変態三人組と呼ばれ、蛇蝎の如く学園の女子達から嫌われる元浜、松田、イッセー。
それだけの事をしているのであるなら本人達も納得していたのだけど、どういう訳なのか元浜も松田もそう揶揄されるだけの真似をした覚えが一度たりともない。
無論、覗いてもいないのに覗きをしたと疑われ、盗撮なんてしていないのに盗撮をしたと激怒している女子達に何度も何度も違うと言って来た。
しかし決まって彼女達は言うのだ。
『変態三人組なんだから嘘よ』
まるでそれが当たり前だと云わんばかりに自分達の話を聞かず一方的にそう決めつける。
「一種の虐めに思えてきたんだけど」
「やべぇよな、俺達が三人じゃなかったらとっくに不登校だぜ?」
何が切っ掛けでこんな疑われ方をされたのかもわからないので、最早一種の虐めに思えてきても仕方なかろう。
だが決して不登校にはならない。
何故なら三人が友人で、その一人であるイッセーが言うのだ。
「やりもしてない事で疑われたから不登校だなんて馬鹿馬鹿しい、堂々としてりゃあ良いのさ。
『俺達は何にもしてねぇんだよ』ってな」
どうでも良い他人ごときの戯言に付き合えるか。
バッサリし過ぎなこの態度を示すからこそ、謂われもない罪でリンチされようとも松田も元浜も折れなかった。
「俺決めたわ、彼女作るとしてもこの学園の女子だけはやめとく」
「だな。てか俺にはこの学園の女子の殆どが女子に見えなくなりつつあるぐらいだ」
「そうしとけ」
今日も今日とて覗きをしたといきなり言われて鞄で殴られながら元浜と松田は折れずに頑張るのだ。
謂れのない言い掛かりを付けられる理由をイッセーはある程度予測している。
かつて自分や仲間達が一度地獄に堕ちる理由となった存在……転生者。
その存在が持つ記憶というものを駆使し、既に自分達の名前も顔も知っているというアドバンテージにより、不遇な立ち位置に追い込む為に何かしらの行動をしているのだろう。
「きゃー! 木場君よー!!」
「こっち向いて~!」
それが一体誰なのかはイッセーとリアスの二人で話し合った結果ある程度断定できている。
今女子が窓の外に見えるこの世界では眷属ですらないかつてリアスを裏切った――女だった男の木場祐斗に向ける黄色い声援と同等の声を向けられる男子生徒。
「向こうに才牙くんもいるわ!」
「きゃー!」
金髪の木場祐斗に対して銀髪の男。
金銀王子さま……た、等と呼ばれて黄色い声援を浴びる男子。
かつて自分たちがやっとこさ滅ぼした銀髪のオッドアイな男に似ている男。
仲間のヴァーリの暗い銀髪に比べたら人工物にしかみえない男。
それが恐らくは転生者であるとリアスとイッセーは践んでいて、その警告も既に仲間達に知らせてはいる。
「あーぁ、こっちは痴漢扱いされてるっつーのに、イケメンだからと全部許されてる感じだよなぁ」
「仮にあの二人が覗きやっても絶対許すね。寧ろ除かれたいとすら思われてるだろ?」
「不条理だよなぁ……」
とっとと始末すべきなのはわかってる。
だが何故かイッセーとリアスは何もしない。
その理由はこの銀髪の男……須賀才牙なる男が最近イライラしている様子か多々あるのだ。
こう……己の思い通りに事が運んでいない事への苛立ちの様に。
「さてと、女子共が木場と須賀に気を向けている間にとっとと退散しようぜ?」
「だな、また変な言い掛かりを付けられてもたまんねーからな。
イッセーはどうする?」
「俺はリアスちゃんと帰る」
「はい予想通り~」
「はぁ……俺も彼女作ってそんな台詞言いてぇぜ」
「運が良かっただけだよ俺は……」
それが何なのかはまだわからない。
それに警戒すべきは転生者だけではないのだ。
かつてリアスを裏切った眷属や幼馴染みとその眷属達にも気を張らないとならないのだから……。
目が覚めた時、まず気が付いたのは自分の身体が縮んでいた事だった。
何かの悪戯では無く、時間そのものか戻った事で子供時代をやり直す……。
その衝撃的すぎる展開を打破できないまま時は過ぎ、少女はあの出会いがある学校へと再び通うことになった。
現在に至るまで元の時期に戻れる手段は見つからない。
加えてこの時代を生きている時に思い出したのは、突如『消えて無くなった』男の子の事。
それに絶望し、好敵手だった龍と共に自ら命を絶ち、予期せぬ時間逆行を果たしてしまった事。
だから少女はほんの少し期待してしまったのだ……自分が目覚める事の無かった可能性を示してくれた、あの悪戯っ子の様におちょくる男の子ともう一度会えるのかもしれないと。
けど……けれど……。
「今日も女子の子に追い回されてたって聞いたけど……」
「あー……体操着盗んだのお前らだろってよ。まぁまた何時もの冤罪だよ」
「大丈夫だったの?」
「見ての通りだよ。そもそも俺も元浜も松田もやっちゃいないし」
「怖いくらい疑われるわね、やっぱり……」
………。この世界では何故か自分に怯えるせいであまり接触がなかった幼馴染みのリアスとそのリアスに膝枕されて心地良さそうにしている逢いたくてたまらなかった男の子……。
え、何で? 意味がわからない。何でリアスと彼が? なんの組み合わせ? どうしてそうなった? は? はぁ? はぁっ!?
