色々なIF集   作:超人類DX

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いい加減にやりましたっつーか、かなりはしょってます。


やはり儘ならない

 アーシアにとっては多分新たな一歩なのかもしれないけど、イッセーの心は依然として晴れはしない。

 

 親友の師にて、自分も尊敬していた堕天使。

 転生者により一度は死ぬも、忘れ去られたモノ達が行き着く世界にて更なる進化を遂げて帰還した最強の堕天使。

 

 ちょっと顔は怖いけど、大天使すら惚れ込む程の器を持つ程の男。

 

 そんな男のもしもがこの世界における彼なのだが、知ってしまえばしまう程に自分が生きた世界のコカビエルとは力も器も真逆の只の堕天使である現実が、ただでさえリアスの時点で脱け殻になりかけているイッセーの精神が削られていくのだ。

 

 以前の世界ではリアスの裏切り者で、この世界ではただの少女と話をしたところで何が変わる訳じゃあ無い。

 いや、誰にもこの喪失感を埋める事など出来やしないのだ。

 

 

 けれど世界はそれを許さない。

 かつて仲間だった者同士が殺し合うという現実が新たにその心を襲う事になる時、イッセーは選択しなければならない。

 

 

 

 

 最後の一線である『拒絶』か『その者の死』という道を……。

 

 

 

 

 

 

 本来なら七つに別れた聖剣のひとつ、天閃の聖剣を持ったフリード・セルゼンに襲われるのだが、ゼノヴィアとイリナに協力を申し出て聖剣捜索をしてる現在、一切その気配が無い。

 その理由は凛にもわからないし、ましてや赤龍帝では無くなってしまっているイッセーがとある世界にて神の領域と呼ばれる力を駆使して半殺しにした等と思う訳もない。

 

 結局わからないまま不安に思いながらも聖剣捜索は続いていく。

 妙にアーシアがそわそわしてるのが気になりながら……。

 

 

 そんな凛達が行動しているその頃、自らの仮面を外しだしたソーナはといえば、女王を抜かした眷属達全員が勝手に行動している事に頭を悩ませているリアスのもとへと訪れていた。

 

 

「アナタの眷属さん達は皆あの悪魔祓いと結託して聖剣探しをしている様ね? ふふ、友人思いの子達じゃない?」

 

「ソーナ……?」

 

 

 何も知らない。記憶を持たない。けれどあのイッセーから複雑な感情を向けられているリアスにソーナは()の状態となって話せば、当然仮面を付けたソーナしか知らないリアスや女王の姫島朱乃は違和感を覚えてしまう訳で。

 

 

「中々無いんじゃないの? 悪魔祓いと悪魔が手を組むなんて?」

 

「それは――いえ、それじゃあ困るのよ。そもそもあの子達はきっと私の騎士である祐斗を探しているだけで……」

 

 

 クスクスと、どこか不気味さを感じさせる笑みを浮かべているソーナに気圧されながらもリアスは自分の眷属達の勝手な行動についてを話す。

 朱乃がソーナに茶を出すが、それには全く手を付けずに居るのもそうだが、親友であり幼馴染みでもある筈の彼女に妙な嫌悪感を感じてしまう。

 

 

「だったら早く探してあげなさいよ? モタモタしていたらコカビエル辺りに狩られちゃうかもしれない」

 

「わかっているわ。だから探しに――」

「まぁ、狩られる心配はないでしょうけど……」

 

「……え?」

 

 

 それが何なのかはわからないし聞く訳にもいかない。

 けれどソーナが小さく呟いたその言葉を聞いた瞬間、停滞していた全ての状況は加速する。

 

 

「それはどういう意味なのかしらソーナ?」

 

「ん~? 勘って奴かしら? たまに当たるのよね、私の勘」

 

「……。それはソーナなりの冗談って奴なの?」

 

「冗談? 私は何時でも大真面目よ……ふふ」

 

「……………」

 

 

