送っていたが、本人はリアスと朱乃……それと一目見た時からナイスバディを確信していた相手であるゼノヴィアの登場をアホ顔で待っている。

 

 

 ちなみにこの時ばかりは、ソーナについてはどうでも良かった。

 

 

「ちなみにだが、喜べ匙。

この後レヴィアたんが来るらしいぜ? 水着持参で」

 

「え!?」

 

「……!?」

 

「レヴィアたんって……え、レヴィアタン様が?」

 

 

 そんなんだからソーナにしてやられるんだという自覚もしてない一誠は、平行線そのまんまの元士郎に気付け薬のつもりで、しかし割りととんでもないことをサラッと言い出す。

 

 勿論その言葉を聞いた瞬間匙は驚くのだが、同時に分かりやすくテンションが上がり、御劔赤夜も驚いた顔をしている。

 

 そしてその予告通り――

 

 

「元ちゃ~ん!!☆」

 

「せ、セラさん……!」

 

 マジでセラフォルーが、更衣室で着替えていたソーナ達と一緒に姿を現した。

 勿論ちゃんと際どい水着で。

 

 

「まさかセラフォルー様が来るなんて……びっくりしちゃったわ」

 

「どうせ一誠が呼んだのよ。こういう時の一誠の行動力は半端ないから」

 

「みたいね……」

 

 

 出てくるや否や、元士郎に飛び付き、そのまま揃って激しい水飛沫と共に雪崩れ落ちるのを横目に、これまた一誠にしてみればパーフェクトなボディと水着を着たリアスと朱乃がやって来て、何というか意外過ぎる水着姿のソーナと話している。

 

 

「まあ、お姉様は匙に任せれば良いわ」

 

「そうみたいね……」

 

 

 まるで『誰かさん』の趣味そのまんまのフリッフリの―――ゴスロリ全開の水着姿のソーナがある意味際どい水着のリアスや朱乃、色々と予想通りなスク水の小猫やアーシア。競泳っぽい水着のゼノヴィア以上に目立っており、赤夜と木場もそういう意味じゃなくソーナに視線が行ってしまう。

 

 

「と、いう訳で着たわよ一誠? どう?」

 

 

 眼鏡を外してる状態のソーナが、早速とばかりに一誠に感想を求める。

 既にプール内ですっごいことになってる元士郎とセラフォルーが地味に気になるが、それ以上にまるで一誠がそうさせました的なトーンで聞いてくるソーナの言い方の方が気になってしまうのだ。

 

 

「どう? いや俺に感想求められても困る……」

 

 

 そう言いながら苦虫噛み潰した顔の一誠。

 まるで『聞いてたのと違う』といった心情が伺える。

 それもその筈……。

 

 

「あら、この水着を『選んでくれた』のは一誠――んむ!」

 

 

 にっこにこと、まるで負完全が見せる無垢に見えてしょうがない笑顔を浮かべて最後まで言おうとしたソーナの口を無理矢理手で塞ぐ一誠。

 

 

「俺は選んでも無いし知らねぇぞ!」

 

 

 オーフィスの服を選んでたセンスから全く抜け出せないのが……そういう趣味だとバレてしまうのを阻止に出たが、既にそれも遅かった。

 

 

「あー、アナタが選んだの? そう、何というか……想像していた趣味とは随分真逆なのね?」

 

「違いますから! 俺は何にもしてませんし!」

 

「……………。私、赤夜先輩と心に決めてるので近寄らないでください、そしてそういう目で見ないでください」

 

「は? おい今何つったそこの白髪のガキ?

