色々なIF集   作:超人類DX

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乗せられるという悪癖……ちくしょう。


ジレンマ

 かつて安心院なじみがそうであった様に、別世界に閉じ込められたイッセー。

 どれだけ強引にちょっとしたニュースになるくらいの災害を撒き散らしながら次元を抉じ開けても、戻ってくる世界は元の世界では無く、悪魔も神も空想と化している世界。

 

 無論この世界に留まり続ける気なぞ無いし、さっさと出ていきたい気持ちは強い。

 しかし出て行きたいのにそれが出来ない。

 

 いくら進化の壁を乗り越えても、見えない牢獄を破壊できない。

 

 

「………」

 

『こんな朝早くから起きて、リアスから会得した滅びの魔力を放出させながら何をしている?』

 

「もしかしたらこの世界に仲間が居るかなと思ってね。

こうしたら俺の気配を察知してくれるかもしれないだろ? ……………6年以上誰も来ないけど」

 

『この世界にリアス達は居ない。それはお前だってわかってるだろう?』

 

「分かってても、無意味でもやってないと気持ちが落ちてしまうんだよドライグ。三年前くらいから進化の壁を乗り越えられなくなってるしな……」

 

 

 加えて無限に進化し続けられた自分が突然巨大過ぎる壁に直面し、進化が不可能になってしまっている。

 これでゴリ押しすら封じられたも同然……今イッセーは完全に袋小路に陥ってしまっている。

 

 

「ちくしょう、逢いたい……キミに逢いたいよリアスちゃん……」

 

『………』

 

 

 その現実がイッセーの精神性を静かに削っていく。

 ベリーハードな人生だったけど、リアスが――仲間が居たからハード等とは思わなかったのに、これではハードを越えてゲームオーバーの瀬戸際。

 誰も自分の気配を察知してくれない――その現実がイッセーを潰していくのを相棒のドライグでもどうする事は出来ず、両手で顔を覆いながら踞るイッセーに言葉が見つからなかった。

 

 何せリアスに逢えないだけでは無く、この世界は容姿も種族も違えど、驚く程にリアスの中身に酷似した少女が今近くに居るのだ。

 それが余計に……本人は寧ろ好意的だからこそイッセーの精神を潰していく。

 

 

『箒とかいう小娘は……』

 

「やめろ!! その名前を出すな!! わかってんだよ俺だって! あの子に悪気なんてありはしねぇ!! けど……けど……ちくしょうが!!!」

 

 

 リアスに似た声、夢でリアスと自分を見た影響なのか、リアスとほぼ同じ特性の精神性。

 

 

正心翔銘(オールコンプリート)まで持ったなんて……。ちくしょう、どうせならキレやすい小娘だったら半殺しにしてでもスキルを殺してやったのに……!」

 

 

 視た、触れた、感じた、その全てを任意に学習して問答無用に会得する異常性・正心翔銘(オールコンプリート)は、安心院なじみに命名されたイッセーの持つ無神臓(インフィニットヒーロー)と互いに無いものを補い合うかの如く相性が良すぎた。

 だからこそイッセーは悪魔でグレモリー――いやバアルとは全くの無縁だったのに滅びの魔力の特性を手に入れられ、逆にリアスはイッセーの無限進化の特性を学習してその進化の横を走れた。

 

 運命の出会い言葉があるならまさに二人はそな言葉通りであり、その特性があろうと無かろうと二人は惹かれ合っていた。

 だからこそこの喪失感は並大抵の事ではない……。

 

 

『わかってると思うが、リアスの代用品だなんて思うなよ。

人間じゃない俺が言うのも滑稽だが、いくら性質が同じだからとあの小娘は……』

 

「言われなくてもわかってる……。

……そろそろ部屋に戻ろう……」

 

 

 その心が進化を阻むと端的に見抜いているドライグの言葉に頷きながら覚束無い足取りで立ち上がったイッセーは、興味も無いのに起動させてしまったという理由で入学する事になってしまったIS学園の寮部屋……同室の箒がまだ寝てるだろう部屋に戻るのだった。

