色々なIF集   作:超人類DX

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危なくなったらイッセーを盾にしようとするアクアに、時折爆裂魔法をぶちかまそうと構えてるめぐみんを見て色々と危惧したカズマくんは、他の盾を探そうとパーティ加入の募集をした。


復活・〇〇〇

 ひょんな事から力を失った女神と、その原因とされる青年と行動を共にする事になった赤コンビ。

 めぐみんは時折女神と自称するアクアをブーメランが刺さってる事に気付かず痛い人と見ている程度に、アクアの品格はお世辞にも良くなく、カズマも本当に強いのか疑いたくなるくらいのポンコツさだった。

 

 

 低級モンスターに丸飲みにされて危うく消化されかけたりもすれば疑いたくもなるし、流石にそんな事が連続したので一度聞いてみた事もあった。

 だがアクアが実はと打ち明けた話を聞いてからは納得してしまい、結局カズマが常人である事を知る事は無かった。

 

 

『じ、実は相討ちで私もアイツの力を抑え込んだのよねうん!!』

 

『だからか、あまりにも佐藤くんが普通というか一般人にしか感じないから変だと思ったぜ』

 

『ご、ごめん、言わなきゃとは思っていたのだけど……』

 

『そういう事情ならしょうがないさ。佐藤くんと比べたら俺は大分恵まれていると思えるしね。

もっとも、ドライグが居ない今の俺も全盛期の半分だけどよ』

 

 

 何故そこまで本当の事を言わないのかというぐらい、アクアは真実をぼかして実はカズマも相討ちで力を失ったと語り、何も知らないイッセーから地味に同情を買う事に成功する。

 その際、大きな声では話せない内容なのとカズマに聞かれたらバラされるからという理由でアクアとイッセーの距離感が近かったせいで、めぐみんが頬を膨らませていたしていたとか。

 

 

「え、仲間を募集するのか?」

 

「あぁ、その方が労力を分散させられるだろう? めぐみんと兵藤が加入した時点で十二分だけど、最近は敵に襲われる度にあの駄女神がお前を盾代わりにしようとするし……」

 

「別に攻撃された所で余程の事が無ければ痒い程度だから大丈夫なんだが……」

 

「そりゃ見てればわかるけど、なんだ……あの駄女神がお前を盾代わりにしようと背中にひっつく度にめぐみんが……」

 

「? あの子がなんだよ?」

 

「いや……」

 

 

 逆にカズマからしてみれば、イッセーは自分が生前生きた世界とは似て非なる世紀末のモヒカンが蹂躙してそうな世界から転生してきたとアクアから聞かされ、クエストの度に見る人間離れした身体能力をレベルとか全く関係なく見せるその力が神から与えられたものではなく天然で有しているというのだけは聞いていて、また上手いこと仲間にしたのまでは良いが、既にイッセーの仲間として行動していたロリっ娘ことめぐみんが、そうやってイッセーの力を知ってるからこそアテにしまくるアクアを見る度に照準を間違えたと嘯いて、爆裂魔法を撃とうとしているのを何度も見てきた。

 

 しかも厄介な事に、イッセーはめぐみんを子供として認識しているのか、単に懐かれているといった認識しかしていないのが余計にめぐみんをやきもきさせており、これ以上アクアがイッセーに頼りにしようとばかりしたら、リアル爆撃でバラバラにされかねない。

 

 イッセー本人は生前が生前だったせいか、仲間以外の好意にかなり疎いので何もわかってない様に不思議がっているのに、カズマ何とも言えない気分にさせられる。

 

 

「とにかくイッセーみたいな前線タイプをもう一人仲間に出来たら、負担も減るだろ?」

 

「まぁ、キミがそう言うなら」

 

 

 カズマという名前と知った一瞬、脊髄反射的に殺意を出してしまった負い目が実はあるせいか、割りとカズマの判断に従い気味のイッセーは、これ以上アクアがアテにしたらめぐみんの爆裂魔法で爆裂させられるからというカズマの考えを見抜けずに、仲間募集を開始するカズマと、合流したアクアとめぐみんの四人でギルド場でのんべんだらりとしながら待つことになった。

 

 

