色々なIF集   作:超人類DX

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ソーたん……ガチりだしたってよ。


壊した仮面の下

 この世界を生きる仲間達は仲間達に非ずだけど、どうやって生きているのかが気にならないかとなれば嘘になるけど、自分から調べる事はしていない。

 

 リアスちゃんがそうでは無い様に、間違いなく俺の知る皆じゃないのは解りきっているのだから。

 

 リアスちゃんも、サーゼクスさんも、ミリキャスも、アザゼルさんも、ガブリエルさんも、コカビエルのおっさんも、ヴァーリも……皆が皆、あのクソ野郎によって何かを喪う道を回避した持たざる者達であり、かつて俺達を引き合わせてくれた安心院なじみも存在していない。

 

 きっとそれが本来在るべき未来であり、俺達が過ごしたあの未来こそがイレギュラーな事は最早認めるしかない。

 だからこそ俺は知るのを恐怖してしまっている。

 リアスちゃんがそうで無かった様に、他の皆が性格から何から違い、更には種族の枠を越えた繋がりが無いからこそ敵対しているのかもしれない……という恐怖を。

 

 目の前でかつての仲間達と同じ顔をした者達が殺し合いをするだなんて考えたくもない。例えそれが本来在るべき未来の形だとしても、俺は皆と生きたあの時間を否定したくなんてない。

 誰にも理解して貰えなくても……絶対に。

 

 

 

 

 でも、現実はやっぱり儘ならない――そう改めて思わされるのに時間は掛からなかった。

 心の弱い俺が殺してやった程気にくわなかったリアスちゃんの裏切り者共の一人の言葉に負けた時点で、そう思う資格すら無かったのだと……。

 

 

 

 

 

 あれだけ強固に作り上げた仮面を自らの意思で壊したソーナの心に後悔の欠片も無く、寧ろ気分はとても晴れ晴れとしていた。

 元々自分を理解できる者は肉親であろうとも居ないと思っていたからこそ、余計な茶々入れだの干渉を防ぐ為に作り上げた良い子ちゃんの仮面でしか無く、最早運命としか思えない程に自分の全てを理解可能な同類の存在と巡り会えた今、最早こんな仮面を付ける理由は無いに等しいし、ちょうど良い機会だった。

 

 

「さて、今日も楽しく生徒会をしましょうか?」

 

『……………』

 

 

 元々自分には必要なんて無かったが、両親や姉や実家の体裁の為に持たされた眷属達との縁を切る。

 特に、その眷属達に好かれた結果、これ以上面倒なものを抱えたくなかったソーナの本心に反して兵士として転生し、挙げ句の果てに作り上げた偽の人格という仮面を付けた自分に惚れただの腫れただのという感情を向け、それが最近鬱陶しい一方的なものになっている匙にはとっとと諦めて貰う。

 

 先日の一件により、完全に付けた仮面を破壊し、そのマイナス性を剥き出しにし始めたソーナの穏やかな声に、眷属達の誰しもがソーナと目を合わせる事が出来ない。

 あれだけイッセーとソーナが親しくしている事に嫉妬して暴走気味だった匙でさえ、今のソーナが解らなくなって戸惑っている。

 

 

「か、会長、やっぱり昨日は言い過ぎました……」

 

 

 その急激な変質に匙達はソーナが怒っているからと想い、少し怯えながら謝る。

 

 

「言い過ぎた? 何を? あぁ、もしかしてアナタの想いとやらに一々応えていかなくてはいけないのに、拒否してる酷い私についてかしら? それなら別にどうとも思っていないから安心して頂戴? ………………元々0から100までどうでも良いし」

 

「っ……!」

 

 

 クスクスと、先日までなら間違いなくときめいていた筈のソーナの笑顔に匙の表情は吐き気を我慢するかの如くとてつもなく歪んでいる。

 

 

「そ、それをやめてくださいよ!」

 

「だから何を?」

 

「で、ですから、その……」

 

 

 気持ちを悪くなる雰囲気を……とは匙は勿論のこと、他の眷属達や女王をも言えなかった。

 明らかにソーナの根底から変化している事は感じるのだが、その正体が全くわからない。

 ニコニコと笑っているのに、とてつもない不愉快さだけしか感じないその理由が全く理解できない。

 

