色々なIF集   作:超人類DX

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うん、ムリムリムリムリかたつむりよ。


オーフィスだけといっしょ

 これほど簡単に釣れたとなると、かえって罠の可能性を懸念すべき可能性も考えた方が良いとは思わなくもない。

 けど個人的に思うのだ……あ、コイツ思ってた以上に単純なんだなと。

 

 

「兵藤、ちょっと良いか?」

 

「ぬ! 何だ神代、モテ野郎のお前と違って俺達は今巨乳探偵シリーズかちっぱい刑事シリーズのどちらが良いかの論争中なんだよ」

 

「そうだそうだ! あっち行け」

 

「シッシッ!」

 

 

 近い内に接触されそうとは思ってたけど、昨日の今日で話し掛けてくるもんかねぇ。

 普段は見下すだけで何の関わりも無い俺達…………というより俺に対して話し掛けてくる神代に、持ち込んだシリーズもののDVD一枚をちらつかせながら嫌だと断る俺とそれに並んで追い払おうとする元浜君と松田君。

 

 

「少し聞きたいことがある」

 

「聞きたいこと? 何だよ?」

 

「ここじゃなくて別の場所で……」

 

「別って何だよ? ここで聞けば良いじゃん」

 

「誰かに聞かれたらまずい話なのかよ?」

 

 

 元浜君と松田君の言い分は大分正論だなぁと、内心舌打ちでもしてそうな神代とやらに向かってほくそ笑みながら俺も二人に同意するかの様に頷く。

 

 

「………」

 

 

 おーおー、イラついてるねぇ? ホントまんまあの時の奴と同じだよ。

 邪魔になるからだとかそんなふざけた理由で父さんと母さんまで巻き沿いにして俺を一度は殺した奴にさ。

 

 ホント薄気味悪い連中だよ。何故か俺の事を知ってるし、コイツの場合はオーフィスの事すらも、無限の龍神のしての力を普段はほぼゼロに近い形で隠してるのに知ってる様だし、まるでストーカーだぜ。

 

 

「あれ? 聞きたいことは無いのか?」

 

「もういい……」

 

「なんだそりゃ」

 

「相変わらず意味不明だな」

 

 

 俺が全く応じるつもりが今は無いと理解でもしたのか、半ば不貞腐れた言い方をして自分の席に戻る神代とやらを眺めながら、元浜君と松田君の神代に対しての言葉に俺も内心同意する。

 父さんと母さんを殺した奴は既にオーフィスに鍛えて貰うことで得た力で始末して、今後はアイツとのほほんと死ぬまで生きるつもりだったのに、一体全体ああいう輩は他に後何人居るのやら……。

 

 出てくる度に命を狙われてたらキリが無いと思うぜ。

 

 

 

 

 

 エロDVDをの見せ合いに忙しいからと呆気なく呼び出しを断られた神代は内心毒づいた。

 

 

(チッ、中身は原作と然程変わらないみたいだが、所々融通が訊かない……)

 

 

 兵藤一誠という、何故か赤龍帝では無く、オンボロアパートで一人暮らしをしている原作では主人公である男に隠れていた事実を忌々しく思いながら、イライラした面持ちでペンを回転させる神代。

 何故彼が両親と暮らさず、オンボロのアパートで行方を血眼になって探していた無限の龍神と住んでるのかを本当なら脳みそをこねくりまわしてでも知りたかっただけにイライラも半端無い。

 

 

(もしかして憑依の類いの転生者――と思ったけど、俺を初めて見ても何のリアクションも無かったから微妙にわからない。

まあ、それも奴の頭の中を見ればわかる事だが、問題はオーフィスだ。

モブと化した兵藤が何故オーフィスと一緒に暮らしてて、しかもあんな事までしていたのか……)

 

 

 偶々先日知ってしまった事実を思い返しながら、神代は持っていたペンに力が籠る。

 少女の姿をオーフィスと楽しげに買い物し、家に戻れば男女の営みを声ながらに聞かされた。

 

 本当なら……と思ってただけに神代はイッセーに対してますます嫌悪を持っており、現にもし先程の時点で個人で呼び出せたら頭の中を覗くつもりだった。

 普段殆ど関わらなかったのがここに来て仇になるとは思いもしなかった神代は、堪え性が無くて短気である事が災いしてますますイライラだ。

 

 

(オーフィスは発見できたが……クソ! よりにもよってあんなクズと一緒だったなんて……!)

