色々なIF集   作:超人類DX

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ある程度吹っ切れてるので、かなり周りに対して柔らかい。

ただ、その柔らかさが果たして正解なのか……? それはわからない。


モヤモヤめぐみん

「すぴーすぴー」

 

「妙な圧迫感があると思ったら……」

 

 

 

 朝起きたら胸元にめぐみんが引っ付いていた。

 

 

「起きろォォォッ!!!!」

 

「ふぇあ!? な、何事!?」

 

 

 そんな状況から一日がスタートしたイッセーは、すやすや寝ているめぐみんを軽くひっぱたいて起こすと、宿から提供される軽食を済ませて初のクエストを行う為に出発する。

 

 

「おはようございます、昨夜はお楽しみでしたね?」

 

「どこかで聞いた台詞っすけど、そんな事がある訳ないでしょうが」

 

 

 出発の際、どこかの勇者がお姫様を連れて宿に泊まった際に主人から言われた台詞を言われたりもしたけど、何もないのだから何もないと返し、朝っぱらから妙にご機嫌なめぐみんをと共にギルドへと向かう。

 

 

 

「ふっふーん、あのご主人は見る目がありますね?」

 

「寝ぼけてベッドから落下したちんちくりんが何を言ってるんだか」

 

「ちんちくりんじゃありませんよ!」

 

「はいはいわーってるわーってる……はっはっはっ!」

 

「むぅ……」

 

 

 敵意が無い相手であるなら、元来の性格もあってか、めぐみんと談笑出来るだけのコミュニティ能力はある。

 強いて言うなら、本来と違って根っからのリアス馬鹿なので他の異性に対してのドスケベさがほぼ無いという所ぐらいなのか……。

 とにかく、ちんちくりんと言われて膨れるめぐみんをヘラヘラ笑いながら背中を軽く叩いてる姿は、ひとつ前の世界なら見ることの無い姿だった。

 

 

「お、あの人中々良い尻をしてるな、ヴァーリが好きそ――痛い痛い痛い!」

 

「……」

 

「いってーな、いきなりどうしたよ?」

 

「知りませんよ! ふんっ! あんなデカ尻……」

 

「はぁ?」

 

 

 親友が好みそうなお尻をした女性を見ていたら、ふくらはぎを蹴っ飛ばされるという楽しげなやり取りを行えてる程度には……。

 

 

 さしあたって初のクエストを受注する事になった二人がまず行ったのは、農作物を荒らす害獣の討伐だった。

 受注の際、めぐみんが『もっと派手で凄い竜みたいなのと戦うクエストにしましょうよ!』と駄々をこねたのだが、低レベルの冒険者が集まるアクセルの街のギルドにそんなクエストがある訳も無く、ブー垂れるめぐみんを抑えながらこのクエストを受注したという背景があった。

 

 

「あーぁ、こんなんじゃあ私の爆裂魔法の真価が発揮できませんよ」

 

「文句言わずに畑を見張ってろ。ていうか、一発ぶっぱなしたらスタミナ切れおこす時点で竜だの何だのと戦うには早すぎるんだよ」

 

 

 受注して現場に来てもまだ不満気なめぐみんに、イッセーが半年で把握しためぐみんの弱点を指摘する。

 このめぐみんという少女は、紅魔族という種族柄、魔法に対するコントロールと潜在パワーがかなり高く、更に言えば彼女は故郷の魔法学校を首席で卒業する程のエリートだ。

 しかし紅魔族は一般的に云うところの中二病的要素が当たり前という変な特性があり、めぐみんもそれに漏れずの性格で、更に問題なのは爆裂魔法に拘り過ぎてそれしかまともに習得していないのだ。

 それも、威力に全フリして一発撃つと完全にダウンして動けなくなるという、所謂ロマン砲魔法に。

 

 

「ちょ、ちょっとはイッセーさんに鍛えて貰って動ける様になったじゃないですか」

 

「その分も更に威力向上に向けたせいで変わってねーだろうが。お前、よく今まで撃って動けなくなった後ゴブリン辺りに拉致られなかったよな……」

 

