色々なIF集   作:超人類DX

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えーっと、続き。

ソーたんが徐々に仮面をぶち壊し始める……のか?


人気者が居ない間の学園生活

 凛の予想していた通り、ライザー・フェニックスとの婚約破棄の条件はレーティング・ゲームでの勝利が必要になった。

 リアスの義姉にて実兄の妻であるグレイフィアの提案を互いに了承する事で初めて成立したこの今回の一件。

 

 凛の記憶との差異はハーレム王を夢見てるイッセーの嫉妬を煽る為にライザーが自身の女性しか居ない眷属に破廉恥な事を見せつける様にして行うというのがあるのだが、凛が女性であるせいかそれは無かった。

 もっとも、リアスがまだレーティングゲーム未経験かつ眷属もフルメンバーでは無いという絶対的な有利についてを自信満々に煽っていたのは同じだったが。

 

 

「数も経験も向こうが上。

だからレーティングゲームの日までの間を使って修行をするわ」

 

 

 当然、勝たないと色々と詰む状況にあるリアスは仲間達にそう告げ、凛を含めた眷属全員がその言葉に頷いた。

 

 

「明日からグレモリー家が所有する別荘で泊まり込みのスキルアップよ。

その間学校は休む事になるけど……」

 

「部長の為ですから大丈夫ですよ」

 

 

 ただやはり凛の気掛かりは、本当ならこのゲームを経て悪魔の住まう冥界中にその名を轟かせる筈だったイッセーについてであった。

 

 

「凛のご両親にはちゃんと説明しておかないとね」

 

「……」

 

 

 未だにリアス達との接点は無いし、彼女達のファン達の事もあって寧ろ避けている事すらある。

 これまで近くで見たイッセーの性格上、一匹狼気質なので仕方ないのかもしれない。

 けれどやはり、凛は後ろ髪を引かれる思いだけが心の中に残ってしまう。

 本当にこのままで良いのかと……。

 

 

 

 圧倒的に成長速度が遅いものの、一応イッセーも凛がライザー・フェニックスという悪魔に遅れを取る事はないと思っている。

 というよりそもそも、この世界のリアスに自分を知られてしまうのを極端に恐れているので、自分に何が出来る訳じゃないと考えている。

 

 仮にもし負けるとしても、今更己がしゃしゃり出ても余計な混乱を招くだけ……だから何もしない。

 凛という存在の正体が何であろうとも、イッセーにどうこうする気力は殆ど無いのだから。

 

 

「あら、おかえりイッセー今ちょうど凛が入っている部活の部長さんが来てるのよ」

 

「こんにちは」

 

「………」

 

 

 事前にソーナからわざとらしくリアスの近況を聞かされているイッセーは、家に帰るとこの世界では殺されてない母と話をしていたリアスが何故来たのかを察している。

 ソーナの言うことが本当ならば、近々行われるゲームとやらに勝つ為に学校を休んでまで鍛える為だろう……。

 

 

「イッセーも一緒にお茶しようよ?」

 

「魅力的な話だけど、宿題しないといけないから……」

 

「え、でも宿題ならあとで一緒に……」

 

「何時までも凛に勉強を頼る訳にはいかないだろ? 俺の事は良いから母さんと部長さんの三人でガールズトークでもしてなよ―――あぁ、母さんはガールって歳でもないか?」

 

「どういう意味かしらイッセー?」

「おっと、口が滑ったな――じゃあそういう事で」

 

 

 鍛えるのは良いと思う。

 だがこの世界のリアスは進化をしていないので、実力的にはかつて初めて出会った頃の実力だ。

 悪魔という種族からすれば上級クラスの認定をさへても良いだろうが、それだけでは正直無理な面も出てくる。

 普通(ノーマル)であるこの世界のリアスでは……。

 

 

「まったくあの子ったら……ごめんなさいねリアスちゃん」

 

「いえ、私達に気を使ったのでしょうし……」

 

 

 けれどそれを知っていても自分が出来る事は何もない。

 ソーナの言っている通り、自分は所詮ただの外様なのだから……。

 

 

 そんな喪失感に自嘲しながらさっさと眠ってから明くる日、オカルト研究部の部員全員が休みになったという話が校内に広がり、ある者は絶望し、ある者か悲しみに膝を付く――という大袈裟にしか見えないリアクションがそこかしこで目撃される中を、何時もの通り登校したイッセーは、何時も感じない筈の視線を遠くから向けられている事に気付く。

 

 

