※抜けてた所を少し挿入
リアスの精神状態は最悪ともいうべき所にあった。
婚約破棄を賭けたゲームでは負けるし、周囲から往生際が悪いと嘲笑う声を我慢してもう一度漕ぎ着けたゲームはコカビエルという堕天使が聖剣を奪って街に潜伏したせいで有耶無耶となってしまった。
しかも一番に最悪なのが、その婚約者になってしまった男が事あるごとに人間界へとやって来ては自分の前に現れるのだ。
人間界の空気は最悪だのと言う癖に部室にやっては不躾に身体を触ってくる。
眷属達も負けた以上それを見てるだけしか出来ないし、恐らくその内自分の眷属の女子達まで手を出すつもりだろう……眷属を女で固めてるその性格を考えたら直ぐにわかる。
「ほほぅ、聖剣が街にねぇ。その悪魔祓い達は手出し無用って言ってるんだろ? だったらのんびり楽しくしようじゃないか、騎士なんかほっといて……なぁリアス?」
「……………」
忌々しい、実に腹立たしい。
頼んでないのに自分の隣に座って触れてくるこの男に負けた自分の非力さにも腹が立つ。
アーシアを眷属にした伝で兵士に転生させた二人の男子もこの婚約者を嫌悪してるし、聖剣に恨みがある騎士は勝手に出ていったまま戻ってこない。
『別に殺される訳じゃ無いんだから良いじゃないですか。俺はアンタ等に手を貸してやる程暇じゃないし関心も無い。もっとも――センパイならどんなに忙しかろうが即貸すけどね』
あのソーナの事を正面切って大好きと言い切り、まったく同じ何かを持った赤龍帝さえもっと前に駒にできたらこんな男などあの悲惨なソーナのゲームの様に……。
「ところでソーナはまだ見てないけど、元気なのか? あの欠陥品みたいな女は?」
「……………」
その言葉を是非一誠に聞かせてやりたい。
そうなったら勢い余って殺してくれるかもしれないから……。
(どうにかして上手く彼を利用し、この男を消す事はできないかしら……)
リアスの思考は最早嫌すぎが極まり、一誠を利用してライザー・フェニックスを殺害しようとまで考え、ソーナを軽く罵ってるライザーを無機質な目で睨むのだった。
どうしてもソーナがおかしくなった理由を自分のせいにしたいらしい椿姫以外の眷属達を全く相手にもしなかった一誠を、コカビエルを介して殺害しようと決意したセラフォルー。
確実に悪魔にとって脅威になるだろう人間一人を消すくらい訳の無い話だが、相手は赤龍帝。
コカビエルでも消せるかどうか難しいと考えた事はあるが、要するに疲弊させれば後はなんてことは無い。
疲弊した所を事故と言い張って始末すれば、ソーナはきっと少しは大人しくなる――と、本気で思ってる辺りが少々浅はかだが、それほどまでに一誠という存在が気に入らないのだ。
「ソーナちゃんを連れ戻すには彼を消すしか無い。
キミ達にもそれを承知して貰うけど構わないよね?」
「……。それで会長が戻るなら仕方ないと思ってます。
けどあの様子を見る限りでは、例え成功したとしても会長が怒るのでは……」
「だから不慮の事故で消えて貰う。
例えば今この街に潜伏してる堕天使さんと戦い、殺されてしまうとかね」
「そ、それって謀殺ですよね……?」
「そうだね、けどそうでもしないとソーナちゃんから彼は離れてくれないし、皆だって優しいソーナちゃんに戻って欲しいでしょう?」
『…………』
謀殺を謀ると宣言する魔王に息を飲み掛けた眷属達だが、兵士の匙は寧ろ賛成であり、残りの者達もセラフォルーの言葉に結局は頷いた。
(……これで準備は整った。
後はコカビエルちゃんに精々頑張って貰い、上手く弱った所を背中から心臓を確実に貫く。
そうすればいくら彼でも死んでくれる筈……勿論ソーナちゃんにバレないようにね)
