色々なIF集   作:超人類DX

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ソーたん的にはバレたらバレたで別に構わないスタンスではあるらしい。


無力と嫉妬

 兵藤凛は所謂転生者である。

 不幸な事故によりその命を散らし、死後の異空間にて邂逅した神により想定外だった死という理由で転生させられる事になり、どの世界にて人生をやり直すかを問われた時、凛は食い気味でこの世界を願った。

 

 よく聞くテンプレ転生という奴をまさか己が体感する事になるとは思わなかったけど、チャンスがあるのなら乗るしかない。

 ましてや偶々読んだラノベの主人公と同じ世界で生きられるなんてファン冥利に尽きるし、一目でいいから逢えるかもしれない。

 

 例え過酷な世界だろうと、一目見る事さえできたら後は死のうが構わないと、凛は容姿はそのままのテンプレチート能力も要らないと言った後に見事に転生を果たした。

 

 しかし要らないと願ったにも拘わらず凛にはある力が宿っていた事に気付き、同時に絶望した。

 何故ならその力はこの世界の主人公が持つべき力であって自分の様な外様の存在が持って良い様な代物では無かったのだ。

 

 赤龍帝の籠手。

 スケベだけど明るく前向きな少年が持つべき力を宿し転生してしまった凛は当然本来持つべき少年の事が心配だったし、どうしているのか気になった。

 

 当時はまだ宿している事すら自覚していない子供である筈だけど、将来確実に彼の身に降り掛かる過酷な運命に対抗する為にはこの力は確実に必要だ。

 しかし単に転生しただけの凛に少年がどうしているかを知る術は無く、せめてこの力を上手く明け渡す手段をと、それこそ失うことで己の命が終わってしまおうとも構わないという覚悟をもって探し続けた。

 

 だが運命は彼女を引き合わせた。

 この世界の両親が、生前と同じく事故で亡くなった時出会った父方の兄弟……つまり叔父さん夫婦に引き取られる事になった訳だが、その叔父夫婦こそ生前ファンだった主人公少年の両親であり、凛は自分の苗字が違うこともあって叔父が兄弟である知らなかったので大層驚いたのと同時に、その少年と会う事にドキドキした。

 

 結果だけを言うと、凛はその少年――つまり兵藤一誠と出会えた。

 同い年で、生まれた月が自分より遅いので自分が姉という形になる中、一目だけでも見たいという夢が皮肉な事に両親の不幸と引き換えに獲てしまった凛は――

 

 

『ほらイッセー、挨拶なさい』

 

『同い年だけど今日からお前のお姉さんになる子なんだぞ?』

 

『……………………どうも』

 

 

 ラノベでちょくちょく描写されていたやんちゃスケベ小僧とはまるで真逆の……年齢に全く合ってない達観した目をした少年に、当初は緊張しているのかと思っていた。

 けれどそれは違っており、この世界の兵藤一誠は何時も一人になりたがり、友達も作らず、またアホみたいなスケベさも無い……凛の思っていたのとはまるで違う少年だった。

 

 

『凛ちゃーん! 遊ぼうよ!』

 

『あ、イリナちゃん。えっと、イッセーも……』

 

『いい、家にいる』

 

『そ、そんな事言わずにたまには――』

 

『早く行こうよ!』

 

『あ、待ってイリナちゃ――』

 

『……………』

 

 

 とても暗く、本来なら親しき幼馴染みとなる筈の少女に関心が無く―――いや、凛にたいしても全く関心が無い態度だった。

 もしかして自分が転生したせいによって赤龍帝では無くなっているからなのかと、とても気にしてしまった凛はそれを打ち明ける事も出来ず、それからずっとイッセーに対して元々ファンだったことあって、端から見れば完全なるブラコンと化した。

 

 

『イッセー! 一緒に今日の宿題しよ!』

 

『………』

 

 

 小中と学年が上がり、男女に対して機敏になる年頃になっても関係なく従姉弟のイッセーに構いまくる日々。

 成長しても独りで居ることを好み、寧ろ多人数で行う人生ゲームすら独りで黙々とルーレットを回しながら遊んでるという、独特すぎる性格に成り果てたイッセーもそれはそれでと思ってる程度には生前から兵藤イッセーという存在が好きだった凛は、覚悟を決める。