そんな思考が少女の頭の中を駆け巡る。
「アイツ等が言ってたな、彼女作るなら絶対この学園の女子は避けるって」
「どうであれあんな事まで言われてしまえばそう思うわね……」
いや確かにリアスの見た目はドストライクと言ってはいた。
けどそれは建前で、彼はよく周りにロリコンと言われていたし、その通りにロリっ娘姿の龍と何時も一緒だった。
それに自分に対して貧乳と言ってたけど、あれだって愛情の裏返しで――――と、イチャイチャイチャイチャしてるリアスと逢いたかった少年……イッセーを眺めながら力が抜けていくのを感じる。
どうする? 突撃するか? いやでも、若干予感してたが、もしかして自分の知るイッセーとあのイッセーは違うのかもしれないから突撃したとこで意味がないのかもしれない……。
様々な思考が彼女の中で展開されていく中、少女は取り敢えず同じ逆行をした龍にこの事を話した。
すると……。
「多分、我とお前の知るイッセーとは違う。きっと我やお前と関わる事無く生きた時代から――あの赤髪の悪魔と共に生きた時代から戻ってきたイッセー」
「じゃ、じゃあ……私と貴女の知るイッセーとは違うの?」
「記憶はそう。けどお前も感じた筈、中身は我達の知るイッセーと同じ。
生きた時代が違う……それだけの話」
「でもそれは私達のイッセーでは……」
「そう、違う。イッセーはあの時消えた……理由はわからないまま消えてしまった。
だから我達は死に、この時代へと戻った。じゃあそれでイッセーが違うからと諦めるの?」
「……………」
龍は言う。
記憶が違うけど紛れもなくイッセー
誰が何と言おうと、時代が違えどアレは消滅したイッセーが入っているイッセーだと。
再会した無限の龍神を匿い、共に更なる進化をしてきた少女はそれを聞いて覚悟を決める。
「わかったわ……そうね、イッセーはイッセーよ」
よくわからない連中がチラホラ居る世界にて彼を見つけたなら、例えリアスが居ようとも再びあの仲へと戻る。
ひんぬー会長とケタケタ笑われてきた少女は覚悟を決めた。
「でも問題があるわ。再び集めた眷属の中に、イッセーやリアスと同じく『少し違う』子が居るのよ」
「違う? 何が」
「例えば兵士の匙という子が居るのだけど、あの子……私には言ってないけどとある悪魔を匿って共に生活しているようなの。
それがただの悪魔ならまぁ問題は無いのだけど……」
「誰?」
「カテレア・レヴィアタン―――といっても貴女は覚えてないでしょうね、先代魔王の血族者よ。
こっそり見たことがあるけど、どうも単に匿ってるとは思えない仲だったわ。匙自身から感じた力にあの鎧と同じものを感じたし」
「つまり我達の知るソイツとは違う?」
「イッセーとリアスという例がある以上はそうなるわ。
それにこの世界ではリアスは眷属を持っていない、にも拘らずリアスの眷属だった子が学園に在籍している。しかもその内の一人である塔城小猫――この子の力はマズイわね」
「……どれくらい?」
「何とも言えないけど、あの子もまた別世界から逆行し、しかもイッセーと同じ力を感じたわ」
「………」
「目的はわからないけど、用心はしたほうが良いわね。各々の世界で私達がどんな立ち位置だったかによっては敵と思われる可能性もあるし」
かつてひんぬー会長と呼ばれた少女。
イッセーと共に居続けた龍神。
タッグを組んだ二人もまた静かに動き始めた。
終わり
徐々に明らかになる事情。
そんな中を避けて通ろうとするリアスとイッセーだったのだが……。
「あ、ごめんなさい」
「こちらこそ――――っ!?」
「あは♪ やっぱりそうでした、歩んだ道も記憶も違うけど中身は一緒。
ふふ……そうなんでしょうイッセーせんぱい♪」
「お、お前は一体……!」
逃げようとした所で逃げられる様な相手でもないのだ。
「事情も理由もわかりましたけどね、俺はあくまでもリアスちゃんと一緒に居た世界の俺ですから。
アンタ等の言う様な俺じゃねぇし、そもそも俺達の時代じゃアンタ等はリアスちゃんを裏切ったんだ……中身が違うとはいえあんまり良い印象はない」
「…………」
「先輩とリアス部長の世界の私ってバカなんですか? クソが……目の前に居たら食い殺してやりたい」
「ず、随分と違う世界からの小猫は口調が荒いのね……」
「そうでしょうか? それにしても……はぁ、良いですよねぇリアス部長は? 私の生きた時代でも無理矢理先輩の力を封じたあげく、無理矢理初めてを奪ってましたし」
「そ、そっちの私ってそんな事をイッセーに……?」
