色々なIF集   作:超人類DX

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精神崩壊して発狂してしまうかもしれない。




決定的な……

 蒼く輝く修羅がかつての仲間の一人を葬る。

 どこかで聞いたような話だが、本人の心中は並大抵のものではない。

 ましてや、葬ると決意した理由であり、かつての仲間で愛していた悪魔の少女から拒絶されてしまえば……。

 

 

「それ以上私に近づかないで!!」

 

 

 その最後の砦となっていた精神の岩は脆くも崩れ去るのだ。

 

 

「…………」

 

 

 覚悟はしていたつもりだった。

 この世界を生きるリアスが持たざる者である事も、そして持たないからこそ本質を剥き出しにした自分を恐れるだろう事も。

 しかし覚悟をしていてもやはりかつて愛した少女と同じ顔と声で拒絶されるのはとてつもなく辛い。

 

 辛うじて発狂だけはしなかったものの、イッセーは怯えながら拒絶の言葉を向けていたリアスにこれ以上近付くことは出来なかった。

 

 

「そ、そんな言い方をしなくても良いじゃないですか……!」

 

「私達を助けてくれたんですよ?」

 

「何時もの部長なら寧ろ一目置く事ぐらいはしそうなのに」

 

「だ、黙りなさい! アナタ達にはわからないの!? いくら凛の弟だとしても彼は化け物よ!!」

 

 

 化け物。

 それはかつてリアスを守る為に自ら望んだ称号。

 化け物と揶揄されても、悪と蔑まれ様ともリアスを守れるのならどうだって良いという信念もまた皮肉な事に守るべき存在の別の世界を生きる少女に恐怖の対象として呼ばれた。

 

 普通なら――普通であればリアスだって超越者と呼ばれる魔王・サーゼクスの妹なのだからいくら次元の違う力を前にしても此処まで恐怖を抱く事は無かった筈だ。

 しかし彼は謂わば転生の神による最期の嫌がらせの為に死ぬことを許されずにこの世界を生きている存在だ。

 

 流石に神を名乗るだけの事はあって、その呪いは強烈だった。

 

『この世界では親しかった者とは親しくなれない』という呪いが。

 

 だからリアスにこれ程までに怯えられてしまった。

 何をしても恐怖となる嫌がらせにより、リアスとは未来永劫相容れる事は無いのかもしれない。

 そしてその反対に、イッセーにとっての本来の世界では自らの手で殺意と共に殺した転生者を始め、それに与した者達からのウケが良くなってしまう。

 

 これは別に呪いでも何でもなく、完全にイッセーが殺意を向けずに当たり障りの無い対応をしたからだったりするのだが、そんなものは本人にしてみれば関係が無い。

 

 アレだけ憎んだ転生者と同じ様――その時点てイッセーの心を削り取るのに十二分なのだ。

 

 

「ば、化け物って、イッセーをそんな――」

 

「もういい!」

 

「っ!? い、イッセー……?」

 

 

 最早イッセーに生きる意味は無いのかもしれないし、ましてや彼女達にフォローされる謂われも無い。

 だから凛やアーシア達の言葉を遮るかの様に声を張り上げたイッセーは、皆の視線を一斉に受けながら口を開いた。

 

 

「一々俺をフォローしようとするな、お前達の主は彼女だろう? 外様の俺なんぞに構うな」

 

『………』

 

 

 自分の事なんか化け物扱いで良いから、自分に恐怖するリアスのフォローをしろと眷属である凛達にそう言ったイッセーは小さく笑う。

 

 

「くくくっ! こうなる事なんて最初から解ってたんだよ俺は。どうやらアンタ等の視点でも俺は化け物らしいしな……ここに来ちまった時点でそう呼ばれることなんてわかってたんだよ」

 

「………」

 

 