「全部爆裂させてましたからね!」

 

 

 見かねてちょっと指摘したりしてスタミナ向上したのに、その分のスタミナを威力に変換させる筋金入り。

 お陰でアーク・ウィザードなのに残念な事になっているめぐみんがもしイッセーに出会ってなければ、今頃他のパーティーに加入してはその残念特性のせいで追い出されての繰り返しだっただろう。

 

 

「とにかく最初は地道にやるんだ。焦って突っ切ったって失敗するだけだぜ―――――俺みたいにな」

 

「え、それって――」

 

「っと、来たぞ……狼っぽい獣が群れで。そら、俺が引き付けてやるからお得意の爆裂魔法でぶっ飛ばしてみな」

 

「あ、は、はい!」

 

 

 そういう意味では少なくともめぐみん本人は充実している生活と言える。

 イッセーがあちこち行っては稼いだお金で故郷の両親やイッセーと同じかもしれないレベルで悪食な妹を養えているのだから。

 

 

『ガルルル……!』

 

「お前等を焼いて食ったら旨そうだが、生憎そんなつもりは無いんだ。そーら鬼さんこちら!! 狼っぽい生物だけど!」

 

『ガァァァッ!!』

 

 

 確かにイッセーが何故異質過ぎる程の力を持っているのかは未だに掴めない。

 何時か見た手からビームも、巨大な岩を一瞬で消し飛ばした光弾も、全身から放出する赤いオーラも、どれもこれもめぐみんが学んできた物とは全く違うものだけど、今となっては分からなくても良いと思っている。

 

 

「今だめぐみん、やっちまえ!!」

 

「待ってました! ビッグバン・ドラゴン・エクスプロージョン!!」

 

「ばっ!? そっちじゃ――」

 

 

 自分が思っていた以上に一緒に居るのが楽しい。

 そう思えるのだから。

 

 

「くははは! イッセーさんの意見を取り入れた結果、当初の3倍はパワーアップした爆裂魔法で木っ端微塵です!」

 

「バカ野郎! 畑ごと更地にする奴が居るか! これを守る為だったんだぞ!?」

 

「でも結果的に害獣は二度と来ないでしょうし、オーライって奴じゃないですか?」

 

「確実にギルドに依頼した土地主に賠償求められるに決まってんだろうが……! チィ、やっちまったもんは今更しょうがないけど、後でごめんなさいだ」

 

「はーい。……あ、動けないのでお願いします」

 

「言った側から……ったくもう!」

 

 

 当初めぐみんの爆裂魔法を間近で見て、スタミナ切れという致命的すぎる弱点を知ったイッセーが、めぐみんの魔力を自らの持つ性質(スキル)によって『学習』し『適応』する事である程度メカニズムを理解し、あれこれと提案した結果、スタミナ切れ克服の筈が威力を爆発的に進化させるという本末転倒な事になってしまった。

 

 

「思ってたよりは安く済んだけど、一個分の仕事を完全に無駄にしてしまったぞ……」

 

「まぁまぁ、こんな日もありますよ」

 

「……。ホント良い性格してるよなお前って」

 

「え!? 性格が良いだなんて照れますよ~」

 

「………」

 

 

 魔力のコントロールが紅魔族という種族柄、上手だったという無駄に才能はあるせいで、イッセーの提案を飲み込んだめぐみんの爆裂魔法は現在フルパワーオンリーながら一帯を簡単に消し飛ばす程の威力にまで上がっており、そのお陰で当初害獣から守る筈だった農作物の土地まで吹っ飛ばしてしまい、報酬よりも賠償金の方が高くついてしまうというイッセーの予想した通りのオチとなってしまう。

 

 

「スキルポーションで爆裂魔法の更なる進化を!!」

 

「ば、馬鹿! もっと別のにしろ!」

 

 

 しかも、スキルを拾得するのは決まって威力向上系統のものばかりで、結局何気にイッセーの持つ異常性の副産物の恩恵を最初に受けていたりするのに意味があまり無かった。

 

 

「あれ? これだけ沢山スキルポーションを使って色々と爆裂魔法を上げたのに、あんまり変わってない……?」

 

