色々なIF集   作:超人類DX

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サンプルへの感想の多さにびっくりだけど、ソーたん編だからね?


外れていく仮面

 この日、駒王学園は球技大会であった。

 ほぼ一日を使うので、授業が潰れるんだと喜ぶ生徒も多い中始まった競技はクラス対抗のドッジボールだった。

 

 

「ッラァァァッ!!!」

 

「…………」

 

 

 こういう行事はやっている内にテンションが上がる者が多く、現に今テンションが上がりすぎて寧ろ殺意まで滲み出しながら一人の男子生徒が対戦相手の男子に向かって明らかに顔面を狙って投球していた。

 

 

「ちょっ……さ、匙! あんまり強く投げすぎて外野の俺達も取れねぇよ!」

 

「うるせー! 取ったらさっさと俺に寄越せ!」

 

 

 手加減を殆ど忘れた、あり得ない威力のボールについて味方側である筈の者が加減してくれと頼むが、頭に血が昇りすぎた匙は全く聞き入れず、残り四人となった対戦相手のクラスの内野に残る男子生徒の一人――つまり兵藤イッセーに思いきりメンチを切っていた。

 

 

「さっきから兵藤一人を集中狙いしてるせいで、割りと暇だな……」

 

「あぁ、匙の奴、全然当てられないからイライラしてるし」

 

「流石に大丈夫かしら……?」

 

 

 鬼の様なストレートを投げては避けられての繰り返しに同じく内野に残る二人の生徒は暇そうに、一人だけ狙われるイッセーとそれをムキになって狙い続ける匙という実質タイマン勝負となりつつある流れを眺めていた。

 

 

「ダァァッ!! テメェ! 避けてばかりじゃなく取れよ! 根性無しが!!!」

 

「………………」

 

 

 そんな避けられ続けてイライラが募りまくっていた匙は、外野から流れてきたボールを片手に軽く罵倒しながらイッセーに勝負しろと吠える。

 しかしイッセーは何も返さず、自然体に立って匙を見据えている。

 

 

「ドッジボールなんだから避けたって良いじゃない……」

 

「あの内野の人、さっきから兵藤君に滅茶苦茶言ってるわ……」

 

「匙って奴でしょ? ほら、例の生徒会の……」

 

 

 当然そんな罵倒に対してイッセーと同じクラスの女子はいい気分はせず、匙の言い方に対して苦言を呈しており、何度目になるかも馬鹿馬鹿しくなる回数目になるイッセー一人を狙った投球を避けるのを見ていた。

 

 

「………」

 

「クソッ!!」

 

 

 再び避けられて悪態をつく。

 何故ここまで匙をイライラさせているのか? それは先日匙が偶々イッセーが同クラスの、今イッセーと同じ内野から自分を何とも言えない目をしながら見ている女子にプレゼントと思われる物を渡し、親しげにしていた現場を目撃してそれをソーナに教えた際に、自分が思っていた反応とは違う反応をされてしまったからだった。

 

 

(別の女と親しくしてるんだぞ!? なのに何で会長は……!)

 

 

 てっきりマイナスイメージを持つのかと期待し、あの時ソーナは確かに一度驚いていた。

 それなのに結局ソーナはイッセーに対して怒る様子もなく……

 

 

『わざわざ教えて貰ってありがとう』

 

 

 ただそれだけを言って終わった。

 幻滅も怒りも無く、ただただ愉しそうに。

 それがとてもショックで、とても悔しく、嫉妬となってイッセーにぶつけていたのだ。

 

 

「大丈夫? アンタだけそんな狙われて……」

 

「内野の数はこっちが多いし、このまま時間を稼げばこっちの勝ちになる。

彼が俺一人を狙ってくれるんなら寧ろありがたい話だよ」

 

 

 要するにソーナに全く嫌われてる様子が無いのが悔しく、何でも良いから自分が上である事を証明したいが為に意固地になってしまっているのだが、向けられてる本人は全く動じた様子も無く、その親しくしていた女子と楽勝気味な談笑まで噛ましているのに余計殺意を滲み出してしまう。

 

 

「ガァァァッ!!」

 

 

 だからつい自分が転生悪魔になった事で身体能力が人の枠を越えた事も忘れ、全力で投げつけた。

 

 

「危ない! 藍華!!」

 

 

 だがその怒りに任せた投球は本来向けられる筈だったイッセーから大きく外れ、偶々イッセーに近づいていた藍華へと襲い掛かり、クラスメート達が反応できないで顔面へと迫りくるボールを前に呆然と立ち尽くしている藍華に向かって叫ぶのと同時に激しいボールの衝突音が運動場全体に響き渡った。