 とぼけた調子で笑うソーナ。

 こんな顔をするのは見たことが無かったリアスは違和感を感じてしまうソーナに、自身の兵士である凛の弟――リアスも何度か顔を合わせているものの一言もまともに会話をした事が無いイッセーという()()の少年の事を思い出す。

 ここ最近彼とソーナの仲が学園で噂される様になったのと何か関係があるのか? リアスにしてみれば単なる馬鹿馬鹿しい噂だと思っていただけに、今のソーナのどこか違和感のある変化というのか……とにかく何か嫌な感じがすることと関係があるのだろうか? そう考えるリアスだが、たかが一人の人間にソーナが変わる訳も無いし、ましてやあの無口な凛の弟に限って――等と考えるものの、一度抱いた懸念というものは完全に払拭させられるだけの材料が無ければ簡単に振り払えない。

 

 

「……。取り敢えず皆の様子を見に行くわ」

 

 

 そろそろ凛達を捕まえなければならないというのもあるリアスは、朱乃に仲間達の所へ向かうと告げながら席を立つ。

 

 

「それが良いと思うわ。私の勘も殆ど外れるし」

 

「………行くわよ朱乃」

 

「は、はい。ではシトリー様……」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 妙にニコニコしている彼女に見送られたリアスと朱乃。

 そんな背中を見送ったソーナは一人オカルト研究部の部室に残ると、少し冷めたお茶の入ったカップに触れ、先程とは比べ物にならない――寒気すら覚える口を歪めた笑みを溢している。

 

 

「あーぁ、これで見てみぬフリは不可能になって近い内にコカビエルが動いて戦闘か何かに発展するでしょうねぇ。

そうなったら今のリアス達ではコカビエルを抑え込むなんてできないし、最悪捕まっちゃうかも」

 

 

 指で触れたカップの中身が消える。

 

 

「どうするの? アナタを知るリアスでは無いけど危険が迫っている。

アナタは見ているだけ? ふふ、それは無いわね……アナタはきっと考えるより先に動いてしまう――リアスの為ならね」

 

 

 とても嬉しそうに……この先に待ち受ける未来を思い浮かべながらカップを持ち、そして握り潰すソーナの手から破片による切り傷で血が流れる。

 その自らの血を舐めながら独りクスクスと笑う姿を見れば誰もがあのソーナなのかと思ってしまう程に今の彼女は悪い意味でのびのびとしていた。

 

 

「私、アナタの生きた世界のリアスには勝てないかもしれないけど、この世界のリアスになら負ける気は無いわ。いえ、アナタが恐れてリアスから目を背けてきた時点で決してるといえるわね」

 

 

 何もかもを台無しにする誰に教えられた訳でもなく開花してしまった過負荷(マイナス)として……。

 

 

「そうと決まれば教えてあげないとね……クククッ!」

 

 

 完全に制御をやめたソーナは止めようとも止まらない。

 

 

 

 

 

 アーシアは約束通り誰にもイッセーの事についてを話さなかった。

 お陰で聖剣のひとつが道端に落ちていたのを凛達が発見出来た訳だが、何故そんなものがこんな場所にあったかについてはアーシアにしか解らず、また約束通りに口を割らなかった為に謎のままだった。

 

 そしてその勢いに乗って一人聖剣探索をしていた木場祐斗を捕まえ、よく話し合う事にも成功し、自身の暗い過去の元凶が聖剣に狂った初老の神父によるものだということを知る事も出来て、今後は揃って聖剣探索をする事になったのだが……。

 

 

「こんなガキ共に何を手こずっているのやら……。お陰でこの俺が直接出張らないとならなくなったではないか」

 

「こ、コカビエル……!?」

 

 

 イッセーがフリードを本来の時空よりも先んじて殴り飛ばした影響によるものなのか、コカビエル自らが動くという状況が発生、凛達の目の前でイリナが気絶させられ、人質に取られてしまった。

 

 