 それもそうだろう、元々ソーナの本質は悪魔だろうが何だろうが持たざる者とは余程の事がなければ解り合う事など不可能なのだ。

 その証拠に匙が言葉を詰まらせながら昨日の事についてと話すと、ソーナは手をポンと軽く叩き、相変わらず笑いながら、しかも唐突に言い出すのだ。

 

 

「思ったのだけど、アナタ達は散々私と兵藤くん―――いや、イッセーと親しくする事が嫌だと言い、匙の想いに応えろと言ってたわね?」

 

『……』

 

「そ、それは……」

 

 

 仮面を壊し、完全にぶっち切れ始めているソーナが何気にイッセーと呼び始めてる事に今は誰も突っ込めない中、クスクスと微笑むソーナは匙に向かって言う。

 

 

「応えてあげても良いけど、条件があるわ。その条件さえクリアーできたら応えようが、それこそ今この場で私の事を好きにしても良いわよ? イッセーの事も未来永劫忘れると誓う」

 

「え!?」

 

 

 思わず顔を上げる匙の目に少しだけ力が戻る。

 ソーナの身体を好きにして良い……という言葉に反応した感も否めないが、匙はあの鬱陶しいイッセーとソーナを引き剥がせるのであるなら今の彼女の変化など些細な話だとまだこの時は思えた。

 

 

「な、何をするんですか!?」

 

 

 だから匙は何でもやるつもりでソーナにその条件を問う。

 ソーナを手に入れられるなら何でもしてやる……そんな気迫まで取り戻したその力強い声に、ソーナは眼鏡を外しながら口を開いた。

 

 

「私って人を好きになるのに理由は無いという考えを否定しないけど、好きになり続ける事はとても強い意思が必要だと思うの」

 

「お、俺は会長以外に目移りしたりしません! 奴とは違います!」

 

 

 奴とはイッセーの事だが、ソーナは敢えてその事について言及はしないし、興奮した面持ちになっている匙や、その眷属達に期待もしていない。

 だからこそソーナはそんな皆の前で眼鏡を外すと、自身の顔を手で覆う。

 

 

「ふーんそう? なら―――」

 

 

 

 

 

 その瞬間、何かが無理矢理剥がれる嫌な音が生徒会室内に響き渡った。

 

 

「え………」

 

 

 余りに突然の事で誰もが目を丸くし、飛び散る赤い液体の滴が顔にかかる。

 

 

「こんな顔になっても私が好き?」

 

 

 そして匙達眷属が目にしたのは、自身の手で自身の顔の皮を剥いで血塗れの筋繊維丸出しのソーナの姿だった。

 

 

「き……キヤァァァッ!!!?!?」

 

「うげぇぇぇっ!?」

 

「か、会長ぉっ! な、何を!!?」

 

 

 当然ながら、その奇行に思考が追い付いた者達は顔を死人の様に真っ青にしながら、あるものはその場で嘔吐し、ある者は絶叫する。

 

 

「好きならこんな状態の私でも好きなんでしょう? あぁ、ちなみに一生この姿になるつもりだけど、匙、アナタのその強い想いとやらなら問題ないわよね?」

 

「ひ、ひぃぃっ!?」

 

 

 元の綺麗な容姿が見るも無惨な状態で笑うソーナに、匙は完全に恐怖で発狂し、言葉を返す事など不可能だ。

 

 

「あら、せっかく顔の皮を剥いだのに、どうして答えないの? 好きなんでしょう? どんな姿になろうとも? それともなぁに? 私の顔が好きなだけだったわけ?」

 

「く、来るなっ!!」

 

「さ、匙くん! は、早く逃げよう!」

 

「逃げるとは酷いわね? ねぇ椿姫?」

 

「い、今の貴女が私には解りません……!」

 

「あ、そう。まあ、最初から期待しちゃいないからしょうがないわね。

それにしても顔の皮って剥ぐとスースーするわ」

 

 

 軽く油断した心を抉る様なソーナに、誰しもがその忠誠も好意も投げ出し、生徒会室から逃げ出す。

 最早今のソーナはソーナでは無い……ただ関わりたくないという恐怖を完璧に植え付けられて。

 

 

「あーぁ、身体まで張ったのに酷いわね。

でも仕方ないわ、私は悪くない」

 

 

 ひとり取り残されたソーナも、最初から解りきってたと寧ろ好都合に笑い、自身の剥がした顔面を再び手で覆うと、そのまま上から下へとスライドさせる。

 すると血塗れに剥がれた顔面は映像を巻き戻したかの様に元に戻り、机や床に飛び散った血も綺麗に消え去った。

 

