色々なIF集   作:超人類DX

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もしも同じじゃなかったら……


ベリーハード(ゲームオーバー手前)
ベリーハード→ゲームオーバー手前


 わかってた……あぁ、わかってたよ。

 どうせ俺は幸福なんかなれはしないなんて、クソ野郎に奪われた時からわかってた筈なんだ。

 

 それをちょっと好きな子と出会えて一緒に生きる事になってから浮かれて、両親の仇を取れた後は今度こそだなんて思ったのが間違いだった。

 

 大好きなあの子とは引き剥がされ、種族の違いなんか屁にしかならない本当の仲間とも離れ離れにされて、それでも唯一俺に残った相棒以外は全てを再び喪って……。

 

 どうせ俺なんか――

 

 

 

 

 

 

 物心を持った時から夢を見る。

 その夢は、ある男の人が全てを奪われ、その復讐の為に鍛え続け遂に復讐を果たす……というそんな夢。

 復讐後また全部を喪ってこの世から消されるという、希望もなにもない夢で、なぜこんな夢を私は見るのだろうと不思議に思うし、こんな夢の内容を周りに相談できる訳もなく、やがては積み上げた全てを壊された男に同情し始める自分が居た。

 

 というのも、その夢に出てくる男は私――いや、というよりは私の目線になっている女性に対して誰よりも優しくて、何者からも守ってくれる理想的ともいえる男だからだ。

 無論、私の事では無いのはわかってるのだけど、姉や姉に振り回される両親よりはよっぽど頼りに感じてしまう訳で……。

 

 

「何だ、声がちょっと似てるだけでガキじゃないか。

は、はは……俺もヤキが回り始めちゃったなぁ……」

 

「が、がきじゃない!」

 

 

 まさかその夢に出る男が実際に居るとは思わなかったよ。………実際の姿は凄いヤサグレてたけど。

 

 

「へ、変な事なのかもしれないけど、あなたの夢を見るんだ……。夢の中のあなたはもっと大人の姿をしてたけど」

 

「じゃあ夢のまま忘れてさっさと帰りな。どうせ俺なんか……」

 

「や、やっぱりアナタ……いやお前だったのか」

 

 

 それが幼い頃から持つ私の秘密と繋がり……。

 後に幼馴染みとなるアイツも、姉も知らない私が自ら掴んだ私だけの繋がり……。

 

 

「家から食べ物をこっそり持ってきた。その……料理はお母さんに今度習うつもりだから今は我慢して欲しい」

 

「良いから帰りなよ。乞食同然の俺に物なんて与えるなって」

 

 

 夢と同じで夢も希望も奪われて死んだ目をした、夢の中よりは大分幼い……というか私と同い年くらいの年齢にしか見えない男を、当時幼いながらに放ってはおけなかった私は、よく自宅の冷蔵庫からそのままでも食べられそうな食べ物を持ち出し、家も何もなく近所の橋の下に住みついていた男に渡しては追い返される日々。

 

 夢の中の様な力強さをまるで感じないけど、それでも心配で……幼馴染みの男によく変な目で見られもしたけどそれでもあくせくと食べ物を持っていって……。

 

 

「三秒だけやるから、俺に大人気ない真似をさせないでとっとのその子から盗ったもん置いて消えな。

消えなきゃ……」

『Boost!』

「拳骨しちまうぜ?」

 

 

 運悪く絡まれたいじめっ子から助けて貰って……。

 

 

「剣道やってるんじゃないのか? ほら、ちょっと汚れてるけど取り返したぜ? ったく、だから俺に関わるなって言ったんだ」

 

「お、お前のせいじゃない。アイツ等は何時も私を苛めるから……」

 

「へ、子供ってのは時折残酷だな」

 

 

 夢の中で赤い髪をした女の人のピンチに何時も駆けつけて守っていた姿とやっと重なって見えたり……。

 

 

「引っ越す?」

 

「姉さんが失踪したせいで政府って連中から言われたんだ、住む場所を変えろって……」

 

「ふーん?」

 

「あ、あの……だからその……お、お前も寝る場所を変える気は……」

 

「無い。仮に変えてもキミの知らない場所だし、そろそろ潮時だな。

キミ、俺に関わり過ぎだよ」

 

 

 やっと持てた繋がりを、幼馴染みの男共々切れてしまい……。

 

 

「じゃあな、もう二度と会うことも無いぜ」

 

 

 再会は約六年後まで無かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 動物園のパンダの様な気持ちにさせられ、挙げ句の果てには今日から通うことになったこの学園の担任をしてるとは思わなかった姉に、自己紹介のやり方がダメだと怒られ……。

