色々なIF集   作:超人類DX

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見逃した? ノンノン、準備の為です色々なね


離れていく心

 芋づる式というのはまさにこの事だ。

 おかげで堂々とぶち殺せるって訳だが、さてどうしたものか。

 

 此度における茶番の原因が自ら現れた挙げ句、自分達と同じ記憶持ちである事まで知る事ができたイッセーは今まさに楽しく健全な害虫駆除をしようと両手の指を器用に鳴らしていた。

 

 

「おーおーおー、これはこれはお股が緩々のクソビッチちゃん達じゃありませんか? チーッス!!」

 

『……』

 

 

 ソーナの行動を理由に芋づる式とばかりに記憶を持つだろう面子を引きずり出してやったイッセーが青白い顔をする面々に向かって開口一番罵倒した。

 

 

「聞いた話だとリアスちゃんに謝りたいって? クソ野郎に股開いてる事に頭いっぱいになったせいで裏切ってしまいました~ 許してくださいってかァ? 許してやるよォ!! アハハハハ!!」

 

「え……!?」

 

「い、今許すって……」

 

 

 リアスを裏切った者達にとってイッセーとは恐怖そのものだ。

 何せかつて全員が漏れ無くイッセーに惨殺されたので、当初は全員してガタガタと震えていたのだが、許してやるよと言うその言葉には思わず顔を上げてしまう。

 しかし――

 

 

「んな訳ねーだろバーカ! 笑わせるなよカス共が!」

 

 

 この赤龍帝が許す訳なんかある筈も無く、ほんの一瞬の希望はグチャグチャに踏み潰されてしまった。

 

 

「リアスちゃんと接点が無ければ居る筈が無い連中が居る時点でとっくに予想はついてたけど、どいつもこいつもおめでたい脳ミソしてやがんなァ? えぇオイ?」

 

「ぅ……」

 

 

 再び本能的な恐怖で縮こまる面々に対してイッセーは偶々そこら辺にあった長い定規を片手に下を向いてしゃがみこんでる面々の前を行ったり来たりしながらケタケタと笑う。

 あまりにもこの連中の考えがおめでたくて滑稽に思えてならず、ソーナが先程リアスに口走った言葉も笑ってしまう程だからこそ却って怒りも沸かない。

 

 

「許すとか許さないとかじゃあ無いんだよ。

リアスちゃんは関心が無い、お前等の存在そのものにな」

 

 

 どう足掻こうがリアスに手が届くことの無い有象無象への嘲笑―――それだけだった。

 

 

 

 

 アイカにとってはこれが初めてのレーティングゲームになる。

 チェス盤上のやり取りを実際に行う……という説明を物凄くアバウトに聞かされただけではイマイチ把握は出来なかったが、ほぼ実戦と聞かされば元々か弱い一般人としてはいくら鬼畜なイッセーに叩き込まれても緊張する訳で。

 

 

「ゲームの参加年齢になってもやるつもりはこれっぽっちも無かった訳だし、わざわざ相手のやり方に付き合う義理も無いわ。多少は心を折らせて貰うけど、それだけよ」

 

「だな、背景にカスが居ないとわかった時点で遠慮する必要も無くなった訳だし、気楽に踏み潰させて貰おうじゃないか」

 

 

 クックックッ! と同好会に使っている空き教室にてイッセーとリアスは実に悪い顔で笑っている。

 それはもう小物臭溢れるくらいに。

 

 しかしどういう訳か、人数からして最初から不利とだけは分かってるのに、不思議とアイカは緊張こそするものの不安は無かった。

 

 

「私ってどんな役割なんですか?」

 

「そうね、アイカはルークだから、その特性を利用して切り込み隊長みたいな感じかしら? もっとも、そんな事を命じるつもりは無いけど」

 

「えーっと、それは何故?」

 

「もし何かあっても逃げられるだけの自衛手段の段階しかまだ至って無いのに、いきなり戦わせる訳にはいかないだろ? そもそもキミを仲間にしたのだって戦わせるとかじゃなくて、話が合うからってのもあるんだし」

 

 

 当日のゲームをどう動かすかについて聞かされ、アイカを戦わせない方向にしようと言うリアスとイッセーにちょっとだけ残念な気持ちになる。

 別に好き好んで血を見たがるタイプじゃないが、折角獲たトモダチの役に立てないのは悔しい。

 