誰がテメーみてーなしょんガキに興味なんか抱くか。

俺はそこの奴とは違うっつーの」

 

 

 掛け値なしの本音爆発で、身の危険を訴える小猫に対して言い捨てる一誠は、地味に元士郎とセラフォルーの楽しそうな姿を鋭く見据えてる御劔を引き合いに出す。

 

 そもそもオーフィスのせいでセンスが片寄り過ぎたのを、ソーナに対しても適応させただけに過ぎないだけで、趣味では無いのだ。

 

 例え、生地からゴスロリ衣装を作成可能な技能を持ってて、最近着たら地味に似合うから作ってはソーナに着せたりしてるかもしれないけど、それでも趣味じゃないのだ。

 

 

「フリフリのメイド服を生地から自作してくれたりするのよ一誠は?」

 

「嘘……!? そんな事まで?」

 

「シャラップ!!」

 

 

 ソーナの追撃のせいでほぼ言い訳不能になろうとも、一誠は趣味じゃないと逃げるのだ。

 

 

 

 

 イッセーがゴスロリ趣味なのはべつにどうでも良い。

 それより問題なのは、思っていた以上にレヴィアタン――つまりセラフォルーが匙と距離が近い事が……。

 

 

「どうかな元ちゃん? ちょっと地味かもしれないけど……」

 

「セラさんは何着ても似合いますって。それに寧ろ際どいの着られたら俺は心配で……」

 

「他の男の子に見せたくないの? 元ちゃんったらヤキモチ妬いてくれるんだ? 嬉しいー☆」

 

 

 いや、近いどころじゃねぇ。さっきからずっとプールに身体浸かりながら抱き合ってるじゃないか。

 ある程度は大丈夫だろうと思ってたのにこれじゃ……。

 

 

「アカヤ先輩、どうして魔王様ばかり見てるんですか?」

 

「私のことも見てください……」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 ダメだ、納得したくない。

 何があっても必ずセラフォルーとだけはフラグ立てるつもりだったのに……。

 

 

「アカヤ先輩、早く泳ぎを教えてください」

 

「あ、うん……」

 

 

 

 

 御劔がずっとこっち見てる。

 いや、正確にはセラさんを見てやがる。

 冥界のメディアに魔法少女の格好で出てるから、見られることは仕方ないと思うかもしれないが、アイツはどうもセラさんに何かしら抱いてる疑惑がある。

 

 だからその……そんなガン見してるとムカムカしてしまう。

 

 

「? どうしたの元ちゃん? さっきから見てくれないけど――――って、あー、あの子か……」

 

「ええ、さっきからセラさんばっかガン見してるんで嫌だなって」

 

「見られるのは慣れてるし私は平気だよ?」

 

「そうなんですけど、見てる意味合いが違うといいますか……」

 

 

 気にする必要は無いと思っていても、どうも俺って嫉妬深い性格なのか、嫌だと思ってしまう。

 好きな人を色目で見られて誰だっていい気分はしない。

 一誠の野郎、こうなるとわかっててセラさんを呼んだんだな? 珍しく突っかかって来ないと思ったら……。

 

 

「だから俺の趣味じゃない! ちょっと事情があって自作出来るようになっただけっす! そもそも着せたのだって単なるモニターで……」

 

「似合ってるって褒めちぎられたわよ?」

 

「やっぱり……」

 

「しゃ、社交辞令だっ!!」

 

 

 良いだろう、会長の幼馴染みの眷属だか何だか知らないけど、もしセラさんにちょっかい掛けるつもりなら、俺も出るとこ出るぜ。

 

 たとえセラさんが御劔に興味が無かろうともな。

 

 

 

 将軍と女王は男と女という違いだけで基本的に位置は同じだ。

 王の傍に在り、王に対し一番の手助けをする。

 それが姫島朱乃と兵藤一誠の唯一共通する事である。

 

 とはいえ、姫島朱乃は自分と同時期……いや、もしかしたらそれよりも少し前にこの位を持つ一誠に対して一種のコンプレックスを抱いていた。

 

 

双戦舞(ダブルアーツ)ってネームは誰が考えたのかしら?」

 

「この人っす。面白冗談半分で作っただけなのに、真面目に考えた結果、そういう感じに」

 