 織斑一夏は入学早々、精神的な疲労に見舞われていた。

 とはいえ、この女子率ほぼ100パーセントのIS学園には六年振りともなる幼馴染みの箒と同じクラスだし、まだ会話も無ければ目が合えば逸らされたりもするが、一夏的にはまだ耐えられたし、何より今自分の座っている席の後ろに座る自分以外の唯一の男子の存在は仲間意識を芽生えさせるという意味で一夏にとってはとても貴重な存在だった。

 

 

「…………………はぁ」

 

 

 まぁ、その自分以外唯一の男子の目と表情は完全に死んで、事あるごとにため息ばかりで、さっきも姉で担任の千冬から自分以上に駄目すぎた自己紹介で怒られてた訳だけど。

 

 

(にしても、話しかけるタイミングを図ってて気付かなかったが、向こうの席に居る箒は俺じゃなくて後ろの奴ばっかり気にしてるのはなんでだ? まさか知り合い?)

 

 

 そんな中、自身への好意以外はわりと鋭い一夏は、窓際の席に座る六年振りの幼馴染みの少女の視線が、死んだ顔状態でピクリとも動かないもう一人の男子の方ばかり気にしてる事に気が付いた。

 その視線は忙しく、チラチラと男の方を気にしては一夏と目が合って逸らすの繰り返しで、男の方は全く気づいてる様子も無さげなのだが、もしこの男と知り合いなら、箒の幼馴染みという流れで自分も仲良くなれるのではないかと、然り気無く考えた一夏。

 どちらにせよ、この息が詰まりそうな学園内での唯一の同性な訳だし、仲良くすることは絶対にマイナスじゃない。

 

 だからこそ今一度後ろの席の男子に話しかけてみようと思い切って後ろを向こうとした一夏なのだが……。

 

 

「あ、箒……」

 

「…………」

 

 

 振り向きのタイミングとドンピシャに、いつの間にか席を立っていた箒が、周囲の女子たちの視線を一点に受けながら目の前に立っており、話しかけるタイミングを完全に逃がした。

 

 

「…………」

 

 

 しかも箒の視線は死んだ顔のまんま微動だにしない男の方へと一点しており、これまた思わず箒にも声を掛けるタイミングを逃して交互に二人の姿を見つめていると。

 

 

「ちょ……ちょっと良いか?」

 

 

 コホンと、軽く咳払いをしながら箒が無言無動の男子に話しかけた。

 若干周囲の女子たちから黄色い声が出たような気がした。

 

 

「……………………………」

 

 

 が、男子の方は箒を一瞥する事すら無く返事もしない。

 

 

「っ! 立て! そして来い!」

 

 

 軽く無視された事にちょっと声強めにその男子を無理矢理立たせた箒はそのまま引きずる様に教室を出る。

 

 

「……………え、俺は?」

 

 

 そして軽くスルーされた一夏君は一人ポツンと呟いたのだった。

 

 

 

 

 

「す、すまない! 無理矢理連れ出す様な真似をして……」

 

 

 さて、そんな箒はといえば、半ば強引にかつての頃よりも更に大分死んだ目になってる男子を屋上まで連れ出すと、先程までの強引さは何処へやら、急に弱気な表情でその男子に謝り出す。

 

 

「ああでもしないと話もできないと思ったから……」

 

「………………」

 

 

 二度と会うこともないという言葉通り、あれから完全に消息が掴めなくなってからのまさかの再会。

 無論、教室に居る一夏とも久々なる再会で間違いないのだけど、箒にとってこの目の前の青年となった男……イッセーという男との再会は何よりも願っていた事だし、こうして自分よりも背が高くなって体つきも夢に見た全盛期の頃と何ら変わらない事を認識してやっと安心できたのが大きいのだ。

 

 

「しかし驚いたぞ、一夏の後直ぐにお前がISを起動させたとニュースに出た時は。一体全体何があってISに触れる機会があったんだ?」

 

「……………」

 

「あ、もしかして一夏が起動したという報道後に行われたテストか? 確か参加者には商品券が貰えると聞いたが……」

 

「…………………」

 

「それで起動させてしまったのは、何というかツイてないのかもしれない。

しかし私は寧ろありがたかったぞ? お陰でやっと影も形も見えなかったお前と再会できたわけだしな!」

 

 

 はっはっはっ! と笑う箒。

 基本的に返答が少ないのは初めて出会って別れるまでの間に嫌というほど経験してるので、ある意味平気だったし、こうして一方的に話ができるだけでも懐かしさが込み上げてきて嬉しい。

 

 

「ちゃんと食べてるのか? お前はその……食べずとも餓える事は無いとは知ってるけど、やはり人間は食べないと。あ、聞いてくれイッセー、私はこの六年で料理の腕をかなり磨いたぞ? だから昔と違ってちゃんと作って――――」

 

「……………………。彼は良いのかよ?」

 

「へ?」

 

 