「ちなみに私達の時代ではあまり関わらなかったわよ? まぁイッセーは鼻の下伸ばしてたけど」
「ほら見ろ! どこの世界でもリアスちゃんと俺は繋がってんだ!」
「えー? その結果先輩はリアス部長を肉塊にしてましたけど」
「そ、それは俺じゃねぇ!!」
「ちなみにロリコンで貧乳フェチだったわよ?」
「それも俺じゃねぇ!!」
「我とお風呂で子作りしてた」
「最低だなどっちの俺も!」
怯えるリアスを守る為に、やばい狩人相手に奮闘する。
「我々に関する記憶を持つ転生者ね……」
「そういえば馴れ馴れしく話し掛けてきたバカを一匹食い殺しましたけど、多分アレがそうでしたね。クソ不味かったですけど」
「こ、小猫がバイオレンス……」
「先輩に
「……………………」
肉食の獣なんて可愛いくらいの肉食達。
「い、イッセー、私の見た目で何か言いたいことはあるかしら?」
「は? いえ別に―――」
「あるでしょう!? ほ、ほらリアスと見比べてみて!?」
「え、えーっと……眼鏡――」
「違う!! 顔より下!!」
「………胸がリアスちゃんより小さい」
「そう! そうよ! それを世間では!?」
「……。ひ、貧乳?」
「もっと小バカにした感じで!!」
「こ、小バカ? えーっと……ひんぬー?」
「あぁん! は……ぁ……ん……♪」
「………………」
「な、何なの……」
「流石に違う世界の先輩なのでグイグイとは行けませんけど、ねぇ先輩? 私を肉べん――」
「ふざけるな!! 誰がやるかバカ!!」
「………。もっと言ってください」
「バカ! バーカ! ヴァーカ!! この発情猫めが!!」
「はぁ……はぁ……や、やっぱり先輩だぁ♪ せ、先輩……私を殺意を抱きながら殴ってください! 傷つけてください!」
「ひっ!?」
「やめろ雌猫、イッセーが困ってる」
明日はどこへ……。
「イッセー! かわいい子と知り合えたんだ!」
「ほーん?」
「いや聞けって! 昨日偶々寄り道してたら黒髪と金髪のかわいい子と知り合えてさ! 何でも町外れの教会に住んでるらしくて昨日招待してもらったんだ!」
「で?」
「そうしたら凄い美人の女の人が出てきて、こりゃもう天国か!? と思ったんだが……」
「直後その女の人が旦那さんと言って紹介されたのがヤ○ザみたいな顔した男だった」
「……。(町外れの教会って確か……。なにしてんだよガブリエルさんとコカビエルのおっさんは)」
行き着く先は平和なのか……。
「レイナーレ!! アーシアを離せ!!」
「は? 何で私の名前を知ってるのよ? 知り合い?」
「知り合いではないですけど、アイツ同じ学校に居る奴っすね」
「何しに来たんだアイツ……」
「ま、松田に元浜!? な、何でここに……!?」
「あのーどなたか存じませんが、何かご用でも?」
「っ!? そ、そうだ、キミを助けに来たんだアーシア!」
「は、はぁ?」
それとも……。
「何なんだ騒がしい……」
「誰か来たのですか?」
「コカビエル様……。いえ、この者が突然やって来て騒ぎ始めたので……」
「なっ!? こ、コカビエル……!? な、何で……しかも隣に居るのは……!」
「あ? ……あー……はいはい、二人の言ってた餓鬼か」
「数多く居るとは聞いていたけど、また面倒ね」
地獄か。
「おい小僧、お前が俺に関してどんな知識を持ってるかなど知らんが、俺達の領域に土足で入り込んで喚くなら仕置きじゃすまされねぇぞ?」
「もしかして天使である私がコカビエルと共に行動しているのが貴方の知識の中では無かったとか? どちらにせよ貴方に引っ掻き回されたくは無いです」
「ぐ……ぐぐっ……!」
どちらにせよ……。
「今ヴァーリに探らせるが、アザゼルとサーゼクス達にも教えておこう。
ったく、どこででも変わらんな、ああいう連中は」
「そうね、おかげで子作りすら儘ならないもの……」
「お前、まだ言ってるのか……」
「当たり前でしょう? 何よ、こっちは何時貴方に無理矢理組伏せられてからめちゃめちゃにされるって想像をしてるのに、一向に何もしてくれないし……」
「…………」
「毎晩毎晩、貴方の人形を抱きながら独り慰めるのも寂しいのよ?」
「……進化してなければとっくに堕ちてるだろ」
とても生き辛いだろう。欲まみれの連中にとっては。
補足
自前クロスオーバー。
D×Sからネオ白音たん
龍神ちゃんからオーフィスたんとひんぬー会長――じゃなくてソーたん
そしてそのソーたんの話から出てきた鳥猫の匙きゅんとカテレアさん。
基本的に嘗めて掛かったら殺られる面子やね。