 リアスがどんな顔をしているのかは見ることすら出来ないのでわからない。

 彼女に完全に拒絶されたという時点で最早他に何があろうと意味が無い。

 いや、そもそも持たざるリアスから逃げてきた時点でこうなるという結果だったのだ……今更喚く権限すら無いとイッセーはただただ壊れた様に笑っていた。

 

 

「ガタガタと外が喧しいから見に来ただけで、結果的にアンタ等を助けただけだ……元々そんなつもりで来た訳じゃねぇ。礼? そんな腹の足しにもならないものなんか要らないなァ? あっははは!」

 

「イッセー……」

 

 

 夜の校庭に響き渡るイッセーの笑い声に凛達眷属は複雑な表情を……そして無情にもリアスはより嫌悪感に満ちた表情を浮かべて、一人笑い続けるイッセーを見つめている。

 どこか自棄に見える笑い声を。

 

 

「はぁ……もう帰るわ」

 

 

 暫く笑い、突然感情を失ったかの如く無表情へと切り替わったイッセーを引き留める事はできなかった。

 ただただ長年に渡って常人とは違う異質な力を抱えていた苦悩を大なり小なり知っているつもりだからこそ、下手な言葉は掛けられなかったのだ。

 ただ最後に一言……。

 

 

「あぁ、同情しなくて結構だし、そこの部長さんを責めるなんて真似はしないと信じてるが、もししたら勢いづいて全員ぶちのめすかもな」

 

 

 然り気無くフォローしつつ脅しの言葉を送りながら。

 

 

「お相手は無神臓・兵藤イッセーでした」

 

 

 イッセーは寂しげに背を丸めながら帰って行ったのだった。

 

 

 

 

「か、帰ったの……?」

 

 

 うだつの上がらないしょぼくれた中間管理職の様な出で立ちでイッセーが帰ったのを確認したリアスは、ホッと心底安堵したように深呼吸をした。

 

 

「部長……そんなにイッセーが怖かったのですか?」

 

 

 そんなリアスに、イッセーに言われるまでもなく責めるつもりは無かった凛が問い掛けると、リアスは頷いた。

 

 

「当たり前よ、とても恐ろしかったわ。

寧ろ何でアナタ達は平然と出来るのかが不思議よ」

 

 

 イッセーが居なくなって安心しているのもあるのか、どこかキツイ言い方をするリアスに、凛はとても複雑な表情だった。

 自分のせいだ何も持たなかったと思っていたイッセーが、確かに神器とはまた違う説明の付かない力を持っていた事には驚いたが、裏を返したらイッセーを仲間に出来たのかもしれなかった。

 どうやってあんな力を持ったのかはこの際どうでも良いし、何が変わる訳じゃない。

 ただ、リアスが明確にイッセーに対して嫌悪と恐怖を抱いていることが悲しかったのだ。

 

 

「凛の弟という手前あまり言いたくはないけど、彼はとても危険なのかもしれない。

だってもしコカビエルを消した力を私達に向けてきたら……」

 

「そんな事はしません! イッセーさんはお話してみれば悪い人じゃないんです!」

 

「あ、アーシアちゃん?」

 

 

 だから何があろうとも凛自身は、例えイッセーから嫌われていようとも味方である覚悟を決めるのだが、意外な事に今リアスの言葉に対して感情的になったのがアーシアだった。

 その余りの彼女らしからぬ迫力に、凛もリアスも小猫も朱乃も祐斗も驚いてしまう。

 

 

「イッセーさんには黙ってて欲しいって言われてましたけど、先日私はフリード神父に襲われました。でもその時助けてくれたのがイッセーさんです」

 

「え!? それってもしかしてファミレスの時の……?」

 

「そうです……ごめんなさい凛さん、イッセーさんから凛さんにも黙ってて欲しいと言われてましたので……」

 

 

 フリードに襲われた際に助けてくれた事を語るアーシアが黙っていた事を謝罪しながらも、イッセーが敵にはならないことを伝える。

 するとその時だ、アーシアがイッセーはそんなに怖くないと言い切ろうとしたまさにその時だ。

 