「まさかお前、偽物掴まされたとかじゃねーよな?」

 

「そんな事ありませんよ、ほら、ちゃんとスキル自体は修得してると一覧にも……」

 

「む、確かに」

 

 

 それに加え、イッセーの持つ異常性の副産物――つまり『信用し合う相手を進化させる』という特性が、この世界のスキル系統を塗り潰してしまっており、スキルポーションを接種しまくる意味がこれまたあまり無くなりつつあった。

 

「ならばイッセーさんが前に見せてくれた滅びの魔力について教えて欲しいですね。

滅びという言葉もそうですけど、爆裂魔法に組み込めたら更に凄まじい事に……」

 

「アレはダメ……いや、いくら教えても無理だ」

 

 

 スタミナの弱点以外が何気に恐ろしい事になっているめぐみん。

 次はどうやら以前イッセーから見せて貰った、全てを滅ぼす力――イッセーがかつて愛した少女と交わり、お互いの異常性が共鳴する事で血筋どころか同族ですら無いのに手にした滅びの魔力を教えて欲しいらしい。

 

 

「リアス――あ、いや、友達から貰った力で、その子の一族しか扱えない力でね。

偶発的な事が3回くらいないと流石に無理だ」

 

「リアス……? ふーん、その人の力だったらやっぱりいいです」

 

 

 だがその力がイッセーの寝言で何度も聞いたリアスという女の力である事を知っためぐみんは修得をやめた。

 何者かはまだハッキリわからないけど、イッセーの表情を見たらそのリアスという者を相当大切に思っていたのがわかる。

 

 解ってしまうからこそ、胸の中に宿るモヤモヤした感情は大きくなり、対抗心が芽生える。

 

 

「てか、そんなものばっかじゃなくてスタミナ付けろよ。それか魔法に使う魔力の調整をするとか……」

 

「爆裂魔法は全力で出すからこそ爆裂魔法! 調整なんてしませんよ!」

 

「………ダメだこりゃ」

 

 

 どれだけ大切に思われてるのか知らないし、会った事なんて無いけど、負けたくない。

 モヤモヤした気持ちを誤魔化す様に慎ましい胸を張るめぐみんなのだった。

 

 

 

 

 

 

 そんな訳で赤コンビは農作土地を更地にしたという事で暫く地味なクエストをしていた。

 無論めぐみんがぶーぶーと文句を言うが、イッセー一人にやらせて自分は何もしないというのも嫌だったので、何だかんだ言いながらも地味な草むしり的クエストをこなしていく。

 

 

「畑を耕して人生を送るのも最近悪くないと思い始めてきた」

 

「嫌ですよ! もうそろそろ規制も解除されてますし、今度は巨大生物との決闘とかやりましょう!」

 

 

 この世界に準じた――といってもプロデュースしたのがあのめぐみんな為、かつて魔王をやっていた頃のサーゼクスが着てそうな服に、用途不明な黒マントを背に羽織るスタイルで、そろそろ地味なクエスト続きにより我慢の限界が訪れためぐみんに付き合わされる形で、何か討伐系のクエストをする為にギルドへ行く。

 

 

「良いか、今度は必要以上に破壊するなよ?」

 

「わかってますって~ ちょっとは信じてくださいよ?」

 

「…………」

 

 

 討伐系にした途端、またしてもやらかしそうなめぐみんに釘を刺すが、言葉とは裏腹に本人は既に爆裂させる気満々とばかりに魔力を放出している。

 そんな時だったか、やる気満々で高レベルクエストを受注しようとしためぐみんの被るとんがり越しに頭を押さえつけながら、手頃そうなクエストを探していたイッセーの居た場所から少し離れた受け付けから、怒鳴りあってる声が聞こえたのは。

 

 

「アンタのせいなんだから責任取って登録料を持ってきなさい!!」

 

「俺一人にやらせんじゃねーよ! オメーもやれや!!」

 

 

 その怒鳴り声は受け付けのお姉さんを困惑させ、他の冒険者達の注目を集めるのに十分だった。

 

 