 

 

「………!」

 

 

 誰しもが藍華の顔面に直撃したと目を覆い、藍華本人も激痛を覚悟して目をつぶった。

 しかし待てと暮らせど顔面に衝撃も痛みも来ないので恐る恐る藍華は目を開けると……。

 

 

「…………」

 

 

 藍華を庇う様にして前に立っていたイッセーが、代わりに顔面にボールを直撃させており、ボールが地面へと転がると同時にイッセーの鼻から夥しい量の血が流れている。

 

 

「ちょ、ひょ、兵藤!? は、鼻血が……」

 

「あ? あぁ……そんな事より怪我は?」

 

「私は大丈夫だけど、それより早く止めないと……!」

 

「テメー匙ィ!! 今のは絶対に故意だろ!?」

 

「しかも下手すりゃ桐生に当たってたじゃねーか!!」

 

「いくらドッジボールだからってさっきから酷いわよアンタ!!」

 

 

 ダラダラとエッチなものを見て興奮したかの様に鼻血を流すイッセーを皮切りに、クラスメート達が一斉に匙へと食って掛かり、ここに来てハッと我に返った匙は慌ててわざとじゃないと訴えるが、決してイッセーに謝ることはしなかった。

 

 

「静かに! 兵藤君は保健室へ!」

 

「ふぁい」

 

「私も付き添って良いですか?」

 

 

 しかし教師の一喝により鎮静化し、クラスメート達は匙にヘイトを溜めながらも、保健室へ行くことになったイッセーの仇を取ろうと本気になり、動揺した匙と匙のクラスは敗北するのだった。

 ちなみに、他の球技に出ていてこの事を見ていなかった凛が後でその話を聞かされ、全力で心配したのは云うまでもない。

 

 

 

 

「アンタに借りができちゃったわね……」

 

「別にキミの為にやった訳じゃないから気にしなくて良い」

 

 

 結局雨で球技大会は中止になり、午後からは自習となった。

 その際、学園の王子様こと木場祐斗の様子が最近凛宅でアルバムを見た時から妙にボーッとすることが多くわ彼らしからぬミスを連発していたのだが、イッセーがそれを知る訳も無く、事情を知った凛に泣きそうな顔と共に心配されながら藍華にお礼を言われていた。

 

 

「ほ、本当に大丈夫? また出てない?」

 

「出てないっての……」

 

 

 この自習内容は美術であり、折角だからとグループを作って似顔絵を書くといった内容で、イッセーは凛とアーシアと藍華とグループを組んで似顔絵を書いていた。

 

 

「ドッジボールなんだからしょうがないだろ、顔面に当たってしまう事だってあるんだし」

 

「だけど、匙の投げたボールの威力って野球選手が投げるボールみたいな威力に見えたし、当たったらタダじゃ済まない気がして……」

 

「「………」」

 

 

 藍華の言葉に一瞬ギクリとする凛とアーシアを余所に、イッセーはスケッチブックに視線を落としながら全く気にしてないとぶっきらぼうに返す。

 

 

「…………」

 

 

 そんなやり取りを挟みながらペンを走らせていたイッセーが手を止め、スケッチブックをそのまま閉じる。

 

 

「? もしかして描き終えたの?」

 

「………」

 

「ど、どうしてスケッチブックを閉じるのですか? 見せて欲しいのに……」

 

「私もちょっと気になるかも……」

 

 

 何気にグループの中で一番早く終えたイッセーの絵が見たい三人が揃ってじーっとイッセーを見ると、小さくため息を吐いたイッセーが閉じたスケッチブックを開き、そのまま三人に見せる様に広げた。

 

 

「期待されても困るけど」

 

「「「………」」」

 

 

 そう言って開かれたスケッチブックを覗き込んだ三人は、そのあまりの出来に息を飲んでしまった。

 

 

「う……上手いわね」

 

「こ、これ鉛筆だけで描いたんだよね?」

 

「しゃ、写真みたいです……」

 

「…………」

 

 

 鉛筆ひとつでここまで描けるものなのか? と思ってしまう程に上手すぎた三人をモデルにした絵がそこにはあり、思わず自分の描いていた絵と比べてしまい、恥ずかしくすらなってしまった。

 

 

「イッセーって絵が上手だったんだね……知らなかった……」

 

「絵が趣味って訳でも無いし、授業でもなければ描かないしな」

 

「で、でもこれだけお上手ならプロになれるかもしれませんよ?」

 

「世の中そんな甘く無いよ」

 

「いや、でも結構なレベルよ?」

 

「どうだかな……」

 

 

