ミリキャス・グレモリーは変わり果てた母親に捨てられた。
叔母のリアスの眷属として冥界に現れたとある男の放つ何かにより、父であるサーゼクス共々捨てられた。
その男の出現により、徐々に母の自分への愛情が消えていき、叔母は大罪人にでっち上げられ、祖父も祖母もその男の言う事全てを何故か信じた。
いや、そればかりかミリキャスの性別が女である事を知った時、今にして思えばその男が転生者であるからこそのリアクションだったのかもしれないけど、その男は事もあろうことかミリキャスに対して下劣めいた視線を送ったこともあった。
叔母を陥れ、母を奪い、挙げ句の果てに自分の身を狙うという三連続コンボがある時点でミリキャスにはその男に対して嫌悪しかない。
後に叔母はとある人間の少年に救われて立ち直り、見事報復を完了させたのだが、最後まで母は自分と父の元へと戻ることはなかった。
ある程度今では吹っ切れたとはいえ、あの時母から『この邪魔な子供さえいなければ』という目をされた時の恐怖は忘れられない。
父と共に報復の為に集まった本当の仲間達と今を生きても、ミリキャスの中には根深いトラウマとして残っているのだ。
世界が変わろうとも……。
オラリオという都市が存在する人間界に近い異界で生きる事になってから暫く経つ今日この頃。
仲間達と共に遮二無二走り続けた結果、この異界の地にとって自分達の力はあまりにも強力過ぎると、自分達に親切な女神・ヘスティアに教えられたので、ある程度力をセーブする事にしている。
勿論その強力すぎる力を持つ一人であるミリキャスもまた仲間と共に進化し続けた領域をセーブし、あくまで子供にしてはちょっと強すぎる力を持つ女の子程度に留めているのだが、どうもそのミリキャスに対して――言ってしまえば惚れてしまっているちょうど同年代の男の子が居た。
「ね、ねぇミリキャス、一緒にダンジョンに潜らない?」
白髪で赤い瞳。
まるでウサギを思わせるあどけなさを残す少年ベル。
進化を決意した際、母ではなく叔母の様な女性を目指して伸ばした赤い髪と両親譲りの力と美しい容姿を持つミリキャスに助けられた時に惹かれたらしく、ヘスティア・ファミリアのホームにて声を掛けられたミリキャスは、緊張した面持ちでダンジョンへの誘いをしてきたベルに首を傾げながらも頷く。
「良いよ別に」
「ほ、ホント!? じゃあすぐに用意するから待っててね!!」
少々異性からの好意に疎いミリキャスはこれでもかと嬉しそうに準備すると部屋に走っていったベルを見送りながら『元気だな……』とぼんやりと思うのと同時に、どうせならイッセー兄様とかもっと強い人を誘えば色々と為になるんじゃないのかな……と考えつつダンジョンに潜る準備をする。
「へぇ、ベル君がミリキャスにねぇ……。へー?」
「サーゼクスさん、ひょっとしなくても若干怒ってます?」
「いーや別にー? 未熟な小僧ごときにうちの娘はやらんとかそんな事考えてないぜー?」
「怒ってるじゃないかサーゼクス君……」
そのやり取りを父と義兄と女神にしてはあまり女神らしくない人に見られていたとは気づかずに。
殆どデート的な意味合いで誘う事に成功したベルはウッキウキな気分でミリキャスと共にギルドに行く。
「~♪」
「今日は何時にも増して楽しそうだね?」
「え? だってミリキャスと一緒にダンジョンに行けるんだもん……!」
「? 僕じゃなくてイッセー兄様とかヴァーリ兄様とかと行った方が楽しいんじゃないかな?」
「そうじゃなくて! み、ミリキャスとだから楽しいんだよ……」
「??? ふーん……」