「……」

 

 

 その視線の正体は直ぐに予想できた。

 昨日自分が生徒会室から出てきた所を目撃した生徒会役員の男子のものだ。

 

 

(昨日の今日で俺の監視でもする気か? ご苦労な事だ)

 

 

 その理由はソーナに関する事だというのは匙という者がソーナに向ける感情を垣間見てすぐにわかっていた。

 要するに昨日ソーナが偶々暇そうにしていたので生徒会の仕事を手伝って貰ったという言葉を疑い、そして疑うからこそ出てくる嫉妬により自分を監視しようという魂胆なのだろうと、隠れているつもりでもバレバレな監視をしている匙に対して内心皮肉を飛ばしながらイッセーは何時もの通りの学園生活を行う。

 

 

「多分皆の知っての通り、兵藤は本日お休みだ」

 

「俺の心のアイドルがぁぁっ!!」

 

「カムバック・凛!」

 

 

 流石に授業中等は監視されないので、割りと気楽なものだが、ソーナがこの事を聞いたら何と言うのだろうか……。

 というより、一人になると確実にソーナの方から接触してくるので、一人になるのはなるべく避けて常に人気の多い場所に居ないといけない……と、何をしたのかは知らないけど、怒り狂った女子のグループに袋叩きにされるクラスメート約二名の悲鳴を横に購買でパンでも買おうと廊下に出ると、案の定匙の視線を感じる。

 

 

(………)

 

 

 どうやら彼的には自分がソーナの周辺を彷徨くのは嫌らしいので、此方としてもその望み通りにしてやりたいとは思う。

 だが何度か殺そうとしてもゾンビの如く復活して這い寄ってくる様な精神性を持つソーナから逃れる事は相当に難しいし、イッセー自身も無意識に『本当の自分』として振る舞えるソーナから逃げるのをやめてしまいつつあるので、匙の思う通りにはならないだろう。

 

 

「メロンパンひとつ」

 

「はいよ~」

 

 

 第一、本来のソーナを見せられた時にも同じ気持ちになれるのか……。

 どちらにしても、監視をした所で最早どうにもならない事に早いところ気付いて貰いたいと願いながら購買でパンを、自販機で飲み物を購入したイッセーは、何時もなら誰も寄り付かない様な場所に向かう足を敢えて人が多い教室の様な場所へと変更しようとしたその時だった。

 

 

「あ、兵藤君」

 

「な……!?」

 

 

 完璧な不意打ちだった。

 周囲に関係がバレたら色々と面倒だからと自分から言った上にこれまでずっとそれを守ってきた筈なのが、何故か今になって突然、しかもまだ食堂という昼休みに使用する生徒達がごった返している様な場所で、後ろから突然、さも普通に話し掛けてきたのだ―――ソーナが。

 

 

「お昼ですか? パンひとつだけで足りるのでしょうか?」

 

「な……アンタ……なんで……」

 

 

 側としては生徒会長・支取蒼那。またはシトリー家次女のソーナ・シトリーとしての仮面を被った側ではある。

 しかしどちらだろうとも、これまでは例え廊下で出会してもそのまま互いに素知らぬ顔をしながら通りすぎていたし、ましてやこんな人目のある場所で話し掛けてくる事はまず無かった。

 

 それがどうだ、今完全に不意打ちを喰らって鳩がアハトアハトをくらった様な顔をしているイッセーに対し、ソーナはとても楽しそうに微笑みながら向かい合っているではないか。

 

 イッセーが本来のお騒がせドスケベ小僧であるなら、この時点で周囲が騒ぎ立てられるのだが、生憎殆ど目立たない学園生活を送っていた為、今の状況を見られる事はあれど騒がれはされていない。

 だがそういう問題では無く、今のこのタイミングで話し掛けられたという事は、当然ながらわざわざイッセーを監視してい匙に目撃されているという事になる。

 

 

「昨日、お手伝いをして貰ったでしょう? お礼がまだだと思って」

 

「…………」

 

 

 向けられた視線に殺意が混ざる。

 今更小僧っ子一人の殺意にビビる訳ではないが、状況がひたすらに面倒すぎる。

 イッセーにしてみれば出来るなら避けて通りたかったのに、ソーナはニコニコと仮面の下に隠れている強大な性質(マイナス)を見事に隠しながら、礼がしたいと言っている。

 

 

「別に礼なんて……」

 

 

 勿論、好き好んで一緒に行動したい訳ではないイッセーは断ろうとする。

 そもそも仕事なんて手伝ってすら無いのだから礼と言われても困る。

 

