色々なIF集   作:超人類DX

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このシリーズのたっちゃんは基本的に可愛いを目指したい。



頑張れ刀奈ちゃま

 一応、春人にとっても予定通りの流れに沿って過ごせているとは思っている。

 悔やむべきは箒の性格が暴力的じゃない事で、しかも自分の知らぬ間に一夏との仲をかなり深めていたという点で、こんな事なら一夏を普通の学校に通わせるように根回しすべきだった。

 

 それと、一夏が他の女子と親しくしないように根回ししように姉の千冬が思っていた以上に自分の近くに居すぎるので下手に動けない。

 

 

「へーIS学園ってそんな所なんだな」

 

「あんまり詳しくは言えないけど……」

 

「でも女子ばっかなんだろ? 良いよなぁ……まあ、お前自体女子みたいだけど」

 

「僕は男だ、死ね」

 

 

 だからついつい友人――というか、一夏がなるべきだった友人宅に遊びに行った時はとても開放的になっていた。

 

 

「兄貴っつーか、織斑も同じなんだろ? 凄いよなお前ら兄弟って」

 

「何でそうなったのかはよくわからないよ」

 

「ふーん? まぁ俺も兄貴の方は顔は知ってるけどあんま関わり無かったからよく知らんけど」

 

「…………」

 

 

 まともな友人がこの五反田弾くらいしか原作の描写には無かったので、取り敢えず先んじて自分が友達になってみた結果一夏は彼とその妹との関わりが零で面識すらほぼ無い状態になっていたが、蓋を開けてみればその代わりに六年は音沙汰無かった筈の箒と関わりを持ち続けたというのだから、かなり面白くない状況だ。

 

 況してや、原作とは大きくかけ離れて落ち着いた性格の箒ともなれば尚更。

 

 

「蘭と鈴は遅いね」

 

「あー……多分下で仲良くしてんじゃねーの?(小競り合いしてるなんて言えねぇ)」

 

 

 だから自分の思い通りになってる様でなっていない状況が面白くなかったのだ。

 自分は原作に合わせようとしているのに、何もしていない一夏は簡単に手に入れられる事に。

 

 

 

 こんな感じで外部との友人と過ごしてほんの少しのストレスを軽減出来た春人は付いてきた鈴と共にIS学園に帰る。

 鈴と別れ、部屋に入れば良いのだが、入ったら千冬にベタベタされて拘束されるので、消灯時間ギリギリまで彷徨こうと、他のクラスや他学年の女子達から黄色い声を貰いながらこっそり寮を抜け出す。

 

 

「あ、弟君だ」

 

「一人みたいだけど大丈夫かしら? 倒れたら大変じゃない」

 

「織斑先生が飛んで来るでしょうから大丈夫よ。ただ、それでまた織斑君が何かされないかが心配だけど」

 

「この前なんか貧血で具合悪いからって織斑君に重い荷物全部持たせようとしたからね」

 

「あれだけクラスの私達が協力するって言ってるのに、何で織斑君一人に押し付けようとするのかしらね――同じ兄弟なのに」

 

 

 他のクラスと学年からの女子からの受けはこんな感じなのだが同じクラスの女子からの約半分は、春人が過保護にされる事で割りを食わされる一夏に同情している様な心境らしく、一人でフラフラしている春人を見て倒れられたらある意味大変じゃないのかと遠巻きに見ている。

 春人の耳にはそれらがバッチリ入ってしまい、見えないところで小さく舌打ちをする。

 

 

(頑丈しか取り柄が無いんだから当たり前だ……)

 

 

 転生してからは求めれば殆ど周りがくれる事に慣れすぎたせいなのか、本気でそう思っている春人は気分を害しながら外へと抜け出してしばらくウロウロと歩き回る。

 気に入らない。自分がこうして動いてるのに、一夏は何もせずとも手に入れられる事に。

 

 しかも、まだ後になる筈の更識達ともこの前突然楯無が教室に来て名指しで呼んだ所を見ればいつの間に知り合っていた。

 実はこの学園には春人も知らないイレギュラーが二人居て、その二人との繋がりから得た繋がりであることを知らないからこそ、一夏が勝手にやってるだけだとイライラしてる訳で、もっといえばこの春人は転生前から更識楯無というキャラが好きだったので、出来れば早い段階で知り合いになりたかった。