 

 

『ね、ねぇねぇイッセー、高校はどこにするの? もし良かったら来年度から共学になる駒王学園に一緒に行ってみない?』

 

『別に良いけど……。(駒王学園って言うと、確かリアスちゃんが通ってたとかいう高校の名前だったな。…………居るのかな、リアスちゃんは)』

 

 

 過酷な運命は己が背負う。そしてイッセーには――このイッセーがハーレム王になりたがるかは別にして、これから出会う筈の、自分なんか蟻以下にしかならない程の可愛い女の子達と出会わせてやる。

 その過程に降り掛かる七面倒な事は全部自分がやれば良い――という覚悟と共に何でイッセーがこんな性格であるのかという根底を知らぬ凛は上手く誘導し、駒王学園へと入学した。

 

 

 しかし凛は自分が思っている以上に赤龍帝という称号が大きなものである事を入学してから嫌という程気付かされてしまう。

 

 

『アナタ、オカルト研究部に入らない?』

 

『え!? わ、私じゃなくて私の従姉弟の方が――』

 

『あぁ、そういえば従姉弟さんが居たわね。

てっきり弟君かと思っていたけど……えーっと、どちらかと言えばアナタに興味あるのよね私』

 

『そ、そんな……』

 

 

 覚悟を決める前から我流で鍛え上げ、ある程度は力を引き出せていた赤龍帝の力によりメインヒロインの一人たるリアス・グレモリーのイッセーへの関心がゼロになってしまう悲劇。

 

 

『イッセー、よかったら私とオカルト研究部って部活に――』

 

『入らないよ部活には』

 

『それは……どうして?』

 

『普段見てるからわかるけど、俺みたいなのが入ったら男子やら女子の一部に何を言われるかわかったもんじゃないし。(リアスちゃんじゃないリアスちゃんだし、裏切り者だった連中と楽しそうにしてるのを見てると気が狂いそうになるんだよ)』

 

 

 

 そしてイッセーもリアス・グレモリー達に関心が無いといった言動。

 これにより完全に引き合わせるチャンスを失った凛だったが、それでも部員という立場を最大限利用してなんとかイッセーとリアス達を知り合わせてみようとした。

 けれど上手くいかない。まるでリアス達を避けているかの様にタイミングがズレれてしまう。

 そしてそんな凛の思惑を嘲笑うかの如く、入学すぐに兵士として転生した凛が部員の皆から好かれていく。

 

 それが周りの全てを騙しているという罪悪感に支配される訳だけど、その罪悪感が余計にブラコン化を進行させていくのは何たる皮肉か。

 

 

「え、部長の婚約者?」

 

「違――」

 

「おうそうだ! お前はリアスの兵士だったな? へぇ、悪くない顔じゃねーか」

 

「は、はぁ……」

 

「! 凛に手を出したら殺すわよライザー……!!」

 

 

 生前から『あれ、もしかしてアイツって割りと可愛くね?』と言われる程度には控えめの美少女だったりする凛はイッセーの代わりにシスターと親友になったり、後輩の白猫に懐かれたり……そしてリアスの婚約者と名乗って舞い上がってるホスト崩れみたいな悪魔男に下劣な視線を向けられたりと忙しい日々を送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ライザー・フェニックスって知ってる?」

 

「……あ?」

 

 

 さて、そんな凛の苦悩に対して特に関心があまり無いままであるイッセーはといえば、ただ今ナンパされているオカルト研究部の部室とは正反対に位置する生徒会室にて、複雑であり爛れた関係という沼へ互いに飛び込んで抜け出せなくなりつつあるソーナから唐突に話を振られ、珍しくポカンとしていた。

 

 

「何だそれは?」

 

 

 何故生徒会ですら無いイッセーがこの場所に居るのかはお察しの通りであり、わざわざ自分以外――つまり女王を含めた全眷属達に生徒会の仕事だと尤もらしい台詞と共に追い出し、イッセーに今回の話をする為に呼んだ訳だが、当の本人にライザー・フェニックスについての記憶が消し飛んでいるらしい。

 

 