「募集なんてもう要らないでしょうよ、これ以上入れたら報酬の分け前が増えて収入が減るし」

 

「戦力が整ったら私とイッセーさんが抜けても構いませんがねー?」

 

「それは駄目よ! イッセーという人員は他に代えられないし!」

 

「そうでしょうねぇ? いっつも危なくなったらイッセーさんの背中に隠れてるアクアにしてみたらそう思うのも無理ないですよねぇ?」

 

「お、落ち着けって、これで誰か加入してくれたら兵藤の負担も分散できる訳だし」

 

「お前ってアクアに対して妙につっけんどだけど何でだ?」

 

「何でも無いですよ! ふんだ!」

 

 

 手を組み始めてからアクアはイッセーの戦闘に関する便利さにすっかり慣れて――いや、アテにしすぎており、それ故イッセーが抜ける事を良しとしていないという意味で話しているが、めぐみんにしてみれば面白くない訳で、基本的にアクアとめぐみんの仲は結構ギスギスしていた。

 もっとも、めぐみんが一方的に敵視してるだけだが。

 

 

「怒るなよな、まったく……そら」

 

「わっ!? な、何を……!?」

 

「不貞腐れて床に座り込んだら他の人の邪魔になるだろ? イヤなら椅子にでも座ってろ」

 

 

 そんなめぐみんの気持ちを知らないイッセーだけがマイペースに何故不機嫌なのかもわからず、不貞腐れて床に座り込もうとするめぐみんの身体をひょいと持ち上げ、椅子に座っていた自分の膝の上乗せる。

 

 

「しかしよ、募集の紙貼って此処に居ても来るのか? こういうのって数日待たないと駄目なんじゃねーの?」

 

「…………」

 

 

 まるで娘をあやす父親的な感じで膝の上に座らせた瞬間、借りてきた猫みたいに大人しくなっためぐみん。

 被っていた帽子を深く被り直しながら顔を見られない様に俯いているが、カズマから見ても確実に照れているのが解るが、可哀想な事に何度も云うが、イッセーは別にそんなつもりでやった訳じゃあ無い。

 

 

「やっぱり募集なんてやめましょうよ? 時間の無駄よ無駄」

 

「いや駄目だ、ある意味これはお前の為でもあるんだぞ?」

 

「は? 何で私の為になるのよ?」

 

 

 アクアもアクアで危なくなったらテンパってイッセーに逃げようとするせいでめぐみんから爆裂魔法の照準にセットされかかっていると気付いていない。

 気付いているのはカズマだけで、強力な助っ人だけど爆弾にもなりかねないその危うさを少しでも軽減させる為には頑なになろうとも前線タイプでアクアが盾にできそうな冒険者を仲間にしなければならない。

 

 下手したら自分も爆裂されるかもしれないのだから。

 

 等と思いながら、大人しくなってしまっためぐみんの様子が気になって話し掛けているイッセーや、ブツブツと『こんな楽できる人材なのに余計なのが増えたらお金の配当が減るじゃないの』と文句ばっかりなアクアと待つ事三時間……。

 

 

「このパーティ募集の紙を貼ったのはキミ達?」

 

 

 イッセーの事は特に書いてなかったので、流石に来ないのかもしれないと諦めていたカズマに機、舞い降りる。

 

 

「来たっ!? はいはい! それは俺達が貼りました!! おいアクア! めぐみん! 兵藤!! 仲間になってくれそうな人が来たぞ!!」

 

「んが? な、なによぉ、人が気持ちよく寝てたのにうっさいわねぇ……」

 

「くーくー……あはは、見ろよヴァーリ、コカビエルのおっさんがガブリエルさんに追いかけ回されてらぁ」

 

「イッセーさんイッセーさん、起きてください。コカビエルって人もガブリエルって人も居ませんよ?」

 

 

 しかしカズマ以外の者達はそんな機を前に飽きていたのかダラダラし過ぎて若干二名が寝ており、アクアは大声で起こされて文句を言いながら目を擦り、イッセーはめぐみんを膝に乗せたたまま、かつての仲間の夢を身ながら幸せそうに眠るのをめぐみんに起こされていた。

 

 

「えっと、出直そうか?」

 