「イリナちゃん! イリナちゃんを放して!」

 

「それには交換条件だ小娘共。

お前達が持っている天閃の聖剣と破壊の聖剣の二本と小娘の交換だ」

 

 

 最上級堕天使の一人と数えられているだけあり、戦闘経験値が圧倒的に足りない凛達に対して気絶したイリナを抱えているコカビエルは精神的にも有利に立っていた。

 

 

「兵藤さん、どうするんだい……! いっそコカビエルに渡すくらいならこの場で僕が破壊して……!」

 

「落ち着いてください! そんな事をすれば紫藤さんの命が奪われてしまいます!」

 

「か、構うものか! 折角復讐の代償が目の前にあるんだぞ! 僕はこの時の為に生きてきたんだ!」

 

 イリナの命と凛達が持つ残りの聖剣の交換を吹っ掛けたその瞬間、一度は話し合いで落ち着きを取り戻した木場祐斗がイリナの命を省みずに確保した聖剣の破壊を宣言する。

 彼にしてみれば自身の人生をねじ曲げられた元凶でもあるので仕方ないといえば仕方ない。

 だが今目の前でコカビエルに身柄を抑えられた相棒の命を無視しようとする祐斗の言葉にゼノヴィアが納得できる訳もなく、ましてや敵方である悪魔が言った事もあって異をとなえた。

 

 

「時間切れだ。話が纏まらんのならこの小娘は人質として此方が預かろう。

あぁ、今夜までに結論をつけなければこの小娘の肉体はこの世から消え失せる――――よく考えるのだな」

 

「っ! 待て!」

 

 

 そんな揉めている少年・少女を少し見ていたコカビエルは飽きたのか、今夜までというタイムリミットを告げると、イリナを抱えて飛び去ってしまった。

 

 

「貴様! イリナが連れ去られたぞ!!」

 

「知るもんか!」

 

「お、落ち着いてよ二人とも! ここで喧嘩をしたらイリナちゃんが……!」

 

 

 互いに激昂する祐斗とゼノヴィアを止める凛。

 こうしてコカビエルとの対峙が避けられなくなり、この後リアスと朱乃がやって来て祐斗がまた逃げ出し、ゼノヴィアもイリナを助けようと単独で飛び出したたという騒動までに発展してしまう。

 

 

 そして再びコカビエルがやって来てリアス達に宣戦布告をする事で、聖剣復活の儀式の場へと選ばれた駒王学園の校庭にて決戦を行う事になる。

 当初魔王に援軍を求める話が出たのだが、リアスがそれを拒み、結局現状の戦力で対処するという流れになった。

 

 だが正直この戦力でコカビエルと戦うのはあまりにも無謀だった。

 だからアーシア、もしかしたらという思いと共にイッセーに話をして助けて貰おうと、こっそりと抜け出してイッセーの部屋へとやって来たのだが……。

 

 

「イッセーさんが、居ない?」

 

 

 イッセーの姿は部屋の何処にも居なかった。

 一体どこへ行ったのか、暫く質素通り越してまるで刑務所の独房の様な部屋の中に何か手懸かりはないかと探すも、見つけることはできない。

 結局諦めたアーシアは肩を落としながら今まさに学園へと行こうとするリアス達に何食わぬ顔をして混ざり、決戦の舞台へと向かうのであった。

 

 

 そこで見たものは、学園の校庭全体を使って聖剣を再統合しようとするコカビエル一派。

 そしてコカビエルの戦争への飽くなき執念と狂気。

 

 その前哨戦の戯れとしてリアス達が選ばれ、コカビエルの用意した番犬達との戦い。

 アーシアは何も出来ずに、傷ついた仲間達を神器で治療する事しか出来なかった。

 

 凛が赤龍帝の力を鎧に変化させて戦っても何も出来ない……それが無力感として彼女の中にのし掛かる中、イリナの身柄と交換した事で揃った聖剣が遂に再びひとつとなる。

 

 