 

 

「こんな朝早く起きて窓から部屋を飛び出してどうしたんだ? 修行って奴か? 私も見習わないとな」

 

「………」

 

 

 長い黒髪を後ろで、ほんの気まぐれで当時苛めっ子から奪い返してやった緑色のリボンで束ねている少女……性格とかでは無くリアスに中身が酷似しすぎている箒という少女は、朝日も昇らない時間から部屋を飛び出していったイッセーをどうやら寝ずに待っていたらしく、凄い何とも言えない顔で部屋の前に立ち尽くしていたイッセーの後ろに回って背中を押し、中へと入れる。

 

 

「寝てないのかキミは……?」

 

「お前が修行してるのに私だけ寝るわけにはいかないだろ? 本当は付いていって見てほしかったが、今の私の力では邪魔になるから、ここで出来る基礎トレーニングをしていた」

 

「……………」

 

 

 ホテルみたいな部屋に備えられていた椅子に座らせ、用意でもしていたのか入れたてのお茶を出しながら、箒はイッセーとの実力の差を考慮した発言をする。

 この時点でイッセーは努めて素っ気ない態度を取ろうとしているが、内心は見えない細剣で心を切られてる気持ちだ。

 

 かつて逃げ出した所をフェニックスに捕まりかけていた所を無理矢理助け出し、洞窟みたいな場所で共に暮らし始めて暫くした頃リアスがイッセーに言ったのと同じだったのだ。

 

 

「? 何か変な事でも言ったのか私は?」

 

「……いや」

 

 

 悪気は無いのは、自分の表情で何かを察知した箒を見ればわかる。

 だがその悪気無き言葉がイッセーの精神を削り取る。

だから6年前箒の前から強引に逃げ出したのだから。

 

 

「ところでイッセー、その……もし嫌じゃないなら今日授業が終わったら腕を見てくれないか?」

 

「は……?」

 

「勿論剣道という意味じゃないぞ? 自分なりに実践的な剣をお前が居なくなってから鍛えてな……。お前にどれくらい近づけてるか確かめたいんだ」

 

「…………っ」

 

 

 断られるとは分かってても、不安そうな表情でそう言ってきた箒から思わず目を逸らしてしまう。

 似てないのに何故かリアスの影が出てきてしまう……それが酷く辛い。

 

 

「剣なんて俺は使わないぞ……」

 

「わかってる、これは所詮私の単なる我儘だからな。それに今回は素手で挑んでみるつもりだ」

 

「わ……かったよ。見るだけならな……」

 

「本当か!!」

 

 

 ハッとした時には遅く、自然と引き受けてしまったイッセーは、とても嬉しそうにしている箒を見て何とも言えない気持ちになる。

 

 

『イッセー……』

 

「うるさい、違う、違う……だって断る理由なんかないだろ……」

 

『別に文句を言ってる訳じゃないぞ俺は……』

 

「ハァ……」

 

 

 

 

 そんなこんなでますます機嫌がよくなった箒に連れられる形で朝食を済ませ、二日後に決まったらしい一夏とセシリアのクラス代表を賭けた試合について担任の千冬から各々説明が入る事になった訳だが……。

 

 

「織斑には専用機が出る」

 

「え……専用機?」

 

 

 どうやら一夏に専用機が渡されるらしい。

 クラスがざわめく中本人だけが専用機を配備される意味をわからず首を傾げてる中、その後ろの席でカリカリと授業の予習のノートをとっているイッセーに千冬が口を開く。

 

 

「ちなみに兵藤、お前は織斑よりも更に急遽発見された男性操縦者の為、専用機を持たせるか政府で検討中との事だ」

 

「……」

 

 

 千冬の言葉にノートにペンを走らせていたイッセーの手が止まる。

 

 

「検討するくらいなら要らないとでも言って貰えますかね?」

 

「何故だ?」

 