 

 

 既にオーフィスを如何にして引き込むかに考えが変わってる神代は取り敢えず一誠が居ない内に接触を考えている様だ。

 だが一誠は部活に入ってないし、思えば放課後になると元浜や松田と遊ばずにすぐ家に帰ってる様だということを思い出し、まずはどうやって家に戻る時間を遅くさせるかを考える。

 

 

(分身を作って分身に足止めさせ、本体である俺がその隙にオーフィスと接触する手でいくか)

 

 

 結果、神から貰ったチート能力を使う事にした神代は放課後を待つ。

 そして――

 

 

「さてと、じゃあまた明日な元浜と松田~」

 

「おーう」

 

「もっと良いお宝持って来いよ~?」

 

「…………」

 

 

 案の定放課後となるのと同時に帰ろうと元浜と松田に別れの挨拶をして教室を出ていく一誠を見て、神代は静かに席を立つ。

 

 

「影分身」

 

 

 屋上に上がり、誰も周りに気配が無いことを確認しながら学校の門へと歩いていくイッセーを見下ろし、力を使って自分そっくりの分身を作る。

 そして分身に指示を送り、そのまま屋上から降りる。

 

 分身にイッセーの足止めをさせている間に先日わかったオーフィスの居る場所へと向かう為に……。

 

 

「兵藤、ちょっと良いか?」

 

「あ? ……って、神代かよ。

俺は今帰るところなんだが」

 

「昼間言った事についてだ。ちょっと顔を貸せ」

 

「はぁ? 顔を貸せって、一々上から目線だなお前。何でモテるのか俺にはわからんし、俺は早く家に――」

 

「早く来い!」

 

「いででで!? 引っ張んなよ!!」

 

 

 分身が一誠を無理矢理別の場所へと連れていくのを確認した本体の神代は昨日発見したオーフィスの居るオンボロアパートへと向かう。

 

 

「…………」

 

 

 分身が一誠をこの場所よりも遠くに誘導させた隙を使いオーフィスと接触する。

 何なら分身で一誠を始末する事も考えているらしく、音符のマークが書かれた物凄く古いタイプの呼び出しベルのボタンを鳴らしてみる。

 

 すると良い感じにガタが来てるのか、ミシミシとした音と共に扉が開かれ、若干神代の目線の下の先に長い黒髪の少女の黒い瞳と目が合う。

 

 

「……誰?」

 

 

 生前モニターの越しに聞いた声は間違いなくオーフィスである事を感じた神代は、怪訝そうに目を細めるオーフィスに向かって如何にもといった感じの人の良い笑みを浮かべて口を開いた。

 

 

「やぁ、俺は兵藤――――いや、イッセーのクラスメートなんだけど、家を教えて貰って遊びに来たんだ。

イッセーは今居るかな?」

 

 

 居ない事を知ってるばかりか、本人が一誠を遠ざけてるというのにいけしゃあしゃあと話す神代に、オーフィスは感情の見えない瞳で暫く神代を見つめていると抑揚の無い声のまま口を開く。

 

 

「まだ帰ってきてない。何時もならとっくに帰ってきてる筈なのに」

 

「ふーん、なら待たせて貰っても良いかな?」

 

「…………」

 

 

 笑みを浮かべたままの神代の言葉に暫く無言のオーフィス。

 しかし、やがてこのまま帰るつもりが無いと思ったのか、半分しか開けていない扉を開けると……。

 

 

「なら帰ってくるまで待ってれば良い」

 

 

 神代を家に上げた。

 

 

「あぁ、ありがとう……」

 

 

 この言葉を聞いた瞬間、神代は内心笑みを深めた。

 どうであれこれでやっと話せると……。

 

 

「……………………………」

 

 

 無限の龍神を手に入れられると根拠の無い自信を抱いて……。

 