「結構良いでしょう?」

 

「ええ、悔しいけどあの時のイッセー君とソーナに見とれる程に」

 

「…………」

 

 

 御劔赤夜が小猫とアーシアと祐斗とゼノヴィアとで騒ぎ、少し離れた箇所で二人きりで何かやってる元士郎とセラフォルーというプールサイドからの景色を眺めながら、姫島朱乃はコカビエルの件で見せられたイッセーの王の右腕としての実力に、少しばかりの対抗心を持っていた。

 

 表向きはわかりやすい性格をしてるイッセーに合わせているが、内心は自分と同期ともいえる転生悪魔であるイッセーに敗北感があり、故にあの夜コカビエルに何もできなかった事もあってか、ライバル視をしているのだ。

 

 

「互いの癖を知り尽くさないと出来ない戦い方だから、リアスには難しいんじゃないかしら?」

 

「まあそうね……私にはソーナみたいな相手も居ないし」

 

「あの御劔の彼なんかどうなんすか?」

 

「アカヤが強いのは認めるけど、それとはまた別だと思うわ」

 

 

 加えて本来だったら手柄だった全てを自分達に与えるという行為まで平然と行った。

 表向きは今も王同士、右腕同士とで話はしてるし朱乃も笑みを浮かべてはいるが、朱乃の内心は悔しかった。

 

 

「本当に信頼し合ってるのねアナタ達は……」

 

「そうよ、一誠だもの」

 

「まあ、肩並べて誰か捻り潰すって事があったら、一番信用できるのはこの貧乳さんではありますがね」

 

「………」

 

 

 上から見下されている様な気がする……という意味でも。

 

 

 

 

 小猫とアーシアは御劔赤夜に好意を持っている。

 そして放っておくと様々な女性と仲良くなる事もよーく知ってる。

 現に最近は悪魔祓いから悪魔に転生したゼノヴィアがそうだ。

 

 

「なぁアカヤよ。試しに子供を作ってみないか?」

 

「え……何言って――」

 

「ダメですよアカヤさん!」

 

「そうです、まだそんな年じゃないのに……」

 

 

 しかも割りと積極的ときた。

 故に小猫もアーシアもこれまで以上に牽制の幅を強める必要があると思っているのだが、それ以上に問題――それも大問題とも言える件がある。

 それは何を隠そう……。

 

 

「折角だから元ちゃんに塗ってほしーな?」

 

「そ、そりゃ構いませんけど……」

 

「じゃあ決定~☆」

 

 

 

「…………」

 

「さっきからアカヤはあの魔王ばっかり見てて面白くないぞ」

 

「や、やっぱりあの時兵藤さんが言ってたのは本当だったのでしょうか?」

 

「だとしたらダメですよ。だってレヴィアタン様はどう見ても匙先輩と仲良しだし……」

 

 

 アカヤがどんな理由にせよ、あのセラフォルーに対してどう見ても好意的な態度であるという事実だ。

 

 今だってプールサイドに上がり、レジャーシートを敷いてそこにうつ伏せになって水着の紐を緩めたセラフォルーが横になるその背に、めっちゃドキマギした様子で日焼け止めクリームを塗ってる元士郎の様子を、何処と無く嫉妬深く睨んでる気がすると、見ていた小猫とアーシアは感じる。

 

 

「あんまりジロジロ見ちゃダメだと思います先輩」

 

「うむ、私もそう思う」

 

「そ、そうですよ……」

 

「もしかして、アカヤ君はレヴィアタン様のファン……だとか?」

 

「………………………いや」

 

 

 だからあの手この手で、セラフォルーに向けられる視線を自分達に向けようと必死こく訳だけど、祐斗の疑問の声に対して返ってきたアカヤの何か隠してる感満載の声があんまりにもバレバレだった為、ますます面白くない結果となってしまったのは云うまでもない。

 

 