「持ったところで宝の持ち腐れにしかならないでしょうし、何より聞けば俺の操縦センスは無いんでしょう?」

 

 

 淡々と要らないと言って再びペンを走らせるイッセーの言葉にどういう事だとクラス中が首を傾げる。

 

 

「ここで言うことでは無いが、確かに入試テストの際お前は起動させる事は出来たが操縦が出来ずに自爆していたが、それは訓練次第でどうにでもなる筈だ」

 

 

 なるほど、とクラスの女子達が納得する中イッセーは内心担任の言葉に苦笑いをする。

 訓練とかでは無く、根本的にあのパワード・スーツとの相性が……いや性能差がありすぎて挙動がおかしくなるのだから、パワード・スーツの性能が自分に追い付かなければこの先何機も潰してしまうのは目に見えていた。

 

 

「あらあら、私と戦う前からそんな情けない事を。これだから男は……」

 

「俺じゃなくて戦うのは織斑君だろ? 聞けばテストで教師を倒したらしいしな」

 

「え、俺の場合倒したってよりは……」

 

「ふん! 貴方みたいな弱腰男に言われなくてもわかってますわ!!」

 

 

 ここぞとばかりにセシリアが挑発するが、相手にせず素っ気なく、然り気無く一夏に振る。

 こんな起動できてしまったやる気も無いやつより、やる気のある女子にひとつ枠を開けてやれば良かったんだと自虐するのも忘れない。

 

 

「ともかくお前の意見については政府に報告するつもりだが、その結果配備されても拒否は出来ん、わかったか?」

 

「……了解しました先生殿」

 

 

 受理されて受け取って起動五秒で全力で動こうとしたらオーバーヒートして即廃棄だろうよ……と内心笑いながらおどけた様に返事をしてみせたイッセーだった。

 

 そしてそんなイッセーを横目に専用機を受けとる事になった一夏はといえば、このままでは負けてセシリアの小間使いにされてしまうと思い、この中で頼れそうなクラスメートに教えて貰おうとサーチした結果……。

 

 

「頼むぜ箒、ISについて教えてくれないか?」

 

「私がか……?」

 

「あぁ、頼れるのは箒しかいないんだ」

 

 

 6年振りの幼馴染みの箒に頼む事にした。

 いきなりの懇願に少々驚く箒だが、他ならない一夏のからの頼みなので取り敢えず引き受ける。

 

 

「別に良いが、私もISの操縦に強い訳じゃないぞ? 寧ろ上の学年の人に頼んだ方が……」

 

「箒じゃないとダメだ! 深いところまで気楽に聞けないし!」

 

「そ、そうか……」

 

 

 知らん顔して横でボーッとしているイッセーにはまず言われないだろうな……と思いつつ熱意のある一夏に圧されて頷いた箒。

 

 

「ならば放課後になったら剣道場に来い。まずは腕を確かめてやる」

 

 

 そういえば裸を見てしまった同室の女子とは和解したのか? と疑問に思いつつ放課後に剣道場へと来いと告げた箒は、勝手にやってろなスタンスのイッセーにも勿論同じことを言う。

 

 

「イッセーもだからな?」

 

「は? なんで俺が……」

 

「朝の約束だよ。一夏も構わないだろ?」

 

「おう、ていうか兵藤もやってたのか剣道?」

 

「俺はやってない……」

 

 

 徒手空拳ならびに滅びの魔力、修羅のエネルギー等々を倍加させて戦う剣とは無縁な戦い方のイッセーが付き合ったところで寧ろ邪魔にしかならないのだが、箒はもちろんとして、一夏まで剣道なんてやってないと言ってるにも関わらず変に期待を込めた眼差しを向けるせいで結局これにも付き合わせる事になってしまったイッセーは、内に宿るドライグからかるく笑われるのだった。

 

 

 

 

「面!!」

 

「銅!!」

 

「小手!!」

 

 

 そしてあれよあれよと放課後を迎え、剣道場にて一夏と箒が軽い試合を行ったのだが……。

 