 

 それをほぼ潰されてしまったという意味でも余計に春人は一夏が憎かった。

 しかし彼に与えられた補正というものはやはり強いものらしく、彼が求めれば世界はそれなりに応えてくれるものらしい。

 

 箒や楯無達が既に完全に自己を確立しているので、そんな補正をほぼはね除けられるから無理だとしても、そうでない者には強く作用するものだ。

 そう、例えば……。

 

 

「キミ、もう夜なのにどうしたの?」

 

「! ……アナタは織斑春人……」

 

 

 姉に対してコンプレックスを抱いたその妹とか。

 

 

「そう、だけど……キミは?」

 

「………。誰でも良いでしょう? 私に話し掛けないで」

 

 

 まさか此処で出会すとは思わなかった春人も、寮の裏の縁石に一人座って端末を操作していた水色髪の少女に驚きながらも、彼女が誰なのかを記憶で直ぐに理解して話し掛ける。

 もっとも、現状はかなり冷たい態度でかなり突き放す言い方だが。

 

 

「……。ごめん、気になったからさ」

 

「………」

 

「…………っ!? な、なに?」

 

「いや、何をしてるのかなと思って……」

 

「何でも良いでしょう? アナタには関係ない、あっち行って」

 

「そう言われると余計気になるから嫌だ」

 

 

 しかしその理由を自分が持っている専用機にあると知る春人は、ちょっと図々しく端末を動かしていた彼女――更識簪の隣に座り、彼女が凍結された己の専用機をデータも無しに作ろうとしているのを見る。

 その結果どうなるか――箒の姉たる束から教えられた知識を与えて急速に機体の完成度を高めるに貢献し始める事で変わり始めるのかもしれない。

 

 彼の持つ強い補正も相俟って……。

 

 

 

 

 

 

「春人~! 今日は私とマンツーマンで訓練しよ?」

 

「駄目ですわ! 春人さんは私と訓練をするのです!!」

 

 

 その出会いから数日後、何時もの様に放課後になれば、セシリアや隣のクラスから飛んで来る鈴によって挟まれ、それを見た千冬が阻止したりとてんやわんやする流れになるのだが……。

 

 

「ごめん、今日はやることがあるから」

 

 

 そう言っては隙を見て抜け出して何処かへ行ってしまう。

 

 

「あ、春人!?」

 

「春人さん!」

 

「やることって何よ~!」

 

 

 三人に知られたら騒ぎになるので絶対に教える事は出来ないと今日も春人は一人で行ってしまうのだが、残された千冬達は春人と一緒じゃないせいか、イライラし始めている。

 

 

「アンタが五月蝿いから春人が逃げたじゃない!」

 

「アナタこそ耳元で喧しいのですわ!!」

 

「黙れ小娘が! 貴様等はどっちも騒がしいんだ!」

 

 

 

「おーおー、荒れてるねぇ……」

 

「フォローをしてからせめて行ってくれないものか春人は」

 

 

 そんなやり取りを事実他人事の様に他のクラスメートと眺めていた一夏と箒は、春人が何をしてるのかに無関心が故にどうでも良かった。

 

 

「今日は走るか?」

 

「そうだな。足腰は鍛えておかないとイザという時逃げられないし」

 

 

 そんな事よりも逃げる技術を鍛え込む事が大事であり、広大なIS学園はそんなトレーニングに最適な場所だった。

 

 

「そういや剣道部には入らないのか?」

 

「高校になってから辞めるつもりだったから入らないよ。やってたのも実家が道場だったのと基礎を固める為だったし」

 

 

 ちなみに箒は剣道部に入っていない。

 その理由は本人が言った通り、実家が道場だった流れと基礎体力を補う為であり、今の箒が目指すのはリアスなのだ。

 

 

「基本的に得物を持つスタイルは変わらないけどな」

 

 

 故に得物は持つが独自に発展させる求道者的道を選んだ箒は剣道を続けるつもりは無く、一夏もその方が良いと納得する。

 先を歩く二つの大きな背中に追い付くには生ぬるいやり方では駄目なのだ。

 

 

「恐らく更識先輩も私達と同じく、二人に追い付こうと独自に鍛えていると思う。

聞いてみれば家柄からして元々の力量も相当だろうし、うかうかしていたら先に追い付かれてしまう」

 