「あら、確か以前の時も会ったみたいじゃない。分かりやすく言うならリアスの婚約者だった男」

 

「…………………」

 

 

 だがリアス関連の事ならば何でも思い出せるイッセーに婚約者だった男悪魔だと説明した瞬間、複雑そうな顔付きになる。

 

 

「それがどうしたっていうんだ……」

 

「以前の貴方は無理矢理結婚しようと人間界に逃げたリアスを追った彼を殺害した様だけど、この世界にも彼はちゃんと存在しているのよ。

しかもご丁寧にリアスの婚約者としてね」

 

 

 生徒会室の隅の壁に背を預けながら腕を組んでいるイッセーの表情は相変わらず複雑な心境を物語っている。

 

 

「その話を俺にする意味は?」

 

「深い意味なんて無いわよ? ただ、アナタの大好きなリアスとは別のリアスがそうなりかけていると聞いてアナタはどうするのかなーって思っただけ」

 

「どうするも何も、俺にどうする事なんて出来ない」

 

「そうね、リアスとは全く接点も無いし、まともに話す事もしないアナタが横から口を挟めない。アナタの従姉弟さんはまだ出来るかもしれないけど」

 

「……………………」

 

 

 当たり前だが、凛の方がリアスに遥かに近い位置に居るという解りきった事を敢えて言うソーナにイッセーは閉口する。

 ソーナにしてみれば、この世界のリアスに何もしないというこの状況の方が好都合なのだ。

 まかり間違ってリアスと引き合ったらそれこそ、世界の理を滅茶苦茶にしてしまう何かをやらかしてしまうのだから。

 

 

「ちなみにだけど、実はそういう話が私にもあったりするのよね」

 

「相手の見る目が無さすぎるな」

 

「そうね。ただ、私はシトリー家だからという理由もある。

勿論、死ぬほどどうでも良い男なんかと婚約をするつもりは無いし、うちの兵士の匙って子が居るじゃない? あの子が反対したお陰で、レーティングゲームで白黒付ける事になったの」

 

「お前に惚れたとかいう小僧の事か」

 

「アナタの以前の世界の記憶に匙は居なかった様だから関心は無いでしょうけど、最近困るのよね。あの子を好いてる他の眷属の子が居るのは良いし、勝手に恋愛に発展したら良いんだけど、どういう訳かその匙に好意を抱く子達が嘘だらけの面の私とくっつけ様とするのよ」

 

 

 リアスの話から然り気無く自分の話に逸らし、最近仮面を付けた自分に好意を抱く匙という兵士とその周りが嘘の自分と引き付けさせようとしてくるらしい。

 ソーナはその現状が―――表情からして鬱陶しいらしい。

 

 

「ハッキリ言える、あの子達が今の私を見たら確実に私から逃げるわ」

 

「見せてもない癖に、わからないだろ。

その匙って奴がもしかしたら今のアンタでも受け入れる可能性だって……」

 

「無いわ。絶対にあり得ない、仮に受け入れるとしてもあの子達は私とは別の位置に居るから本当の意味では解り合えない。

イッセーだってリアス達と出会う前は独りだったでしょう? その時思った事があるでしょう?」

 

「………………………」

 

 

 それを言われるとイッセーも思わず口を閉ざしてしまう。

 確かに所謂普通(ノーマル)と自分達との間には明らかな壁がある。

 此方側ではそれが当たり前だとしても、向こうにしてみれば理解できず、おぞましさを感じ、自然と離れていく。

 

 イッセーの場合はリアスや仲間達という同類達と出会えたから深くは考えてないけど、ソーナの様に出会えなかった者はその壁という差をハッキリ自覚していて、決して交わる事は出来ないと思ってしまっている。

 そんなソーナの気持ちを皮肉な事だが、イッセーだけが理解できてしまっているのだ。

 

 

「話が逸れたわね。とにかくリアスは今結婚させられるかで揉めているわ」

 

「………」

 

 

 今ソーナが匙達眷属を例えに話した様に、イッセーもまた同じかもしれないと思っている。

 仮に力を示してこの世界のリアスの関心を買う事は不可能では無いのかもしれない。

 特に今聞いたリアスの状況に乗じて、同じようにライザー・フェニックス一味を殺すまでとはいかないにせよ、捻り潰してしまえばかつての仲間達と会える可能性は一気に高くなる。