 

「あーらら、折角バレる事を覚悟してアナタを助けたのに拒絶しちゃうなんてねぇ?」

 

 

 学園全体に防壁を張っていた筈のソーナが、素である負のオーラを撒き散らしながら姿を現したのだ。

 

 

「そ、ソーナ?」

 

「生徒会長……さん」

 

「あ、あなたは……」

 

「な、何だ? 何時ものシトリー様と違う……?」

 

 

 どことなくヘラヘラした態度で笑ってやって来たソーナに初見の眷属達は困惑していて、凛とアーシアは別の意味でソーナに警戒していた。

 

 

「屋上から見ていたけど、折角助けたのに化け物だなんて、人から見たら私達悪魔も化け物じゃないのよ?」

 

「あ、アレはそんな概念とは違うわ! 第一見ていたのならアナタは何も感じなかったの!?」

「別に? 何時もの通りのイッセーだなぁとお腹の中が疼いてしょうがなかったわ」

 

「な……」

 

 

 ヘラヘラと笑いながら下ネタを飛ばすソーナに、古参眷属達は完全に様子が変だと悟るが、それを知る術は無いし、何気なくついてきていたソーナの眷属達は全員が顔を真っ青にしながら震えていた。

 

 

「まぁでもアナタがイッセーを怖がるのならそれで好都合だわ、余計な手間も要らなくなるし」

 

「ま、まさかアナタと彼の仲について学園で噂になってるのは」

 

「ピンポーン♪ 概ね正解よ、リアスに5ポイントあげちゃう!」

 

 

 ニコニコニコニコニコニコと、可愛らしく微笑んでいる筈なのに嫌悪感も感じるソーナの態度と、その都度今にも吐きそうな顔色のソーナ眷属達にどう言って良いのか解らずに閉口してしまうリアス達。

 

 

「大丈夫よリアス、アナタは悪くない。

だってアナタは持ってないんだものね? だからイッセーの事はこの先一生理解できやしない、だから悪くなんてないの」

 

「あ、アナタは何を知っているの?」

 

 

 まるで当たり前の様にイッセーと呼び、語り口はとても楽しげで……。

 こんなソーナを見たことがないリアス達はただただ異様な雰囲気を放つソーナに呑まれながらも、イッセーの何を知るのかと問う。

 

 

「何を? 殆ど知ってるわよ? 多分兵藤凛さんよりも知ってるわ」

 

「なっ!? そ、そんな事……!」

 

「じゃあ聞くけど、アナタは今日この時までイッセーが力を持っていたことを見抜けもしなかったでしょう? その力の根底も」

 

「そ、それは……」

 

「し、知らなかったとしても関係なんか……」

 

「あら、アルジェントさんだったかしら? イッセーと最近まで一言も会話できなかった分際で中々しゃしゃり出て来るわねぇ?」

 

「う……」

 

 

 まるで短刀か何かで脇腹をチクチク刺してくるような言葉というべきか、笑ってはいるけど嫌味ったらしい言い方をするソーナに凛とアーシアも圧されてしまう。

 

 

「別に知ってるからってそこまで勝ち誇る事も無いでしょうに……」

 

「まあ、外様にしてみればそうでしょうね搭城さん? アナタは外様!! ………だもんねぇ?」

 

「……………」

 

「こ、小猫ちゃん抑えて……ね?」

 

「あの言い方、シトリー様だとしてもムカつくんですけど」

 

 

 軽く毒づいた小猫に対しても即座にカウンターを決める。

 なんというか、とても生き生きとしてるというか、そのせいでソーナの眷属達の様子がおかしいのかと勘ぐってしまう。

 

 

「とにかくリアスはイッセーが怖いのであればそれは仕方ない事よ。別に気に病む必要だってないし、私がちゃーんとイッセーの事は慰めておいてあげるわ」

 