 

「生憎お茶は無い。水で我慢して」

 

「おかまいなく……」

 

 

 家に上げたオーフィスに言われるがまま、古ぼけたテーブルの前に座った神代は、無愛想に水道水をコップに汲んできた姿に笑みを見せながらお礼を言う。

 

 

「お前はイッセーの友達?」

 

「そうだよ」

 

 

 オーフィスの質問に嘘八百で答える神代。

 今のところイッセーと親密な為、彼に対してマイナスな事を言うのは得策では無いと判断して吐いた嘘だ。

 

 

「それにしても驚いたよ、イッセーがキミみたいな子と一緒に二人で暮らしてるなんて。

妹さん……じゃあ無いんだろ?」

 

「………」

 

 

 反対側に座るオーフィスは頷く。

 

 

「差し支えが無ければ何でそういう事になったのか教えて欲しいんだけど……」

 

「教えた所で意味なんて無い、お前に話す必要が感じられない」

 

 

 素っ気なく答えるオーフィス。

 とはいえこの返しはどうやら神代的には予想通りだったらしく、フッと笑った瞬間その身から放っていた空気を変える。

 

 

「まあ、言いたくなければ言わなくても良いよ。

ただ、今から話す事に返事はしてもらいたいな……無限の龍神(ウロボロスドラゴン)のオーフィス?」

 

「……………」

 

 

 少女の正体と名前を口に出す神代。

 これにより自分が只の人間ではないとアピールすることになるのだが、オーフィスの反応は冷たい。

 

 

「驚かないのか?」

 

「イッセーにお前みたいな友達は居ないくらい我は知っている。そしてお前がイッセーに用があってここに来た訳でない事も」

 

「なるほど……それなら話は早いかもな」

 

 

 看破されてるとオーフィスの口から分かった神代は軽く目を伏せ、それからオーラの様に覇気を放つ。

 

 

「俺は神代来牙。

オーフィス、お前を迎えに来た」

 

「………………………」

 

 

 それは恐らくオーフィスのお眼鏡に叶うアピールのつもりなのだろう、転生によって獲た力を見せつける様に放ちながら、迎えに来たと宣う神代にオーフィスは何の反応も示さず無言だ。

 

 

禍の団(カオスブリケード)の事は知っているか? 俺の所属する組織なんだが……」

 

「知ってる。我の名前を勝手に使って作った集まり」

 

「それは一部のバカが勝手にやった事で、奴等と俺達は違う。

奴等はお前の力を利用するつもりだが、俺達は違う……お前を仲間にしたいと思ってるんだ」

 

 

 所属組織についての内情を話ながら、自分はオーフィスを仲間にしたいと宣う神代。

 

 

「お前は静寂が欲しいんだろ? 真なる赤龍神帝を倒して」

 

「………………」

 

「何故奴と一緒に居たのかはわからないが、ひょっとして何か唆されたりしたのか?」

 

「…………………」

 

「どちらにせよ奴と一緒に居ても静寂は獲られない。

けど俺達なら力になれる。だからオーフィス……俺の仲間にならないか?」

 

「………………………」

 

 

 然り気無くイッセーに対する普段の気持ちが出てしまった言い方をする神代に対してオーフィスはその時点で不愉快な気持ちになっていたが、顔に出てない為神代は気付かない。

 

 

「奴は女好きの変態だ。その内お前を裏切るだろう。けど俺は裏切らない」

 

「……………」

 

 

 つまらない事をベラベラと煩い奴だ……と思われてるとも知らずにイッセーの悪口になり始めてる神代を見ているオーフィスはここでやっと口を開く。

 

 

「お前の言いたいことはわかった。我を仲間にしたいから来たのも大体わかった。それを踏まえてひとつお前に言っておく」

 

「ああ……」

 

 

 答えを聞こうと耳を傾けた神代。

 

 

「我はイッセーと一緒になってから、色々な人間の心を知った。

この姿もイッセーと一緒になりたいからと作り上げた本物の雌の身体」

 

「! へぇ……」

 

 