 

 しかし、イッセーにはそれが出来ないし、出来ないだけの理由があった。

 

 

「まあ、従姉弟さんが何とかするんじゃないかしら? 前にアナタが言ってた感じだと上級悪魔程度なら何とでもなる位には独学で鍛えてたんでしょう?」

 

「あぁ、鎧程度なら普通に……」

 

「ならば悲観しなくても大丈夫よ。

ライザー・フェニックスの不死鳥の特性は面倒だけど、言ってしまえばそれだけですもの」

 

「………………」

 

 

 この世界のリアスは()()のだ。

 正心翔銘(オールコンプリート)という扉の無い、グレモリー家のリアスというただの悪魔でしかないのだ。

 鍵の開け方をイッセーが知っていたとしても、その扉が存在しない以上無意味。

 

 だからきっと、自分の中身を知ればリアスは理解できないし恐れる。

 それがイッセーにとって一番に辛く、そして知られる事を恐れている理由なのだ。

 

 

「そろそろ皆が戻ってくる頃だわ」

「邪魔したな」

 

 

 かつて仲間達と引き合わせてくれた人外は言っていた、『本来皆が僕みたいな個性を持つことなんて有り得ない』と。

 それはつまりこの世界に生きるリアスこそが本来のリアス・グレモリーであるという事。

 目の前のソーナというのも居るけど恐らく彼女は突然変異か何かで生まれてしまったイレギュラーの様なものであり、自分に至っては本来存在すら許されない外様。

 

 世界に反逆をした罪と罰。

 

 

「…………」

 

「家で待ってるわ」

 

 

 自分が出来る事は何も無い。

 ソーナに見送られながら生徒会室を出たイッセーの心はずっと晴れないまま、完全に油断していた。

 

 

「おいそこのお前、今生徒会室から出てきたよな? なんの用だ?」

 

「………」

 

 

 ソーナから適当に宛がわれた仕事を終わらせて戻ってきたタイミングとぶつかってしまったと、生徒会室から出て帰ろうとしたイッセーの肩を後ろから掴んで止めてきた男子に内心舌打ちをする。

 

 

「一年――では無いな? 生徒会に何か用でも会ったのか?」

 

「いや……」

 

 

 コイツがさっきソーナが言っていた匙とかいう奴か……と内心面倒なタイミングで見られてしまったと思いながら、適当に煙に巻こうとするイッセーだが、仮面を付けたソーナに惚れている匙は、今生徒会室にはソーナしか居ない筈であると知っていたので、イッセーの無愛想な態度を怪しむ。

 

 

「怪しいなお前。何組の奴だ?」

 

「……1組だが」

 

「というと、確か変態コンビと同じクラスか。

お前まさか、俺以外女子しか居ない生徒会室に忍び込んでよからぬことでもしようとしてたとかじゃねーよな?」

 

「してないし、しないよ」

 

 しつけー小僧だ。と妙にこちらを疑う匙に元々かなり短気たイッセーは段々イラついてきたが、流石にここで余計な一言を言ってトラブルの元になる様な真似はせず、自分はなにもしていないととにく訴えていると……やはりタイミングが悪かった―――いや、寧ろ狙い済ませていたかの様に生徒会室の方からソーナが出て来てしまった。

 

 

「何を騒いでるのかしら?」

 

「あ、会長。今コイツが生徒会室から出て来たもので……何かされてませんよね?」

 

 

 いつの間にかイッセーが何かやったという感じでソーナに聞く匙にソーナは呆れた顔をする。

 

 

「彼に失礼よ。

イッセー――おっと、兵藤君とは偶々廊下で鉢合わせして、その時私が抱えていた書類の束を運ぶのを手伝ってくれたのよ」

 

「……」

 

「……。今コイツを名前で呼んでませんでした?」

 

「聞き間違いよ」

 

 

 完全に一回……しかもわざとらしく名前で呼んでから訂正して名字呼びしたソーナにイッセーは内心『コイツ、わざとやりやがった』と、横から匙の色々な感情を思わせる視線を受ける。

 

 

「……手伝って貰っただけですよね?」

 

