色々なIF集   作:超人類DX

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完ネタ

只のマジネタ


The end of Issei
異常者だったらな一誠


 イレギュラーってのは突然現れる。

 歓迎すべきイレギュラーだろうと無かろうと、それは本当に唐突だ。

 俺がそう感じたのは5歳の誕生日を迎えたあの日だ。

 

 

 兵藤誠八。

 

 

 一人っ子だった筈の俺の元に突然現れた兄と名乗るこの男が何者なのか、それは17歳となった今でも分からない。

 彼を当然の様に両親は受け入れているし、周りもそうだった。

 何でも出来る天才扱いと、それまで普通として生きてきた凡人な(オレ)

 気付けば周囲の人間は彼を中心に……俺は外へと弾き出される結果となった。

 何でもそつなくこなす兄と、どこまでも普通な弟。

 両親も、友達も、出会った幼馴染みのあの子も彼をチヤホヤした。

 

 それを見て嫉妬したと言われたら正直したと答える。

 突然沸いて出てきた癖に、何のマジックを使って周りを誤魔化したのかは知らん。

 だがしかし……フフお陰で俺はあの日以降『努力』するという事を知った。

 

 周りが彼を見てる間の全てを俺は一人努力をする時間に費やした。

 無駄なことだ……だの、誠八に敵わないんだから止めとけだのと周りから言われ続けてきたが、それでも俺は折れず、何のジャンルに対しても努力を怠らなかった。

 その結果……。

 

 

 

 努力ってのは一定水準以上を行うと必ず報われるとわかった。

 そして気づいた……努力しても無駄だとほざく奴ほど、努力をしてないんだと。

 本当の努力を知ら無いからこそ、血ヘドを吐いてまで手にする結果に快感を覚える事を知らない。

 それは、兵藤誠八も同じ事。

 努力が好きすぎて……努力をする事に全力を捧げてしまった俺は、何時しかある日出会った『彼女』に言われた言葉。

 

 

 異常者(アブノーマル)

 

 

 それが俺のキャラらしい。

 そしてそのキャラと性質の先に生まれた能力……それが……。

 

 

 

 

 

 

 

『世界は不変か?』

 

『未来はレールの上か?』

 

『現実はつまらんか?』

 

 

 同じ制服を着た、同じ年代の大人へ差し掛かる少年・少女がポカンとした面持ちで、壇上に立つ一人の少年を見つめる最中、少年は凛とした面持ちと声をマイク越しに聞かせていた。

 

 

『心配するな。生きてるだけで人間は儲けもんだ』

 

 

 少し赤みがかった茶髪。

 整った容姿。

 すらりとしながらもガッチリとした体型。

 駒王学園二年生であるこの少年・兵藤一誠を壇上の下から見つめる生徒達は色んな意味で知っていた。

 運動・勉学・その他全てが学園で一番は普通。

 そして今もこうして聞かされる彼の声と姿から嫌でも感じ取れる圧倒的なカリスマ。

 

 彼の声や挙動を目にし、耳にすればするほど彼に引き込まれる。

 生徒の一人一人はそう感じていた。

 

 

『…………。とまあ、偉そうな事を言ってしまってる俺だが、何を言いたいのかといえば簡単だ。

今日から俺は皆の支持の元にこの学園の生徒会長になれました……アザース!』

 

 

 フッ、と彼はそれまで見せていた厳格な態度を一気に軟化させる。

 普段の彼のキャラはひょうきんなのだ。

 

 

「変に堅物キャラになんなよイッセー!」

 

「そうだぜ! この学園に居る奴等全員、お前があんなキャラじゃねーことぐらい知ってるぜ!」

 

『うるせー! 少しぐらいカッコ付けたいお年頃なんじゃい!』

 

 

 生徒達が知る『何時もの彼』に戻った瞬間、一部からそんな声が一誠の耳に入り、一誠はちょっと恥ずかしそうに顔を赤くしながらその生徒二人に向かって中指を立てている。

 

 

『おほん……。 まあ、つまりですね皆さん。

今日から俺は皆さんの学園の生徒会長となりました……。

つきましては、今までの生徒会とは違い……皆さんの持つお悩み何かの相談事も引き受けようと思いますので、どんな悩み事……勉強・恋愛・進路・家内安全から交通安全まで等々、悩み事があればこの目安箱に投稿してくれ。

24時間365日可能な限り俺は誰からの相談を引き受けるぜ!』

 

「「「「「うぉぉぉぉっ!! イッセェェェェ!!!」」」」」

 

 

 フハハハハ! とどっかの悪役みたいな笑い声と共に言い切る一誠に、生徒達はわーわーきゃーきゃーとこの時を以て駒王学園・生徒会長に完全就した一誠を歓迎した。

 支持率『97%』……他の候補者を完全に蹴散らしてでの新・生徒会長兵藤一誠は、実にやりきった感満載な顔で壇上を降りていく。

 その右腕に付けられた会長の腕章………そして『副会長』『会計』『書記』『庶務』の腕章も付けたまんま。

 