「むっ、あそこで揉めてる二人組が居ますよイッセーさん」

 

「痴話喧嘩って奴だろ、放っておけよ」

 

 

 しかし、欲求不満状態のめぐみんを発散させるに手頃なクエスト探しに忙しいイッセーは、無関心そうに張り出されている依頼紙とにらめっこしている。

 

 

「この!」

 

「やりやがったなヒキニートがぁっ!!」

 

 

 だがそんな集中をかき乱してやるぜとばかりに、言い合いはヒートアップし、遂には取っ組み合いの喧嘩にまで発展、受け付けのお姉さんが止めに入ろうとするのとは正反対に見ていたギャラリー達はやんややんやとプチお祭りを楽しんでいる。

 

 

「うるせぇな、何なんだよ」

 

「仲間同士で喧嘩してるみたいです」

 

「外でやれよ、クソ迷惑な……」

 

 

 その騒がしさに、イッセーがちょっと不機嫌そうになって、人だかりの壁の向こう側に居る騒がしい二人組とやらを睨む。

 

 

「おい、めぐみん肩車するからどこの誰がギャーギャーやってんのか見てくれ」

 

「へ? あ、はい」

 

 

 こんなに喧しいならその迷惑な面を見て貰おうと肩車させろと言ったイッセーが前に出てしゃがむ。

 

 

「よっと、どうだ?」

 

「えーっと、若い男の人と女の人が喧嘩してます……結構ハードに」

 

「マジか、下ろすぞ?」

 

 

 めぐみんから情報を得たイッセーが再びしゃがんで下ろす。

 

 

「ったく、一言文句つけてやる。こちとら仕事前だっつーのに」

 

「ぁ……」

 

 

 そして人だかりに呑まれない様にというつもりでめぐみんと手を繋いだイッセーは、驚いてしまって彼女らしからぬ反応をしている事に気付かず、人混みを掻き分けて行くと……。

 

 

「あだだだだ!?!? お、折れる折れる!!!」

 

「嘗めんじゃないわよ!!」

 

 

 腕挫十字固を決めている女と決められて涙目になっている男が居た。

 

 

「な……!」

 

 

 別にそれだけならば、そのまま文句を……最悪この施設から外へと放り投げてやるつもりだった。

 だがしかし、男の腕を完全に決めながら勝ち誇る少女と言っても差し支えないその姿を見た瞬間、イッセーは半年前より更に前の記憶が呼び起こされた。

 

 

「イッセーさん、あの、手が……イッセーさん?」

 

 

 向こうは関節を決めてるのに忙しくて固まる此方に気付いていない。

 めぐみんも当初、いきなり手を繋いで来たイッセーにらしくもなくしおらしくなっていたのだが、イッセーの様子がおかしいことに気付き、次の瞬間、繋がれた手が離れて小さく声が出てしまう。

 

 

「………」

 

 

 だがめぐみんを気にする余裕が無くなったイッセーは、まだやってる全体的に水色な少女に近付いていき、ギャラリー達もいきなり出てきたイッセーに目を丸くしている中……。

 

 

「おい」

 

「あぁっ!? 今忙しいから話しかけない……で……?」

 

 

 イッセーは半年振りに見た、居るはずもない女神・アクアと再会した。

 

 

「あぁっ!? あ、アンタは兵藤一誠!? 何でこんな所に!?」

 

「それはこっちの台詞だし、そこの彼の腕を離してやれよ?」

 

「え? あぁ、うん」

 

「ぐはっ!? か、肩が痛ぇ……!」

 

 

 アクアの方も、イッセーを覚えていたのか、顔を見た瞬間ギョッとした顔をしており、連れと思われる青年の腕を解放しながら立ち上がる。

 喧嘩を止められて終わった事により、ギャラリー達も散っていく中、めぐみんが何か言いたそうな顔をしているのを背に、イッセーは肩を抑えてる青年を一瞥しながら、何故神のアクアがこんな場所に居るのかを問う。

 

 

「何でこの世界に?」

 

「うっ!? い、いやそれは……」

 

 