「やっと復活した! これぞ聖剣だ!!」

 

「バルパー・ガリレイ!! 僕を覚えているだろう!! 僕は貴様を斬る!!」

 

「ん? 誰かと思えば計画に使ったあの時の子供の一人か? とっくにのたれ死んだと思ったがまさか生きていたとはな。

ふん、だがお前ごときに今更興味は無い、見ろ! 聖剣は再び甦った!」

 

「そんな事の為に貴様は僕や僕の仲間達を!!」

 

「大いなる目的の為には小さな犠牲だ。彼らもきっと喜ぶだろう、この聖剣の復活をな!」

 

「ふざけるなぁぁっ!!!」

 

 

 少し遅れて馳せ参じた祐斗が魔剣創造という神器を使い、怒りに身を任せてバルパーというはぐれ神父に襲い掛かる。

 だがその刃は完成した聖剣を持った――何故か顔面がボルト止めだらけになっているフリードによって止められてしまう。

 

 

「ぐっ!?」

 

「おおっと、旦那を殺る前に俺と遊んでみようぜ?」

 

「お、お前はフリード!? そ、その顔は……!」

 

 

 まるで某世紀末の世界に生きる、刺々肩パットとショットガン……そして鉄仮面がチャームポイントのバイク乗りさんの素顔みたいな悲惨極まりない容貌と化しているフリードについ怒りを忘れて驚く祐斗。

 だがフリードは自身の姿について語る事はせず、完成した聖剣を駆使して祐斗に斬りかかる。

 

 

「さっさとテメーをバラしてアーシアたんに聞きてぇんだよ。だから死ね!」

 

「あ、アーシアさん……? くっ!」

 

 

 再びひとつとなった聖剣の威力に一旦後退する祐斗。

 こうして聖剣を持つフリードと祐斗の戦いは激化する中、コカビエルが呼び出した番犬を片付けていたリアスは今危機に陥っていた。

 

 

「サーゼクスの妹だからと期待したが、所詮はまだ小娘だな」

 

 

 リアス渾身の滅びの魔力の一撃を耐えきったコカビエルが、片膝をついたリアスを穿とうと光の槍を構えている。

 

 

「くっ……!」

 

「り、リアス!」

 

「部長!!」

 

「カバーが遅い」

 

 

 勿論仲間達がリアスに加勢しようとする。

 だがそれよりも早く放たれた光槍はリアスの身体を貫こうと襲い掛かる。

 ここでリアスを殺せば兄のサーゼクスを引きずり出せる……その考えのもとコカビエルは確かにリアスを殺したと確信していた……。

 

 そう……。

 

 

 

「え」

 

「む?」

 

 

 光の槍が貫くその瞬間、真横から飛んで来た赤い光弾によって弾かれるまでは……。

 誰しもが突然の現象に固まる中、コカビエルだけはその方向を向いており、自然と皆の視線もそちらへと向けられた。

 

 

「…………………………………」

 

 

 ただ一人の……居る筈の無い人間に。

 

 

 

 

 

 思わず飛び出してしまった。

 コカビエルがリアスを本当に殺そうとしていたから。

 彼女に誘導され、思う通りに動いてしまった……それが酷く腹立たしいが、リアスの命は救えた。

 

 

「い、イッセー……?」

 

 

 その代償は隠していた事の露呈だとしても。

 

 

「凛の弟君……!? な、何故アナタが!? い、いえ、今のはアナタが!?」

 

「………………………」

 

 

 コカビエルに危うく殺されかけたリアスが驚愕の眼差しで、何も語らぬ無口な少年に問い掛ける。

 

 

「誰だ貴様は?」

 

 

 それとは反対に、突如現れた人間であるイッセーに不遜な態度で何者かと問うコカビエル。

 どちらのその反応もイッセーにしてみれば心を削られていく台詞。

 ましてや仲間だった者達の殺し合いなんて見たくもなかったのだ。

 

 