 だがソーナはニコニコと……それはもう、楽しそうに微笑んだまま要らないと返したイッセーにそういう訳にはいかないと帰してくれそうもない。

 

 

「そういう訳にはいきません。偶々とはいえお手伝いまでさせておきながらお礼をしないなんて私のポリシーに反しますから。

お昼はまだでしょう? ふふ、これから一緒に食べながら詳しくお話するので来てください」

 

「……………」

 

 

 そのあからさまなニコニコ顔にイッセーは気付いた。

 この女――匙が自分を監視しているのを知った上でわざと言ってやがると……。

 少し離れた物陰から此方を見て殺気立ってる匙を時折確認してる辺りが特に彼女の持つ『良い性格』さが滲み出ている。

 

 

「さぁ行きましょう?」

 

「…………」

 

 

 此処で無理矢理にでも突っぱねる事自体は可能かもしれない。

 しかしそれはそれで、匙にしてみれば憧れの会長に酷いことをしたと思うだろう。

 あの油断がこうまで面倒な事になるとは思いたくすら無かったイッセーは内心頭を抱えながら、ソーナに手を引かれる形で、生徒会室へと拉致されるのであった。

 

 

「さてと、此処なら()になっていても問題ないわ」

 

「何のつもりだ。いきなりあんな場所で話掛けやがって……」

 

「昨日、匙にアナタと居る所を見られたじゃない? あの後アナタはすぐに帰したけど、その後色々と言われたのよ」

 

 

 中から鍵を掛け、誰も入れない様にしてから付けていた仮面を外して素に戻ったソーナが、自分が先に帰った後の話をする。

 どうやら匙だけでは無く他の――イッセーにしてみれば名前すらどうでも良いし覚えてすら居ない眷属達にも広まってしまっていたらしい。

 

 

「後から戻ってきた他の眷属の子達に匙が怒りながら話しちゃったのよ」

 

「……。今もその匙ってのがこの場所の外から聞き耳を立てていると思うけど」

 

「そうみたいね。昨日も随分とアナタを貶してたし」

 

「そりゃあ匙ってのにしてみれば貶したくもなるだろうぜ」

 

「私から言わせて貰えば、何でアナタと居るだけでそこまで言われなくちゃならないのか理解できないわ」

 

 

 そりゃあ猫被った側のお前が好きだからに決まってるだろ……。

 と内心突っ込みながら、全く以てその匙に対してどうでも良さげにしているソーナを見てため息を洩らすイッセー。

 

 ソーナにしてみれば、作り上げた仮面を被った己に惚れられても窮屈なだけなのだろうが、それにしたってもう少しフォローのひとつでもしてやれば良いんじゃないだろうか……と人の事は言えないことを十二分に自覚しつつも思ってしまうイッセー。

 感情任せにキレて殺そうとまでした自分より、まだ前向きに生きている匙に上手いこと己の本質を見せて受け入れて貰った方が良い筈なのに、当の本人は完全に自分を理解してくれるイッセーに拘っているのがまた悲劇だ。

 

 

「単に手伝って貰ってただけといっても全く信じちゃくれない子をどう思えってのよ?」

 

「手伝ってなんか無いしな俺は。匙ってのが疑うのは正解だろ」

 

「それは結果論でしょう? 向こうは証拠もないのにそう言っている時点で論外だわ」

 

「……」

 

 

 元々眷属という自分が拘束される要因を持ちたがらず、両親や姉に言われて仕方なく偶々出会った様々な背景を持つ子達を眷属にしたソーナにしてみれば、自分のやることを否定して束縛したがる者は眷属だろうが敵意を持つ。

 ましてや、偶々眷属の一人が知り合いで、その背景が複雑故に助けてあげたいという気持ちを一応汲み取ってある程度助け船を出しただけの――もっといえばその眷属の子達に頼み込まれて仕方なく兵士にしたってだけの者にとやかく言われるのは流石にソーナもイラッとしてしまう。

 

 

「挙げ句の果てには『匙君が可哀想だからもう少し考えてあげてください』――ですって? 何故私がそこまで気を使わなくちゃいけないのかしら?」

 

「匙ってのがお前を好いてるからだろうが」

 

「それがどうしたの? 匙が猫被りをした側の私を好いてるからってそれを何故私が受け入れなくちゃいけないの?」

 

「それは……」

 