 だが実戦経験どころか戦闘に関してはズブの素人である事も間違いないので、アイカはそれに従うつもりで頷くと、それを察したのか、リアスとイッセーが其々アイカの肩に手を置く。

 

 

「こんなくだらない茶番にアナタを出すだなんて勿体無いし、アイカは可愛いからライザー・フェニックスみたいな男の目に止まったら私が嫌なのよ、だから気にしないで?」

 

「一種の清涼剤だからなアイカは。気に病む必要はない」

 

 

 イッセーとリアスの悪癖――と、いうべきか。

 周囲に対する警戒心は異常に高い癖に、一度でも受け入れた相手はどこまでも甘くなる。

 なんやかんやでアイカは二人にかなり大事にされているのだ。

 

 

「間抜けな悪魔演じてた自業自得とはいえ、公開処刑みたいな真似をされるとは思わなかったわ」

 

「思っていた以上に疎まれてた様だったけど―――サーゼクスさんはどう思ってるんだろうか……」

 

「そう、ね……」

 

 

 一人ほわぁ……と紅潮してるアイカを横に話を戻したリアスとイッセーはジオティクス・グレモリーとヴェネラナ・グレモリーはどうでも良いとして、かつて此方側についてくれたリアスのこの世界における兄について複雑な表情を共に浮かべながら考えていた。

 

 

「残念ながら記憶は無いし、ミリキャスも男の子だった。

いえ、わかってるのよ……そんな都合良く記憶を持ってる訳なんて無いのは」

 

「どうでも良い連中はある癖にね」

 

「そうね……」

 

 

 サーゼクスとミリキャス。かつて妻ないし母を転生者に奪われたリアスの兄もしくは姪の今を思い浮かべながら表情を暗くする。

 もし二人も今回のこの茶番に賛成してる側だったら――精神的にキツいどころじゃない。

 

 

「何にせよライザー・フェニックスは潰すわ。その後の事は……向こうの行動次第ね」

 

「結局はこうなるのか……カスも居ないし少しは期待したんだけど」

 

「意味深な台詞だらけで解読が難しいのだけど」

 

 

 別の意味で鬱になりそうなレーティングゲームは近い。

 

 

 

 

 

 

「本当は、リアスの姿を見て舞い上がったライザー・フェニックスが調子に乗って怒りの矛先を集中させたタイミングで私は味方だと主張するつもりだったのに、中途半端にまともな事を言い出したせいで台無しになりました」

 

「だ、だから言ったんですよ。いくらなんでも無謀だって」

 

「そもそもそうなる前にあの赤龍帝が黙ってるとは思えなかったし、現に私達だって殺されはしなかったものの、完全に敵扱いされてます……」

 

 

 裏切り者達についてリアスは一切気に止めてすら無い――という現実を知らないソーナ達はというと、散々言われ放題イッセーに言われた後再び集まると、どういう訳かライザーの中途半端さのせいだと爪を噛みながらブツブツ言ってるソーナに朱乃と小猫と男装中の木場は、ソーナの危うさにいよいよ危機感を持ち始めていた。

 

 

「どうしたらリアスに……どうしたら……」

 

 

 自分の関係の無い所で楽しく生きたらどうかしら? とハッキリと決別の言葉を送られ、イッセーにそこら辺の雑草以下の認識しかされてないと罵倒されたにも拘わらず、何かに取り憑かれたかの様にリアスを諦めてない様子は、元眷属としてはわからなくもない。 

 けれどあまりにも感情が前に行きすぎて、無謀すぎる行動が多すぎる。

 ソーナのお陰でこの学園の生徒としてリアスの近くまで近づけたのには恩を感じるが、これ以上暴走をし続けでもして本当に殺されたら本末転倒どころじゃない。

 

 

「リアス……昔の様に遊びましょう? うふふ、綺麗よリアス……」

 

「ちょ、な、何をされてるのですか!?」

 

 

 挙げ句の果てには妄想しながら一人遊びまでしようとする。

 元眷属達が正直『コイツはもうダメだ……』と思ったのは多分悪くない。

 

 

「離してよ! うぅ……リアス……リアスゥ……!」

 

「こ、この人部長の事そういう目で見てるんですね……」

 

「た、多分正気に戻れた時のショックが大きすぎたのだと思うけど……」

 