「イッセー! ど、どうして此処に……? し、しかも今部長を助けたのは……」

 

「……………」

 

 

 凛が鎧の状態を解除してイッセーに近寄り、色々と詰め寄るが、本人は複雑な表情で目を逸らすだけで何も返さない。

 ただアーシアだけがホッとした表情を浮かべているが……。

 

 

「そこの赤龍帝の小娘の縁の者か? 見たところ単なる人間の様だが」

 

 

 ゼノヴィアと祐斗が依然としてフリードと交戦する横で、イッセーの出現によりそれ以外の者達の視線を独占する中、ただ無言だったイッセーは凛、小猫、アーシア、朱乃、学園の屋上から様子をソーナと共に防壁を張りながら見ていたソーナ眷属達――――そしてコカビエルの目の前で、その力を解放した。

 

 

「!?」

 

「なっ!?」

 

「え……?」

 

 

 全身から放出される暴風の様なオーラ。

 最初は白く、バーナーの炎を思わせるものがやがてその色を金色へ、金色にスパークがはいるものへと変わっていく。

 

 

「この力は……!?」

 

「な、なによ……こ、これは……」

 

「い、イッセーが……」

 

 

 その力はオーラが金色へと変化した時点で異常なまでの強大な力を感じさせており、それまで交戦していた祐斗とゼノヴィアとフリードの動きをも強制的に止める程に強すぎる力を植え付けさせた。

 

 

「あ、あれは兵藤さんの弟……」

 

「何故彼が――あ、おいフリード!!」

 

 

 当たり前だが一般人である筈の彼がその場に居て、しかも強大な力を放出しているのは驚くに値するものだ。

 しかしその姿を見た瞬間、フリードが憎悪に染まった形相で二人との交戦を止めて走り出したのはどういう訳なのか……祐斗もゼノヴィアにもわからない。

 

 

「ただの人間ではないな小僧……!」

 

 

 そしてコカビエルもまた強大な力を放出する人間という認識に変わった瞬間、完全にリアス達からターゲットを変更し、イッセーに向けて好戦的な笑みを浮かべる。

 だがイッセーの放つ力はまだ上がある……アーシアとフリードが見た領域……。

 

 全身を覆う金色のオーラが赤く、バーナーの様に荒れ狂う質は穏やかな風の如く。

 安心院なじみがイッセーを含む仲間達全員に教え込んだ神を叩き潰す領域へと、イッセーは再び踏み込んだのだ。

 

 

「うっ!?」

 

 

 元人である凛達はそのイッセーの姿に神々しさをも感じていた。

 だがリアスは真逆に、突如現れて放ったその力の質とイッセーという人間から感じる異様な気配にハッキリとした恐怖を抱き、それに当てられたせいか突如として襲い掛かってきた吐き気に口を抑えた。

 

 

(あ、あれは何? に、人間の放つ力じゃない……!)

 

 

 胃から逆流しそうになるものを押さえながら、リアスは自分の目の前に立つ赤きオーラを放つ少年から思い切り目を逸らした。

 これ以上視界に入れたら完全に吐いてしまうから。

 

 

「き、来てくれた……!」

 

 

 逆にアーシアはイッセーの登場に根拠のない安堵と嬉しさを覚え、凛は凛で普段のイッセーに対するフィルターのせいか、寧ろ見惚れ始めていて、小猫や朱乃も驚きはしたもののリアスの様な嫌悪感は特に無さそうだ。

 ただ一人……リアスだけがイッセーの姿に本能的な恐怖と拒絶をしているのは何たる皮肉か。

 

 

「会えたなァァァッ!! クズがァァッ!!」

 

「…………」

 

 

 赤きオーラを放つイッセーに誰もが立ちすくむ中、フリードが憎悪を滾らせながら聖剣で斬りかかる。

 しかしその一閃は文字通り人差し指一本で防がせ……。

 

 

「あ……が……っ!」

 

「な、なんだと!?」

 