血の繋がった姉である自分を差し置いてソーナの信頼と愛情を全て独り占めしてる人間の男が赦せない。
散々ソーナの事を理解できずに敬遠した事もあったのに、今のセラフォルーはその事実を都合よく忘れており、こっそりと携帯を取ると、殺しの依頼をした相手であるコカビエルにメッセージを送った。
『赤龍帝の殺害』を。
「殺害許可だとよ。予想通りあの女程度ではどうする事もできなかったらしい」
「では行くの?」
「あぁ、ちょうどあの聖剣狂いの老いぼれと聖剣因子を埋め込んだ小僧が正規の悪魔祓いと衝突したらしいからな。
まあ、途中から転生悪魔の魔剣使いの小僧が来て撤退した様だが」
「……聖剣計画の生き残りの子供ね、リアス・グレモリーの眷属になってるとは知らなかったけど。それにあの子も……」
「あぁ、もっとも小娘自身は俺達の事なぞ知らんか。
それとその計画によってミカエルに異端扱いされたのに腹を立ててたなあの老いぼれは。俺からすればどうでも良い愚痴に付き合ってやった甲斐は多少あって欲しいもんだ」
セラフォルーからの殺害依頼のメッセージを受け取ったコカビエルはベッドに横になっていた身体を起こしながら身体を伸ばす。
「俺は老いぼれと小僧にそれらしいことを指示して、赤龍帝の小僧とセラフォルーの妹が通ってるらしい学舎で聖剣融合の儀式の準備でもしろと命じておくから、お前はその間にシャワーでも浴びてろ。
お前が俺のやることに付き合ってると知られたら別の意味で大騒ぎになるからな」
「隠さなくても良いのに。
例えバレて追放されたって変わらないし、寧ろ隠れる必要なんて無くなるし……」
「まだ準備が足りないからな。それにコソコソする方が何となくスリルがあるだろう?」
「それは確かに―――んっ♪ 身体がフワフワして心地良い……お腹の中にコカビエルのが――うふふ♪」
コカビエルの隣には世の男達の劣情を刺激せざるをえない肢体を晒し、自身の腹部を撫でるガブリエル。
「そろそろ本格的に子供を作りたいですが、そうなると今よりももっと長く愛して貰わないと」
「わかったわかった、その内な」
上半身が裸のコカビエルと、被ってるシーツの下は全裸のガブリエルを見れば何があったのかは想像しやすいし、現にガブリエルは艶かしい声色で幸せそうに頬を紅潮させて微笑みながらコカビエルを見つめている。
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい……ふふっ」
ポンとガブリエルの頭に手を置いたコカビエルにガブリエルが頬にキスをすると、壁に掛けていた上着を取りながらベッドを降りる。
三大勢力の各トップが知ったら大騒ぎじゃ済まされない光景だが、本人達は呑気にも其々これから始まる祭りの準備に取りかかる。
「バルパーとフリードは駒王学園に向かって儀式の準備をしろ。
俺は魔王の妹共に挨拶がてら、お前達が取りこぼした聖剣を取ってきてやる」
「おおっ、遂に私の悲願が……!」
「りょーかい、悪魔共は切り刻んでも構わねーだろ?」
「好きにしろ」
ガブリエルがシャワーを浴びてる隙に呼び寄せた適当に雇った人間にそれっぽい指示を送る。
何度も言う通り、聖剣云々だの戦争だの、何が正しくて間違ってるだのにコカビエルは興味が無い。
堕天使の中でもセラフォルー的に『それっぽい風体』に見えでもしたから赤龍帝の少年の殺害をわざわざ依頼してきたのだろうが、そんな事だってどうでも良いし、別に必ず殺すと約束したつもりだって無い。
「ところでボス? この部屋誰か他にいるのか?」
「そういえば微かに誰かの匂いが……」
「オイ、くだらん事を俺に答えさせる暇があるならとっとと役割を果たせ」