計算もなく可愛らしく首を傾げる姿が愛らしいミリキャスにベルはドキドキしっぱなしだ。
あのバグ面子の中ではミリキャスが一番多くダンジョン世界を体験してるのだが、その理由はベルが頻繁に隙あらば誘う為であり、ギルドの受け付け嬢にもその顔は知られていた。
「おはようございますエイナさん!」
「ベル君……と、ミリキャスちゃん」
「……おはようございます」
無邪気に挨拶をするベルと淡々と皮肉にも母・グレイフィアとの血の繋がりを感じさせる抑揚のない使用人めいたテンションで挨拶をするミリキャスに、ギルド受け付け嬢のエイナはちょっと微妙な顔をする。
「今日も潜るの? えっと、ミリキャスちゃんが一緒なら大丈夫だと思うけど、あまり無理はしないようにね?」
「わかっています!」
「………」
忘れもしない。
初めてミリキャスが――いや、あのおかしな連中が突然集団で現れて『登録したい』と言ってきた時の事を。
その時担当したエイナはベルに手を引かれてダンジョンへの入り口へと向かうミリキャス――そしてその仲間と思われる奇妙な面子のステイタスを見た時、絶句したと同時に恐怖した。
(普通に良い子なんだけど、ベル君に悪影響を与えないかしら……)
全員が全員、当時最高levelを保持していたファミリアをぶち抜く異質なlevel
数値化出来ずに意味不明な文字の羅列だらけという不訳のわからない数値。
あの幼い見た目で一体何があったらこれ程の力を持てるのか……エイナは心底戦慄し、同時に警戒をしてしまったのだ。
(ちょっと情けないベル君が良いのに、あのままだと……)
勿論今に至るまで此方が出した『規制』を守っているし、ベルの様子を見ればあの連中がそこまで悪い存在ではないのは理解できる。
だがあまりにも強すぎるのだ。そしてそれが一ヶ所に集まっているのだ。
もし何かがあって全員が一斉に暴れだしたら誰にも止められない……そんな恐怖が。
ミリキャス・グレモリー
level・50
力・999ランクオーバー
耐久・999ランクオーバー
器用・999ランクオーバー
敏捷・999ランクオーバー
魔力・測定不能
【神滅】【対転生】【全適応】
スキル
如何なる不可能もその想いが強ければ可能と化す。
現ヘスティア・ファミリア内にて最強は誰か? その話が上がった事は無いが、殆ど決まっている様なものだった。
元魔王のサーゼクス……ノン
超越を越えた堕天使のコカビエル……ノン
赤龍帝・白龍皇のイッセーとヴァーリ……ノン
進化した悪魔のリアスとミリキャス……ノン
この並み居る面子を抑えてトップだと本人以外から思われるのはそう……。
「くっ! ガブリエルさんが見えんぞ!」
「クソ! そこのちんちくりん! ガブリエルさんはどこだ!!」
「誰がちんちくりんさ!! 彼女は今出払ってるよ! とっとと帰れ!!」
堕ちた天使に恋した天使……誰よりも進化の想いが強かった永遠に堕ちぬ天使・ガブリエルだ。
「落ち着きなよヘスティアさん……」
「はぁはぁ、が、ガブリエルちゃんが此処に居ると嗅ぎ付けられてから毎日こうだよ。
それまでこの場所なんか見向きもしなかったのに……!」
その美しい容姿、輝く金髪、そして露出の少ない肌越しにも感じる抜群のプロポーションはオラリオの男性陣を瞬く間に虜にし、そのせいでほぼ毎日の様に勝手に出来上がったガブリエルファンが押し掛ける様になってしまった。
この見事な掌返しっぷりにヘスティアは正直気にくわない気持ちを抱いている様だが、決してガブリエルにその様な感情は無く、それまで何をしても見向きもしなかった大衆達に対してだ。
「変な話だね。僕個人からすればキミだってガブリエルに負けてないと思うんだけどなぁ」
