色々なIF集   作:超人類DX

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手加減ってなんだぁ……?


不安な立ち上がり

 善だの悪だの、王道だの邪道だの――そんなものは全てどうだって良い。

 求める物はただ一つ――生き残るという事だけ。

 

 その為なら例え後ろ指を差されようが構わない、だからどうか邪魔をするな。

 

 それが『生き続ける』を親兄弟の様に強く繋いだ()()達と誓った二人の本心。

 

 

 

 

 いよいよレーティングゲームの当日となった。

 あらゆる意味で本当の初ゲームとなるイッセーとリアスだが、緊張した面持ちも特に無く同好会の活動場所である2階隅の空き教室へと集まり、その時が来るまでごみ捨て場から拾って来たブラウン管テレビを使ってイッセーの家から持ち込んだ古めのゲーム機でアイカを交えて遊んでいた。

 

 

「先輩って実家の方達と仲が悪いんですね」

 

「悪いというよりは、私の性格に問題があるからそうなってるだけだわ」

 

「基本的にリアスちゃんって他人に対しての警戒心が凄まじいからね。

まあ、俺もそうな訳だけど」

 

「それは学校での二人を見てればわかるけど……」

 

 

 あまり根を詰めてもしょうがないというリアスの判断と緊張ほぐしの為のゲームだが、その最中アイカはリアスが抱える実家の面々に対する距離感に対して不思議に思っている様子だ。

 

 

「何で肉親にすらって顔ねアイカ?」

 

「ええ……ちょっと気になりましたので」

 

「世の中にゃあ色々とあるんだよ」

 

 

 聞けば悪魔界隈でも相当な力を持つ――魔王すら出した名家のお嬢様であるらしく、ついでにあの生徒会長の実家も魔王を輩出させたシトリー家のお嬢様らしい。

 だがリアスはそんな実家に対して欠片も誇らず、寧ろグレモリーという名を名乗るのも嫌がる素振りすら見せており、極めつけはあの日グレモリー家のメイド長でリアスの兄の妻――つまり義理の姉に相当するグレイフィアなる悪魔に対して物凄く他人行儀であった。

 

 それはつまりリアスは実家を面々を一切信用してこなかったという意味であり、もっといってしまえば今回の事で完全に見限りかけている。

 

 

「げっ!? ボム兵が誤爆しちまった!?」

 

「ふふん、そうなると思ってわざと放置しといたのよイッセー!」

 

「チィ! だがこの程度ならまだ復帰可能――」

 

「残念、そこでアタシが妨害してジ・エンドよ」

 

「あ!? アイカのゴリチュウに!? ちきしょー!!!!」

 

「ふふん、ゲームなら対等な様ね?」

 

 

 ほんの触り程度しかリアスの身内に対する対応は見てないけど、それでも普通の家庭を知るアイカにとってはドラマの中でしか見たこと無い様なやり取りで、寧ろリアスはイッセーの両親に懐いてる。

 まあ、今隣でアイカの妨害によって残機を失って悔しがるイッセーの両親が他と違うなにかを持つ三人に対しておおらかに迎え入れるという時点で少し違うのかもしれないが。

 

 

「リアス様、兵藤様、桐生様。

開始十分前となりましたのでご報告に……」

 

「んぁ? だってさリアスちゃん?」

 

「そうですか、わざわざ私共の為に申し訳ございませんわねグレイフィア様?」

 

「い、いえ……」

 

 

 部屋に魔方陣と共に現れたグレイフィアなる悪魔に対して微笑みながら他人行儀全開に話すリアスはコントローラをその場に置いてゲーム機のスイッチを切る。

 

 

「続きは家でやるわ」

 

「今度は次世代機でやってやんぜ」

 

「あーあ、私が一位だったのに……」

 

 

 その際グレイフィアがどんな表情を浮かべていたのか等リアスは一切気にしない。

 違うとはわかってても、リアスやイッセーにとってグレイフィア・ルキフグスとは夫と() が居るにも拘わらず他の男と寝たばかりかその男の子供を孕んで産もうとまでした女悪魔という認識でしかない。