 

 より拒絶の見えない壁が作られ、どうにかしてその壁を抜けられる名案も浮かばないまま日にちは過ぎていく……。

 

 

 

 

 少しはグレモリー家としての自覚をしてくれると思ったから今回の騒動を利用したつもりだった。

 しかしフェニックスの三男の案内から戻ってきたグレイフィアの報告にリアスの両親は失敗を悟った。

 

 

「受けると申されておりましたが、眷属の数は一人戦車が増えただけでそれ以上増やすつもりは全く見られませんでした」

 

「そう……ですか。他には?」

 

「その……お嬢様は、旦那様と奥様に対して言葉には出してませんがハッキリと失望しておりました……。

無能の自分の公開処刑でもしたいのか……と」

 

 

 息子の嫁の報告にヴェネラナ・グレモリーは大きくため息を漏らす。

 貴族としての自覚を持たせる為にと仕掛けたのに逆に失望という逆ギレをするとは……。

 昔から何をするにしても失敗ばかりで自分達の言うことに然り気無く反発してきた不出来な娘……と口に出さずには居たが、あの少年を将軍として眷属にしてからそれが余計に助長させてる気がしてならない。

 

 やはりあの少年を引き剥がしてしまうべきだった――と。後悔してると、それまで一緒になって黙って聞いていた息子が少しの怒気を孕んだ表情と声を放つ。

 

 

「二人にしてみればそう解釈しても仕方ない。

そもそも無理に婚約話を進めた上に嫌ならゲームで勝てなど無茶が過ぎる。

母上もわかっていた筈だ、リアスはイッセーくんを……」

 

「言いたいことはわかりますがサーゼクス、あの少年は転生悪魔であって純血ではないわ」

 

「純血ならミリキャスが居るし、本人もその名を継ごうと頑張っている。一体何が気に入らないというのですか?」

 

 

 声は努めて冷静だが、明らかに怒りを見せるサーゼクスにヴェネラナはある日突然リアスが転生させたリアスと同じくらいに薄気味悪い少年の姿を思い浮かべ、そして沸き出た嫌悪感をほんの少し顔に出しながら口を開く。

 

 

「元々リアスがどこかおかしいのは親である私達は知っていましたが、私は彼のせいで余計におかしくなってると踏んでいる――いえ、実際はそうだと確信している」

 

「そんなもの、何の根拠があって……!」

 

 

 寧ろリアスの為に頑張ってる姿を、会話はそれほど無いにせよ知っていたサーゼクスは少し声を荒げるが、ヴェネラナは取り合わない。

 

 

「とにかく、やる気が無いのならフェニックスの三男と結婚させ、血を残させます。

反論は許しません」

 

「…………」

 

 

 それが嫌だから旧血族へのクーデターを決意したのに、これでは何も変っていない。

 ヴェネラナの冷酷な一言にサーゼクスは絶望するのと同時に決意する。

 

 

(……。二人をそんな事に巻き込んで堪るか……!)

 

 何もできない兄だけど、せめて妹の自由だけは……。

 記憶は無いが、サーゼクスは密かに兄として出来る最善を尽くそうと考える。

 

 

(それに僕は何となく分かる。

リアスと彼はきっと弱くは無い……もしかしたらライザーに勝ってみせるかもしれない。

けれどそれならそれで此処に居る者達は掌を返し、別の意味でその自由を奪う。

だったらその前に僕が――)

 

「……………」

 

 

 

 終わり

 

 

 

 茶番のレーティングゲームに不自然なくらいに観戦者が来ている。

 それはきっとこの公開処刑を眺めて楽しむ悪趣味さを持つ連中なのだろう……。

 だが――

 

 

「アナタにそれ程恨みは無い。

しかしアナタを受け入れる気は毛頭無い。だからこそリアス・グレモリーは全力で叩き潰す――」

 

 

 冴えない容姿で無く、美しき悪魔と戻ったリアスはその身に赤い何かを纏う。

 

 

「――この完成体・阿修羅で!」

 

 

魔王すら硬直させる程の圧倒的な紅い魔力が、巨大な修験者の様な形となり、レーティングゲームの舞台となった駒王学園の校舎すら見下ろせる程の大きさへと形作られる。

 それだけでも対戦者であるライザー達に『勝てない』恐怖を植え付けるに十二分な力を示していたのだが、事もあろうにその巨大な魔力の塊ともいえる力を完全に安定させようと、巨人の頭部にある頭襟を模した五角形のパーツの中に居たリアスは小さく呟く。

 

 

「まだよ……」

 

 

 定まれ……!

