色々なIF集   作:超人類DX

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えーっと……ベリーハード二週目の続き。

赤と親友だったが為にちょっとアレな白


それぞれの動き

 仕方ないと何度も話し合った事だってある。

 しかしそれでも聞いてしまえばショックだった。

 

 

「リアス・グレモリーと兵藤一誠、この度は――」

 

「用件はもう聞いたわ、だからとっとと帰って頂戴。

こっちは別の件で頭の血管が切れそうなのよ」

 

「そ、それはやっぱりアナタ達は『記憶』してるという事?」

 

「ええそうね、アナタ達がどこの誰でどんな記憶を持ってようが私達には無関係だし、アナタ達には是非とも今回の騒動を片付けて貰いたい。

だからさっさと出ていきなさい、これ以上話す舌は無いわ」

 

 

 天界陣営からの使者が『記憶』を持ってる事にでは無い。

 イッセーとリアスにとってこの使者がどこの誰で何で記憶を持ってるかなんて考えるつもりも無ければ、多分イッセーにその昔殺された内の二人で転生者に与した存在なんだろうが、こんな思い入れの欠片も無い者達なんぞどうでも良い。

 重要なのはこの使者共が持ち込んだ騒動の内容の際に出てきたとある名前。

 

 

「コカビエル……」

 

 

 かつて地獄の底から這い戻り、共に復讐を果たした同志の一人の名前。

 その名前の存在が、自分達の記憶するコカビエルとは似ても似つかない行動を起こしているという事。

 

 

「そうなっている可能性があるという予想はしてたけど、まさかよりにもよってあのオッサンがそうだったなんてね」

 

 

 それが何よりも二人にとってはショックであり、自分達の『知る』コカビエルとは違う中身を持ったコカビエルの起こした今回の騒動についてイッセーとリアスは名前すらどうでも良い使者達を追い出してからずっとへこんでいた。

 

 

「そのコカビエルって堕天使と知り合いだったりするの?」

 

 

 そんな二人に対して使者の来訪からずっと口を閉じていたアイカが少し遠慮がちに尋ねる。

 今回起こった聖剣強奪騒動の首謀者の名前を聞いてからずっとこの調子で、事情を知らないアイカにしてみればそのコカビエルという堕天使が気になって仕方ない。

 

 

「親友の師匠の名前と同じなんだよ」

 

「親友……? え、二人の?」

 

「そうよ。………もう会えないけど」

 

 

 コカビエルの事は知っている。

 しかしそれはイッセーとリアスが嘗てを生きた時に這い戻ったコカビエルの事だ。

 転生者に一度は殺され、忘れ去られたモノが行き着く隔離世界にて生き延び、そこで様々な存在達との邂逅を経て帰還した間違いなく最強の堕天使。

 

 そんな男を知ってるからこそ、この世界のコカビエルの在り方にショックを隠せない。

 

 

「深くは聞かないけど、大丈夫なの? さっきの二人組に対してもイッセーは怒ってたけど……」

 

「奴等なんぞどうでも良いさ。興味も無い」

 

 

 そういえばかつて殺した面子の中に先程の悪魔祓い二人組と同じ顔をしたのが紛れていたが、今更そんな連中なぞがどうなろうが知った事ではない。

 違うコカビエルに殺されようが寧ろ記憶持ちの邪魔が消えてくれて助かるくらいだ。

 

 

「ところでお二人さん? 昨晩はお楽しみでしたね?」

 

「ん、まぁね」

 

「よくわかったわね……?」

 

「まあ、そこら辺の眼だけは自信あるので……。ていいかそんな堂々と認められると逆に何とも言えないわ……」

 

 

 

 

 コカビエルのオッサンが記憶を持ってない事自体はサーゼクスさん達を見れば簡単に予想出来た事なので別にその事に対してのショックは無い。

 問題なのは立場上この世界で生きるオッサンと戦わないといけない可能性があるという事だ。

 

 ………。恐らく俺たちの知るオッサンとは違ってこの世界のオッサン――――いや、コカビエルは弱いのかもしれない。

 けど違うと分かってても割り切れない事は多いものなんだ。

 リアスちゃんが家族や同族を一切信用してないようにな。

 