 良いことを聞いたと内心歓喜する神代。

 後は上手く引き込めば…………と原作とは違ってほぼ露出していないオーフィスの肢体を服越しに想像しながら神代は言葉を待つと……。

 

 

「あんまりイッセーを怒らせない方が良い。イッセーが怒れば我もそう簡単に止められない」

 

「?」

 

 

 明らかに神代では無く、その後ろを見るような視線になってるオーフィス。

 不思議に思った神代はその視線に釣られて後ろを振り向くと――

 

 

「おかえりイッセー、やっぱりコイツ来た」

 

「……………………………………」

 

「!?」

 

 

 全身が血塗れで、どこまでも薄気味悪く笑っている居ない筈の男がそこに立っていた。

 

 

「な……!?」

 

 

 あまりの唐突さに驚愕し、固まってしまった神代の頭の中はバカなという狼狽えに支配されていた。

 

 

「ただいまオーフィス……くく、ゴミ処理に手間取っちゃってさ」

 

「イッセーじゃない血で汚くなってるし、我とお風呂入ろ? 洗ってあげる」

 

「うん。けどその前にもうひとつやらないとな?」

 

「っ!?」

 

 

 返り血だらけの顔から覗く虚ろな目が神代へと向けられる。

 

 

「なぁ、お前……オーフィスをどうするつもりな訳?」

 

「ど、どうするって……」

 

 

 変態三人組としてのイッセーとは思えない重苦しく吐き気を覚える何かに神代は後退りするように距離を保とうとしながらしどろもどろに答える。

 

 

「お、お前こそオーフィスに何をしたんだ……!」

 

 

 そもそも本来なら赤龍帝ですら無いイッセーが出会う筈もないオーフィスと何故一緒に居るのかという疑問と共に向けられた言葉にイッセーは糸の切れた人形の様にカクンと首だけを傾ける。

 

 

「何? 何もしてないぜ俺は? オメーみたいな奴に昔両親を巻き添えに殺されかけた後、オーフィスに拾われて今までこうして生きてきただけでな」

 

「な……に……!?」

 

 

 クスクスと普段見ていた一誠とは思えない笑みと共に放たれた言葉に神代の頭の中は真っ白になる。

 

 

「ええっと、所謂外からの転生者っての? 邪魔だからって理由で殺され掛けもすりゃあこんな所に住むしかねーだろ?」

 

「し、知ってるのか……転生者って……」

 

「あぁ、『変な女』が教えてくれてね。

くくく、お前もその転生者って奴だろ?」

 

「!?」

 

 

 完全に見破られてる……。

 予想だにしない展開に心臓がバクバクと鳴りまくる神代から嫌な汗が吹き出る。

 

 

「いやぁ、お前の目は俺達を殺した奴と似すぎてさぁ? すぐに分かったぜ? テメーが他所のどっかから貰い物の力とやらを振りかざしてイイ気になるタイプの奴だって? 勿論オーフィスもな?」

 

「うん。分かりやすい」

「し、知った上で俺を……そ、そもそも俺の分身はどうした!?」

 

「あぁ? アレの事か? 変な力見せつけて脅しに来たからミンチにして野良犬の餌にしちゃったぜ? てか、自分で作った分身なのにそういうのはわからないのか?」

 

「……!」

 

 

 指摘されてハッとした神代が解除の印をする。

 どうやら作った分身の経験は解除によって本体にフィードバックされる様だが、その分身の末路の記憶まで神代の頭の中に叩き込まれる事になる。

 

 

「こ……れ……は……」

 

 

 頭の中に流れる分身の記憶。

 それは当初普通だった一誠が帰りたがり、それを止めるために多少脅した瞬間、豹変した一誠に一撃で殴り倒され、そのまま肉塊となるまで殴り付けられたという、目を覆いたくなるおぞましい記憶だった。

 

 

「笑っちゃうよなー? お前はオーフィスにとって癌になる邪魔な奴だ………だっけ?」

 

「そんな事言われたの? 大丈夫、我はイッセーをそんな風には思った事無い」

 

「て、テメェ……何故そんな力を……!」

 

