白音たんの喜びフラグとか、ラッキースケベ英雄とかとか
余計な重荷だけを残して逝ってしまう自分達に腹が立つ。
最後まで支えられなかった自分達の不甲斐なさが情けない。
不安定で寂しがりやな人を残して自分達だけが消えてしまう現実を遂にねじ曲げられなかった。
そう……私達はこの世に未練を残して逝った。
だから――なのかは分からないけど、意識が暗闇に取り込まれるその刹那、感じる事等無い筈の強烈な光が広がったかと思ったら……。
「久し振りだな――と言えば伝わるか?」
「見たその瞬間にわかったわよ。うん、久し振り」
強いけど寂しがり屋な男の子を二人で精一杯愛せた私と相棒は再び同じ時をやり直していた。
「お前と知り合うのはもっと後だと思っていたが……」
「自力である程度行動可能になったから探してみたのよ。大当たりみたいだけど」
原理も理由もわからない。
けれどこれは間違いなく現実であり、確かに朽ち果てた私と相棒は時を遡る事でやり直しをしていた。
「こうして会ったのだから、やることはわかっているでしょう?」
「勿論だ。だが私とお前はそうだったかもしれないが、アイツは……」
「関係ないわ。あの時到達できなかった事を今からやり直せばきっと届く。
今度こそ支えてあげるのよ」
「……。あぁ、そうだな。今度こそだ」
わざわざ考えるなんてしない。
理由はどうであれ私と相棒は時を遡る事で再び生を受けたのだ。
ならばやる事はひとつ……私と相棒が到達できなかったアイツとアイツが憎悪し続けたアレの領域へ。
「幸い、アイツを残して逝ってしまった時の力は残っている。後はここから再び伸ばす事を当面の課題にしよう」
「そうね。勿論力の事は他の誰にもバレない様にこっそりとね。
今はまだ色々な者達も生きているし、バレたら面倒だわ」
「人間だった私達が背に
「もっとも、牙もあるし逃げちゃえばいいけどね」
今度こそ間違えない。
例え私達の知るアイツじゃないアイツだろうとも、私達は――
「行くぞイリナ!」
「ゼノヴィアこそ鈍ってないか確かめてあげるわ!」
前とは微妙に差異のある――具体的には鬱陶しいに加えて色々な妙力を持つ男共に絡まれるのを黙らせながら、私と相棒は納得できる領域まで進化するまで互いに鍛え続ける。
「妙な連中が何故か私達の名前を平然と言い当てたり、下劣な視線を送ったりするというのがやけに多いのもそうだが、感じたか?」
「ええ……間違いなくこれはアレの力。
チッ、予想はしていたけど当たるなんて最悪ね」
その過程でアイツと私達の前に現れ続けたあの猫の存在を感知したり……。
「少しわかったぞ、うようよと世界中に居る妙な連中は修行にもってこいだ」
「そうね、色々と知らない力を持ってるし、勝てば勝つほど力が増していくのを感じるわ」
予定を早めて直ぐにでも発つ事にした私達は、かつてアイツと出会った日本の街へと降り立つ。
相棒の家族を上手く言いくるめるのは少し骨が折れたが、あの猫の毒牙にアイツが掛かるのを阻止する為には四の五の言ってはいられないのだ。
だって……。
「私の喜びを返せよボケがァ!!」
「いきなりだな白音」
「そして案の定アンタだった訳ね……」
この猫にだけは負けたくない。
様々な未来から戻ってきたという事実を知ったリアスとイッセー。
話を聞けばそういう者達は決まってイッセーと仲が良かったらしい。
ソーナ然り、白音然り、元士郎然り、朱乃然り、椿姫然り……。
「残念だったなァ! アンタ等の知ってる先輩とこの先輩は違うんだよ!」
「見れば分かる。そうか、リアス・グレモリーと……」
「ショックはショックだけど仕方ないのかな……」
「………」
自力で現存する天使とは違う天使という新たな種族として進化した超越天使二人組もまた別の未来――白音と同じ未来から戻ってきたらしい。
「わかったなら早く帰ったらどうです?」
「そうはいかないな。別の未来からとはいえイッセーから感じるものは私達の知るイッセーに近い」
「それに妙なのがうようよ居るし、アンタが傍に居たらイッセーくんに何をするかわからないわ」
「必要ないなァ? 先輩の進化についていけずに脱落した奴等なんて」
「「……」」
しかしどう見ても不仲。
白音の嘲笑った煽りを受けたゼノヴィアとイリナはその瞬間その手に不思議な波動を放つ刀を抜き、その背に六対十二の純白の翼を広げる。
「!? 天使だと……?」
「が、ガブリエルと同種?」
仲間の一人と同じ翼を前に驚くリアスとイッセーだが、その驚愕は別の未来から戻った者達も同様だった。
「ゼノヴィアが天使だと? しかも兵藤誠八に堕ちきった紫藤イリナまで……」
「驚いたわね、しかも相当強いわ」
「我々の時代にもあのお二人は存在していましたが、教会所属の悪魔祓いでしたわ」
「デュランダルは扱わず不思議な波動を放つ刀剣――しかもスキルまで……」