 

 その身を貫かれ、絶命してしまった。

 それは勿論バルパー・ガリレイが我に返って驚愕する程であり、鮮血を散らせながら絶命したフリードの手から落ちた聖剣がイッセーの足元に眠る様に横たわる。

 

 

「……………」

 

「フリードを殺したか。

くくくっ、他人を殺すのに躊躇いが無く、また動揺もないか。気に入ったぞ?」

 

「………………」

 

 

 コカビエルの言う通り、フリードの心臓を貫いて殺したイッセーの顔色は全く変化が無く、まるで殺す事に慣れている様な様子だった。

 それがどうやらコカビエルの気分を良くさせたらしいのだが、反対にリアスの表情は更に嫌悪で歪んでいた。

 

 

「どうだ小僧? フリードの代わりをやらんか? お前なら俺の部下にしてやっても良いぞ?」

 

「なっ!? だ、駄目に決まってるでしょう!? イッセーは私の……」

 

「ふん貴様なんぞに聞いちゃいない。で、どうだ小僧? 俺にはわかるぞ? それほどの力を持ちながら振るう機会がまるでない世の中に失望している……俺と同じだ」

 

 

 余程気に入ったのか、イッセーを勧誘するコカビエルは知った様な事を言う。

 それは一部合っているのかもしれない……確かにイッセーは仲間達と全力で生きた頃が一番彼らしく、それがまるで出せないこの時代には不必要な存在なのかもしれない。

 

 

「この俺とぬるま湯に浸った世界を混沌に戻そうではないか! そうなれば小僧、貴様も思う存分その力を解放できる!」

 

 

 だがしかし――

 

 

「これ以上……俺をガッカリさせないでよおっさん」

 

 

 イッセーはそれ以上に、この時代を生きるコカビエルの在り方に失望してしまっていた。

 只の中身の無い戦争狂……そんなコカビエルと共に等イッセーは嫌だった。

 ましてや例え違うといえども、これが単なるエゴでもリアスを殺そうとした相手等と相容れる訳が無い。

 

 最早完璧な現実を叩きつけられた事で自棄になったイッセーは全身から放出させる赤きオーラを更に変異させる。

 赤から全てを包む穏やかな蒼へと……。

 

 

「まだ変わるのか……!」

 

「っぷ!?」

 

 

 赤きオーラは空を思わせる蒼へと変わる時、コカビエルは驚愕し、リアスは耐えきれずにその場で吐いてしまう。

 

 

「綺麗……」

 

「心が不思議と落ち着く……」

 

 

 凛とアーシアはその色に見惚れ、他の者達もまた聖書の神とはまた違う嫌悪が感じない神々しさに呆然とする中、久方ぶりに力を解放したイッセーは両手に蒼い球体状の光を作り、両手を合わせて巨大化させる。

 

 

「ファイナル・ドラゴン波ァァァァッー!!!」

 

 

 そして両手を突き出し、巨大な蒼き光線を撃つ。

 

 

「なに!?」

 

 

 その巨大な光線に対して反応が少し遅れたコカビエルは咄嗟に両手を突き出して防ごうとするが、リアスの滅びの魔力とは違い、あまりにも強大な力故に防ぐことは叶わず、蒼き光線は容易にコカビエルの全身を包み、そのまま断末魔の声すら出すこと叶わずこの世から消滅してしまった。

 

 

「…………」

 

 

 蒼き神越によって。

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 コカビエルをその手で殺めた。

 それだけでもかなり精神的に来ていたイッセーだが……。

 

 

「そ、それ以上私に近寄らないで!!」

 

「ぁ……」

 

 

 リアスによる恐怖から来る拒絶が完全なトドメとなった。

 恐怖に歪む表情で自分を見るリアスに心がへし折れかける……。

 皮肉にも恐怖するリアス以外には恐怖されないというのに、ピンポイントでリアスから完全に嫌われてしまう。

 