 

「この世界のヴァーリは大丈夫なのか?」

 

 

 そしてこの問題にあたって出来たもうひとつの疑問。

 それは昔俺達と一緒に生き残った友達でありライバルである男――ヴァーリ・ルシファーについてだった。

 

 コカビエルのおっさんが違う以上、俺達の知るヴァーリの性格上手を貸すだの師として付いているという事はまずあり得ないと考えても良いけど、生憎俺はこの世界のヴァーリがどんなタイプなのかを全く知らない。

 

 そもそも生きているのか、白龍皇であるのか、実力は、等々考え出したらキリなんか無くなってしまうくらい心配になってきた。

 もしこの世界のコカビエルに与していたら本気で殺し合いをしなければならないと考えるだけでも陰鬱な気分になってしまう。

 

 

「クソ野郎に愛された結果の力だとかほざいてたのと、記憶を保持してるからあの役立たず二匹の力もそれなりにある筈だから、とっとと何とか出きるもんならして貰いたいけど……」

 

 

 あのクソ野郎に与した連中は総じて力だけは持ってはいたからな。

 それでなんとか出来るならやって欲しいというか、それしか利用価値なんざありゃしない。

 ……。違うとはいえコカビエルのオッサンがあんな程度のカスにやられるとも思えないけど。

 

 

「やっぱり一人ずつ暗殺していった方が良いのかもしれない、特に鬱陶しいカスは」

 

 

 どちらにせよ、あれだけわらわらとボウフラみたいに沸いて出てくるなら消してしまった方が良いのかもしれない。

 リアスちゃんの両親に関する違和感の事もあるし……中々小難しい事ばかりだぜまったく……。

 

 

 

 

 ライザー・フェニックスの件以降、完全にリアスとの接触を厳禁されたソーナ・シトリー達は、その日訪れた悪魔祓いの二人組が記憶を持っていた事を知り、取り敢えず記憶を持つ者同士という事で合流する事にした。

 

 

「リアス・グレモリーの眷属では無いのか? だからあの時キミ達の姿が無かった訳か……」

 

「代わりに女王――男性なんで将軍位置に居るのがあの彼で、戦車には一般人だった桐生藍華という方がなってますわ」

 

「どうりで前の時は見ない子が居るなとは思ったけど……」

 

「あの人は以前の時に私の友人の方でした……」

 

 

 記憶保持者同士の会合。

 ソーナ、朱乃、小猫、アーシア、優菜改め祐斗、そしてゼノヴィアとイリナ。

 イッセーとリアスの同志との再会が無いのに、敵として回った彼等は次々とかつての記憶を保持する同志と再会出来ているというのは果たして皮肉なのか。

 この時代ではリアスの眷属ですら無い元眷属達の現状を聞いて、何を言われたのか想像できたイリナとゼノヴィアは同情的な眼差しだ。

 

 

「我々が知る時代のコカビエルは既に死んでいたが、この時代は生きている。

この事件にしても本来なら無かった事だ」

 

「ある意味そのお陰で合流は出来た訳だけど、先が読めないのは不安ね……」

 

 

 難しそうに言うイリナに全員が頷く。

 かつての世界では既に転生者により殺害されており、今回の様な騒動は起こらなかった。

 この場の全員がその前に『殺されている』のでコカビエルが異界の地から復活した事も知らないし、その後リアスと一誠の同志になっていた事も把握できていない。

 あくまで自分達を騙した転生者によって殺された堕天使のもしも生きていたらといった程度の認識であり、皮肉にも前世の記憶と経験により一上級クラスの堕天使なら何とかなると思っているせいかそこまで脅威に感じている様子は無い。

 

 

「コカビエルの事はどうとでも出来るでしょうけど、問題はリアスの事よ。

何もかも上手く行かなくて……くっ」

 

 

 寧ろこの面子達が気にするのはリアス一人であり、それはさながらストーカーの様な執着心だ。

 

 

「貴女達はリアスと接触したのでしょう? 様子はどうでした?」

 

「どうと言われても、殆ど相手にもされなかった……」

 

「常に彼女の傍に居る赤龍帝君に睨まれてたし、何も出来なかったわ……」

 

