色々なIF集   作:超人類DX

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只のネタ。

某上院議員になりたがるってだけの。


マッチョイズム

 

 少年は憧れた、その人間性に。

 

 道徳的には宜しくないかもしれないけど、夢の中で見せられた、とある世界のとある政治家の人間性がめちゃくちゃアホっぽく見えたけど好きだった。

 

 

 理由はそう……ハチャメチャなキャラだが説得力十分な強さを持っていたから。

 

 結局は白い悪魔である事を受け入れた『忍者』によりその男は敗けたけど、その散り様もまた少年の心に火を灯すのに十分であり、その日から少年は己の中の異常性と向き合いながらひたすらに筋トレした。

 

 結果的にその右に寄りすぎな思想を持つマッチョな上院議員みたいなマッチョにはなれてないけど、それでも世に蔓延る男子校正の全てが貧弱に見えてしまう程の引き締まった身体を手に入れた。

 

 そしてその筋肉に裏打ちされた強さと進化も……。

 

 

 そう……その少年の名前は――

 

 

「俺のタックルはどうだ!」

 

「き、貴様……に、人間風情の癖に……!?」

 

「ふははは!! 俺の趣味は筋トレだ! そこらの人間の男と一緒にされちゃあ困るなぁ! 俺がその気になれば、神だろうが――――ぶっ飛ばせる! 男子高校生を嘗めんじゃねぇ!!!!!」

 

 

 兵藤一誠……という名前だった。

 

 

 

 

 

 

「ふん、散々偉そうに見下しておきながらその程度か? 種族としての力だけを過信するからだ」

 

 

 この日、とある公園にて背から黒い翼を生やした存在が一人の少年によってボロボロに捻り潰された。

 本来なら単なる人間でしかない少年を逆に訳無く殺せる側だったのに、結果はこの様。

 

 理由はそう……少年である一誠はめちゃくちゃマッチョ脳だったからだ。

 

 

「早く筋トレの続きをしないと」

 

 

 男子高校生である一誠少年の肉体。

 それは制服越しにでも分かる程に膨れ上がった筋肉――――――では無いのだが、それでも触れてみればそれがどれ程のモノなのかがわかる鋼の様な筋肉を搭載しており、この日もまた性に貪欲なクラスメートの誘いを蹴って一人黙々と筋トレをしていた。

 

 その途中で先程叩きのめした背から黒い翼を広げる存在に意味無く喧嘩を売られた訳だが、一誠の頭の中には最早今さっきまでぶちのめした存在の事なぞ消えており、如何により良い筋肉を搭載できるかの事で頭が一杯だった。

 

 

「ナチュラル筋肉を付けるには日々の鍛練が欠かさない。

然るに実戦も体験しないとあのマッチョな上院議員みたいにはなれない……どうしたものかね」

 

 

 力こそが正義。それを目指して早10年以上。

 未だにあの夢の中で見せて貰ったマッチョイズム全開な上院議員の様なムキムキにはなれないと一誠少年は引き締まりすぎて逆に凄い自分の身体を服越しに触れながらブツブツと呟き、兎飛びをしながら公園を出る。

 

 既に人ならざる存在を呼吸が如くブチのめせるレベルにまで達しているというのに、謙虚なのか世界のレベルを過大評価しまくりなのか、本人はまだまだ己を弱いと認識しているらしい。

 

 

「神をぶっ飛ばせるとブラフを噛ましたが、何時か本当にその領域まで行きたいものだね……フッフッフッ」

 

 

 ぴょんぴょんと兎飛びをしながら自宅を目指す一誠少年の夢は、この世に蔓延る人ならざる存在をぶちのめせる領域。

 

 その為にはとにかく筋肉しかないとタカ派を通り越して右に寄っても尚右に寄りまくる上院議員みたいな強さを手に入れる事らしいが、実の所この一誠少年は己を過小評価しまくってるだけで既にその域に達してたりしなくもない。

 

 その根拠として、このマッチョイズムにどっぷりはまりこんでる少年に『結果的ながら』助けられた者達がそれなりに居た。

 

 例えば、将来の自分……つまり『はち切れんばかりのマッチョな身体を搭載した自分の姿』をニヤニヤしながら夢想してる一誠少年を探し当て、小走りでやって来た者等がそれに当たる。