「ノンノン!! 大丈夫デース!!」

 

 

 そんなだらけきった雰囲気に、わざわざ来てくれた銀髪にアメジストの目をした女性冒険者は言うが、カズマにしてみたらこんなチャンス滅多に無いので必死になって引き留める。

 

 

「んー……………ん? あれ、佐藤くん、そちらは?」

 

「俺達の募集の紙を見て来てくれたんだよ」

 

「え、マジ? はー……来るもんなんだな」

 

「俺もちょっと驚いてるぜ」

 

 

 イッセーの言うとおり、数日は覚悟してたのにこんな早く来てくれるとは正直思ってなかったカズマは、既にこの女性を加入させる気満々だ。

 

 とはいえ、軽い面接的な事はする。どういう職なのかとか程度だが。

 

 

「名前はクリス、職業はシーフなんだけど……」

 

「シーフ? ていうと盗賊的な奴か?」

 

「そうそう、割りと役に立つよ?」

 

 

 しかし思っていた感じの職とは若干違ってて少しだけ内心残念に思うカズマ。

 元々募集した理由はアクアのイッセーを盾にする癖を止めさせるためだった為、どう見ても前線向きとは思えないクリスは盾にならなそう……と、若干ゲスい考えを展開させていた。

 

 

「シーフってどうなんだ?」

 

「例えば敵の持っているものを盗めたりしますね、素早さも高い傾向にありますよ?」

 

「ふーん?」

 

 

 そんなカズマの計算を知らず、隣座って面接官みたいな事をしていたイッセーは更にその隣に座るめぐみんからシーフについて聞いていて、めぐみんも特にクリスが女性だからと不機嫌にはなってなかった。

 

 流石に初対面の女性にイッセーが取られると被害妄想するレベルにまでは至ってないから当然なのだが。

 

 

「良いんじゃねーの? わざわざ来たんだし仲間にして……も……?」

 

 

 イッセーも特に反対する理由は無いし、仲間にする事に同意しようとしたその時だった、それまでクリスと合うことが無かった視線が合った瞬間、イッセーが突然目を見開きながら固まってしまったのだ。

 

 

「イッセーさん?」

 

 

 勿論その態度にめぐみんが不思議そうに見ているが、イッセーはただただ目を見開きながらクリスという女性を凝視している。

 

 

「お、おいアク――っ!?」

 

「えーっと、それじゃあ加入しても良いのかな?」

 

 

 やがてイッセーはカズマの反対隣でかったるそうに頬杖をついていたアクアに『確認』するつもりで声を掛けようとした。

 しかしその瞬間、クリスという女性は笑みを浮かべ口許に人差し指を一瞬だけ当てながらカズマに加入の件について話を進めようとしたのでイッセーは何かを察して口を閉じた。

 

 

「…………」

 

「あの人に何か?」

 

「いや」

 

「まさか好みの人とか……?」

 

「それはあり得ねぇ」

 

「なら良いですけど……」

 

 

 クリスと目が合った瞬間、彼女の中に内包しているとのを感じ取り、アクアに確認させようとしたら完全自分に対して黙れというジェスチャーをしてきた。

 その時点でクリスという者が何なのかを端的に感じられたイッセーは余計な心配はさせまいとめぐみんに何でもないと返し、以降は何も語らず、なるべくクリスを見ずに努めた。

 

 

「あ、そういえば前線向きの募集って書いてあったでしょう? 実はアタシを仲間にしてくれたら、知り合いのクルセイダーも一緒に加えて欲しかったりするのだけど……」

 

「なに!? クルセイダーだと!? マジか! よっしゃ! 採用決定じゃ!」

 

「ええっ!? 更に一人加わったら分け前が……」

 

「それくらい減っても馬小屋にはならん! よーっしゃクリスさんだったか!? 早速そのクルセイダーさんを連れてきてくれ!!」

 

「うんわかった」

 

 

 急に無口になったイッセーを横に話はどんどんと纏まり、クリスとその知り合いがいっぺんに仲間になってくれるとはしゃぐカズマに言われ、クリスは席を立つ。

 

 

「………………今晩、街の外に来てくれる?」

 

「!?」

 

 