「やはり彼が鬼門ですわね……」

 

 

 コカビエルの事よりもリアスとの事についてばかりを考えてしまうソーナ達はまず一誠が鬼門という考えに一致する。

 何をしようにしてもまず番犬の様に一誠が立ちはだかる。

 一度惨殺された経験を持つからこそあの赤龍帝の異様な力はよく知ってるので強引に事を運べない。

 ましてや、神羅万象という力を持った転生者をリアスと共にとはいえ完全に殺しきったのだからその力は疑いようもない。

 

 

「取り敢えずは聖剣をどうにかしましょう。ちょうど私の眷属も居るし、全員で協力したら早く片付く筈よ」

 

「すまん、恩に着る」

 

「気にしないでください。早く片付けてリアスとの関係をどうにかしたいのは皆同じですから」

 

「そう……ね、私とゼノヴィアはあの男に言われるがままに傷付けちゃったから……」

 

 

 無意味な接触を拒絶されても尚止まらない執着の波紋は広がる。

 

 

 

 言われた通りに何もせず何時もの通りに行動しなさい。

 王のリアスのその言葉通り、教会からの使者の二人がソーナ・シトリー達と何やらやってるのを遠目に眺めつつ何時も通りのんびりとした生活を営んでいたアイカ。

 首を突っ込むだけ面倒なだけだと一誠も言ってたし、何よりソーナ達と関わるだけ嫌な予感しかしなかったのもあってアイカ的には楽な展開ではあった。

 

 はぐれ悪魔も粗方の数は一誠とリアスとで狩り尽くしてしまい、新たに侵入する輩も居ない。

 例のコカビエルなる堕天使の名前を聞いて複雑な顔をした二人が気になる以外は概ね楽しい悪魔ライフとも言えなくもないそんなある日の事だ。

 

 レトロゲームでの敗北による罰ゲームで全員分よお菓子を買いに小さな駄菓子屋に訪れたアイカは、そこで不思議な人物を目にした。

 

 

「じいさん、ガ◯ガ◯君の当たり棒だ。もう一本貰うぞ?」

 

「はいよ~」

 

 

 地元の子供達に親しまれて約80年の駄菓子屋には少しアンバランスな容姿をした、見た限り自分と然程歳の変わらない少年が店主のおじいさんにアイスの当たり棒の交換をしている。

 

 

「ガ◯ガ◯君はやはりコーラ味に限る」

 

 

 等と妙に貧乏臭い事を言いながら二本目を開ける銀髪碧眼の少年は見たところ外国人の様だが、転生悪魔による言語自動翻訳的な力のせいか、それとも元々少年の日本語流暢なのか、見事に聞き取りやすい声で◯リ◯リ君はコーラ味こそ至高と聞いたアイカは脊髄反射的に口を開いた。

 

 

「ソーダ味でしょそこは」

 

 

 別にコーラ味を否定したつもりは無いが、あまりにもコーラ味を独りで誉めちぎりながら食べてるものだからついつい口に出してしまい、聞こえたらしい少年と目があってしまった。

 

 

「ん?」

 

「あ……」

 

 

 ヤバッと口元を覆うアイカだが、やはりバッチリと聞こえた様で、深い海の様な蒼い瞳が真っ直ぐ自分を見据えてる。

 

 

「キミは……」

 

「何でも無いわ。今のは忘れて」

 

 

 変に絡まれでもしたら大変だとさっさと買うものを買っておさらばしようと少年の脇を通り過ぎるアイカだが、少年はずっとアイカの姿から目を離さない。

 

 

「全部で500円だよ」

 

「これで」

 

「ちょうどだね、ありがとうね~」

 

「…………」

 

 

 な、何故ガン見をする。そんなにコーラ味について突っ込まれたのが嫌だったのか……。と軽く溶け始めたガ◯ガ◯君の残りを一気に食べた銀髪の少年の視線を背に感じながら会計を済ませたアイカは足早に駄菓子屋を後にするのだが……。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 前を歩く自分の二メートル程後ろを少年が付いてきたのだ。

 これに怖くなったアイカは速度を上げるが……。

 

 

「………………………」

 

「………………………」

 

 