いつの間にか夜の学園の校庭で乱闘し始める別未来の白音、ゼノヴィア、イリナの強大な力を前に一筋縄ではいかないものを感じて舌打ちをするイッセー。
「冥道残月破!!」
「蒼龍破!!」
「六道・地爆天星……!」
仮に転生者連中を黙らせたとしても、コイツ等はそれ以上に厄介すぎるし、現に頭に血が昇るタイプが多すぎる……自分の様に。
「!? まずい! 白音の作り出した球体に吸い寄せられているぞ!!」
「ブラックホールねまるで、しょうがない。あのコアを破壊すれば止ま――」
「リアスちゃん」
「わかってるわイッセー」
『Boost!!』
「「龍拳・爆撃!!」」
自分に何を思ってるのかは知らないし、それを受け入れるつもりは無い。
勝手に違う世界の己に影を重ね、勝手に取り合いなんぞやられても困るし迷惑でしかない。
自分は確かに兵藤イッセーだけど、リアスが大好きなイッセーなのだから……。
「勝手に殺し合おうが知ったことじゃないが、俺を自分達の知る俺と勝手に重ねるのは迷惑だ。
どう思おうが俺はリアスちゃんと一緒に居続けた俺なんだから」
「……」
終わり。
集まる運命。集まりし超越者達。
それはガチれば世界征服すらも可能なバグ集団故に転生者達にとってはベリーナイトメア。
「修学旅行? 行くわけないだろ、そんなのに行くぐらいならリアスちゃんと居るわ」
「いや心配のはわかるけどよ……」
「そ、そこはどうしてもダメかい?」
暗黒騎士へと進化せし匙と、さらに別の未来からやってきたらしい銀牙騎士を名乗る美少年に説得されるリアス馬鹿のイッセー。
「私の事なら大丈夫だから行ってみても良いんじゃないかしら?」
「……」
「リアスの事はコカビエルとガブリエルが護衛するし、僕も出る。
正直云うと、イッセー君には日本神話達を探って欲しいんだ……ほら前は全くノーマークで潰しただろう? もしかしたら例のがうじゃうじゃ居るんじゃないかなぁと……」
リアス本人と兄のサーゼクスに言われてしまえば仕方ないので、ヴァーリと合流する形で修学旅行に行ったのだが、無論観光する気は無く、うじゃうじゃ居る連中が居ないかの調査に勤しむ。
「普通に居るし……ハァ」
「一体どれだけ居るんだ? 段々うんざりしてきたんだが」
「流石にこうも多いとなるとね……わかるよ」
「兵藤誠八が大量発生してると思うと気分悪くしかならねぇわ」
案の定居るし、案の定思考回路が似たり寄ったりだし、世紀末のモヒカンみたいに襲い掛かってくるしでうんざりし始める頃、またしても出会う。
「イッセーとヴァーリ―――――いや、俺の知る二人とは違うのか? イッセーからロリコンの気配が感じない」
別世界の未来では一々一言余計に言って相手を怒らせてしまう青年と……。
「別世界の未来か……なるほどなるほど、ソーナ・シトリーとオーフィスは俺の知る二人だったが……」
「それは良いが、キミは何で縛られて正座してるんだ?」
「顔もボコボコだし……」
「後ろでニコニコしてる狐が居るし……」
「怖いんだけど……」
「あぁこれはだな、後ろの狐妖怪さんが変な変態に母子共々襲われてるから横槍を入れたんだが、その襲ってる男を自分のペースに持ち込もうと『ふーむ、オバハンと小娘狐妖怪を襲うとは変わった趣味だな?』と言ったらぶん殴られたんだ……後ろのオバハンにぇ!?!!」
「ふふふ……」
そしてその気質は変わってないらしく、一々余計な一言のせいで未亡人子持ち狐妖怪にニコニコされながら踏みつけられてる曹操の記憶と魂を受け継ぐ神牙と名乗る青年。
「……」
「俺は一応曹操を知ってるが、こんなユーモアのある感じじゃなかったぞ」
「僕の所もそうだったかも……」
「俺とイッセーは会ったことはあるが、それだけだったからよくわからん」
「痛い痛い痛い!?!? い、一応助けてやったのに何で蹴るんだ!?」
「くふふ、わからぬのか? お主の脳みそはそこまで腐ってるのか?」
「だってオバハンはホント――あぎゃ!?」
強いんだけど何か違う、変な青年。
「え、偉い目にあったぞ……」
「多分キミが悪いと思う」
「俺もそう思う」
「天然で煽ってるなら大したものだが、流石にな……」
「それよりどうするんだよ、あの母娘はどうもお前を踏みつけるだのなじるだのすることが楽しいという性癖に目覚めてるぞ」
「ジンガ! 馬になれ!!」
「げふ!?」
「ほーれ、鳴いてみよ? いや、鳴け」
「痛い痛い痛い!?!? し、尻を叩くなよ!!」
修学旅行もアンノウン……やらない。
「ふ、服まで脱がされた……! お、俺が何をしたっていうんだ……!」
「………………。襲われてるのはお前じゃねぇか」
「口は災いのもとだったな」
「でもさ、曹操君が転んで押し倒した辺りからだよね?」
「そうだな。あれのせいで拍車がかかった感が否めない」
終わり
まぁ、この通りになるかすらもわかんねーけど