 そして座っていたイッセーの後ろを通りすぎる瞬間、少し違う声色でそう言うと、クルセイダーを連れてくるために消えていった。

 

 

「あーぁ、これで6等分にしなければいけないじゃないのよー」

 

「まだ言ってんのかよ、だったらそのクエストで一番働いた人が報酬を多く貰える様なルールでも決めれば良いじゃねーか、金金と喧しいだけの駄女神はこれだから……」

 

「なんですってぇ!?」

 

「……………………」

 

「イッセーさん顔色が……」

 

「大丈夫だよ、寝過ぎてちょっと頭が痛いだけだから……」

 

 

 流石に驚いて整理できていないイッセーを心配するめぐみんにフッと笑いながら大丈夫とだけ返すイッセー。

 その後、クリスが連れてきた金髪の女性クルセイダーがまんた盾的要素が強すぎる色々だったとか、シーフの特性を冒険者の器用貧乏特性で試しに習得したカズマがやらかしたりと色々あったが、イッセーは終始難しそうな顔をしていたのだという。

 

 

 そして時は流れてその日の晩、またしても床の上で寝たフリをしていたイッセーの胸元にベッドから落ちてきためぐみんをベッドに戻し、数分掛けて完全に寝ていると慎重に確認すると、宿から出て夜のアクセルの街を抜け出す。

 

 

「街の外とは言っていたが、何処に……」

 

 

 街の外へと出たイッセーは月明かりの下、具体的な待ち合わせ場所を指定されていないことに気づいて取り敢えず街の周辺を歩いていると……。

 

 

「ごめんごめん! お待たせさせちゃったね?」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 クリスという女性とコンタクトを取ることに成功してしまう。

 

 

「じゃあ少し街から離れようか?」

 

「………」

 

 

 銀髪にアメジストの目を持つ女性、クリスがそう言いながら街から離れるのを黙って付いていく。

 その最中、イッセーは全力でクリスの後ろ姿を凝視しており、彼女の中に内包される力が見間違いでは無いことを確信していく。

 

 

「此処なら誰も来ないと思う」

 

「………」

 

 

 やがて街から離れた森林地帯の奥まで歩くと、そこでクリスが後ろを黙って付いてきたイッセーへと振り返ると、漸くイッセーにとって知りたい話を切り出した。

 

 

「多分昼間会った時点でキミの事だから――――いいえ、貴方の事だから気付いた事だと思いますが」

 

(口調が変わった――むっ!?)

 

 

 途中から変化した口調と共にクリスの全身が眩く輝く。

 その閃光に長らく封じていた特性――異常性を脊髄反射的に解放させながら目を覆い、光が止んだ先に見える一人の人ならざる存在を見る。

 

 

「私はエリス、女神の一人です。始めまして、邪悪な神を打ち倒した英雄、兵藤一誠さん」

 

 

 クリスの時と同じ色の髪だが、放たれる雰囲気は力を失う前のアクアと向かい合った時と同じ神の気。

 エリスと名乗る女神は間違いなく神の一人である事はその姿と相俟って信じる他が無かった。

 

 

「……。俺が居るとわかっていて佐藤くんの募集に昼間来た訳か」

 

「大体合っています、もっとも貴方にはすぐ見抜かれてしまった様ですけどね、ふふっ」

 

「俺は一度感じた気質と恨みは忘れない主義なんでね。

しかし、力を失ったとはいえ、アクアに続いてこの世界で二度も神を見ることになるなんて、とんだ皮肉だぜ」

 

 

 アクアと違ってかなり物腰の柔らかい態度のエリスに若干やり辛さを感じながらも、皮肉っぽく笑う。

 あれだけ殺してやろうと探し、やっと発見して追い詰めた自分がこうも簡単に神と出会せるという意味であり、そんな神と向かい合っているイッセーは、エリスに向かって切り出す。

 

 

「神自らわざわざ正体を晒してまで姿を見せたという事はだ……俺が完全に消え去る算段でもついたって事なのか?」

 

 

 そう、半年前アクアと約束した完全なる死。

 力を失ったアクアには不可能だとしても、失ってないエリスが代わりに現れたともなれば辻褄は合う。

 だからこそ、少しだけ後ろ髪を引っ張れる気持ちがあるものの、イッセーはやっと完全に死ぬことが出来るとエリスの答えを待つ。

 