同類を持つ者同士としての力がどれほどか、そしてガブリエル以外でナニかを持つその力が何なのか……それを知りたいからこそ動いてるにすぎない。
変な勘繰りをしようとする二人の人間を若干威圧的になりながら部屋から追い出し、ホテルから完全に出ていったのを確認したコカビエルは服を着替えると、そのまま外へと飛び立つ。
「悪魔祓い共は――む、一人しか居ないがアレだな? ふむ、取り敢えず適当に気絶させてから聖剣を奪うか」
翼を広げて空から街全体を旋回しながら僅かに感じる一般人とは異なる気配を複数探り当てながら、お目当てである悪魔祓いである茶髪の少女を発見し、一人呟いたコカビエルが高速で落下する。
「っ!? な、何者!?」
「……」
「あ、アンタは――うぐっ!?」
突然空から降ってきた何者かの姿に驚いて剣を構えた茶髪の少女だったが、次の瞬間に襲い掛かった腹部への衝撃に苦しむ暇も無く意識を刈り取られ、剣を奪い取られる。
「この小娘に用は無くなったが一応連れていくか。
人質とでも嘯けばもう一人も釣れるだろうし、何よりそのまま放置でもしたらガブリエルに怒られそうだ」
まるで猫でも扱うかの様に襟首を掴み上げたコカビエルは、ガブリエルに怒られるのは嫌だからという理由で少女を連れ去ろうと再び飛翔する。
端から見たら悪人顔の男がいたいけな少女を誘拐してどこかに売り飛ばすような危ないものを感じるが、ある意味それ以上にこの少女――紫藤イリナにとっては大変な目に合わされてるのかもしれない。
何せ敵の親玉に拐われたのだから。
「オイ待て!」
「待たないよ!」
ちなみに、そのイリナなる少女がコカビエルに拐われたその頃、本来なら相棒となって行動を共にしていた筈のもう一人の悪魔祓い――ゼノヴィアは、聖剣に怨みを持つリアスの騎士の木場祐斗と行動していたとか。
「チッ、バルパー・ガリレイとフリード・セルゼンは何処に行ったんだ……!」
「言っておくけど、バルパー・ガリレイは僕の獲物だ。キミ達が話してくれたお陰でハッキリと復讐すべき相手がわかったからね」
「キミの事情は知ってるが、悪魔である時点で手出しは無用だ、これは私達の任務なんだ!」
復讐に囚われすぎて突っ走る騎士と、任務の為に奔走する悪魔祓い。
どうやらイリナとは別行動をしてるらしいのだが、そのイリナが今しがたコカビエルに拐われたとはまだ知らない。
そして其々が思惑を抱いたこの事件はクライマックスへと向けて加速していく。
「バルパー、今そこで悪魔祓いの小娘を一匹拐ってきた。聖剣もこの通り確保したから使え。
小娘は人質にでもすれば良いだろ」
「本当に貴方には頭が下がる。
しかしこの悪魔祓いに人質の価値はあるのか?」
「もう一人居たから釣るって意味では使えんじゃありませんか旦那?」
「どうするかは任せる。俺はそろそろ気付いてる筈だろう魔王の妹共に挨拶でもして来る」
意識の無いイリナの身柄を、何だか碌な扱いしかしなさそうなはぐれコンビに渡したコカビエルは忙しなく今度はこの街の管理だかを現状任されてる方の魔王の妹の元へと飛ぶ。
本当は直で同質のものを持つソーナの方へと行こうとしたのだが、演出はある程度凝ったものにすべきなのと、どうやら自分の仕事をちゃんとするのかを確認したいのかセラフォルーが居るらしく、例の赤龍帝の少年を誘導させるのは任せる事にした。
もっとも、リアスの方を優先した理由はそれだけでは無いが。
「初めましてになるなサーゼクスの妹よ。
俺はコカビエル、この度の事で挨拶に来た訳だが――――ふむ、お取り込み中だったかな?」
「こ、コカビエル……!? い、いえ……ある意味アナタが来てくれて助かったわ」