 

「例え肉片になって、手足が無くなっても、顔が消えても私はイッセーが好きだし、好きとはそういう事でしょうに」

 

 

 イッセーの抱える精神の一部を自身の性質のひとつによって手に入れた事により可能にしたのだが、その事実は誰も知らない。

 いや、知った所でソーナを真に理解できる者は誰ひとりとして居ない。

 机に置いた眼鏡をかけ直したソーナは、今頃何処へ逃げたのかもわからない眷属達の事を頭の中から消すと、とてもわくわくした面持ちでゆっくりと生徒会室を出る。

 

 

「~♪ これで心置き無くイッセーに迫れる。

ふふ……とんだ邪魔のせいで横から現れた子が居るみたいだけど、大した問題じゃあないわ」

 

 

 目指すはイッセー。

 先日、姉であるセラフォルーが趣味で持ってる衣装を失敬していたソーナは、趣向を変える気満々だった。

 

 

「あ、そういえば例の教会からの使者の話をしてあげないと。

きっとイッセーが聞いたら悲しむけど、私が癒してあげるわ……うふふ♪」

 

 

 完全に壊した仮面の下――本来の自分を隠すのをやめてしまった今、誰も制御はできないのだ。

 心底愉しげに携帯を取り出した彼女の本質がこれなのだから。

 

 

 

 

 

 色々と面倒な局面になっているイッセーはこの日、家に閉じ籠ろうとした所を、完全に仮面をはずしているソーナに捕まった。

 別に振り切ろうと思えば簡単に振りきれる自信はあったが、学園内ですらその仮面を付けなくなっている彼女が何を考えているのか微妙に気になってしまい、最早行きなれてしまった彼女の自宅へと招かれる事にした。

 

 

「……。お前何があった?」

 

「んー? 何がってなぁに?」

 

 

 招かれ、リビングのソファに座らされたイッセーは三分程ソーナに待たされたのだが、その理由が寝室から出てきたソーナの格好にあった。

 イッセーはかつて殺してやったというだけの認識で覚えてないが、ソーナの格好がセラフォルー・レヴィアタンを彷彿とさせるごってごてで際どすぎる魔法少女的衣装なのだ。

 

 これには本質を制御してない以前に何があったと思うのも無理は無く、実際イッセーは自分の目の前で短いスカートをヒラヒラさせながらポーズしまくってるソーナに何があったのかと聞いている。

 

 

「これどう? 姉の衣装部屋から何着か盗んで来たのだけど」

 

「格好の事なんざどうでも良い、何であれだけ猫被ってたお前がそれを辞めた?」

 

 

 よく見たら短いスカートなのに下着を履いてない事に気付いてしまったイッセーは、妙なテンションのソーナに事の真相を確かめようとする。

 別にソーナが猫かぶりを止めた事は本人の意思の問題なのでとやかく言うつもりもないのだが、その猫かぶりをやめた事で彼女の眷属達がどう思うのか――

 

 

「もうあんな作ったキャラに用は無くなっただけだからやめたのよ。

まあ、一応まだそれなりに猫かぶりは続けるけど、ある程度隠す事はやめるつもり」

 

「………。その事をお前に騙されて眷属になった奴等は……」

 

「あぁ、アレ? 散々アナタとの関係に難癖つけたから、目の前で顔の皮剥いで、『こんな私でも好いてくれるならイッセーの事は永久に忘れる』って言ったら、全員して逃げたわ」

 

「……………」

 

 

 クスクスと、姉のセラフォルーの衣装のせいか若干胸元が寂しい魔法少女・ソーたんにイッセーは眷属達がソーナにどう思ったのか完全に察して苦い顔をする。

 

 

「何でイッセーがそんな顔をするの? もしかしてあの子達に同情してるの? ……………へぇ? 向こうは散々アナタを嫌ってるのにムカつくわね」

 

「勘違いするな、連中にどう思われてもどうでも良いんだよ俺は」

 

「あ、そう……」

 

 

 匙達に同情したと思ったソーナが、藍華や凛の時には見せなかった嫉妬じみた表情を見せる。

 よくわからない価値観だ。

 

 

「まぁ良いわ。それよりどう?」

 

「話を聞くだけだ俺は……」

 