 

 

「ここに居たのかイッセー、ちょっと探したぞ……」

 

「む?」

 

 

 兎飛びを続けていた一誠少年の名を呼びながら小走りでやって来た者。

 青い髪、前髪部分が緑のメッシュ、整った容姿とスタイル。

 それは間違いなく美少女と呼ばれるに差し支えない、外国人と思われる一誠と同い年の少女。

 

 

「何だゼノヴィアか、どうしたんだ?」

 

「どうした……じゃ無い。放課後に交わした約束をすっぽかして一人でまた鍛練か?」

 

「約束……? あぁ! そういえば何かやるみたいな約束をしたな! ごめんごめん、ガハハハ!」

 

「まったく……」

 

 

 名をゼノヴィア。『最近』になり『ちょっとした事情』を経て一誠少年の通う学園へと転校してきた少女は、約束を忘れて筋トレをしていた事を笑って誤魔化す一誠に深くため息を吐く。

 

 

「どうしてお前はそう……まぁ良い、とにかく約束は交わしたのだから鍛練を中断して貰うぞ?」

 

「おう、忘れてた俺が悪いからな。で、何の約束をしたんだっけ?」

 

「………。取り敢えず来い」

 

 

 二人の出会いは、悪魔やら堕天使やら天使やら妖怪やら地獄の生物やら神々が実は蔓延ってるこの世界にて、只の学生と、悪魔祓いでこの町に派遣されたという共通が全く無い状況での出会いだった。

 

 

「何だ、学園に戻るのか?」

 

「そうだ」

 

「ふーん?」

 

 

 ゼノヴィアが悪魔祓いとしてこの町に派遣された理由は、丁度その時町に侵入してやらかそうとした堕天使の大物を何とかするという任務の為であり、この町を事実上管理している悪魔相手にちょっとした立ち回りを演じたりとか、同じく派遣される事になった相棒の少女がその管理している悪魔の下僕の一人と幼馴染みだったとか、別の下僕の一人が任務内容の物に対して因縁があったとか……まあ、紆余曲折の果てに堕天使の大物と戦うことになった。

 

 

「リアス・グレモリー達がお前を怪しんでる。気を付けろよ」

 

「怪しんでる? 筋トレが好きなだけの人間って言ったのに、どこに怪しむ要素があるんだ?」

 

「それはお前があのコカビエルをパンチ一発で沈めたからだ。あのなイッセー? お前、自覚してない様だが普通の人間にはあるまじき力を持ってるんだぞ? しかもただの生身でだ」

 

「おー、専門家にそう評されるとは俺も光栄だねぇ?」

 

 

 その決戦の前にゼノヴィアが出会ったのが、今自分の忠告をヘラヘラ笑いながら軽く流してる筋トレバカ少年こと一誠。

 相棒が贋作の画を与えられた路銀を叩いて買ったせいで食事も儘ならないと困って、適当にそこら辺の人間からお布施を頂こうと町中に突っ立ってた時にその男は――

 

 

「む? 金に困ってるのか?」

 

 

 親指のみで倒立し、更にはそれが自分の足だぜと云わんばかりの顔でてくてく器用に歩くという、変態じみた行為をしていた少年に相棒は引きながらも一緒になって頷くと、倒立をやめた少年は金が無い理由を自分達から聞き、呆れた様子で財布から1万円札を出して渡してきた。

 

 

「SNSを見ろ情報弱者め、そいつは多分最近ニュースに上がってる絵画詐欺師だ。ほれ、くれてやるからこの町でそんな真似するな」

 

 

 鼻で笑われた……というのが最初の印象で、正直ムッとはしたし相棒は日本人だった為言い返しもした。

 だが一誠はそれをまたしても鼻で笑って流すと、そのまま去った――倒立歩きで。

 

 それが最初のゼノヴィアの出会いであり、正直二度と会わないかと思っていた。

 だがそれからも偶然が重なり、任務の内容である回収作業の最中もばったり筋トレ中の姿で会うし、相棒の幼馴染みからの提案で共闘中でもばったり会うし、挙げ句の果てには回収しなければならない物を振り回すはぐれ悪魔祓いをはっ倒し、結果的に自分達の手伝いまでしてくれた。

 