「は? …………何だかよくは知らんが役に立てて光栄だ」
「あ、悪魔祓いは何をしてるんだ! く、クソ!」
「悪魔祓いなら一人人質に使えるかと思って拐ったよ。ところでお前は見た限りだと純血の様だが、グレモリーとシトリーでは無いな?」
「お、俺はライザー・フェニックスだ!」
「フェニックス? ……………あぁ、聞いた事があった様な無いような。どちらにせよ小僧自身にあまり期待できそうになさそうなのは間違いないか」
「ぐっ……!」
危うくそのまま押し倒されかけたリアスの自宅の窓から現れた堕天使コカビエルにビビるライザーと、奇跡的なタイミングで来てくれて、敵の筈なのにコカビエルが救世主に見えてしょうがないリアス。
何とも皮肉な事だが、コカビエルにしてみればほぼ無理矢理ライザーがリアスと事を始めようが、それを他に見せつけてやろうとしてる悪趣味さについてもどうでも良い。
「わかってるとは思うが、俺はこれからお前等の通う学舎で奪った聖剣を再統合させる儀式を始める。
儀式が終わり次第、手始めにこの街を消し飛ばし冥界と天界に宣戦布告――――と、いう流れなので止めたくば駒王学園に来い。
構わんのならそこで勝手に死を待て」
「き、聞いた通りにぶっ飛んでるぜコイツ……!」
「何でそんな事を……!」
「質問に答えてやるよリアス・グレモリーの下僕二匹――――退屈だからだよ」
こんな時に自分のこの、散々周りから言われてきた悪人顔は役に立つもんだと、二人の兵士の少年に対してギザ歯を見せながら口を歪めて嗤うコカビエル。
この時点で十二分に自分の脅威度を知らせてやれたので、後は駒王学園に戻る訳なのだが、その際去り際に堕天使である自分を嫌悪……または恐怖した眼差しで見ている黒髪の少女に向かって一言――
「バラキエルの娘か、フッ、大分似てきたな朱璃の奴に」
「え……」
わざと気になる一言を残してコカビエルは去った。
あの少女がその際どんな顔をしていたのかは見てないのでバラキエルにはわからない。
だがコカビエルの目的と挑発を受けて、とにかくライザーから逃げたいのを理由に聖剣融合の儀式が行われてる駒王学園へと眷属達と共に向かうリアスにちゃんと付いてきた辺り、気になってはいるのはわかった。
「い、いつの間にこんな……!」
「……。ライザー様は部長の婚約者なのですから、ちゃんと部長の事を守ってくれるんですよね? あのコカビエルから」
「うっ!? そ、そこの兵士共がやられたらな……」
「ふざけんなこのエロ焼き鳥が、部長の婚約者気取ってんならちゃんとやれよ?」
「まさか逃げるなんて事はしないですよねぇ? 部長の婚約者様ともあろうものが?」
「ぐっ……!」
どう見ても洒落の通じる風体じゃない大物堕天使の圧力に完全に腰が退けてるライザー。
てっきりコカビエルが出てきた時点で冥界から魔王がやって来てコカビエルを止めるのかと思ってたのに、リアスの女王の話によれば応援には一時間以上の時間が掛かるらしい。
聖剣融合の儀式により展開された巨大な陣を背に此方を見下ろす大物堕天使の姿を見てゲームとは違った本当の殺し合いになる恐怖であっさりとライザーはヘタレになってしまっていた。
「ようそこサーゼクスの妹とその仲間達よ。
見ての通り今聖剣を元のひとつに融合させている最中でな? さっきも言った様に、融合させた暁にはそれを使って軽く戦争を仕掛けさせて貰うつもりだ。
だから余興としてまずお前とセラフォルー・レヴィアタンの妹の二人を殺してその死骸をそれぞれサーゼクスとセラフォルーに送ろうと思う。
そうすれば呑気な連中もやる気になってくれるだろうよ」