 かつてリアスをモデルにしょっちゅう絵を描いてたら、我流で進化した……なんて言える訳も無く、適当にはぐらかすイッセーに、三人は感心した様に自身達がモデルになった絵を眺めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、強烈な投球を危うく一般人の藍華にぶつけて大騒ぎ寸前にさせた匙はというと、あっさりとその事がソーナの耳に入ってしまい、この前から墓穴を掘りまくってしまっていた。

 

 

「一般人に対して全力でボールを投げて怪我をさせたらしいけど、その事に対して何か言うことはあるかしら?」

 

「は、鼻血出しただけでしたし……そ、その当たったのは兵藤なので……」

 

「彼も一般人よ」

 

 

 もっとも、そんな程度じゃ彼は揺れ動くなんてありえないけど。

 そう内心思いながら、余計どうでもよくなり始めた配下とそれを庇う残りの配下に向かって言い捨てるソーナ。

 

 

「別にとやかく言うつもりは無いけど、何かにつけて彼を目の敵にするのはそろそろやめたらどうかしら?」

 

「そ、それは! か、会長があんな奴と親しくしなければしませんよ!」

 

「そうですよ! 匙君だけに怒って、会長は何時も彼の肩を持つのがいけないと思います!」

 

「状況を聞いた上で匙の肩を持てというのが無理な話でしょうに」

 

 

 とにかくイッセーの肩を持たれるのが嫌だと宣う面々に、内心ソーナは『このやり取りもそろそろ怠くなってきたわ』と、目の前の者達が聞いたらショックだろう事を考えている。

 いや、実際は殆ど口に出してしまっていた。

 

 

「匙やアナタ達はどうしても私と彼が関わり合うのを嫌がる様ね。

けど、アナタ達の言う事を仮に聞いた所で、私はそこの匙の想いとやらに応える気なんてゼロよ。

そもそもそんな対象として見たことが欠片も無いし」

 

「なっ……!」

 

「会長! そんな言い方はあんまりですよ!」

 

「そうです! 匙君だって会長の為に頑張ってきたのに! どうして!!」

 

「じゃあ何? 自分の本心を犠牲にしてまで応えなくてはならないの? 悪いけど、そこまでする程のものが匙に感じないし、私は悪くない」

 

『っ!?』

 

 

 見たこともないゾッとするような笑みを浮かべ、感じたこと無い雰囲気を放つソーナに、それまで勢いづいていた匙達は、目の前のソーナがソーナでは無い様な錯覚と共に勢いを殺されてしまう。

 

 

「じゃ、じゃあ会長は兵藤がいくら他の女と親しくしてても……それでも兵藤なんかと……?」

 

「そうねぇ、そこまで看破されてるのなら敢えて言うわ。

まぁ確かに? 聞いた時は驚いたけど……ふふ、色々と燃えてきた事は確かね」

 

「そ、そんな……じゃああの噂は……」

 

「あぁ、彼と私が深い関係って奴かしら? 良いじゃない、寧ろ好都合よ」

 

 

 完全にカミングアウトし始めてるソーナに全員がショックを受けて動けないし、匙に至っては目が虚だ。

 

 

「どうも私は匙に一々応えないと気が済まないらしいけど、私にその気はない。

そしてだからといって私は悪くない。」

 

『………』

 

 

 ただ静かに、その仮面を外しながらソーナは誰にも理解されない性質をゆっくり解放する。

 

 

「幻滅したかしら? でも残念ね、私は元々こういう存在だし理解して貰わなくて結構よ。

もう、私の全てを知っても理解できる人が居るから……」

 

 

 その強烈な個性(マイナス)を……。

 

 そしてその個性を覆い隠した仮面が剥がれた時、ソーナは動き出すのだ。

 

 

「今日、眷属達に見せたら案の定だったわ。

ふふ、みーんな吐きそうな顔して私を見てた」

 

「お前……」

 

「でも、そうでもしないといい加減鬱陶しくてねぇ……? それに桐生藍華さん……だったかしら? ふふ……ねぇ、私とその子、どっちが良いの?」

 

「何を言ってる、俺は別に……」

 

「ええ、ええ、わかってるわ。

アナタならそう言うと思ってたけど、可能性がゼロじゃないからこそ私も動かないと。

心配しなくても彼女に何かすることはしないわ」

 

 

 イッセーの根底にあるリアスを想う気持ちを塗り替える為に。

 

 

「それより今日は姉の趣味の衣装を何着か盗んで来た訳だけど、どうかしら?」

 

「……」

 

「実力を過信して調子に乗った私にある日人間のアナタが現れてボッコボコにされ、そのままメチャメチャにされちゃった変身ヒロインって感じでやってみない? ほら、出会った当初みたいに」