 一応アクアが神と大声で言うべきじゃないと思ったイッセーが気を利かせて小声になるのだが…………そのせいで微妙に距離が近く、アクアも特に嫌がる素振りを見せず、イッセーからの質問に何かを言いづらそうに言葉を詰まらせている。

 

 

「それに彼は? まさか俺と同じ……」

 

「あの馬鹿はアンタの考えている通りよ。

で、その……私がこの世界に居るのは、そこの馬鹿が馬鹿な事をしたせいよ……」

 

 

 ブツブツ言いながら肩を回して調子を確かめている、イッセーに近い髪の色をした青年を恨めしそうに睨むアクアにふと神の力が全く感じない事に気付く。

 

 

「アンタ神の力はどうした? 全く力を感じないんだけど……」

 

「だ、だからあの大ボケ野郎のせいで女神としての力を殆ど失った状態でこの世界に来ちゃったのよ……!」

 

「は?」

 

「く、か、肩が上がらねぇ……」

 

 

 要約すると、その青年に何かされて神の力を失ったらしい。

 アクアの話からイッセーはそう解釈したが、同時に一時的にも自分の力を抑え込んだ事さえあったアクアの力を削いだとされる青年の力がとてつもないものなのだと思うのは自然な流れだった。

 

 

「今アンタに関節きめられてたが、彼はそんなに強いのか? 神の力を削ぐなんて……」

 

 

 実は青年……佐藤カズマは常人だし、アクアが力を失ったのも、かなりしょうもない理由なのだが、変にプライドが高い女神は思わず頷いてしまった。

 

 

「そ、そーよ! 油断してたら削がれた挙げ句に道連れにまでされて、惨めったらありゃしないわ……お金も無いし」

 

「………」

 

 

 そのせいでイッセーにとってまだ名前は知らないが、カズマという存在が完全に格上の男と勘違いしてしまう。

 勘違いされた本人にしてみれば堪ったものではないだろう。

 

 

「でもアンタと出会せてラッキーだわ。

ねぇ、アンタお金もってない? 二千エリスで良いんだけど」 

 

「は? 突然なんだよ」

 

「いやさぁ、さっき言った通り、後ろにいる間抜け顔の男がいるでしょう? あんちくしょうのせいで私って力を殆ど失った状態でこの世界に来ちゃったの。おかげで帰れないし、お腹は減るし、ギルドに登録しようにもお金もないの」

 

 

 そんな訳でカズマに勘違いをしたイッセーに、アクアがいきなり金を貸せと言ってきた。

 

 

「という訳でお金貸して? 絶対返すから!」

 

「別に良いけど……」

 

「ホント!? やった! あの馬鹿より役に立つわねアンタって奴は!」

 

「………」

 

 

 自然と周りに聞かれない様にと互いの距離がかなり近いまま、頼み込むアクアに、そのくらいならと頷くと目に見えて表情を明るくさせて、カズマよりイッセーの方が役に立つと偉そうに褒め称える。

 しかし、イッセーにしてみれば神の力を削いだカズマなら数時間せずとも金なんて稼げそうなものだと思うので褒められた気は全くしなかった。

 

 

「登録料だけで良いのか?」

 

「出来ればもっと欲しいわね……って、アンタ結構持ってるじゃないの?」

 

「人の財布を覗くのはマナー違反だろ……っておい!」

 

「良いじゃないの、知らない仲じゃないんだし……わっ! これだけあるなら半分くらい貸してくれても問題は……」

 

「流石に図々しいわ!」

 

「あはは、冗談冗談。取り敢えず登録料と今日のご飯代を何とか……ね?」

 

 

 蚊帳の外になってるカズマが不思議そうにイッセーを見ているのを背に、財布の中身を覗こうとアクアが密着し、半分と言われて流石に嫌だと返すイッセーに小さく舌を出しながら登録料とご飯代だけと訂正する。

 内心、困ったらイッセーにせびろうと考えてる辺りがアクアらしい。

 

 

「ちっ、まだ聞きたいことがあるのに――っと?」

 

 

その直後、後ろから服の袖を掴まれ引っ張られ、周りに聞かれたら面倒だからと微妙に距離が近かったアクアから離される。

 