 しかしエリスはそんなイッセーの考えとは裏腹に、申し訳無さそうに目を伏せながら、クリスからエリスに戻る事で変化したとこぞの金髪シスター見習いが着てる服を豪華にした衣装を身に付けて首を横に振る。

 

 

「いえ、申し訳ありませんが未だに貴方に完全な死を与える事は出来ません。

やはり貴方の持つ特性――安心院なじみさんの云う無限に進化し続ける異常性により人の理を超越し、神の領域を更に超えてしまった貴方を殺す事は難しくて……」

 

「……そうか」

 

 

 安心院なじみはどこでも色々な意味で有名なのか、エリスの口から出てもアクア程驚く事は無く、またまだ死ねないという事を言われても特に怒るだの残念といった態度にはならなかった。

 いや、寧ろどこか安堵しているような……。

 

 

「まあ、気長に待つさ、わざわざ教えてくれてありがとうとでも言っておく」

 

「…………」

 

「? 何だよ?」

 

「いえ、『じゃあ何しに来たんだこの役立たず共が!!』と殴り飛ばされると思っていたので、そう言って貰えるとは……」

 

「……。俺ってそんなに気性が荒く見える?」

 

「えっと、ご自身の認めた仲間以外は概ねそんな対応なのかなと……」

 

 

 とにかく結局まだ死ねないとわかり、一応お礼の言葉を言ったら何故か意外そうな顔をエリスにされ、また気性が荒いと思われていると知り、ちょっと微妙な気分になる。

 

 

「あのクソったれの神とは違うってぐらいは思うし、敵意が無い相手に攻撃的になるだけ疲れるだろ? それにわざわざ俺の為にアンタ等が色々試行錯誤してるってのも聞いてるしね」

 

「ふふっ!」

 

「……なんだよ?」

 

「いえ、先輩女神に言われた通りの人だと思いまして」

 

「そうかい、誰の事だか知らないけど、アンタの印象を変えられて光栄だぜ」

 

 

 少し拗ねながら皮肉を飛ばすイッセーにエリスは暫く笑っていた。

 

 

「チッ、話はこれで終わりか? だったら俺はそろそろ戻るぞ」

 

 

 好きか嫌いかで考えたら嫌いに傾きはする神に微笑ましそうに見られるのは嫌だったイッセーは、そのまま逃げるように話を切り上げて帰ろうとする。

 

 

「あ、待ってください! 実はもうひとつお話が……」

 

 

 しかしエリスはそんなイッセーを呼び止めた。

 

 

「何だよ、言っておくけど悪いことなんてしてないぞ?」

 

「それはわかっていますし、そういったお話では無く、貴方にこれを……」

 

 

 容姿は比べたら大分ちんちくりんだし、よく見たた胸元に違和感があるのだが、何故か少しだけかつての仲間の一人であるガブリエルに似ている気がして、少しやりづらいイッセーは早く帰りたかったが、エリスに呼び止められたのと同時に彼女の指先から放たれた光が、イッセーに懐かしいものを復活させた。

 

 

「!? こ、これは……!」

 

 

 エリスの指先から放たれた光を浴びたイッセーの左腕にある物が出現し、驚愕の表情を浮かべる。

 その理由は、かつて喪った最良の相棒の力が込められたモノであり、神を屠る力を放てる神滅具のひとつ。

 

 

「赤龍帝の籠手……だと……」

 

 

 イッセーの力の半分を担っていた神器なのだから。

 

 

「貴方の歩んだ人生は私も見たので把握しています。

残念ながら赤い龍(ウェルシュドラゴン)の意思は無く、我々が再現しただけの劣化模造品ですが、良かったら貴方に渡し――いえ、お返しします」

 

「ドライグは居ないのか……いや、アクアに言われてもう存在してないから当たり前か……。でも何でわざわざ……?」

 

「本当ならば、我々が抑えるべき邪悪な神を貴方達が倒してくれたお詫びとお礼と考えてくれて構いません。

こんな事で帳消しになるとは勿論考えていませんが……」

 

 