 

 兵藤一誠。

 二年一組。

 血液型・AB型

 駒王学園・第18代生徒会長・副会長・会計・書記・庶務。

 

 

 

 

 

 

 備考・無神臓(インフィニット・ヒーロー)

 

 

 

 

 

 さてさて、今無き先代の生徒会長兼先輩の義理を返すために急遽生徒会長に立候補し、毎日毎日を支持率集めに努力した結果が実ってくれて実に良かった……………なんて此処で胸を撫で下ろす訳にもいかない。

 先代の……俺にとって尊敬すべき先輩から受け継いだこの腕章を守り、次の代に受け継ぐために頑張らなきゃならん。

 

 

「うむ……。しかしやはり、急過ぎて他の役員を蔑ろにしてしまったのは反省すべきだな」

 

 

 就任と同時に明け渡された生徒会室の会長と書かれた椅子に座りながら、俺は一人考えていた。

 折角他の候補者との競争に競り勝ち、この椅子を手にしたのだから全力で頑張ろうと思うし、何より新たに新設した悩み相談にしたって、俺一人だと手に余るかもしれない。

 となればやはり、副会長も会計も書記も庶務も必要なんだが…………ふーむ。

 

 

「おう一誠。いきなり悩み事か?」

 

「冷やかしに来たぜぇ」

 

「む……松田と元浜か」

 

 

 先代も信頼できる人物に役員を頼んでいたと言ってたし、俺も俺が信用でき、且つ意思の強い者にこの残る4つの腕章を与えたい。

 そんな事を考えていた矢先、生徒会室の扉を開けてズカズカと入ってきたのは、俺の所属するクラスメートである松田と元浜だった。

 通称・変態ブラザーズ。

 その名称通り、女子の更衣室は覗くは、女子生徒達を性的な目で見るわと…………風紀委員が手を焼くレベルの問題児なんだが、それを取っ払えば中々気の良い奴等だ。

 

 

「お勤めごくろーさん。これで一誠は晴れて生徒会長になれた訳だが」

 

「ん? ああ、そうだな」

 

「お、どうした、浮かない顔じゃねぇか?」

 

「生徒会長になれたは良いが、他の役員をすっかり忘れてしまっててな……」

 

 

 役員でも無いのに勝手に椅子に座って寛ぎ出す二人を咎める事無く、俺は思っていた事を二人に露呈させる。

 すると松田と元浜はケタケタ笑ってから口を開く。

 

 

「そうだった、お前が完璧過ぎて誰もツッコミ入れてなかったな」

 

「支取先輩達のグループを途中参加で立候補した癖に、あっという間に支持率をぶち抜いたってインパクトが大きすぎたんだろ」

 

 

 あの時の匙の顔が最高だったよな?

 おう。何気にハーレム状態だったし、ザマァ見ろって思ったわ!

 とまあ、また二人で盛り上がってしまい、大した助言を貰えんかった……。

 うむ、仕方ない……こうなったら頑張れるだけ頑張らなきゃな。

 っと、その前に……。

 

 

「エロ本読みたきゃ家で読め。

此処はそういう所じゃねーぞ」

 

 

 生徒会室を早くも私物化しようとするアホ共にお灸を据えてやらんとな。

 

 

 

 

 俺には弟が居る。

 普通だった弟が……。

 何があったのか、どうしてそうなったのか、気付けばアイツは俺の遥か先に立っている。

 本日行われた生徒会役員決定日にしてもそうだ。

 突然立候補したかと思えば、あっという間に支持率97%という嘘みたいな率で生徒会長へと就任していた。

 本当なら支取蒼那先輩とその眷属の人達がなっていた筈なのを……何も知らないアイツは横からかっさらった。

 周りの奴等はアイツに一種のカリスマを感じているらしいが……………俺には奴には異常者にしか見えない。

 

 取り憑かれた様に物事に没頭し、間違いなく結果以上を残すアイツの姿は異常者そのものだ。

 今回にしたってそうだ。

 ほぼ当たり前の様にアイツが生徒会の役員全てを兼任しているなんて、おかしい筈なのに周りの人間は誰も疑問に思ってない。

 それは、とある事情でお世話になってる自分の主も同じく思って無い処か……。

 

 

『へぇ……ソーナをぶっちぎりで追い抜いて生徒会長、か……。

フフ、良いわね彼……』

 

 

 面白そうな顔をしている。

 俺はハッキリ言って面白くない…………そう思った。

 あんな奴が……と。

 

 

 

 

 

 元浜と松田を追い出して再び一人になった俺は、早速の書類仕事を片付けてお茶を飲んでいた時だった。

 

 

「失礼するわ」

 

「む」

 

 

 ノックと同時にドアが開けられ、ありがちな挨拶と共に入ってきた人物に俺の目は若干を細まった。

 血を連想させる真っ赤な髪と我の強そうな目と、引くほど整った容姿。

 それが何者なのかは俺も知っている……というより登校した時に嫌でも知らされたというべきか……。

 

 

「アナタが新しく生徒会長になった兵藤一誠くんね?