 このグレイフィアに罪がある訳ではないが、記憶を保持したソーナ達という例がある以上は、もしかしからそれを隠しているかもしれないという疑惑がある。

 

 

「それではゲーム会場にご案内いたします……」

 

 

 ましてや言われるがままにリアスを悪と断じて攻撃までしてきたのだから……信じようと思う方に無理がある。

 リアスもイッセーも善人では無いのだから。

 

 

 

 

 サーゼクスは昔から妹のリアスに他には無い何かを感じていた。

 常に周囲に怯え、母や父、そして自分の妻とまともに目を合わせず逃げるように避けていて。

 その理由を以前聞いた際、リアスは答えはしなかったが、何故か自分と自分の息子のミリキャスには心を開いてくれる。

 だからこそサーゼクスはリアスが周囲から身勝手に下される評価通りの子では無い事を知っているし、ある日連れてきた人間の少年が不安定なリアスを改善させた理由も知っている。

 

 

「転移完了させました」

 

「ご苦労様、リアスとイッセーくん――それからあの二人が認めたらしい戦車の子はの様子は?」

 

「…………。正直に言っても構いませんか?」

 

「良いよ、寧ろキミの抱いた本音の方が聞きたいからね」

 

「…………………。わかりません、相変わらず全くお嬢様の事も、なにもかもが理解できません」

 

 

 どこか苦悶に満ちた表情でリアス達のイメージを語るグレイフィアにサーゼクスは静かに頷き、仕切りの仕事を再開させる。

 

 

「わからない……か」

 

 

 誰も彼もが何時だってリアスやイッセーを見ると口にする言葉『理解ができない』。

 母は何時も表立って批判する事は無かったが、今のグレイフィアみたいな感想を持っているのは既にサーゼクスも知っている。

 だがしかしだ、サーゼクスは常々思う。

 

 

(一から十まで全て理解しないと気が済まないなんて、それは少しばかり烏滸がましいんじゃないかな?)

 

 

 全てを知る必要が何処にあるのか、理解しなければ接する事すらできないというのは変ではないか? サーゼクスの気持ちは常にその一点であり、だからこそサーゼクスはリアスとイッセーの生き方を否定したりはしなかった。

 

 

(それが高じて自由すら奪うのであるなら、僕は魔王じゃなくリアスの兄のサーゼクスで良い)

 

 

 魔王として妹の未来をたた見てるだけなら、そんな位置なぞ捨てて兄として守る。

 世界は違えど、記憶を持たないけれど……それでもサーゼクスはかつての世界でリアスとイッセー――そして集まった仲間達と共に全ての元凶である外の神と戦ったサーゼクス・グレモリーなのかもしれない。

 

 

『そういう馬鹿正直な所、僕はけっこう嫌いじゃあ無いぜサーゼクスくん?』

 

 

 あの人外に好かれるという快挙すら達成した人外領域に踏み込みし悪魔を越えた存在と。

 

 

「あのリアス嬢のゲームを見られるとはね」

 

「まぁ、あまり期待は出来そうにありませんな。

何せ下僕の数すらまともに揃えてないようですし」

 

「どんな名家にも出涸らしというのは存在する様ですな」

 

「…………」

 

 

 聞こえてるんだよ馬鹿共。いや、恐らくはわざと聞こえるようにお団子ヘアーに瓶底丸眼鏡を掛けた妹ととその傍らに付く将軍と新たな仲間になった戦車が映し出された映像を眺めて話し合ってる来賓達を横目に、サーゼクスはやはりどちらにせよリアスの自由は奪われてしまうだろうと決意を改めるのであった。

 

 

『皆様、お待たせ致しました。これよりレーティングゲームの開始の時刻となります。

私、今回のレーティングゲームを取り仕切させて頂く事になりました、サーゼクス・ルシファー様の女王、グレイフィアでございます』

 

 

 転移によりリアス達はゲーム盤における本陣へと降り立つと、揃って顔を顰めた。

 

 

「この場所って旧校舎か?」

 

「ええ、しかも――」

 

 