 当初は単なる嫌味な奴だと思ってたのだけど、共闘していた悪魔達と同じ学園に通い、流れで一緒に回収任務をしてる内にちょっとアホだけど割りと話せる奴と馬が合い、そして決戦の時には――

 

 

「なぁにが聖剣だ! 何が神は死んだだ! そんなものは豚にでも喰わせろぉ!!!」

 

「ごはぁ!?」

 

「気に入らない奴はぶん殴る! それが俺の生き方だぁぁっ!!」

 

 

 大物堕天使を、只の人間が一方的にフルボッコにしていた時は、まさかここまでとはゼノヴィアも唖然としてしまった。

 

 

「一応、そこの奴等とは知り合いでね。その知り合いがピンチともくればやるしかないだろ? というかだ、そこの子が傷ついてるのを見ると無性に腹が立つ! だからお前等を黙らせる!」

 

 

 しかも理由が堕天使一派が気に入らないから黙らせるという、何とも単純な理由。

 結果としては大物堕天使一派はたった一人の脳みそ筋肉バカに壊滅させられた訳だけど、ゼノヴィアはその日以降、遠巻きに眺める悪魔一派よりも率先して一誠と関わる様になった。

 その理由は見てて多少気持ちが良いのと、割りと話せる奴だという事……。

 

 

「何だよゼヴィ? 何故体育倉庫なんかに? ドッジボールでもしようってか?」

 

「違う、良いからそのマットの上に座れ」

 

「む? おう……」

 

 

 そして、初めて自分の身を任せるにたる強い男だというという……割りとゼノヴィアも突進的性格が故な理由だった。

 

 

「よし、そのまま仰向けに寝ろ」

 

「? 寝たぞ」

 

 

 特殊な理由が無く、単純に滅茶苦茶に強い。

 一体全体何故そうなのかはわからないが、とにかくゼノヴィアはそのハチャメチャな強さに惹かれている事を自覚した。

 だからこそ、信仰した神が実は居なかった事を知ってしまった事で所属していた組織を追われ、相棒だった紫藤イリナが何とやけくそで悪魔に転生したのを見届け、自分はその伝の伝でこの学園に転校し、晴れて今目の前で何の疑問も持たずマットの上に仰向けで横になってる一誠と学友になれた。

 

 だがゼノヴィアは学友という関係に満足できなかった。

 何せその理不尽な強さに惹かれているから。

 だからこそこうして一誠を密室同然の体育倉庫に連れ込み、マットの上に寝かせて不思議そうに自分を見つめてるその鍛え込まれた身体に覆い被さる様に身体を預けながら、びっくりした顔をする一誠の耳元で囁くのだ。

 

 

「なぁ、子作りしてみないか? この倉庫の天井の染みを数えてる間に私が色々とするからさ」

 

「はぁ? 何だよ急に? 変なものでも食ったのか?」

 

「いーや、私は正常さ。ふふふ、お前は私をどう思うか知らないが、私はなイッセー? どうやらお前に惚れ込んでしまったみたいなんだ」

 

「なんと」

 

 

 惚れちゃいました。と……。

 蒸し暑さも忘れてイッセーの身体に自分の身体を重ねて離さないと絡ませ、微笑みながら明かしたゼノヴィアにイッセーは割りと驚いた様な顔だった。

 

 

「俺お前になにかしたか? てっきり鳴瀬の奴に惚れでもしたのかと思ったんだけど……」

 

「アイツにはイリナやらその他大勢が既に惚れでもしてるだろ? というか、そもそもアイツにそういう感情は私には無いぞ?」

 

「ふーん?」

 

「で、どうする?」

 

「どうするも何も断るに決まってるだろゼヴィ。

俺たちゃまだ餓鬼だぜ? 早いし、唐突すぎてな」

 

「むぅ、その反応からしてこの先は期待できるんだな?」

 

「さぁてな……ふふふ」

 

 

終わり

 




補足

当時、ゲームをプレイしてた身としては、まさかのラスボスでそれに見合う滅茶苦茶さ加減と強さに衝撃を受けたもんです。

上院議員を嘗めんじゃねぇ!! だの、その後聞こえる謎の喚声も。


その2
ゼノヴィアさんはそんなマッチョイズムになりたがるアホに……。


その3
異常性もあるので余計に上院議員が再現できるというやばさ。

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