 

 それほどまでにソーナから放たれる雰囲気は寒気がし、またイッセーが力とは別に放った雰囲気にどことなく似ていたのだ。

 

 

「じゃあ、また明日とか」

 

 

 まあ、単にリアスから拒絶されるだろうと予想した通りになってこの世界でも最大の脅威になりえる相手が居なくなって最高にハイってやつだ状態になってるだけなのかもしれないが……。

 

 

『………』

 

 

 ソーナの後ろで震える眷属達が後日また余計な真似をするせいで、そう上手くはいかない事になるとはこの時まだ知りようもなかった。

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 授業参観の日、イッセーは唐突に邂逅した。

 

 

「……」

 

「そうか、キミが僕の妹を助けてくれたのか」

 

 

 かつての仲間の一人だった魔王と。

 

 

「まず妹を助けてくれた事について、お礼を言う――ありがとう」

 

「!」

 

 

 リアスの兄にて魔王の一人、サーゼクス・グレモリーからの礼に対し、それまで自殺願望全開状態だったイッセーは主に褒められて喜ぶ犬みたいな気持ちになったのだが……。

 

 

「けれどその力は確かに危険なのかもしれない。

下手をすれば我々悪魔の脅威になりえる程に」

 

 

 物腰は丁寧だけど、明らかに自分を警戒しているサーゼクス。

 いや、それだけなら種族の長としての判断で間違いはないしイッセーも当然だと思っていた。

 

 けれど……。

 

 

「聞いた所によると、キミはセラフォルーの妹さんであるソーナさんと妙に親しいばかりか、うちの妹をストーカーしてる様だね? それはどういう事か教えて貰えるかな? 返答によっては許せなくなるけど」

 

「は? だ、誰がそんな事……」

 

「ソーナさんの眷属達がそんな話をしていたと小耳に挟んでね。いや、勿論信じてる訳じゃないけど、キミを怖がる妹にストーカー紛いの真似をしてたとするなら、それだけ恐怖されるのも納得できるだろう?」

 

「…………………」

 

 

 ソーナに手を出した挙げ句に、リアスをストーカーする男というありもしないデマを認識されているという現実に、サーゼクスから向けられる若干の敵意も相俟って今度こそイッセーは壊れ始めた。

 

 

「殺せよ……俺を殺しやがれぇぇぇっ!!!!」

 

 

 発狂し、たまたま三大勢力会談を襲撃してきたテロ組織の襲撃部隊に向かって殺せと喚きながら暴れだしたり。

 

 

「ブツブツブツブツブツ」

 

 

 それが叶わず、逆に殺せない不死身の化け物と三大勢力からもテロ組織からも認識されて恐れられてしまい、完全に引きこもりになってしまったり……。

 

 

「見つけた――お前の中に我と同じものを感じる」

 

「ブツブツブツブツブツ」

 

「同じものがあるとこんなに安心するなんて、我知らなかった」

 

「コロセ、オレをコロセ……」

 

「嫌だ、お前はきっと我にとっての静寂になるかもしれないから」

 

 

 そのせいでベクトル違いの無限を皮肉な事に惹き付け……。

 

 

「大丈夫だっていーちゃん、誤解だってちゃんとサーゼクスちゃんに言っておいたし……」

 

「こればかりは私のせいだわ、あの余計な事しかしないボンクラ共はとりあえず『永久に使い物にならなく』したからもう大丈夫よ」

 

 

 姉妹が慰めて……。

 皮肉な事にますます敵だった者達を惹き付けてしまうのだった。

 

 

※第二章・生き生きしまくりマイナス少女ソーたん

 

始まらない。




補足

転生神の呪いみたいなもんですかれねぇ……。



その2
遂に発狂して引きこもりになったら、姉妹が来て慰めて、その間に例の無限の龍神ちゃんがやって来て……ますます死にたくなって……でも死ねなくて。

救いがマジでねぇ……

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