 残念ながらドライグの意思は無く、神達の再現でしかない。

 しかしその再現だけでも懐かしさが込み上げるだけのものはある……。

 左腕に纏う赤き龍帝の籠手を暫く見つめ続けたイッセーは本当に久し振りにその力を解放する。

 

 

『Boost!』

 

「あ……」

 

 

 かつての相棒の基礎能力の再現を。

 そして全身にかかる倍加によりその場からエリス目の前へ、彼女が反応できない速度で一瞬にして移動すると……。

 

 

「わざわざ本当に……はは、アンタ良いやつだな!」

 

 

 彼本来の持つ笑顔を浮かべ、エリスの両手を握ってブンブン振りながら何度も何度も礼を言った。皮肉っぽく笑うのではなく、本当に笑いながら。

 

 

「何か食うか? 奢ってやんよ?」

 

「え、ええっと……」

 

「遠慮するなよ? それくらいの事はさせろよな? じゃないと気が済まねぇや」

 

「い、いえこれは我々から貴方へのお詫びであって」

 

「んなもんアンタ等が気に病む理由にはなんねーよ! そもそも俺達は奴等が気にくわなかったからぶちのめしただけだしな! よしっ! この時間に開いてる飲み屋探すか!」

 

「ちょ!? こ、この姿だと色々と弊害が――きゃあ!?」

 

 

 変な所でテンションが上がったイッセーがエリスを横抱きに抱え、文字通り空へと大ジャンプする。

 

 

『Boost!』

 

「禁手化やら覇龍は無理そうだし、龍帝・第四形態も無理だが、ははは! 気分良いぜこりゃあ! なぁドライグゥ!」

 

「ちょ、ちょっと兵藤さん!? わ、私のお尻に手が……!」

 

「あはははは!!!」

 

 

 テンションが上がりすぎて横抱きに抱えたエリスの尻を意図せず触れながら夜空を飛ぶ。

 こうして再現だけながら赤龍帝に戻ったイッセーはエリスからクリスに戻った彼女を夜通し連れ回しまくったのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜の間、どこに行ってたのでしょうかイッセーさん?」

 

「実は色々とサプライズがあって……すまん」

 

「……すんすん、知らない女性の匂いがイッセーさんからしますが?」

 

「あ、いや……」

 

「そ、そうなんだ……。女の人と会ってたんだぁ……!

わ、私、イッセーさんが夜に部屋から出てからずっと待ってたのに……! う、ううっ!」

 

「ち、ちげーよ! 別に変な事なんかしゃいないって! ほ、ほら見ろめぐみん! 前に言ってた赤龍帝の籠手だ! これさえあればお前のアシストも――」

 

「そんなのどうでも良いですよ!! ず、ずっとずっと寝ないで帰りを待ってたのに酷い!!」

 

「す、すまん! ごめん! 悪い! だが本当に変な事はしてないのだけは誓える!」

 

「ぐすっ、ほ、本当に? 私を捨てませんか……?」

 

「あの時お前のしつこさに負けたからな、お前が嫌になるまで付き合うさ……」

 

 

 部屋に戻ったイッセーは、泣きながらずっと待っていたと言うめぐみんに滅茶苦茶怒られたのだった。

 

 

 復活・赤龍帝(疑似)




補足

流石にポンコツすぎるカズマ君を見て疑問に思ったのですが、まーたアクア様が嘘ぶっこいたので引き続きカズマ君に勘違いし続けるのだった。



で、そんな訳で擬似的に赤龍帝として再臨しました。

基礎的な応用なら可能なので贈り物発動したらめぐみんが凄まじい事に……。


その2
別世界と比べたら全くエリス様に対する対応が違いすぎる。

まあ、そもそも人外に嫌悪感は無いですからね彼は。
寧ろわざわざ気に掛けてくれたといい人認定してしまってるくらい。


その3
実はこっそり部屋を出た辺りから起きてためぐみんは全然戻ってこないイッセーに不安がり、その内声を殺しながら泣き、朝方戻ってきたら知らない女の匂い(エリス様)がして感情が爆発して大泣きし、イッセーはあたふたと浮気がバレた情けない男的な対応をするのだった。

ちなみにエリス様とはマジで何もありません。

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