 

 

 姉の衣装をかっぱらってコスプレし、ゴッテゴテの魔法少女衣装に下着すら履いてないスタイルになったりしながら……。

 

 

終わり。

 

 

 

 

 

 

 

 仮面をほぼ破壊して以降、余計に恨みを買ってしまったイッセーは、ある日聞いてしまう。

 

 

「こ、コカビエル……?」

 

 聞きたくない現実を。

 知りたくなかった逃げたくなる現実を。

 

 

「俺の目的はただひとつ! この聖剣を軸に再び三大勢力による戦争を行う!」

 

「…………」

 

 

 あまりにも違いすぎる親友の師の別世界の姿。

 気質は無く、最強の天使が惚れる要素も無い、戦争したがりの戦闘狂にイッセーはもう見て見ぬふりをしようとした。

 

 だがそれは許されなかった。

 

 

「ぐっ!」

 

「り、リアス部長! あ、危ない!!」

 

 

 違うけど、愛していた少女の危機を目の前に、イッセーは思わず飛び出してしまった。

 

 

「む、何者だ?」

 

「…………」

 

「え、い、イッセー? な、何でここに……」

 

「凛の弟君……今のはアナタが……」

 

 

 グレモリー眷属とコカビエルの戦いに突如割り込んだ一人の人間。

 それはグレモリー側にしてみればよく知る少女の家族でしかない少年。

 

 だがその少年はあわやの所でリアスを救い――

 

 

「!?」

 

「こ、これは……!?」

 

 

 隠し通した進化の積み重ねを解放した。

 そして……。

 

 

「10倍・ドラゴン波ァァァァッ!!!!」

 

「ば、馬鹿なぁぁぁっ!!!?!?」

 

 

 その進化の力をかつての親友の師に向けてしまう。

 

 

「……………………」

 

「こ、来ないで!!」

 

「っ!」

 

 

 少女を守る為に積み重ねた進化は神をも屠る領域。

 だが皮肉にもその積み重ねた力は、恐れていた通りの結末を迎えてしまう。

 別世界の少女そのものに……。

 

 

「あ、アナタは何なの!? そ、そんな……そんな恐ろしい力を……!」

 

「ま、待ってください部長! イッセーは私達を助けてくれたんですよ!?」

 

「そ、そうですよ! そんな言い方しなくても……」

 

「だ、黙りなさい! わからないの!? か、彼の力は化け物よ!」

 

 

 皮肉にも、この世界の転生者である凛とかつての裏切り者の一人であるアーシアに庇われる。

 

 

「どちらにせよ、彼が来なかったら死んでいたのはアナタよリアス?」

 

「そ、それは勿論わかっているわ。け、けど私は恐ろしいのよ……か、彼の存在が……」

 

「ふーん……?」

 

 

 そして皮肉にもソーナは恐れない。

 

 

「…………」

 

「リアスは感謝しているけど、アナタが恐ろしいだそうよ。

儘ならないわねホント、この世界のリアスにこの先永遠に恐れられるのだから……」

 

「…………………」

 

「辛い? 苦しい? ううん、声に出さなくてもわかるわ、辛いに決まっている。

でも大丈夫、どれだけ苦しくても私が居るわ―――だからもう忘れましょう? ぜーんぶ忘れさせてあげる」

 

 

 その隙を地から這い出るマイナスが突く。

 

 

「イッセー! ご飯食べよう!」

 

「凛とアーシアが妙に張り切っちゃってさ、及ばずながら私も手伝ったわ」

 

「沢山お話しましょうね?」

 

「……………」

 

 

 イッセーの明日はどこへ……。

 

 

※嘘です




補足

まあ、儘ならないというかソーたんがガチり出します。
嘘ですけど、拒絶されたら待ってましたとばかりにアグレッシブになります。


その2
ソーた~ん!


その3
前回のサンプルの設定っつーかコンセプトは微クロス。

藍華ちゃまの保護者さんが某堂島の龍の人で、眼帯兄さんとも顔見知りで、その伝でしょっちゅう二人して某東京の歓楽街に拉致同然に連れていれ、『藍華を守るなら強くならんかーい!』と眼帯兄さんによるスパルタ教育を施され、更にその伝で知り合った受難王子ことDAIGOさんが昔から顔見知りだった藍華ちゃまに続いてイッセーにまで懐かれ、龍おじさんと狂犬兄さんからめっちゃ睨まれて受難に加速かかったり……。


原作場面ではナチュラルに学園でイチャイチャしてるだけの話ですからね……まぁ、続ける意味もねーだろと。


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