「そうだな。一応付き合いは俺達の方が長いしね!」

 

 

 良い意味でのライバルが現れて良い刺激にもなった今、一夏と箒は漸く成長して出来上がった身体で更なる上を目指す。

 この先永遠にも近い時を生きる二人に追い付く様に……。

 

 

「その事なんだけどさ、しののんとおりむーに相談したいことが……」

 

「「ん?」」

 

 

 だがそんなライバルこと楯無が最近落ち込んでいる事を知るのは、教室を出ようと席を立った二人に話し掛けてきたのほほんさんこと本音によって、無関心でどうでも良かった春人と関わる事になる。

 

 

 

 

 

 

 何時もなら毎日の様に『生徒会の仕事しろよ』と突っ込みたくなるくらい押し掛けては騒がしい楯無が、一昨日辺りからかなり元気が無い。

 一応用務員室に来るには来るのだが、飛び付こうとしてきたりしないで、かなりテンションが低い。

 

 

「敢えて聞かなかったけどさ、アレか? 妹さん関連で何かあったのか?」

 

 

 この落ち込み方がどんなものかを去年から一応知っていたイッセーは、リアスが今職員室に居てこの場に居ないという事もあり、今日も用務員室に来た楯無を珍しく普通に迎えながら切り出してみる。

 すると案の定、計量とかまるで考慮してないイッセー作のお茶をチビチビと飲む楯無はコクリと頷いた。

 

 

「最近妹が一夏君の弟君に協力して貰って凍結された専用機の開発をしてるんです」

 

「弟? ……あぁ」

 

 

 イチ坊から取るだけ取ってノウノウとしてる餓鬼か……。と、未だにリアス共々顔を合わせた事は無い春人が楯無の妹である簪と最近親しくなっている事を聞いて相槌を打つ。

 

 

「キミの妹さんなら一応前に寮の床清掃してる時に見たよ。目の色とか髪の色がキミそっくりだったからすぐわかったけど、かなり大人しそうな子だろう?」

 

 

 楯無から聞いてなければまず気にも止めなかった簪について話すイッセーに楯無は頷く。

 

 

「前も話したと思うんですけど、私ってあの子に恨まれてるというか……自分が凡人と卑下しちゃってると言いますか」

 

「あぁ、勝手に自分の限界を悟って殻に閉じ籠ったんだろ? でもそれはキミも理解して覚悟を決めたんだろ?」

 

「そうです。その事に関しては憎まれ役だろうがなんだろうがやってでもあの子の姉であり続けると思ってます。

ただその、そんな子が何時知り合ったかまではわからないにせよ、こんな早く織斑君に心を開くのかなと疑問に思いまして」

 

「ふむ?」

 

「それで昨日、思いきって本人に聞いてみたんです。そうしたら――あはは、聞き方を間違えちゃったのかな? あの子は私が織斑君との仲を引き裂こうとしてるとか思っちゃったみたいで……」

 

「…………」

 

 

 完全にやってしまいました♪ と、空元気にしか見えない笑顔を見せる楯無に、イッセーは内心『チッ、リアスちゃんを陥れた屑野郎とまんま同じかよ』と毒づく。

 

 

『今更何の用?』 

 

『いや、最近どうなのかなって思って……。

ごめん、確かに今更かもしれないけどさ』

 

『別に。貴女とは関係の無い所で凡人らしくやってるつもりだよ』

 

『そ、そう。えっとさ、最近織斑君の弟と仲良く――』

 

『………………。そういう事? 私が春人と仲良くしてるから、色々と探らせようとしたいんだ? 貴女だって兄の方と知り合いな癖に』

 

『違うわ! そんな事は言ってない! ただ私は――』

 

『冗談じゃない。私に春人を裏切れと言うのなら、私は貴女を死ぬまで恨んでやる』

 

 

 

 

 

 

「――――とまで言われて。別にただ聞いてみようと思っただけで、何か探れなんて思ってもなかったのに……」

 

「………」

 

 

 しかも結構深刻に特殊な姉妹仲とはいえ、既にそこまで心を寄せているらしい。

 

 

「余計な事だったのかもしれません……」

 

「聞き方を間違えたな。緊張してテンパってたとはいえ、焦らずに聞くべきだった」

 

 