もっとも、セラフォルーの妹はそう簡単に殺せないだろうが……と内心思いながら嘲笑して見せるコカビエルにやって来た悪魔の若者達の顔は歪む。
「くっ……そ、そんな事の為に殺されたくなんて無いわ!」
(よ、良かった俺は――)
「雷に打たれたとでも思って諦めろ、あぁ、それとフェニックスだったかの小僧もついでにバラバラにして送りつけれてもやる気になるかな?」
「………」
くくく……と物凄い悪人顔でライザーを見下して嗤うコカビエルの台詞にライザーは絶望する。
そんな中、先程意味深な台詞を残された少女が睨み付けるような目でコカビエルを見上げながら前へと出る。
「先程の言葉の意味はなんですか? 何故貴方が母を……?」
何時にも無く殺気だってる少女にリアスや仲間達が驚く中を返答次第ではこのまま本気で殺してやるとばかりな目付きの少女にコカビエルは懐かしい気分に浸りながら口を開く。
「誰とは言わんが、俺の
もっとも、お前の父親であるバラキエル自身は俺が朱璃と顔見知りであることは知らないが」
「な、なんですって……!?」
ライザーを始末して貰えそうな流れにしめたと実は内心本気で喜んでいるリアスを他所に、死んだ母の名を口にしたばかりか、顔見知りだったと語るコカビエルに驚愕する少女――姫島朱乃。
「う、嘘を言わないで! 貴方みたいな堕天使が母と友達だなんて! 堕天使が母を殺したのに!!」
当たり前だが朱乃からすればコカビエルの言葉など信じられる訳が無く、また過去の事もあって憎悪入り交じった感情を剥き出しにする。
するとそれまで嗤っていたコカビエルの表情が、故人を本気で偲ぶ様に目尻を下げた。
「その事に関しては、俺と相棒は襲われた日に遠出していた事を心の底から後悔してるし、娘であるお前には正直申し訳ないと思ってはいる。
あの時程自分達の非力さを呪った事も無かったし、アレほど頭に来て朱璃を殺したバカを考えうる苦痛を与えた上で殺した日はなかった」
「……!」
さっきまで悪人顔で嗤っていた男とは思えない程に穏やかで、そして後悔した表情になるコカビエルに朱乃は声を詰まらせた。
「その後の事は知らなかったが、バラキエルがうだうだと言ってる間に娘がこんな事になってしまうとは皮肉だな」
「う、嘘よ……こんなの……」
「別に信じてもらわなくても結構だ。
それに勘違いするなよバラキエルの娘? 俺は知り合いの娘だからといって手を抜くつもりは毛頭無いから安心しろ。
お前は確かにバラキエルの娘であって朱璃本人では無いからなァ?」
だがそれもほんの一時の事であり、朱乃の母とは友人であったがお前は娘というだけの他人だと言い切ったコカビエルは、最上級堕天使相応レベルの力を解放し、眼下の悪魔達を威圧する。
「個人を他の誰かに重ねるのは失礼だろう? 心配しなくてもお前はバラキエルに対しての人質にでも使ってやるよ」
「そ、そんな事なんてさせないわ!!」
「威勢が良いのは結構だがなサーゼクスの妹、風の噂程度と思ってたが、自分の身すらまともに守れもしない奴がイキっても滑稽にしか見えんぞ? そこのフェニックスの小僧の下僕共を見てると、大体察しがつくしな……」
「う、こ、怖いよライザー様……」
「た、助けてください……!」
「うぅ……!」
ライザーの女だらけパーティを見て半分ため息混じりでリアスの意気込みを切り捨てたコカビエル。
この程度に怯えて使い物にすらならなくなる餓鬼共にすら負け、望まぬ関係になりかけてる時点で期待もクソも無いし、これでほぼ確信できた。
「俺が騒がずとも近い内に堕天使と悪魔の仲は拗れただろうな。
どうであれグリゴリ幹部の娘にゲームで勝ちましたので抱かせて貰いましたー―――で、通じると思うか?