「まぁまぁ、『悪の軍団に連勝続きで、調子にのり始めた魔法少女に、悪の軍団から雇われた孤高の傭兵に半殺しにされた挙げ句メチャメチャにされた』ってシチュエーションでどう?」

 

「ふざけてるのかテメー」

 

 

 本質を解放してしまってるせいか、余計に迫ってくるソーナにイッセーは舌打ちしながら頑なに拒否し、付き合いきれないと立ち上がる。

 

 

「一人でやってろ、俺は帰る」

 

 

 これまで何度もソーナの言葉に負けてきたが、今日に関しては単に猫かぶりをやめた理由が聞きたかっただけだったので、そのまま帰ろうとするイッセー。

 しかしそんなイッセーに笑みを深めたソーナは思い出したかの様に言う。

 

 

「コカビエルって堕天使に聞き覚えはあるわね?」

 

「………!」

 

 

 ピタリと明らかに動揺したイッセーの足が止まり、ソーナは更に口を歪めながら笑みを浮かべる。

 

 

「アナタのかつての()()の一人。

もっとも、この時代では接点すら無いけど……」

 

「何が言いたい……」

 

「実はね、そのコカビエルについての情報を手に入れたわ」

 

「…………」

 

 

 嫌らしい言い回しだが、思惑通りイッセーは再びソファに座る。

 

 

「何だ、その情報ってのは」

 

 

 かつて死の先から這い戻った尊敬すべき親友の師。それがイッセーにとってのコカビエルであり、この世界を生きるコカビエルが持たざる者だとしてもどうしているのかは気になっていた。

 別に独自に調べれば良いのだが、コネなんてそれこそ皮肉な事にソーナしか居ない今のイッセーに調べる手だては無いに等しいのだ。

 

 

「教えても良いけど、そうねぇ……『魔法少女を捕まえたその傭兵さんが情報を引き出す為に拷問する』って感じで聞いて欲しいわ?」

 

「テメェ……」

 

「怒らないで、Win-Winよ此処は。

あぁ、勿論拷問内容は……ふふ♪」

 

 

 ヒラヒラと下着を履いてないスカートの中身を見せるソーナが頬を染める。

 この時点でどうして欲しいのか等誰が見てもわかる。

 

 

「言え、すぐに」

 

「あ♪ ………………。い、言わないもん!」

 

 

 半殺しにしようがヘラヘラ笑うだけで、決して口を割る様なタイプでは無い事はすでに知っている。

 本気で嫌だが、コカビエルの事を聞けるのなら仕方ない……と、言い訳っぽく考えたイッセーはソーナの手首を掴みながら壁際に追い込み、付き合う事にした。

 その際、一瞬悦んだ声を出すソーナは一拍置いてからキッと意思の強さを感じる表情を作り、言葉もまたそれっぽい台詞で言わないと返す。

 

 猫かぶり状態ならあり得ないが、本質は割りと姉に似てるのかもしれない……色々と。

 

 

「私はアナタみたいな悪人に負けない!」

 

「…………」

 

「ひぅ……! な、なんで……私の服を破るの? み、見ないでよ……!」

 

「…………………………」

 

「や、やめてぇ……! そ、そんな所吸っても……」

 

「……………………………………………おい、早く言えよ」

 

「はぁ……はぁ、もう少し続けて? こ、これ凄いわ……何か背徳感と合わせて凄いわ!」

 

「…………」

 

「んっん……続きね?

わ、私を縛ってどうするの……? そ、それしたら赤ちゃんができちゃう……」

 

 

 この後、約7時間掛かって聞き出せたイッセーだが、聞いた瞬間後悔し、その心の弱体化の隙をソーナに突かれ、お泊まりコースになったらしい。

 

 

「……………」

 

「残念だけど、多分アナタの知るコカビエルとは一番かけ離れていると思う」

 

「………………………」

 

「泣きたいなら泣きなさい。誰かが責めても、私は責めないわ……だから、ね?」

 

「っ!!」

 

「ひゃう!? あは♪ そうよ……あぁ、イッセー、嬉しい……好き……好きぃ……」

 

 

 その現実を忘れようと。




補足

顔すら剥がして口裂け女の如く『ワタシ、キレイ?』なんてされたら……ねぇ? しかも皮肉な事にイッセーなら対応が全く変わらないだろうというのがまた……。

その2
魔王少女から衣装かっぱらって敗北縛られ魔法少女プレイがしたいお年頃のソーたん。


ソーたんを崇めましょう。

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