 だがそれを待っていたとばかりに現れたのは――

 

 

「あーぁ、折角アナタの為に必死に隠してきたものまで晒して助けたのに、リアスったら酷いわねぇ?」

 

「そ、ソーナ……!? あ、アナタ彼が怖くないの!? あ、あんな……あんな訳のわからない人間が!」

 

「怖い? 何を言ってるのかよくわからないわ、怖い訳が無いでしょう? 寧ろ私は好意すら抱く」

 

 

 リアスからの拒絶で完全に心が死にかけていたタイミングで現れたソーナがこれでもかと自分はイッセー側だと主張しまくる。

 

 

「…………」

 

「い、イッセーさん……! わ、私は怖くなんてありませんからね!? 大丈夫ですから!」

 

「驚いたけど、私も……。寧ろ気付いてあげられなくてごめんね……?」

 

「コーラ飴食べますか?」

 

 

 しかも最悪な事に、憎んだ相手からの受けが寧ろよくてますます死にたくなる。

 怖くなんてないと連呼するアーシア、気付けなかったことを謝る凛、傷心してると察してコーラ飴を寄越してくる小猫、復讐を結果的にアシストしたばかりかちゃっかり神器を進化させられた事により礼を言う祐斗等々……。

 全力で嫌悪するリアスと反対になっている現実が余計にイッセーの精神を破壊する中、異常者として認識されたソーナ眷属がまだ諦めてないのか、今回の事について……主にイッセーについてを危険因子扱いしてソーナの姉にて魔王であるセラフォルーにチクった。

 

 

「ふーん、ソーナちゃんとねぇ……」

 

 

 当初はどこの馬の骨ともわからん人間と悪評だらけの報告ばかり聞いていたセラフォルーも良い印象は無かった。

 だからその人間に会ったら取り敢えずハッキリとソーナから離れろと言うつもりで人間界に来たのだが……。

 

 

「俺を殺せぇぇっ!! 魔王なら不可能じゃないだろ!? もう嫌なんだよ! 俺なんか生きてたって意味がないんだ!!」

 

 

 会うや否や、狂った様に自分を殺せと懇願してくる姿に、とてもソーナに洗脳じみた真似をして性格を変質させた人間には思えなかった。

 

 

「洗脳? あぁ、私の部下共のでっち上げた話を本気で信じた訳ですか?」

 

「流石に全部は信じちゃいなかったけど、気にはなって。現にちょっと様子変だし」

 

「私は元からこうなんですよ。良い子ちゃんぶった方が貴方方には都合の良い事でしょうが……」

 

「ううん、寧ろ今のソーナちゃんの方が生き生きしてるし、そうは思わないよ。

なんかごめんね今まで……色々と押し付けてきて」

 

「は?」

 

 

 だから妹と対話し、本来の性格を知って今まで押し付けてきた事を謝るが、どういう訳かソーナの反応は意外そうなものだった。

 

 

「それより彼……イッセー君だっけ? 相当滅入ってるみたいだから何とかしてあげないと。

ソーナちゃんの眷属の子達にかなり嫌われてるみたいだし……」

 

「あんな連中は今更どうでも良い。お姉様はイッセーや私に何も思わないのですか?」

 

「? ソーナちゃんはかわいい私の妹で、あの子は……なんだろう、強いけど弱いから……こう、何とかしてあげれたら手伝ってみたいかなって?」

 

「………………チッ、仮にも姉妹という訳ですか」

 

「へ?」

 

 

 血走った目でいきなり自分を殺せと喚かれた者としてはズレ過ぎる感想だが、その反応がソーナをセラフォルーとは姉妹なんだと自覚させられるに充分なものだったらしく、若干舌打ちまじりながらも認めざるを得なかった。

 

 

(……。従姉さんにアルジェントさんに同級生の桐生さん……最近だとあの戦車の子も怪しいし、私一人では流石にキツイわね。

となれば微妙に嫌だけど……)

 