 

「……」

 

 

 何だ? と思って後ろを向くと、袖を引っ張っていたのは若干不機嫌そうなめぐみんだった。

 

 

「イッセーさん、早くクエストに行きましょうよ?」

 

「へ? あぁ、そうだな……」

 

 

 イッセー――では無くてアクアを少し睨むめぐみんにグイグイと引っ張られると、アクアがめぐみんを見て気付く。

 

 

「あら、ひょっとして彼女は紅魔族? まさかアンタの仲間? 意外ね、アンタが他人と一緒に行動してるなんて」

 

「色々あってな……」

 

「へぇ? それにしても紅魔族だなんて、アナタって随分と赤色に縁があるわね?」

 

「………」

 

 

 ニヤニヤするアクアの言っている意味をすぐ理解したイッセーは複雑そうな顔をすると、また二人の距離が近くなっている事をめぐみんが不満げに文句を言う。

 

 

「む……だから近いんですってば。イッセーさんは私の同志なんです」

 

「え、何で睨まれてるの私?」

 

 

 ちょっと攻撃的な言い方にアクアが目を丸くした。

 

 

「さぁ? どうしたんだよ? 何怒ってんだ?」

 

「怒ってませんよ別に……」

 

 

 無論イッセーも彼女の気持ちがわかってないので首を傾げていると、めぐみんがアクアに向かってちょっと声低めに質問を投げ掛けた。

 

 

「貴女ってまさかリアスって名前ではありませんか?」

 

「は?」

 

「!? お、おい……!」

 

 

 めぐみんの質問にポカンとしか顔をするアクア。

 当然、リアスという名前では無いのだが、意外だったのがこの紅魔族にイッセーはかなり色々と知られている事だった。

 

 

「いえ、私はリアスという名前じゃないわよ?」

 

「ふーん……?」

 

「お、おいめぐみん……?」

 

 

 イッセーの狼狽えを無視して真っ直ぐ見据えてくるめぐみんにアクアは違うと返す。

 

 

「そうですかなら良いです、では私たちはこれで。あ、お金なら私が差し上げますから」

 

「え、貴女から借りるなんて……」

 

「貸すんじゃありません、差し上げるのです。

これだけあれば足りますよね? では私達はこれにて」

 

 

 リアスでは無いが、妙にイッセーに近いからモヤモヤが最高潮に達し、かなり無愛想に自分の財布から金を出してアクアに渡しためぐみんが、そのまま困惑するイッセーの手を掴んで連れ出す。

 

 

「どうしたんだよ?」

 

「別に……」

 

「何でもなくは無いだろう? あんな事聞いて……」

 

「……。あの方がリアスって人だと思っただけです」

 

「いや違うし、彼女は顔見知りってだけだぜ?」

 

「怖いんです私、イッセーさんの大事な人と会ったら、私から離れちゃうって…」

 

「何だそりゃ? そもそもリアスちゃんは――――っとと?」

 

「ふんだ、どうせ私はその人に比べたら子供ですよー……ぐすん」

 

「な、泣くなよな……。悪かったよなんか……」

 

「い、いえ、私こそごめんなさい……」

 

 

 モヤモヤが大きくなりすぎて攻撃的になってしまい、その後悔でめぐみんが抱き着きながら泣いてしまったので、イッセーはとんとんと優しく背中を撫でながら受け止める。

 

 

「今日はクエストやめて、どこか連れてってやるよ。だから泣くな……な?」

 

「ぐすん、ごめんなさい……」

 

「謝るなよ、大丈夫だから」

 

 

 一度でも受け入れた相手に対して献身的になるのがイッセーであり、それはもしかしたらめぐみんに対しても芽生え始めてるのかもしれない。

 いや、或いはもう……。

 

 

終わり




補足

何気にイッセーの提案でパワーアップしとるめぐみん。
しかし、方向が爆裂魔法威力強化全フリという残念さなのだが、その威力が洒落にならん域に片足突っ込み気味。


その2
モヤモヤが最高潮になると、割りとマジ泣きする程度には懐いてる模様。

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