 

「やはり身体の動きを見ていてわかったが、別れてから剣道はやらなかったな?」

 

 

 フルで一夏はボロ負けであり、防具を外した箒の指摘に何故かしたり顔で頷く。

 

 

「おう、中学の時は全部帰宅部だったぜ?」

 

「そうか……まぁお前の家庭事情を考えると仕方ないが」

 

 

 両親が居ない中、姉の千冬と二人で生きてきた事を考えたら、中学時代は家事に追われて部活どころじゃないだろうと理解を示す箒。

 

 

「あれ、怒らないのか?」

 

「何故怒る必要がある? 遊び呆けていたのなら怒ったかもしれないが、そうじゃないんだろ?」

 

「お、おう……てっきり『弛んでる!!』と怒鳴り散らされるのかと……」

 

「言わんよそんな事は。ただ、このままだとオルコットに試合で勝つのはかなり難しいぞ? 二日後というタイムリミットもあるし……」

 

 

 思っていたのと反応が違うことにどうやら勝手に戸惑っている様だが、それよりも現状のままではマズイ。

 訓練機を借りるにも上の学年を優先されてしまうので今から申請しても通るとは思えないし、なにより一夏とイッセーの動向が気になるのか、女子達の目線が一夏の集中力を削いでしまう。

 

 

「取り敢えず考える前に……イッセー」

 

 

 頼られたのならそれになるべく応えてやりたいが、その前に今朝の約束をここでして貰おうと、防具を外してヘトヘトの一夏が息を切らしている所にイッセーを呼び寄せる。

 

 

「こんな場で悪いが、良いか?」

 

「別に構わないが」

 

「ちょ、お前等防具は!?」

 

 

 竹刀その場に置いて拳を握って構え、脱力した佇まいで立つイッセーの両方が防具を付けていない。

 それでは危険だと一夏やぞろぞろと集まっていた女子達は二人に声を掛けようとしたが……。

 

 

「はっ!!」

 

 

 少し離れていた筈の箒の姿が一瞬にして消え、イッセーの顎に拳を繰り出す。

 

 

「は、速い……!?」

 

「い、今篠ノ之さんが消えなかった?」

 

「気付いた時には兵藤くんの目の前に現れてた様な……」

 

「でも兵藤君も篠ノ之さんの手を掴んでる……」

 

 

 その動きは『普通』では捉えられず、またその速度に見ていた者達を一夏含めて驚愕させる中、初擊を見事に防がれた箒は寧ろ嬉しそうに微笑む。

 

 

「我流……いや、夢で見た戦いかたを参考にさせて貰ったぞイッセー」

 

「…………ちっ」

 

 

 掴んだ手を離し、箒から距離を取るイッセーは小さく舌打ちする。

 夢で見ただけで、戦闘スタイルを真似るのはまさに正心翔銘の真骨頂のひとつ。

 しかしイッセーが思ったのはそれだけでは無い……。

 

 

「ギアを上げるぞイッセー!!」

 

「っ!」

 

 

 思っていた以上に粗削りながら箒の力が此方側に侵入している事……そして何よりその動きがリアスの戦闘スタイルに似ている。

 攻撃自体はまだ軽すぎるが、動きはまさにリアスそのもの……。

 

 

『おい、見とれてないで相手をしてやれよ』

 

「見とれてなんかねぇよ!!」

 

 

 ドライグの図星に思わずカッとなるイッセーは袴の隙間から覗かせた脚の一撃を捌き続ける。

 

 

「す、すっげー……漫画みたい」

 

 

 そのやり取りはまさに漫画やらアニメみたいであり、さっきの試合は完全に手加減されていたと思いしる内容だったと一夏は少し悔しげにイッセーを見た。

 

 

「やぁぁっ!!」

 

 

 何百とわからない肉体と肉体の鈍い衝突音にそろそろ周囲がドン引きし始めた頃、ほんの一瞬バランスを崩したイッセーにチャンスと思って箒は正拳を突きだした。

 