「無いでしょう? 自分の心を押し殺してまで応えてあげる程匙に魅力を感じないのよ私は」

 

「…………」

 

 

 よっぽど猫被りによるストレスが溜まりまくってたのか、愚痴る様に話すソーナにイッセーも何も言えない。

 

 

「わかったから落ち着けよ……聞いてたらどうするんだ?」

 

「言う手間も省けるからちょうど良いとすら思ってるけど、一応認識阻害の仕掛けを施しているから聞こえやしないわ」

 

「……」

 

 

 どんだけ昨日言われたのかをイッセーは知らないが、普段何を言われてもヘラヘラしてるソーナのこの文句の言い様からして、相当なストレスになっていたのだろうという事は察する事が出来た。

 だからといって慰める気は無いが。

 

 

「多分今日も言われるでしょうね。けどまた言う様なら私はもう言ってやる事にするの。

だからわざと見てる前でアナタに接触したしね」

 

「その為にわざわざあんな所でか。俺は最悪だったよ」

 

「私は悪くないわ。向こうが知りもせず否定しようとするからよ」

 

「余計拗らせた様にしか見えないんだけど……」

 

「そうかしら? 私は寧ろコソコソする必要が無くなるかもしれないとワクワクしているけど?」

 

「そりゃあお前だけだ……はぁ」

 

 

 天然で相手の心をへし折るのが上手いソーナらしいといえばらしいが、それが一応仲間となる者達にすら向けられる辺りがまたマイナスというかなんというか……。

 笑っているものの、その眼はとても綺麗に腐ってる今のソーナを見たらどんな顔を仲間達はするのだろうか……。

 メリットとデメリットを天秤に掛ければ間違いなく自分に拘るのはデメリットでしかないというのに平然と拘り続けるそのマイナス故の厄介なメンタルの強さは今のイッセーには無い勝る面なのかもしれない。

 

 

「昼休みもそろそろ終わるし、教室に戻る」

 

「もうそんな時間? 幸せな時間というものはあっという間ね」

 

「チッ……買ったメロンパンと野菜ジュースが無駄になっちまったな。これアンタにやるよ」

 

 

 食べ損ねたメロンパンと野菜ジュースを渡し、生徒会室を出ようと背を向ける。

 

 

「待ってイッセー」

 

 

 だがパンと飲み物を渡されたソーナがその二つを机に置き、イッセーを呼び止めた。

 

 

「まだ何か―――んっ!?」

 

 

 何か言われるのかと振り向いたイッセーだが、その瞬間不意打ち気味に視界が首ごと下げられると、眼鏡を外していたソーナに唇を塞がれた。

 

 

「…………」

 

「ちゅ……んっ……」

 

 

 生徒会室内に木霊するソーナのくぐもった声。

 呼鈴が鳴り響いても離れず数分程唇を重ねたソーナは瞳を潤ませ、頬を上気させながら漸く離れると、甘える様な声を放つ。

 

 

「背徳感って色々な意味で重要よね……。

は……ぁ……気持ちいい……」

 

「その状態のアンタを今すぐにでも見せてやれば誰でも騙せるだろうよ……」

 

「ふふ、それはイヤ。これはアナタにだけしか見せたくないから」

 

 嫌味を言うイッセーに微笑むソーナ。

 初めての頃、我慢の限界を越えたソーナがこんな調子で行った時に舌をそのままイッセーに噛みちぎられ、原型がわからなくなるくらいに殴られた。

 だが今のイッセーは嫌そうな顔をしながら口を拭う事はするけど、拒絶はしない。……いや、出来なくなっていた。

 

 一線を完全に越え、その後何度もストレスで心がけ荒む自分を変わらずその性質で受け止めて貰ってからは……。

 

 

「辛くなったら何時でも来てね?」

 

「………言ってろ」

 

 

 もう、既にイッセーもソーナの気質という沼に溺れてしまっているのかもしれない。




補足

バレたところでソーたん的にはノーダメージだし、寧ろこの際だからという考えに。

その2
単なる設定捏造ですが、このソーたんは元々眷属を持つ気が無く、リアスが持ってるからという周りからの小言に仮面を外す訳にもいかないので仕方なく持つことになったという設定。

そして匙が兵士になれたのは、本人の希望と既に彼に好意を抱いていた眷属達の押しにより仕方なくそうさせたという感じなので余計に関心がないというか、隠しているのはソーたんなのですけど、猫被りの側の自分に惚れられても迷惑でしかないとか思ってます。

……む、報われねぇ

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