私は三年の――――」

 

「最後まで言わなくても結構だ、三年◯組のリアス・グレモリーさん」

 

 

 嫌に人の良さそうな顔で微笑んでるリアス・グレモリーという名前の、俺とはベクトルの違う普通じゃない奴をな。

 

 

「あらあら、アナタ程の人に覚えて貰えているなんて光栄ね?」

 

「フッ、世辞はよしてくれ。

アンタならこの学園の誰もが知ってるさ……まあ、そうでなくてもこの学園に所属する生徒の顔と名前は全て覚えているがな……」

 

「さも当然の様にシレっと言い切る辺り流石ね。セーヤの弟くんらしいわ」

 

 

 セーヤ? ああ、兄貴の事か。

 そういや兄貴はリアス・グレモリーが部長をしてる部活の部員だったな。

 オカルト研究部……だったか。

 

 

「ふむ、それで何の要件かなグレモリー三年?」

 

「グレモリー三年って……変な呼び方するのね? リアスで構わないわよ?」

 

「結構。気安く女性の名前を呼ぶなと俺の師からの教えでな」

 

「師? まあ良いわ。ええっと、新しい生徒会は相談事も引き受けてくれるのよね?」

 

 

 リアス・グレモリーを椅子に座らせ、お茶を差し出すと此処にやって来た理由を話しだす。

 どうやら早速の依頼らしく、俺は『うむ』と頷いてみせると、リアス・グレモリーは俺に持ち込んできた相談事の内容を話し始めた。

 

 

「貴方……悪魔ってご存知?」

 

「……………ん?」

 

 

 その内容は実に飛んでいたがな。

 だってそうだろう、いきなし真面目な顔して悪魔って知ってる? って……ねぇ。

 いや知ってるけどさ。

 

 

「おう、一応な。お伽噺に出てくる存在だろ? 人の心に漬け込み。重い対価を支払う事で願いを叶えるとか何とか……」

 

 

 でも考えてみればオカルト研究部の部長だし、そんな話をするのも妥当かね。

 いや、だからと言って何故俺にそんな話をするのかは知らんけど。

 

 

「まあ、人間達に広がってる伝承だとそんな所かしらね。

で、貴方は『いきなり何を言ってるんだ?』と思ってる所だろうけど……此処からが本題なの」

 

「ふむ?」

 

 

 本題……まさか部員を増員させる為の手立てを考えてくれないか……とかか? あの部活の部員は少なかった気がしたしな。

 なんて呑気に構えていた俺だったが……リアス・グレモリーが口にした言葉は俺の予想を真正面から叩き壊した挙げ句、とてつもなくトンでた内容だった。

 

 

「アナタ……私の眷属にならない?」

 

「良いだろう、これより生徒会を執行す―――――は……なっ!?」

 

 

 通る声と共に背から変な羽、尻尾みたいな変なのを出現させたリアス・グレモリーの姿に俺は久々に変な声が出てしまったのは……まあ、しょうがないだろう。

 

 

「急に何だ? というよりその変なのは仮装か何かか?」

 

「……。そんな返しをするのもアナタらしいわね」

 

 

 しかし驚きはしたものの考えてみれば、仮装か何かだと容易に想像できる訳で、冷静さを取り戻してから聞いてみれば、リアス・グレモリーは少し困った顔で笑っていた。 いや、困ってるのは俺もなんだがな。

 

 

「よくは分からないが、俺はその眷属とやらにはならんぞ。

悪いがそういった相談事ならお断りさせて貰おうか」

 

「む……セーヤは直ぐに頷いてくれたけど、貴方はやはり違うわね」

 

「兄弟だからって何でもかんでも似るとは思わないことだな……さて、話は以上か?」

 

 

 電波って奴なのか……まあ、何にしても俺は生徒会長だからな。その眷属とやらにはなれん。

 そうハッキリとお断りをすると、リアス・グレモリーは残念そうに頷きながら生徒会室から消えた。

 

 

「兄貴が眷属? 部員という意味なのか? それとも彼女が言った言葉通りなのか………」

 

 

 再び一人となった生徒会室で、俺は先程の話を思い返しながら天井を見上げる。

 

 

「なあ、どう思うよ…………『◯◯◯◯◯◯』」

 

 

 そして、師である彼女の名前を口にしながら……取り敢えずに眠った。




補足

無神臓(インフィニット・ヒーロー)

努力の先の結果を獲られた瞬間に生まれた兵藤一誠の異常(アブノーマル)

あらゆる力を理解して吸収し、それを無尽蔵に底上げする。
あらゆる逆境をはね除け、最終的に勝利するという主人公的要素もある。

師の誰かさんのお陰で、指先から電流を流して相手の身体を平伏させたり、コンクリートを素手でぶち抜いたりと……他者の特性を学習して昇華させる点はめだかちゃんの完成と同じである。

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