 その言葉と共に、力強く拳を握りしめたリアスに呼応するかの如く、修練者の姿をしたリアスの魔力はその形を変化させる。

 あまりにも強大なその力の前にライザー達は何も出来ず、その変化を見ているだけ。

 

 

「こ、これ程の巨大な魔力が安定した……」

 

 

 ライザー眷属の誰かが絶望した表情を浮かべながら呟く。

 

 

「こ、此処までの差があったなんて……」

 

 

 また一人が今になって感じるリアスとの差に膝を折り、魔力の奔流させていた修練者の姿からより安定した、天狗の仮面をつけた四腕の鎧武者の姿となった巨人の頭部から自分達を見下ろすリアスを見上げる。

 

 

「私を止められるのは、私の『本当の仲間』だけ」

 

 

 そんなリアスは、震え上がるライザー達に絶望を叩き付けんが為に四つ腕の巨人が持つ巨大な太刀を鞘から抜き出す。

 

 

「けれど、その一人であるイッセーは私を止めない。

しかしそれはきっと、アナタ達にとっては良かったと言えるのかもしれない」

 

 

 何故なら……。

 

 校舎……いや、山よりも高い巨人が鞘から太刀の刃を半分ほど見せた瞬間、勢いよく抜刀する。

 

 

「!?」

 

「きゃあ!?」

 

 

 只の抜刀……。

 言ってしまえばそれだけの行動だが、巨人の起こしたそれはそんな生易しいものでは無かった。

 レーティングゲームの為に作り上げた駒王学園のレプリカ空間の運動場にて出現させた巨人の抜刀は、運動場の地形を破壊し、その余波で校舎までも粉々に粉砕する。

 当然その衝撃は凄まじく、人形の様に吹き飛んだライザー達が体勢を何とか建て直して目にしたのは……。

 

 

「なぁっ!?」

 

「私一人分なら、このレプリカ空間が消え去る程度で済みそうだわ……」

 

 

 見事なまでに再現されていた駒王学園のレプリカ空間の校舎が消し飛び、土台となった空間になっていたという理不尽なものだった。

 

 その力にゲーム前に密かに会いに行ったサーゼクスだけでは無く、多くの悪魔達も驚いた。

 出涸らしと噂されていたリアス・グレモリーの力がこれ程までであった事。

 

 

「殺しはしないぜ、殺しはな。リアスちゃんも俺もアイカにスプラッター場面をみせる趣味はないからね」

 

『ふわぁぁ……ぁ、やっと出番か?』

 

「ブ、赤龍帝の籠手……だと?」

 

 

 そして薄気味悪い少年が持つ力が神滅具のひとつであった事。

 案の定、掌を返す悪魔達だが、最早リアスもイッセーも、記憶は無くとも優しかったサーゼクスとミリキャス以外を見限っていた。

 

 

「えーっと聞こえないからもう一回言ってくんない? 従わないとアイカの身が……なに?」

 

「ごめんなさいね、私もぼーっとしていて聞き取れないからもう一度大きな声でお願いしますわ?」

 

 

 うっかりまだ未覚醒のアイカを使って脅そうとした誰かが大変な事になるのかは――わからない。

 

 

「すまん、色々と調子に乗ってた詫びというか……出来るだけの事は協力させてくれないか?」

 

「え……」

 

「あ、アンタが?」

 

 

 粉々にぶちのめされた鳥がまさかの事を言ってきて驚くのかもわからない。

 

 

「桐生さん……なんでアナタがリアスにそこまで……!」

 

「えーっと……落ち着きません? 多分そういう所が嫌なんだと思うんで」

 

 

 遂に嫉妬の果てに――な事があるかもわからない。

 

 

 全てはその時までわからない。

 

 

終わり




補足

ショックすぎて変な方向に突き抜けても――リアスさんは本気で気色悪いと思うだけだったり。


その2
何故かといえばイッセーの排除も半分入ってました。

そして記憶は無いけどサーゼクスさんは聖人だったのだ……悪魔なのに。

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