 オカルト研究部の部室だった場所。

 アイカの居る手前言葉には出さなかったものの、リアスはこの苦い思い出の発祥の地となった旧校舎の一室の真ん中に立ちながら心中歎息する。

 

 

「偶然にしてはいきなり精神的にやってくるわね。

まあ、それで潰される程じゃあないけど」

 

 

 その力に危険を抱いて懐に入れてしまった忌まわしき思い出の詰まった部屋の模倣。

 世界ごと違うし、この世界では部室としてすら使ってないので単なる物置と化してるが、それでもリアスにとっては良い思いの全くない部屋だった。

 

 

「あれ、ここって旧校舎? ゲーム会場に転移したんじゃあ……」

 

 

 その直ぐ傍で、アイカが不思議そうに小首を傾げている。

 曰く地味だから騒がれた事は無いとの事だが、リアスにしてみれば実に可愛らしい子だと思うし、何故モテないのかが分からない。

 

 

「その会場とやらがここなんだろうぜ? 多分ゲームの為に用意でもしたレプリカ空間なんだろうが、いやぁ、皮肉が利いてて最高だね。

学生身分の俺達に通ってる学校の学舎ぶち壊させるんだもん。最高だぜホント」

 

「でもある意味有利じゃないの? だって駒王学園の地理なら私達の方が詳しいし」

 

 

 ケタケタと棘のある言い方を笑いながらするイッセーにアイカが返していると、再びグレイフィアの声が聞こえる。

 

 

『此度のゲーム会場はサーゼクス様のご提案による『公平さ』を考慮し、リアス様達が通う学舎をモデルにした空間となります』

 

「…………お兄様が?」

 

「へぇ………」

 

「そういえば先輩のお兄さんって魔王様なんでしたっけ?」

 

「え、ええそうだけど……」

 

 

 ゲーム場を決めたのがサーゼクスと知り、ほんの少しだけ動揺したイッセーとリアス。

 

 

「もしかして魔王様が、先輩のお兄さんとして少しでも此方が有利になる為に動いてくれたとか……?」

 

「そ、そう、かしら?」

 

「俺はそう思いたいな。………あの人とミリキャスだけは例え敵だったとしても戦いたくない」

 

 

 記憶の無いサーゼクスが動いてくれたのではというアイカの推論にほんの少しだけ心が軽くなるリアスにイッセーも同意する様に頷く。

 世界は違えど拒絶するのと同じ、世界は違えど一度でも味方と信じた相手は例え裏切られても憎めない。

 それがリアスとイッセーであり、サーゼクスとこの世界では男の子であるミリキャスを思い浮かべて軽く目を伏せた。

 

 

『それではゲームを開始します』

 

 

 サーゼクスが動いてくれた。

 それだけでそれまで物凄くやる気の無かった二人の心に火を灯し、最早グレイフィアのアナウンスなど全く聞いちゃいない。

 

 

「俺は構わないぜ、本当のリアスちゃんを見せつけて、ゴミ共が掌返して来ても、半殺しにしてやるから」

 

「そもそもそんな相手を気にしても意味なんて無いですもん。

……あ、でも本当のリアス先輩を知って掌返して持て囃す人達は嫌かも」

 

「確かにな、リアスちゃんが他の男にまで持て囃されたら八つ裂きにしちまいそう」

 

 

 ゲーム開始が伝えられて既に五分が経ってるが、リアス達はこの部屋から出ず、隅にあった椅子を引っ張り出し、座りながら呑気にグレイフィアから転送越しに寄越された会場の見取り図を広げる。

 

 

「ルール的にはチェスみたいに駒を動かして相手の王を殺れば勝ちなんだっけ? つー事は俺一人で敵陣に突っ込むのとかも無しなのか?」

 

「アリといえばアリだけど、それだと折角お兄様が差し伸べてくれたチャンスを丸潰しにしてしまうわ」

 

「だーね、サーゼクスさんを安心させる勝ち方でもするか」

 

 

 ある意味でライザー達はサーゼクスに泣いてお礼を言うべきなのかもしれない。

 それまで開始と同時に空間事相手を粉々にするつもりだったイッセーが、ゲームに乗っ取って勝つ方向にシフトし、リアスもレーティングゲームらしいやり方で指示を送る。

 