 同じく速度を上げて一定の距離を保ちながら少年は何を言うでも無くアイカをつけてくる。

 

 

「あ、あのさ……」

 

「む」

 

 

 流石にここまで露骨についてこられるのは困るので、意を決して足を止めたアイカは振り返って少年に言った。

 

 

「が、ガ◯ガ◯のコーラ味をバカにした訳じゃないし、そう聞こえたのなら謝るから無言でついてくるのはやめて欲しいのよ……」

 

 

 本気にでもなれば転生悪魔の身体能力で撒ける自信はあるが、見た目はともかく『普通の人間に感じる』彼の前でそんな真似をしたら間違いなく大変な事になる。

 故に此方に非があったと角を立てないすませ方で誤魔化そう銀髪の少年にアイカは付いてくるのはやめろと言うのだが……。

 

 

「別にガ◯ガ◯君の事でキミの後を追った訳じゃないんだ」

 

「は? じゃあ何で……」

 

「キミから懐かしい気配を感じた様な気がしてね。それが気のせいなのか本物なのか探ろうとしたんだ」

 

 

 どこか遠くを見るような目で後をつける理由を話した少年だが、アイカにしてみれば余計薄気味悪い話だった。

 

 

「……ひょっとして新手のナンパか何か?」

 

「ナンパ? 悪いが違うよ、友人から口説くならもっとストレートに行けと言われてから常に心がける様になってるんでね、だから違う」

 

「…………」

 

「まあ、キミの姿は中々いいかもしれないとは思ったが……特に腰から尻の辺りが」

 

「っ!?」

 

 

 最後をボソッと言った言葉がちゃんと聞こえてしまったアイカは反射的に自分のお尻を隠すようにおさえた。

 

 

「こんな地味な女捕まえて言う台詞にしては下手過ぎね」

 

「下手か……フッ、よく親友に言われたな。そうか――やっぱり下手か俺は……」

 

 

 少々残念そうに笑う銀髪の少年は付いてくるのをやめるつもりか、アイカに背を向ける。

 

 

「キミ、名前は?」

 

「……桐生藍華」

 

 

 思わず名前を教えてしまったアイカは少し後悔するが、言ってしまった上に銀髪の少年は覚えたらしく……。

 

 

「アイカか……。覚えたぞ、またその内会えると良いな」

 

「私はあんまり会いたくないけど……」

 

「いや会うさ……。俺の勘は結構当たるんだ」

 

 

 また会うと言い残し、軽く手を振りながら去っていった。

 

 

「何なのよ……」

 

 

 変な奴……と無意識に腰と尻に触れながらアイカは微妙な気持ちを抱きながら二人の待つ場所へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

「アルビオンも感じたろ? 彼女は転生悪魔だ」

 

『あぁ、だがあんな小娘居たか?』

 

「少なくとも俺の記憶には無い。この時代の転生悪魔なのか……まあどちらにせよ、探る価値はありそうだぞ」

 

『…………。お前にしては妙に拘るな?』

 

「この地での事だ、些細な事はちゃんと調べた方が良いだろう。決して彼女の腰と尻が魅力的だったからとかではないぞ? 自分を地味と揶揄してたが、俺はそうは思わなくて寧ろ良いじゃないかとか思ったとかも違うからな?」

 

『…………あ、おう』

 

 

 

 

 

 

「駄菓子屋さんに行った際に変なのに絡まれて……」

 

「は? 誰だ、またあのカス共か?」

 

「いえ、それとは多分違うと思う……。なんかいきなり腰とお尻を褒められながらナンパされた」

 

「何ですって? 大丈夫だったの?」

 

「何もされてませんから大丈夫です。それになにかあってもひっぱたいてやるつもりだし」

 

「…………………。腰と尻を褒めるね……まさかな」

 

 

終わり




補足

教会二人組とリアスさん達は実の所そこまで接点は無かったりですが、一誠はかつて転生者にガチガチだった二人にめっちゃ文句つけられたのでズタズタにしてやった事があったりします。

そもそもイリナとは昔馴染みですら無いというので余計にデストロイがすさまじかった。


その2
赤のせいで微妙に色々と正直な白。
果たして……

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