「さ、サーゼクス君……」
ガブリエルが居ないと分かった途端、サーゼクスにも舌打ちしながら帰っていく自称ファン達を見送り、落ち着いた所でヘスティアにフォローを入れると、ヘスティアは感極まった表情を浮かべる。
「き、キミだけだよ、僕にそんな事を言ってくれるのは……! 駄女神だのドチビだのちんちくりんだのって他の奴等は言うだけで……」
「そうなのかい? 親切だし、話しやすいし、良い意味で神らしくないしで良いとこずくめなんだけどなぁ」
「す、好きーっ!!!」
「おわっ!?」
言っておくが別にサーゼクスに口説いてる感覚はない。
ただあまりにもガブリエルとの扱いの差に疑問に思ったのと、こんな自分達を受け入れてくれた感謝の気持ちを伝えたつもりだった。
だがヘスティアにとっては例えサーゼクスが悪魔だろうがそういう言葉が嬉しかった様で、感極まった拍子に長身のサーゼクスに飛び付いた。
「うぇぇ……!」
「よしよし……うーん、本当に大変だったんだなぁ」
だが悲しいかな、子持ちだし前妻をまだ引きずってるし、確かにヘスティアはスタイルはともかく小さかったのでサーゼクス的にはちょっとした子供的な認識しかない。
「こんにちは、サーゼクス君は居るかしら?」
「!? またお前か! 帰れー!!」
「あー……貴女か」
「あら、あまり歓迎されてないみたいね」
「当たり前だろ! サーゼクス君に近づくな!!」
他の面子が留守のタイミングで現れる銀髪女神と喧嘩し始めるその様子も何だか子供染みていた。
サーゼクス・グレモリー
level・55
力・999ランクオーバー
耐久・測定不能
器用・999ランクオーバー
敏捷・999ランクオーバー
魔力・測定不能
【神滅】【対転生】【全適応】【魔王】【超越】
スキル
あらゆる概念を入れ換える。
さて、そのチームD×G最強のガブリエルはというと、このオラリオにて入手した服で気合いを入れたお洒落をし、都市内部を楽しげに闊歩していた。
「~♪」
「おいガブリエル、歩き辛いから腕にひっつくな」
悪人顔、リアルに人を食いそうな歯してる、そんな容貌の堕天使……コカビエルと。
「嫌よ、やっと再会できたと思ったら転生の神との決戦でこういう時間も作れなかったのよ?」
「街中を意味無く歩き回るのがそんなに楽しいのか? 俺にはよくわからん」
まさに美女と野獣。
道行く老若男女全てを振り向かせる美しき美女が、どこからどう見ても犯罪者の類いな悪人顔の男と腕を組ながら歩いてる。
当たり前だが目立たぬ訳もなく、ガブリエルの容姿に見とれて声を掛けようとする男達は、その隣に悪人顔の男が居ることに気付いて自動玉砕していく。
「身体が鈍るし、そろそろどこかで身体を動かしたいのだがな」
「それは私と子作りしたいという事? それならば喜んで付き合うわ……」
「……」
殺されたコカビエルとの奇跡の再会のせいか、本来ならとっくに堕ちている筈の思考回路やら言動を恥ずかしげも無くぶちまけるガブリエル。
コカビエルの事になるとポンコツ化するのが彼女の特徴といえばそれまでだが、かつて天界一の美女で多くの者達から羨望されていた天使とはとても思えないし、コカビエルも若干引いていた。
「お前、昔はもっと謙虚だったろ……」
「謙虚のままだと貴方に一生気付いてもらえないでしょう? それにここは異世界。少しは自分に正直になろうと思ったのよ」
「それはわかったが、何で俺? お前ほどの女が……」
「しょうがないじゃない。貴方が大好きなのだから」
悪人顔だがどこか異性を惹き付ける事があるコカビエルの周囲に出てきそうな女性の影は出る前に叩く。