 

「圧倒的に駒の数が少ないから、足りない分は罠辺りで補いましょう。

恐らく向こうは兵士達を全員差し向けてプロモーションさせると思うし」

 

「と、なると盤上の真ん中に位置する体育館は向こうにくれてやるか? 一応ジェネラルの俺は兵士代わりにもなるだろうから……」

 

「罠を張るにも時間が無いと思うし、適当に侵入してきたら即座に反応できる様に魔力を本陣周辺に展開させるとかどう?」

 

「良いわねアイカ。私は修行で三ヶ月は全力で魔力を垂れ流しにできるし、触れた瞬間感知できる薄い魔力の壁を展開しましょう」

 

 

 こっそり持ち込んだお菓子を広げながら作戦を立てていく三人。

 取り敢えず先ず行うのは簡易的な警報器を作る事であり、リアスの身体から放たれる魔力が旧校舎の半径数十メートル程に広がる。

 

 

「これで良いわ。……流石にまだ来ないわね」

 

「三人しかいないからてっきり全軍突撃でも噛ましてくるのかと思ったんだけど……」

 

「もしかして端的にイッセーとリアス先輩がタダ者じゃないと察知して警戒したとか……?」

 

「アレがか? ……どうだと思う?」

 

「ありえなくもない……のかしら?」

 

 

 ピョンと跳ねているアホ毛が心なしかアンテナの様に伸びてる様な気がする魔力警報器状態のリアスは二人の意見に瓶底の眼鏡越しに目を細めて思案する。

 思い返せば、元のライザーと比べるとどことなくフェアな面はあったし、自分達三人とレーティングゲームをする事になった時も最後まで不満気だった。

 

 もしかしから警戒というよりは単にフェアさを抱いて兵士を出すのを控えてるのかもしれないが、どちらにせよリアスはライザーについてどうでも良いので考えるだけ時間の無駄だ。

 

 

「イッセー、警戒は此方でやっておくからアナタはライザー・フェニックス達の様子を見に行ける? できたら何人か減らしてくれると助かるけど」

 

「オーケー、勢い余って殺さない程度にね」

 

「そういう事、アイカは私の警護よ」

 

「わかりました―――って、別に私の警護なんて要らない気もしますけど」

 

 

 どちらにせよ、ゲームの上で潰す事には変わり無いのだから。

 

 

 

 

 

 油断はするなと言われたので油断はしてないつもりだ。

 しかしそれでも今回のこのゲームとして成立すらしてないゲームを前にしてしまうとどうしても気は抜けてしまう。

 

 

「ちょうど此処が真ん中だけど、わざわざ確保しなくても良い気はしない? 向こうは王を抜かしたら実質二人しか駒が居ない訳だし」

 

「とっとと本陣に突撃しちゃえば良いのにねー」

 

「ライザー様は何を気にしてるんだろう?」

 

「……」

 

 

 誰がどう聞いても、駒として参加する自分達ですら確信できる圧倒的な有利を前に、敵本陣を目の前にした位置であるセンター――つまり体育館を楽々と制圧した戦車と兵士三名は、本当に楽すぎる仕事を終えて完全に気が抜けていた。

 

 

「早く終わらせてライザー様と遊びたーい!」

 

「私も私も!」

 

「同意するけどライザー様は油断するなって言ってたから……」

 

「待ってても向こうはやって来ないと思うけどね」

 

 

 下手に動かしただけでも致命的になりかねない向こうとは違い、此方はフルメンバーという人手の潤沢さ。

 そもそも王を入れて三人しか居ないのにゲームを行う事自体が無謀なのに、リアス・グレモリーは余程世間知らずに聞こえてならない。

 格好も地味だし。

 

 

「なんでライザー様はあんな地味な人が良いんだろね?」

 

「言葉が過ぎるわよ、あれでもグレモリー家の方なんだから」

 

「雪蘭も大概だと思うけどねー」

 

 