「おや? 演技が通じないと分かった途端テメー呼ばわりか? まぁ良いけど……くく、オーフィスに拾われただけだと思うか? てか、お前みたいな輩に一度殺され掛けたっつーのに、何にもしない訳が無いだろ?」

 

「だ、だがテメーは赤龍帝じゃないんだぞ!! ただの人間が何故……!!」

 

「嫌にその赤龍帝ってのを推すねぇ? その赤龍帝ってのは俺じゃなくてお前みたいな転生者が名乗ってたんだぜ? まぁ、ぶっ殺しちゃったから今誰になってるのかは知らねーや」

 

「なぁ!?」

 

 

 イッセーから明かされる真実に神代は言葉を失うのと同時に納得した。

 何故こうまで原作の展開と違ったのか……それは自分と同じ転生者の動きによって捩曲がってしまったのだ。

 

 もっとも、この神代にも捻れの原因はあるのだが。

 

 

「転生者ってのが何をしてようが俺はどうでも良いと思ってるんだけど、こうも俺から奪おうとしてくるとなるとねぇ……オーフィスにとって俺は邪魔? その根拠ってなぁに?」

 

「………!」

 

 

 自分の分身の返り血を、オーフィスがいそいそと持ってきたタオルで拭きながら語り掛けるイッセーに神代は少しだけ冷静になれたのか、また己の持つ力に自信でもあるのか、徐々に強気になっていく。

 

 

「こんな場所にオーフィスと居る事自体だ。

オーフィスの目的を知らない訳じゃないだろ?」

 

「目的? あぁ、オーフィスは静かに生きたいんだろ? 知ってるに決まってるぜ。なっ?」

 

「うん。我はイッセーと一緒に生きることが静寂」

 

 

 コクリと頷くオーフィスに神代の顔が歪む。

 

 

「だと言うのに、やれ存在が気にくわないだの、お前が居ると女の子が不幸になるだのと……いちゃもんにも程があるってんだよなぁ?」

 

「ハーレム王と宣う、変態行為……そんな奴だからだろうが……!」

 

「変態行為なのは否定しないがハーレム王? ほー、お前達の言う例の知識とやらの俺はそんな事を言うわけだ?」

 

「う……!?」

 

「くくく、ハーレムなんて少なくとも俺には必要の無いものだな。

もっとも、普通に育ってたらそんな事を言ってそうだが……」

 

 

 粗方拭き終えたイッセーがゴミ箱にタオルを捨てる。

 

 

「さてと、そろそろ終わりにするかな」

 

 

 そしてその殺意を一気に増幅させ、神代へと向ける。

 

 

「オーフィスの名前を使ってくだらん集団を作ってるのは俺も知ってるし、恐らくオーフィスを狙ってるのも大体予想は付いていた。

まぁ、お前がその一人とは思わなかった訳だが……所でお前、オーフィスを引き込んでどうするつもりだったの?」

 

「それは――」

 

「あ、皆まで言わなくて良いよ、どうせお前みたいな輩の考えることなんてみーんな同じ様なもんだしね。

アレだろ? この姿のオーフィスに欲情してんだろ?」

 

「!?」

 

「ほーら図星だ。クックックック! 前にクズ野郎を報復しに行った時にオーフィスと一緒だった訳だが、ソイツはオーフィスを見た瞬間俺を殺して貰い物の力で俺に関する記憶を消してテメーのモノにするとかほざいてたからなぁ……」

 

「な、なんだと……」

 

「お前もどーせそんな感じな真似をするんだろ? オーフィスを嘗めすぎだぜ」

 

「そんな力の干渉を我は受けない。そういう様にイッセーと一緒に鍛えたから」

 

 

 寄り添うようにイッセーの手を握るオーフィスの言葉に神代はドキッとする。

 それは自分の考えが完全に見透かされた挙げ句対策まで立てられていたからだという理由に他ならない。

 

 

「何故我がイッセーと共に居るのか、その理由をお前に教えることは無いし、理解して貰う必要も無い。

我はお前の仲間にはならない」

 