まあ、バラキエルの娘がそこの小僧に同意したのなら別だが」
「じょ、冗談じゃないわ! 誰がこんなの!! それと私をあんな男の娘呼ばわりしないで!!」
「バラキエルの娘なんだからそう呼んで何が悪い? 自立もできない餓鬼なんぞ名前で呼ぶ価値なぞ俺の中には無いんだよ」
やはり朱璃に似てるのは見た目だけだな。
まだ子供だからという事を加味しても最早興味を完全に消したコカビエルはバラキエルの娘と呼ばれて喚く朱乃から視線を切ると――――
「お喋りはここまでだ」
分かりやすく最上級堕天使――いや、それを遥かに超越した力を解放した。
「なっ!?」
街――いや、星全体がその力に恐怖するかの如く激しく揺れる程の極致。
ガブリエルという唯一理解して貰えた同類との切磋琢磨で掴んだ神を越えた先の力と進化。
放たれた白きオーラはやがて黄金に輝き、オーラに青白いスパークが迸る。
「ま、待てコカビエル! ここでそんな力を使ったら儀式の場が……!」
「やっべー……ボスってあんなヤバかったのかよ」
後ろで儀式をしてるバルパーが何かを言ってる気がするが聞く気なぞない。
「挑戦する意思のないバカがこの世には多すぎる。
神ですら初めから持つ力だけに満足し、甘えた鍛え方しかしない。
超戦者になれば誰だってこの程度にはなれるというのによ」
バチバチとスパークが走る黄金のオーラを放つだけで運動場がめちゃくちゃになっていく中、誰に対してでも無くそう呟いたコカビエルは、この時点で完全に戦意の全てを破壊され、膝を付く悪魔連中を見下ろす。
「特別に全体の10%でやってやる。俺は完全に慢心してるぜ? だから今なら殺せるかもな?」
コカビエルのレベルがここまでだったとは知らなかったリアス達にしてみれば、そんな言葉は何の慰めにもならない。
いやそもそもコカビエルはバラキエルの娘を含めてこの連中が目的じゃない。
コカビエルが待つのは今の力の解放で確実に察知してくれたであろうメインディッシュ――
「………来たな?」
月の光よりも輝く黄金のオーラを纏ったコカビエルの口元が待ってたと歪む。
「意地悪とかじゃなく、向こうで匙君達とここらがぶっ飛ばない様に全力で障壁張っててくださいって。
いくら魔王さんでもアレは無理ですっての」
「ですね、はっきり言って邪魔ですから」
「っ……! そ、ソーナちゃんが私は心配で……」
「あらあら、初めて聞きましたよそんな言葉。
全く響きませんけど」
自分とガブリエルと同じ何かを持つコンビの姿を見てコカビエルは久々に本気でわくわくている。
「探したらもしかしたら……なんてセンパイと何回か話した事はあったけど」
「まさか――現実に存在していたとは少々驚きましたよ」
「クックックッ! それはお互い様だろう?」
至高無上の堕天使・コカビエル
種族・堕天使
備考・超越を超えし超戦者。
終わり
補足
コカビーの10%でほほ三大勢力の各最高戦力と遊べるらしい。
黄金のオーラにスパーク……それはまるでどこぞの超野菜人2の如く。
その2
昨晩はお楽しみでしたねと言うと結構実は照れるらしい……誰が得するとかは言わんといて。
その3
セラフォルーさんに何かライバル視されてるけど、別にガブリエルさんは相手にしてないし、多分コカビーさんの傍らに居るとヤバイ艶かしさが滲み出てチェリーさんは皆おトイレ――おっと、コカビーさんが指を鳴らしてる様だ……。
その4
ある意味被害者な鳥さん。
鳥さんは犠牲になったのだ……