「おいテメェ匙ィ!! テメーは俺が誘った恩を忘れてなぁにをレヴィアたんにお触りしとんじゃい!!」

 

「だ、だってやって欲しいって……」

 

「ふざけんな! 俺だってやりてぇ! てか塗らせろこの野郎!」

 

「………………。あぁっ!? させるかこの野郎! やったらぶっ飛ばす!!」

 

「もー、イッセーちゃんも元ちゃんも喧嘩しないの☆

私が元ちゃんに頼んだから許して欲しいな?」

 

「うぐ……!? れ、レヴィアたんに言われたら仕方ない……わかりました。

けど匙! どさくさに紛れてエロイ事したらダブルアームスープレックスだかんな! 悔しくなんてないかんな、こんちくしょぉぉぉーーっ!!!!」

 

「こんな所でするかよ、お前と会長じゃあるまいし」

 

 

 頼むからセラフォルーが興味を持たないで……と願いたい小猫とアーシア。

 まあ、二人のその心配は単なる杞憂なのだが……。

 

 

 

 

 

 わりと嫉妬深い元士郎は、見てくれだけは自分の上と思う御劔と、イザとなれば勝負する決意を固めた訳だけど、はっきり言ってしまうとその心配は杞憂以外の何物でも無い。

 

 第一、セラフォルーの心はかつての世界から既に決まっているのだから。

 

 

「ふふ、元ちゃんがヤキモチ妬いてくれるだけで嬉しいな?」

 

「俺は本気ですよ……。セラさんが万が一他の男のところに行っちゃうかと思うと胃がキリキリと……」

 

 

 プール遊びも終わり、結局ゴスロリ趣味で定着させられてテンションがた落ちの一誠を連れて帰ったソーナを見送り、セラフォルーは御劔に敵意持ちまくりだった元士郎を連れて別の自宅……というか元士郎宅まで行くと、よしよしとその頭を撫でていた。

 

 

「元ちゃんっばホント変わらないね。呀の称号を獲ても、私とコンビを組んでもずっと元ちゃんのまま」

 

「やっぱり何時までもガキっぽいですか……?」

 

「んーん、違う。元ちゃんは元ちゃんのままで安心するって意味だよ☆」

 

 

 元士郎の自室のベッドを背に床に並んで腰を下ろしながら、少しうつ向き加減の元士郎の頭を優しく、軽すぎる何時ものセラフォルーとは思えない包容力を醸し出している。

 

 

「一誠の言ってた通り、どうも奴はセラさんを気にしてるみたいで……」

 

「なんとなーくはずっと見られてたから解るかも。

でも元ちゃん、私はレヴィアタンとしてはある程度皆に対して平等に接する事が多いかもしれない。

けれど、ただのセラフォルーとしての私はみーんな元ちゃんのモノだよ?」

 

「セ、セラさん……」

 

 

 前世(?)含めれば結構長い付き合いであるセラフォルーの言葉に元士郎の表情は晴れていく。

 そして身を寄せ合いながら暫く手を握り合う。

 

 

「あの時は結局外の神の悪足掻きで先に進めなかったけど、今度はずっと一緒だよ元ちゃん……」

 

 

 嘘じゃない。ちゃんとここに居る。

 まるで確かめ合う様に互いの身を寄せ合うこと数分。

 やっと少しは吹っ切れたのか、元士郎は握っていたセラフォルーの手を離さずゆっくり立ち上がると……。

 

 

「…………。修行します! 早く一誠のバカ野郎に勝つ為に!」

 

「うん! やっぱり前向きな元ちゃんでないの!☆」

 

 

 未だ高い壁を粉砕する為、セラフォルーと共に家を飛び出す。

 強くなり、一誠をぶっ飛ばす。

 

 

 ――守りし者となれ、そして強くなれ――

 

 

『真月・(キバ)!!』

 

 