 正装どころか貴族の子女とは思えなさすぎる地味な見た目をしているせいか、ライザーの眷属達にまで嘗められてたリアス。

 今双子の兵士に対して戦車が注意したものの、殆ど取り繕ってるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あーテステス、聞こえるかいリアスちゃんよ? 真ん中まで来てみたけど何人か居るね。どうする? 消すか?」

 

『そうね、此方に攻め込んで来そうに無いし、何人か倒してその気にさせてみましょう』

 

「へーい了解~」

 

 

 その直ぐ近くの外から、気の抜けた口調とは裏腹に仕事人の様な目付きで此方を伺っていた少年の気配に誰も気付かない。

 

 王であるリアスとの通信を切り、足音をさせずに背後から忍び寄っても四人とも気付かない。

 

 今リアスを軽くディスった事もちゃんと聞かれてる事すら気付けない。

 

 

「早く本陣制圧の許可……が……?」

 

 

 かつての経験、不意打ち上等。

 生き残る為には後ろ指差されようが知るかな精神を持つ事を知らない暗殺者が背後から忍び寄り、戦車の背に拳を突き入れられるその瞬間まで。

 

 肉の貫かれる様な嫌な音と血渋きが舞うその瞬間まで。

 

 

「? どうしたの雪―――――ひっ!?」

 

「な、雪蘭の胸から腕が出てきた!?」

 

「ち、違うこれは……!?」

 

 

 主の命令を聞いたつもりでも気を抜いてしまった駒達は気付けなかったのだ。

 

 

「が……あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

「雪蘭! だ、誰……」

 

「あ、アナタはリアス・グレモリーのジェネラル!?」

 

「い、何時からそこに……!?」

 

 

 背中から自分の腹部を突き抜ける何者かの腕にやられた本人が最早獣とも言える悲痛な叫び声をあげる最中、漸く気づいた残りの眷属達が完全に動揺して動けなくなりながら、仲間を後ろから貫いたのがリアスのジェネラルである事に気付いて臨戦体勢を取ろうとする。

 

 

「ぎぃぃ!?!?」

 

「ちょっとうるさいな、故障でもしてるのかこのアンプは?」

 

「うっ!?」

 

 

 だがそんな連中を前に襲撃者ことイッセーは戦車の背中を肘辺りまで貫くと、そのまま折り曲げて無理矢理顔を掴む。

 

 

「が……がぎがががっ!!!?!?」

 

「ひぃっ!?」

 

「しぇ、雪蘭が死んじゃう!!」

 

「こ、このっ!!」

 

 

 貫いた腕がそのまま顔を掴み、骨の軋む様な音をさせて潰さんとしてるのを察した兵士三人が、顔色ひとつすら変えずにゲームのルールを軽く無視してる気がしてならないリアスのジェネラルを各々攻撃して仲間を救おうとする。

 だがその三位一体の攻撃は虚を切る。

 

 

「あ、あれ?」

 

「ど、どこに……」

 

「あぁっ、雪蘭!」

 

「がふっ! ひゅー……ひゅー……」

 

 

 狐に化かされたかの様に忽然と消えたイッセーに兵士達は気を抜いたさっきまでの自分達を呪いながら辺りを見渡し、己の血で作り上げた水溜まりの上に倒れ込んだ戦車を取り敢えず助けないとと思って駆け寄ろうとしたのだが……。

 

 

「あろ!?」

 

「ひで!?」

 

「ぶっ!?」

 

 

 瞬く間に脳天を襲った衝撃に顔面から床へと叩き付けられる。

 

 

「あーテステス? 聞こえるリアスちゃん? 取り敢えず誰かは知らないけど四人程潰したよ。そっちに変化は?」

 

『無いわね。というよりまだ脱落のアナウンスが無いわ』

 

「あ、そう……じゃあこんな感じ?」

 

 

 顔を上げてその者を見る暇も無く、今度はグシャリと何かが潰された様な嫌な音が体育館内を少なくとも三度は響く。

 

 

「意外と人も悪魔も頑丈だから死にはしないだろ。まぁゲームの後に死んだら線香くらいは焚いてやるから安心しなよ」

 

「「「「…………」」」」

 

 