 

「軽い」

 

「うっ!?」

 

 

 だがその一撃はイッセーのダメージにはならず、真正面から受けても平然とした顔をしたままダメだしまでされると、手首と胸ぐらを掴まれ、足を引っ掛けて押し倒された。

 

 

「終わりだ」

 

「や、やっぱりパワーが足りなかったか……」

 

 

 背中を打ち付けられた衝撃によるものなのか、フラフラと足で何とか立ち上がる箒は悔しげながらも嬉しそうに自身の反省点を見出だし、付き合ってくれたイッセーにお礼を言う。

 

 

「ありがとうイッセー、わざわざ付き合ってくれて」

 

「……」

 

「これで新たな課題が……っとと……は、はは……一撃だけでこのザマだよ私は……」

 

「……」

 

 

 脚に力が入らず、そのまま尻餅を付くように座り込んだ箒は自嘲気味に笑う。

 既になんとも言えない空気が一夏や見に来ていた女子達から流れてるものの、決してネガティブなものでは無さそうでイッセーは内心安心しつつ、つい自然と手を差し出してしまう。

 

 

「あ……」

 

 

 しまった、つい……と気付いたものの、引っ込めたらそれはそれで後味が悪いのでそのまま目を丸くする箒に手を差し出したままにしていると、意図を理解し、やがて嬉しそうに微笑み、その手を取る。

 

 

「ありがとうイッセー……ふふ」

 

「チッ……」

 

「だがまだ足に上手く力が入らないんだ。良かったら肩も貸して欲しいな?」

 

「な……………くっ! おい織斑君!!」

 

「へ? お、おう!」

 

「反対側から肩を貸してやれ! 取り敢えず部屋で例の試合の対策とやらの話をしよう!」

 

「わ、わかった!」

 

 

 急いで箒に肩を貸す一夏。

 一人で貸さないのは単なる意地なのか……何とも言えない顔をするしかできないイッセーにしかそれはわからない。

 そして……。

 

 

「さぁてと、大事な妹のあられもない姿を見た男子君に何て言ってやろうかしら?」

 

 

 とある女子が一夏にターゲットオンしていたとは知らないまま。

 

 

「ところで一夏は裸を見てしまったその女子とは和解したのか?」

 

「うっ……い、いや、全く口すら聞いてくれないんだよ。

何だか元々嫌われてる感じだったし」

 

「見た以外で何かしたのではないか? イッセーはどう思う?」

 

「どうって言われてもな……」

 

「お陰で部屋に戻りづらい……な、なぁ二人とも、よかったらちょくちょく泊まらせても……」

 

「構わないけど、それじゃあますますその女子が怒るんじゃないか? その前に和解しろ和解を」

 

「だ、だよなぁ……ハァ」

 

「というか、織斑君の試合の対策はよ?」

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーと部屋が同じである箒はイッセーがベッドに寝ず壁を背にシーツにくるまって眠るのを知る。

 それが癖である事……そしてリアスとで無ければ横になって眠れない事を知っている。

 

 

「う……うぅ……お、置いて行かないで……」

 

 

 そして悪夢に魘されている事も。

 

 

「ずっと同じ悪夢を見ているのかイッセーは……」

 

『この世界に転生の神に閉じ込められてからずっとこうだ』

 

「そうなのか……」

 

 

 魘されて起きる気配が無いイッセーの左腕に籠手として出現したドライグの言葉に、箒は自分では何も出来ない事もあって悔しげに俯く。

 

 

「どうしてその神とやらはイッセーと……その、リアス・グレモリーを引き離したんだ」

 

『単純にカスの嫌がらせと、精神的に潰すか、殺してやった際の嫌がらせだろう。最後までムカつく神だった』

 

 

 せめてリアス・グレモリーと一緒に閉じ込められていたらこんな姿にもならなかったのに……と思う箒は辛そうに魘されるイッセーのとなりに座る。

 

 

「こんな事をしても意味は無いと思うが……」

 