 かつて幻影である赤鞘の剣を持った白いコートの騎士に言われた言葉を胸に、暗黒の騎士は赤龍帝だろうが何だろうがぶち倒し、セラフォルーを守る為に強くなるのだ。

 

 

「ところで元ちゃん、私達もソーナちゃんとイッセーちゃんがやった双戦舞(ダブルアーツ)だっけ? やってみよーよ?」

 

「え、お、俺踊るのド下手っすよ? 多分あの二人みたいにはいかないと思うんですけど」

 

「まぁまぁ、ものは試しって事でさ!」

 

 

 ――ぶっちゃけ、一誠やらソーナやらオーフィスがおかしなレベルになってしまってるだけで、後天的ながらも元士郎とセラフォルーペアのレベルも他から見れば十二分におかしいという感想が返ってくる訳だけど。

 

 

「ところで一誠のやつは大丈夫なんでしょうか? プールの後ヴァーリが出てきて一悶着あったし…」

 

「うーん、あの様子だとあんまり大丈夫じゃないかもね……。

けどソーナちゃんが傍にいるから大丈夫だよ」

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 時は少し戻り、プール遊びもそろそろお開きとなり全員が着替えて解散しようという時の事である。

 

 

「中々良い学舎じゃないか」

 

 

 そこに姿を現す一人の少年にリアス達は警戒心をあらわにする。

 

 

「誰かしら? アナタみたいな生徒は居ない筈だけど」

 

「先日のコカビエルの件で姿を見せたつとりだったが、改めて挨拶しよう。俺は『白龍皇』のヴァーリだ」

 

『!?』

 

 

 白龍皇という言葉を受け、リアス達の顔は驚愕に染まる。何せアカヤという赤龍帝の対となる存在でありコカビエルの件で感じた力強さが警戒に値したからだ。

 

 

「ここで何をするつもりかわからないけど、冗談がすぎるんじゃないかな?」

 

「ここで赤龍帝との決闘をさせるわけにはいかないな、白龍皇」

 

 

 ドスの利いた声で剣を抜き、ヴァーリに忠告する騎士のゼノヴィアと祐斗。

 だが刃を首に突き付けられてる本人は薄く挑発的に笑う。

 

 

「やめておいた方がいい。キミ達の手が震えているじゃないか」

 

「「っ……」」

 

 

 その言葉の通り、確かにゼノヴィアと祐斗の手元は震えていた。

 実力差を悟ってるからこそ出てしまった僅かな怯えだが、ヴァーリ本人は嘲笑は無かった。

 

 

「嘲笑うつもりは無い、寧ろ誇るべきだ。

相手との実力差がわかるのは強い証拠―――俺と君達との間には決定的な程の差があるんだ。

コカビエルに勝てなかった君たちでは、俺には勝てない」

 

「その言葉に私達は感謝すれば良いのかしら?」

 

「どう捉えてくれても結構だよリアス・グレモリー。

この世界は強い者が多い。『紅髪の魔王』と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえ、トップ10に入らない」

 

 

 好戦的な雰囲気を漂わせたヴァーリがリアスの兄の強さをわかりやすく話す。

 その視線は赤龍帝の御劔赤夜へと向けられながら……。

 

 

「五指に入る強者は大体が長い歴史でも不偏だったのだけど、コカビエルの件で俺は見てしまった」

 

 

 そしてその視線がズレていき、やがて然り気無くリアス達から距離を離していたソーナ……それから一誠に向けられ、リアス達も釣られるように二人を見る。

 

 

「ソーナ・シトリーに……キミは何て名前かな?」

 

「………」

 

 

 ワルツを躍りながらコカビエルを捻り潰した二人組(ペア)に向かってヴァーリが興味深そうに既に知っているソーナの隣に立つ一誠に名前を問う。

 それはまるでソーナを含めて獲物を見つけて喜んでいる様にも見えた。

 

 

「今日はセラフォルー・レヴィアタンという魔王までいる。戦う気は無いけど、強者の雰囲気を持つ者と向かい合えるだけでも来た意義はあったよ」

 