「だ、そうだよ残念だったね。お前みたいな輩と殺り合った経験さえなければ上手く行ってたかもしれないけどねぇ。

ていうか先日家の前でオーフィスとシてたのを盗み聞きしてたのを知ってたんだけど、人のやってることを盗み聞きするのってどうな訳?」

 

「し、知ってたのか……知ってた上で俺を……!!」

 

 

 クスクスと笑うイッセーに頭の中がカッとなった神代がチート能力を使ってすぐに殺そうと手を翳す。

 しかしその力は……。

 

 

「あ、一つ言っておくよ神代――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――Welcome to Reality escape!!」

 

 

 この部屋へと入った時から『現実から否定させられていた』。

 

 

「!?」

 

 

 突然大声を出すイッセーに驚く神代は、舌打ちをしながらそのまま力を発動して殺そうとする。

 だが……。

 

 

「え………」

 

 

 力が……転生の神から貰った力が発動されない。

 

 

「なっ、そんなバカな……王の財宝!!」

 

 

 能力の名前と思われる言葉を連呼しまくる神代……しかしそれでも何も起きない。

 

 

「なに? ゲートボールバビロンってのがキミの自信の源なの? なにそれ? ゲートボールでもするのか?」

 

「ゲートオブバビロンだ! ふざけるな!

テメェ俺に何をした! 俺の力を!!」

 

 

 明らかに茶化してるイッセーがなにかをしたと激昂する神代が掴み掛かる。

 だがイッセーはヘラヘラと笑い続ける。

 

 

「貰い物の力で粋がるのは簡単だけどさ、無くした時の保険ってちゃんとすべきだぜ? 例えば身体を鍛えるとかさ。まあ、これはお前と同類の奴にも言えた事だし、だからちょっと『否定』しただけで取り乱す……アホみたいに」

 

「何を言ってる! 俺の力をどうした!!」

 

「大声出すなよ。ちょっとキミが『力』を持ってる現実を否定しただけだよ」

 

「ひ、否定? な、何だそれは……お前にそんな力があるとでも……!」

 

「あら? 知らないのか? そう言えばぶっ殺してやったクソ野郎も随分とあり得ないってリアクションだったけど、そっか……俺が本当なら赤龍帝とやらって話は満更嘘でもないみたいだな……どうでも良いけど」

 

「良いから答えろぉ!!!」

 

「うるさいなぁ……さっきも言っただろ? お前が持つ貰い物の力全部をこの世界から否定し、何の力も無い、ただ他所から転生とやらをしただけの人間って現実に捩曲げただけだよ」

 

「ふざけるな! お前にそんな力は無い!! どうやってそんな……」

 

「お前と同じ転生者に親を殺され、一人でゴミを漁りながら生きてた頃に俺の中に宿ったんだよ……やっぱりこれは想定外なのかい? キミの中の台本とやらには?」

 

「う……そ、そんな……」

 

 

 ヘナヘナと力が抜け、その場に崩れ落ちる神代。

 かいつまめば現実をねじ曲げる正体不明の力を持ってましたなんて話を突きつけられて寧ろこの程度で済んでると思えなくもないが。

 

 

「本当はお前のご自慢の力を徹底的に潰してやろうと思ったんだけど……わざわざ相手にするだけ時間の無駄じゃん?」

 

「か、返せよ……俺の力!」

 

「お前のじゃなくお前を転生させた神とやらの力だろ? ホント、あの変な女の言うとおり、転生者の殆どは与えられた力にチョーシこくバカばかりだなぁ」

 

「そんな奴の仲間に我はなりたくない」

 

「だよな? しかもオーフィス、どうにもコイツお前とヤりたいから引き込もうとしたみたいだぜ? おいおい、俺と元浜君と松田君に負けないくらいの変態野郎だぜ」

 

「やだ、我の身体はイッセーにしかあげない」

 

「あちゃあ……だってさ、残念だったな神代?