「だからそうだと言ってるでしょう? 何故アナタに疑われないといけないのかしら?」

 

「いえ、コイツが2年1組と言っていたので、例のお騒がせ変態コンビみたいな奴かもしれないと思って……」

 

「同じクラスだからといって他の男子を疑うのはよくないわ匙。彼だっていい気分にはならないわ」

 

 

 ね? と此方に振ってきたソーナだが、そもそもイッセーはさっきから匙の言っている変態コンビが誰の事なのか微妙にわかってない。

 名前さえ聞けば思い出すのかもしれないけど、基本的に周囲に無関心が故だ。

 

 

「なら良いんですけど……」

 

 変態コンビとして名を馳せるその誰かさんがどれ程変態なのかは知らないけど、匙の警戒っぷりから考えたら結構なラインを越えてしまってるのだろうと、事実他人事の様に思っていると、その匙からさっさと帰ってしまえとばかりにもう行って良いと言われてしまう。

 

 

「引き留めて悪かったな、もう行って良いぜ」

 

「………」

 

 

 どう見ても一番乗りで仕事を終えて急いで戻ってきた感があり、ソーナと二人きりになりたいといった感情丸見えでイッセーを追い出そうとする匙。

 別に逆らうつもりも無かったし、イッセーはそのまま言われた通りにとっとと消えるつもりだったのだが……。

 

 

「あ、お手伝いをしてくれたお礼がまだでした。

待ってください兵藤君」

 

「……」

 

「!」

 

 

 今度はソーナがイッセーを引き留め始めた。それはもう、口実が今出来たと匙に見えない角度から覗かせる嬉しそうな顔で。

 

 

「いや、お礼なんて……」

 

 

 無論断ろうとするし、お礼とソーナが口にした瞬間、明らかにソーナの後ろから『絶対に断れよテメー』的な目で匙が睨んでいるのだから当然だ。

 しかし、眷属を持つつもりが最初から無く、更に言えば本来の自分を確実に理解できない者から、隠しているとはいえ上っ面の自分に好意を持たれても迷惑としか思ってないソーナは、匙の目の前でイッセーの手を握りだす。

 

 

「それでは私の気が済みません、飲み物くらいはせめて奢らせてください」

 

「か、会長!? な、なんでソイツの手なんか……」

 

「………」

 

 

 わざとやってやがる。とイッセーにしか見えない位置から笑ってるソーナに匙が騒ぎ立てる。

 どうやら異性と接触するだけで嫉妬する程度には仮面を付けた側のソーナに惚れ込んでいるらしい……。

 

 

「お前、会長から離れろよ! 何時まで手を繋いでんだ!」

 

「………と、仰ってるので早く離してくれませんかね」

 

「それは構いませんが、匙、アナタは前々から思っていたけど何故私が男子と話をしてるだけで一々騒ぐのかしら?」

 

「そ、それはだって……」

 

「私がどこの誰と話をしようがアナタに何の関係があるの? 他の役員達もそうだけど、何故私の意思に対してアナタ達に口出しされなくてはいけないのよ? しかも、まるでアナタとなら文句はないといった態度なのも理解できないわ」

 

「………」

 

 

 さっき聞いた以上に結構縛られてんだな……と思っているイッセーがソーナに言われて俯く匙と目が合い、思いきり殺意の入った目で睨まれてしまう。

 

 

「別に媚びへつらう必要も、私の意思に同調する必要も無いから、私のやる事に一々文句を付けるのはやめて頂戴」

 

「………」

 

 

 その仮面の下の本質を知ってから果たして同じ気持ちになれるのかどうか……。

 思いきりメンチを切られながら、然り気無くソーナから普通の繋ぎ方から恋人繋ぎに変えさせられながら、扉を持っていない匙を見るのだった。

 

 

「や、やっぱり何かされましたよね!? だっておかしいでしょうその手の繋ぎ方!!」

 

「何がかしら?」

 

「……………」

 

「おいテメー! 今すぐ会長から離れろ!!」

 

 

 完全に敵意を持たれてしまったのは仕方ないのかもしれない。




補足

素養すら無く、そんなリアスに本質を見せたら間違いなく恐れられる。
だから何もできない。



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