「…………。俺は眼中無しかい」

 

 

 クスクス笑いながら、御劔赤夜、ソーナ、一誠、セラフォルーを見ていくヴァーリに、元士郎が小さく不貞腐れた様に毒づく。

 

 別に実力を誇示して自慢する趣味なんか無いし、力を求める理由だってセラフォルーをあらゆる障害から守りたいからというのもあるが、自分だけ蚊帳の外だというのもそれはそれでいい気分ではない。

 

 まあ、隣に居たセラフォルーによしよしとして貰ってたので我慢できたわけだが。

 

 

「ソーナ・シトリーの眷属らしいけど、見ればわかる。相当に鍛え込まれているな? 神器は持ってないようだが――」

 

「………………………。はぁ」

 

 

 そんな元士郎とセラフォルーのやり取りに対し、御劔赤夜がまた何か言いたげな顔をするのに気付かず、ヴァーリが一誠に向かってベラベラ語ったのを暫く黙って聞いていたが、途中で大袈裟にため息を吐いてそれを止めた。

 

 

「ん、何か言いたいことでも?」

 

 

 そのため息によって言葉を中断させられたヴァーリが訝しげに一誠を見て尋ねる。

 すると何をするのか予想ができてないリアス達が見守る中、そのため息の理由を察していたソーナの前に出てゆっくりとヴァーリに近寄ると。

 

 

「よく喋るなお前。そこは『アイツ』と同じだが……」

 

「アイツ? 何のこ―――――あがっ!?」

 

『!?』

 

 

 人指しひとつ。もっと言ってしまえばただのデコピン。

 父が子に軽い仕置きに使うかの様に、異常に冷めきった顔でヴァーリに向かって放った瞬間、まるで銃弾を思わせる様な激しい空気の破裂する音と共にヴァーリの身体は乱回転しながら地面をゴム毬みたいに何度もバウンドし吹っ飛んだ。

 

 

「この時期でアイツの3%未満か。ま、だろうとは思ってたけど」

 

「ちょ、ちょっとイッセーくん!? あ、アナタ今デコピンだけで……」

 

(こ、こいつ……。

あのヴァーリをデコピンで倒せるくらいの力があったのか……!?)

 

 

 自分が何をされたのかすら分かってない様子……つまり混乱しながら身体を起こすヴァーリを見て一誠は遠い目をしながら呟いているのを見て、白龍皇相手にしてもこのレベルである事を知ったリアス達は戦慄してしまう。

 

 特に御劔赤夜に至っては転生者の事は知ってるしで恐怖すら覚えてしまう。

 

 

「っ……な、なにを……う、あ……?」

 

 

 漸く自分が吹っ飛ばされた事を自覚したヴァーリがよろよろと立ち上がり、喧嘩を売られたという大義名分で反撃に転じようする。

 だが、立とうと思えば思うほど肉体に力が入らず、無様に前のめりに倒れてしまう。

 

 

「た、たった一撃で俺がこれ程のダメージを……!?」

 

 

 不意打ちだったとはいえ、一撃で満足に立てなくなる自分自身が信じられずに何度も立とうとしては倒れるヴァーリは、『最初から興味も眼中も無い見下した目』をしていた一誠を睨む。

 だが一誠はそんなヴァーリの睨みにすら関心を示さず……。

 

 

「帰ろうぜひんぬー会長……。あ、それの後片付け頼んで良いっすかグレモリー先輩?」

 

「え、えぇ……」

 

「良いの一誠?」

「うん、これ以上してやる事も無いし」

 

 

 ソーナと共に去っていった。

 

 

「…………」

 

 

 ヴァーリの中でのターゲット優先度が変更されても知らんとばかりに。

 

 

 そして――

 

 

「あーぁ、どうても俺の知ってる方のヴァーリと比較しちゃう。だから極力顔を見ないようにしてたのに、やっちまった……」

 