チーム最強にまで上り詰めた天使は今日も異界の地にて平常運転だった。
コカビエル
level・55
力・測定不能
耐久・測定不能
器用・999ランクオーバー
敏捷・999ランクオーバー
魔力・999ランクオーバー
【神滅】【対転生】【全適応】【超越】
スキル
挑戦する心を強く持てば進化を与える。
ガブリエル
level・58
力・測定不能
耐久・測定不能
器用・測定不能
敏捷・測定不能
魔力・測定不能
【神滅】【対転生】【全適応】【天神】【神超越】
想いがそのまま形となる。
続くか不明。
ひょんな事からロキ・ファミリアの面子と知り合ったアザゼル。
ヘスティアに駄目と言われたので会うことももう無いだろうと思っていたのだが、そうは問屋も下ろさないらしい。
「よぉ、アザゼルくん、キミの事はあれからよーく調べさせてもらったわ。
あのドチビの所に居るんやなぁ?」
「その通りだが、何だお前等? 仲でも悪いのか?」
「折り合いが悪いんや。チッ、あのドチビも悪運だけはええみたいや」
「普通に良い奴で気に入ってるんだ。俺達みたいな奴を受け入れてくれたし、器も結構小さいようでデカいし……………あ、悪い。デカいって言葉は禁句だったか?」
「だ、だからどこ見てぬかしとんねん己は!?」
「いやだって、嫌ってる理由がヘスティアのデカさに大敗してる嫉妬か何かかと思ってよ」
「ちゃうわボケ! その話から離れろや!!」
仲の悪いヘスティアと自分の一部分を比較された挙げ句謝られるという屈辱にロキは怒るも、アザゼルは平然としている。
いやそれどころか……。
「強くなりたい、だから教えてください……」
「は、俺? 何でだ?」
「貴方は強い。だから……」
「いやいや、俺じゃなくて他の――」
「この野郎!! 俺とサシで戦いやがれ!!!」
コミュ力がエグいせいか、ナチュラルにファミリアの面子と仲良くなってしまう。
結果……。
「最近ウチの子の一部がアンタに懐きすぎてウチへの扱いが雑なんやけど。どうしてくれんの? 責任とれや」
「俺も何もしてねーよ。確かにウチのベルの小僧にぼろ負けしたベートの小僧やら、アイズの小娘やらが悔しがってたからそれなりに口出しはしたが……」
「アザゼル! 来たなら言えや! ほら来い!!」
「今日もお願い……」
「ちょ、おい! 今ロキから文句言われてる最中だからまた後でな?」
「チィ、約束したかんな!」
「ロキ、早く終わらせて」
「ほら! ウチに対して冷たくなってるやん! どうしてくれんねん! 絶対に責任取れや!」
「取れと言われてもな……どうすんだよ?」
「そらお前……ほ、豊胸の手伝いとかどうや?」
「はぁ?」
呼び出される回数が増え、やがて懐かれ……。
「へぇ……俺の義父にずいぶんと気安いなキミ達は」
義理の息子がちょっとジェラシー感じて乗り込んで……。
「いけないなァ、友達の義父さんを取ろうとするのは……」
仲間を取られる事が一番殺意を抱く龍帝まで出て来て……。
「赤龍帝の鎧+硬度10ダイアモンドパワー!」
「白龍皇の鎧+硬度10ダイアモンドパワー!」
宿命を越えた親友の二人はタッグを組んで出撃する……のかもしれない。
「奥義・千兵殲滅落としーっ!!!」
「奥義・神威の断頭台ーっ!!!」
ダイアモンドパワー完璧始祖・零&壱の奥義を引っ提げて……。
嘘です
補足
イッセーくんとリアスちゃんは基本的にどこいくにしても一緒で、ヴァーリきゅんはバイト頑張ってます。
その2
面子の中で最強なのはガブリエルさんという事実。
スゴいね……愛。
その3
最後のは嘘です本当に