『だろうな』

 

 

 正直にハッキリ言うドライグに箒はちょっと傷付く。

 だがそれは前口上だったらしく、次にドライグはこんな事を言い始めた。

 

 

『お前、リアスと同じことをイッセーにしてみろ』

 

「は?」

 

 

 渋い声の赤い龍の言葉に目を丸くする箒。

 

 

『リアスの代わりにすらならんとは思ってるが、無いよりはマシだ。

もっとも、お前が嫌なら別にやらんで良いが』

 

「ま、待て! ……どうすれば良い?」

 

『簡単だ、イッセーのくるまってるシーツに入ってそのまま抱いてろ』

 

「な……! い、いきなりの難易度だなそれは。

こ、心の準備が……」

 

『じゃあ無理だ。そのまま魘させてろ』

 

「! や、やる!」

 

 

 元々まともに触れ合った事なんて一回か二回ぐらいしかないのにこのいきなりの髙難易度。

 年頃に成長した箒にしてみれば緊張するのも無理は無いが、どこか素っ気ない言い方のドライグに焦ってしまった箒は、言われた通りバクバクと鳴り響く心臓の音を耳にそっとくるまうシーツに触れ、そのまま入り込む。

 

 

「こ、こんな感じか?」

 

『多分な。もっとも初めての頃はリアスが抱かれていた訳だが』

 

「そ、そうなのか? 夢といっても断片的だから詳しくは知らなかったぞ……」

 

 

 経験が無いので、取り敢えずイッセーの首に腕や背中に腕を回して抱いてみる箒。

 既に心臓がバクバクだが、割りと悪くないかもしれない……なんて思いながら十数分程魘されているイッセーの背中を叩いていると、やがて規則的な寝息に変わっていった。

 

 

「落ち着いた……のか?」

 

『なるほどな……』

 

「何がなるほどなんだ……?」

 

『いや……』

 

 

 苦しそうな寝顔から普通に戻ったイッセーにドライグが皮肉っぽく呟き、そのまま何も言わず奥へと引っ込む。

 そしてそのまま眠るイッセーを胸で抱いていた箒もやがて眠くなり目を閉じ……。

 

 

「っ……い、いっせー……そ、そんな強く掴まれると変な気持ちになるからぁ……!」

 

「かー……くー……」

 

 

 れる訳が無く、何かされてそれどころじゃなかったとか。

 

 

「い、いや我慢するぞ私は。イッセーの為だからな……! た、ただ……これは所謂焦らしという奴だよな……うぅ……」

 

 

 それでもイッセーの為に我慢という道を選ぶ辺りは、箒の心は広すぎるのもしれないし……。

 

 

「どぅわ!?!?」

 

「ん……あ、いっせーか? もう朝なのか……」

 

「朝なのかじゃない! な、何で……!?」

 

「いや、魘されて辛そうだから、何か出来ないからなって思ってな……大丈夫か?」

 

「お、俺は別に……き、キミは自分が何をしたのかわかってて――」

 

「そこまで子供じゃないぞもう。わかってた上でイッセーだからしたまでだ。あぁ気にしなくても良いよ、完全な自己満足だからな」

 

「………………」

 

 

 逆にイッセーはその善意に泣きそうになったのだとか。




補足

リーアたんからイッセーへ、そしてイッセーからもし箒ちゃまに滅びの魔力が継承されたらいよいよ精神が壊れるかもしれへん……。


その2
とはいえ、本来の性格故かあまり突き放せなくなってるイッセーくん。


その3
パワーはともかく身体能力は我流ながら物凄い事になってる箒ちゃま。
そして暴力系じゃないので一夏きゅんが帰宅部でも別に怒らない。

その4
一夏くんの背後があぶねぇ!! 眼鏡っ娘の裸を見た代償が……!


その5
ドライグさん、箒ちゃまを乗せる。
てのは、あまりにもイッセーが見てられないのと、人では無いからこそ箒ちゃまも気持ちを知ってるからですかね。

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