 あれこれと無反応なイッセーに、とてもニコニコしながら話続けていた箒が、ここでやっと声を出したイッセーにキョトンとした顔をする。

 

 

「だから彼だよ彼、織斑君だったか? 引っ越して別れた幼馴染みなんだろ?」

 

 

 どうやら教室においてけぼりにされた一夏と再会を喜べよと言いたいイッセー。

 しかし箒の表情は『それが?』といったものだった。

 

 

「一夏の場合は性格が変わってなければ友達も多いだろうし、今更六年も会わなかった私の事なんて大して思入れも無いだろ。

それに幼馴染みという括りなら私にとってお前もそうだし、何よりこう言ってしまうと失礼かもしれないが……友達は居ないんだろ?」

 

「………………」

 

 

 居ないのでは無く意図的に誰かと深く関わるのをかつて二度も味あわされた喪失により辞めたといった方が正しいイッセーの返答とはしないものの否定はしなかった。

 

 

「まあ、私もこんなだからまともな友人は居ない。

ふふん、お揃いだなイッセー?」

 

「…………」

 

『いや、そこは誇れる所じゃないだろ……』

 

「む、その声はドライグか? 確かに偉そうに言える事じゃあないな、ははは……」

 

 

 思わず突っ込んでしまったドライグの声が聞こえたのか、箒は照れ臭そうに笑う。

 

 

「俺の事はどうでも良いし、別に仲良くするつもりも無いから、さっさと織斑君と再会してこいよ」

 

「ん? 言われなくてもそのつもりだ。しかしさっきも言ったが、そうやって突き離そうとしても無駄だからな? 私とてあの時の様な無力じゃないし、お前の内面を知ってから自分なりの答えを出した。そういう意味でもお揃いだ」

 

「…………」

 

「それよりそろそろ戻ろう。あ、明日から弁当を作るから楽しみにしてろよ?」

 

『………。ずいぶんと強かになったな、リアスに似た声のこの小娘は』

 

 

 生きる意味を完全に見失ってるままのイッセーが唯一ほんの少しだけ関わってしまった事で変化した少女に、ドライグは小さく呟いた。

 

 

 篠ノ之箒

 復讐の果てに相棒以外の全てを喪って再起する気も完全に無くして世界から消された龍帝と知り合う事で変化した少女。

 

備考……正心翔銘

 

 

「篠ノ之、それから兵藤、遅刻だ馬鹿者」

 

「いた!? す、すいません……」

 

「………」

 

「ほ、ほらイッセーも謝るんだ!」

 

「………申し訳ございません」

 

「すいません先生、態度の悪さは私が何とかやめさせますので今回だけは何卒!」

 

「あ、う、うむ……。(出席簿がひしゃげてしまったぞ……)」

 

 

 その2イッセーにだけ世話焼きさんが発動する。

 

 

「な、なぁ箒……だよな?」

 

「む? ああ、久し振りだな一夏? 元気そうじゃないか」

 

「お、おうお陰さまでな。えっとそれより兵藤とはどんな――」

 

「あ、ちょっと待ってくれイッセー! 部屋に戻るなら私も一緒に行くぞ! …………って、すまん一夏、もう一度言って貰えるか?」

 

「いや……まさか部屋とか一緒なのか?」

 

「あぁ、そうだ。てっきりお前とイッセーが同室だと思ったのだがな。まぁ私にとっては色々と都合は良いけど、お前は誰と同室なんだ?」

 

「俺はその四組の女子で……」

 

「そうか、私が言えた事じゃないが、無神経な事を言ったりして怒らせるなよ?」

 

「お、おう……。(もう早速嫌われたよ箒……)」

 

 

 その3・精神が進化したせいか暴力系ではない。

 

 

「イッセー、弁当だぞ。味は保証する、というかお前に食べさせる為にこの六年勉強した」

 

「…………」

 

「ほ、箒~? お、俺にはないの?」

 

「一夏さん! わ、私でよければお作りしますわ!」

 

「む! 私が作るわ!」

 

「え!? い、いや俺は……」

 

「ふむ、二人からも作って貰えるのだから良いじゃないか。

さてイッセー、どうだ?」

 

「…………」

 

「そうか不味くはないんだな? ふふ……よし、あーんしろ、私が食わせてやるぞ!」

 

「なっ!? お、おい箒!? それは――」

 

「良いよ一人で食う」

 

「何だ恥ずかしいのか? それならしょうがない、よしよし……」

 

「ちっ、ガキの分際で鬱陶しい……」

 

「私から見たらお前も子供さ」

 

「ほ、箒が兵藤の頭撫でてる……」

 

 

その4・強い(確信)

 

 

終わり




補足

メンタルがすさまじい方向に突き進み、皮肉にもリアスさんとまんま同じ特性に至ったのでイッセーは割りと半泣き。

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