 ピクピクと辛うじて生きてる事を暗示させる痙攣をしながら床に伏せる四人の死に体同然の転生悪魔達を前にイッセーは通信を終わらせるのと同時に冷たく見下ろし、肘まで濡らしたその血を倒れ伏す相手眷属の服を使って拭き取る。

 

 

「チッ、めんどくせぇな、もっと拭きやすい服着てろってんだよ。つーかなんつー脆さだ。

危うく最初のこの――誰かわかんねーけど、背中貫いちゃった女を殺しちゃう所だったぜ。もっと加減しないとダメとか……ったく、殺しちゃダメなんてめんどくせールール作りやがって」

 

 

 罪の意識はない。

 敢えて思うことがあるとするならこの相手方の脆さに加減の調節がある意味高難易度過ぎるという事への愚痴。

 

 

『ラ、ライザー様の戦車・兵士三名……リタイア――っ!? い、急いで転送させます!!』

 

「いやぁ良かった良かった、アイカが居なくて。スプラッターはあんまり見せたら可哀想だもんな? ―――リアスちゃん、次の指示は?」

 

『アイカから運動場に何人か敵が見えるって報告が入ったけど―――私が一気に片付けてみようかしら?』

 

「それってゲームになるのかな……いやまぁ、手加減するのはリアスちゃんの方が遥かに上手いからそっちのほうがある意味良いんだろうけど」

 

 

 脱落を知らせるアナウンスの焦った声を背に呑気に話し合う二人。

 ほぼ惨殺に近いゲームはまだ始まったばかりだし、多くの観戦者達がこのジェネラルの不意打ちを前に微妙な顔をしていたのもどうでも良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 復縁したがる者による皮肉な繋がり。

 それは果たして吉なのか凶なのか。

 

 

「頼みがある……いやどうかお願いだ! うちの僧侶を預かって貰えないだろうか?」

 

「何故私に……」

 

「いやその……何故か俺たちに勝った筈のキミ達の評判が前より更に下がるし、ジェネラルの――兵藤だったか? お前に至っては無礼を働く賊の様な認識になってしまってるしで、なんだか俺達のせいで余計キミ達の肩身が狭くなってしまった様な気がして……」

 

「賊だってさ? 海賊王でも目指しちゃうかアイカ?」

 

「船がないわよ船が」

 

 

 仕組んだ者が意図しない縁が作られ、外から嫉妬されているのも知らずに妙な縁は続く。

 

 

「そういう訳でお兄様とリアス様による駒のトレードにより僧侶として加入させて頂くレイヴェル・フェニックスですわ。

えっとその……ジェネラルのイッセー様には『大変』お世話になりまして……」

 

「世話? 何かしたか俺? てか何故名前で呼ばれてるんだ?」

 

 

 元眷属の戦車がまた嫉妬しそうな位置に自然と入り込む火の鳥グループ。

 

 

「アナタ様――いえ、イッセー様に完膚なきまで! それこそ泣こうが喚こうが一切容赦無く投げ飛ばされたり踏みつけられたりした時、私は思いました―――あぁ、私はきっとこの方に身も心もズタズタにされる為に生まれてきだと!」

 

 

 キラキラした顔でめちゃくちゃな事を言い出す火の鳥っ娘。

 

 

「あの、兵藤? 怒らずに聞いてくれ、あのゲームの後レイヴェルはどうも――わかるだろ? で、今度時間あったらウチの実家に来られないか? 母――つまりうちのお袋がお前と直接話したいとか」

 

「はぁ?」

 

 

 リアスしか見ないので基本嫌がるイッセー。

 

 

「な、何でよ、何故よ!? 何故フェニックスが私よりリアスに近いのよ!!」

 

『…………』

 

 

 自分が仕組んだのに恨む元仲間達。

 きっと多分平和な世界なんだろう。

 

 

 

……なんて未来はない。




補足

本当は後ろから軽く小突いて気絶させようとしたら、思いの他脆くて貫き、ギャーギャー五月蝿かったからそのまま顔掴んで潰しそうになっちゃったとかそんな背景があったりなかったり。

その2
ちなみに今回の不意打ちでやられた方々は辛うじて生きてます。ギリ生きてます。

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