ま、それでも無理に迫るんだったら生きてる事が苦痛な地獄を見せてやるが……」

 

 

 力が抹消され、挙げ句オーフィスからめちゃくちゃ嫌な顔までされて何も出来ない神代。

 

 

「まぁそう悲観するなよ? 俺を倒せば元に戻るかもしれないし、諦めずに向かってくるなら喜んで相手になるぜ? 無限に進化し続けるスキルと、夢と現実を入れ換えるスキルというささやかな力しか無い俺にならお前だって倒せるかもしれないしな」

 

「む、無限に進化……?」

 

「イッセーが絶望から這い上がると決意した時に宿った神器とは違うイッセー自身の力。

我が同類と認めたイッセーだけの無限」

 

 

 更に突きつけられるだめ押しの事実。

 結局の所神代来牙は初めから勝ち目などあるわけがなく、分相応に生きていれば力も何も失うことは無かったのだ。

 

 

「大人しく俺の関係ない所で生きてれば良かったもの。

俺からオーフィスを奪う? くくくく……………テメーが死ぬしかねーだろ?」

 

 

 この這い上がった人外(バケモノ)の逆鱗に触れることは……。

 

 そして……。

 

 

「あーあ逃げちゃった」

 

「そうだね」

 

 

 神代はこの場から逃走した。

 力を消され、オーフィスを手に入れられないとわかった瞬間、残ったのは恐怖から来る生存欲求だった。

 それを敢えて見送ったイッセーは見逃したと思われがちだろう。

 

 だけどそうでは無い。逃がしたのでは無い――もはや逃げた所で確定してるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

【先程午後20時頃、◯◯県駒王町にて神代来牙君17歳が何者かに刃物で全身を斬りつけられた遺体で発見されました。

警察の見解では、地元の暴力団による犯行と見て捜査を続ける方針とのことで――】

 

 

 死が。

 

 

「あーぁ、運を否定したらこんなオチとはね」

 

「これで終わった?」

 

「まぁね……ただ神代の仲間とやらが出てきそうだけど、まぁどうにでもなるよ。

恐らく報告とかも怠ってるだろうし」

 

「そっか。これで我も安心」

 

 

 地元の事件のニュースを見ながら他人事の様に話す二人。

 既に神代という存在は過去のものになってるらしく、お茶を飲み終えると同時にテレビを消す。

 

 

「ん、おいでイッセー」

 

 

 そしてその姿からは想像も出来ない母性的な笑顔でオーフィスが自分の膝をポンポンと叩き、そのまま膝枕をする。

 

 

「オーフィス……」

 

「大きくなってもイッセーはイッセー……よしよし」

 

「これで二人目……他にも居るのかな?」

 

「わからない。けど不安にならないても大丈夫……我は何をされても変わらない。イッセーの味方」

 

「……うん」

 

 

 お腹に顔を埋めるイッセーの頭を優しげに微笑みながら撫でるオーフィスは、恐らく過去を知る者からすれば驚愕の行動だ。

 それほどまでに、それこそどこぞの慈愛のグレモリーよりも慈愛に満ちていて……。

 

 

「我も我からイッセーを奪う奴が出てきたら、ソイツを許さない。気持ちは一緒」

 

 

 どこまでもお互いに求めあっていた。

 そんな二人の間に入り込む――それこそが自殺行為なのだ。

 

 

 

 兵藤一誠

 

 種族……人間?

 

 無限の龍神が大好きな無神臓と幻実逃否を覚醒させた無幻大(ウロボロスヒーロー)人間。

 

 

 オーフィス

 

 種族……龍の先の何か。

 

 人でありながやベクトル違いの無限を宿した人間を愛し、共鳴する事で進化する無限の龍神。

 

 

終わり

 




補足

簡単に言うと、オーフィスたんが転生者を家に入れた時点で始まっており、分身をミンチにして戻ってきた一誠によりチート能力()が否定され、目の前でナチュラルにいちゃつかれて憎悪と共に逃げたは良いけど、能力と同時に運まで否定されたせいでチンピラに殺されたという末路に……。


 一誠からオーフィスたんを奪おうとすればこうなるということです。


その2
オーフィスたんの母性は一誠くんにのみ天井知らず。

 そしてオーフィスたんもまた一誠くんに対して尋常じゃなく執着してる共依存状態なので、もし逆に一誠くんが何かされようならマジ出撃で粉々です。


続きは……まあ、あってほしくばもう少しあるけど――うん。

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