 

 だからソーナはリアスに拒絶されて完全に自棄クソ化しているイッセーを引き込む為、意外な態度の姉を取り込むことにした。

 

 

「お姉様、取り敢えず彼を慰める為に力を貸して貰えますか? そうすれば私、お姉様が大好きになるんだけどなー?」

 

「え!? ホント!? 良いよ、お姉ちゃんなんでもやる!!」

 

 

 シスコンな所をうまーく刺激し、眷属連中への意趣返しも兼ねてソーナは動く。

 

 

「という訳でイッセー、『魔法少女ををえっちな意味で拷問した結果、激怒した姉魔法少女と戦い、既に従順になっていた妹に不意を突かれた所をぶちのめした挙げ句その姉も拷問する』ってな感じでどう?」

 

「むーっ!? むむむっ!?!?!?」

 

「(魔王が縛られてる……)……。帰る」

 

「まぁまぁまぁ、全く気が進まないのはわかるわ。

けど此処で上手く私の姉という後ろ盾を獲たら、この先ある程度はうざったい事も無くなるわよ?」

 

「んんっー!!! むーっ!!!」

 

「はいはい、良い演技してますよーお姉様? 今しゃべれる様にしますからねー?」

 

「ぷは! そ、ソーたん! な、何でお姉ちゃんを縛るの!?」

 

「だから設定ですよ設定。ほら魔王少女でしたっけ? お姉様の趣味通りに出来て満足でしょう?」

 

「ま、満足と言われたら吝かじゃないけど、流石にそんないきなりなんてのは――」

 

「へー? そうは言いつつも身体はとても期待してるようにソワソワしてるし……あら、お姉様の下着が大変な事になってますよ?」

 

「うっ!? い、いやこれは……」

 

「私知ってるんですよセラフォルーお姉様? 魔王少女だなんだ言ってますけど、本当はお姉様の力を遥かに越える異性の誰かに思い切り蹂躙されるのが大好きな性癖持ちで、衣装部屋の中にある隠し部屋にはお姉様自身を投影させた妄想日記があるって」

 

「や、やめてー!! それ以上は言わないでぇ!!」

 

「何も恥ずかしがる事は無いでしょう? ほら、よーく考えてみましょう? この状況はまさにお姉様が一人遊びする時の妄想に出てくる状況じゃあありませんか?」

 

「そ、それは……確かにそうかも」

 

 

 姉を縛り付け、更には取り込むという暴挙。

 仮にも魔王相手に負の側面全開になるソーナが姉を取り込む姿を見て完全に引いてるイッセーは取り敢えずそのまま逃げて帰った。

 しかし後日……。

 

 

「ね、ねぇねぇ、ギュッてしてあげようか?」

 

「…………おい」

 

「私は悪くないわ。貴方の事を色々と教えたらマゾより母性に目覚めただけだし」

 

「ふざけるなよテメー、俺はこいつを前に……」

 

「知ってるわ、まぁでもリアスが完全に貴方を拒絶してるし、逆もまた然りじゃない?」

 

「……………」

 

 

 皮肉な事に、ソーナが余計な事をした結果、母性愛に目覚めた魔王に好かれてしまうという地獄が待っており、完全にソーナ眷属達の目論みから外れてしまうのだった。

 

 

「辛かったら何時でも言って? 私が何でもするから……ね?」

 

「………………」

 

「これ以上ないシュールな顔ね……」

 

 

 嘘だけど




補足
かつて愛した子から拒絶され、敵だった者から好かれる皮肉。
転生神の最後の嫌がらせだとしたら効果抜群ですね。

その2
ソーたんはそれを見越してわざわざイッセーの背中を押しました。
ていうか、だから現れたんですよね。


その3
セラたーんになるのか? なるとするなら、母性指数急激進化魔王少女セラたんが爆誕するのかもしれなくもない。

……ソーたんが凛さんサイドに対抗する為に考案した姉妹丼として。
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