「リアス達がびっくりしちゃってたわ……大丈夫かしら」

 

「大丈夫だろうけど―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう嫌だぁ~! 全然引きずってる自分が嫌になる~!!」

 

 

 自宅に戻り、元士郎とセラフォルーが修行してるその頃、一誠はソファに寝そべり自己嫌悪に陥ってた。

 

 

「アナタが私にこういう事を頼んでくる時点で痛い程わかるわ」

 

 

 珍しくソーナに膝枕して貰いながら。

 

 

「だって当たり前だけど顔とか声とかまんまなんだもん。性格はアホっぽく無いけど、ほぼ同じだしよ~! あーもう引きこもりてぇ……」

 

 

 何も思わないなど、そんな訳がない。

 変な着ぐるみパジャマを着るのが趣味で、この世界のヴァーリと違って微妙に大人っぽいけど、それでも声だの顔だの何だのはほぼ同じの、かつて友達と言える数少ない存在だったのだ。

 一誠は代償として失った事を思い返してしまってメンタルが微妙に崩れてしまい、何でも良いから誰かに甘えたかったのだ。

 

 

「この調子で曹操とかと会ったら同じ事だぜ……」

 

「ならこの世界のオーフィスと会ったらもっとマズイんじゃないの?」

 

「多分……いや、確実にそうかもしれない。

あーもう会いたくねーよぉ……」

 

 

 気づけばソーナの腰を抱きながら、グリグリとうつ伏せで膝というかお腹というか、下腹部というかに顔を埋めて弱音吐きまくりな一誠。

 微妙に変態っぽい気もしなくもないが、生憎その相手がソーナの為、咎められる事は一切ない。

 

 いやそれどころか、さっきからソーナは内心そんな一誠にきゅんきゅんさせながら頭を撫でていた。

 

 

「椿姫みたいにもし御劔君が既にオーフィスと……なんて事があり得なくもない気がするわね」

 

「だとしたら軽く泣くの我慢できないぜ俺。

この世界のオーフィスだし文句言うのはお門違いだけど……」

 

 

 顔を埋めて半べそかいた声を出す一誠は、例の怪しき転生者がどこの女とよろしくやろうが、例外以外は知ったこっちゃないと思ってる。

 ハーレム築くのはムカつくけど、害にさえならなきゃ放置安定のつもりだった。

 

 けどもし、この世界のオーフィスによーく自分の知ってる幼女の姿にさせて宜しくやってたとするなら、確実に凹む自信があった。

 

 故に一誠はその不安を消そうと本能的に人肌を求めてソーナに甘えて誤魔化そうとするのだった。

 

 

「あ……んっ……! 一誠……そのあんまりそこをぐりぐりというか、くんくんされると流石に恥ずかしくなるわ……お腹というより、もはやあそこだし…」

 

「もうちょっと我慢してくださいよ……。別に変な匂いしないし、何時も通りのアンタの匂いだし……うー……」

 

「……。これでそれ以上は一切無いって、これ下手な拷問以上よ……? さっきからきゅんきゅんしておかしくなりそうなのに……」

 

「あー……うー……」

 

 

 悪い予感は当たってしまうが世の常かもしれないのも同時に誤魔化す為に、一誠はただただ今だけ全力でソーナに甘える。

 

 これで本人は『ごめん、もっとボインが良い』と宣えるのだから良い度胸である。

 




補足

真月・呀。

元ネタ、真月・牙狼

知らない方はググれば見れる。動画で見たら幸せになれる……かも。

ビジュアルとしては、背に悪魔のを思わせる翼が現れ、完全な飛行戦闘を可能にした形態。

 セラフォルーさんが好きな元ちゃんの技のひとつらしい。


その2

メンタルが微妙に崩れるとソーナさんに甘えだす。
これで本人は逃げようとするのだから、石でも投げられても文句なんか言える訳もない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。