 今の楯無の気持ちはリアス共々かなり解る。

 とはいえ、やはり自分とは違って一夏と箒の様に恨んでる様子は無く、純粋に心配してるのがわかる。

 

 

「馬鹿でしたね私……。彼が病弱でしょっちゅう織斑先生の庇護下に置かれているから、あの子も巻き込まれちゃうんじゃないかと思って聞いたのですけど……」

 

「イチ坊はしょっちゅうその割りを食わされてるからな」

 

 

 やれ危ないから雑用はお前がやれと、そんなんならISなんか乗らせずに隔離でもしておけと突っ込みたくなるくらいの露骨な贔屓の割りを食わされてる一夏の事を思い返しつつ頷く。

 

 

「キミはイチ坊の弟と親しくなるのは反対なのか?」

 

「いえ別に、ただ本音ちゃんの話を聞いてるとあまり良い印象が無いので簪ちゃんが心配なだけで……」

 

 

 どうやら春人個人を嫌ってるといったものは無いらしい。

 寧ろその周りに居る千冬やその他女子から何を言われるのかが心配な様だ。

 

 

「心配なのはわかるけど、本人の意思が彼と親しくなりたいってのなら、そのままにしてやったら良いんじゃないか?」

 

「そうなんですかね……」

 

 

 となれば、イッセー的にもあん転生者濃厚な餓鬼一人に遅れを取る事は無くなってるので、見守ってやれと意見するが、楯無の表情はまだ晴れない。

 

 

「邪魔したら一生恨むまで言う程、姉のキミに啖呵切ったんだろ? だったらそれ相応の覚悟を持ってる筈だし、それだけ親しいならその彼の取り巻き達の事も知ってるさ―――これあくまでも俺の意見な?」

 

 

 どこか何時もより親身になって話すイッセー

 

 

「それでもし彼に愛想が尽きたならそれで良しだし、その時もう一度ちゃんと話をしたら良いさ」

 

 

 それは一夏や箒もそうだったように、今の楯無の気持ちが解るからこそであり、チョコレートのお菓子を机の引き出しから出して楯無に与えるイッセーはだからこそこう思っている。

 

 

「けどこれも個人的な意見だが、もしそれでその妹さんがその彼から逃げてキミに泣きついてきたとしたら―――あくまで個人的な意見だからな? 俺がキミの立場ならぶっ飛ばしてやるね。

恨むだなんで散々デカい口叩いて都合が悪くなったら泣き付く程度の覚悟の分際で……ってね」

 

「………」 

 

 

 正直言うと転生者が何をしてようが、無関係ならどうでも良いし、最近は転生者に与するのも結局は自分の意思なんだろうと考えていた。

 だから都合が悪くなると逃げて、散々敵意を向けた相手にすり寄ろうとするその者に寧ろ腹が立つ。

 

 

「もっとも、キミが一年の頃からしょっちゅう妹さんの話は聞いてるし、よっぽど大切で、その為の覚悟も決めたのも知ってる訳だけどさ。

まぁ……なんだ、イチ坊と箒とのほほんさんが彼と同じクラスなんだし、様子を見て貰う様に頼んどこう」

 

 

 とはいえ、今回の場合は楯無が大事に思う妹の簪なのでイッセーも出来だけの協力はするつもりだ。

 立場上派手に動けないが、それでも出来る事はある。

 

 そう楯無の隣に立って背中を押すように優しく叩いてあげたイッセー。

 

 

「大丈夫だ。もし織斑君とやらに何かされたり言われたりしたら即俺かリアスちゃんに言え

用務員と保険医に出来る事なんてたかが知れてるかもしれないけど、それでも――」 

 

「…………」 

 

 

 結局根がなんだかんだお人好しなせいか、敵意が無い相手に手を差し伸べてあげようとするイッセーに、楯無がちょっと驚いた表情をしている事に気づく。

 

 

「? どした?」 

 

「何時もより優しいなって……」

 

「? 別に普通だろ」

 

 

 そうは言うが、やはり転生者絡みなので楯無の言うとおり普段よりかなり親身なのは間違いなく、本人にその自覚が無い。

 故に楯無は他の時でもたまに見せる小さな優しさに弱い。

 

 

「いえ、絶対に倍は優しいです。だから――あ、あれ? 顔が熱くなってきちゃった」

 

 

 他の生徒がまず見ることな無いだろう、楯無の態度にイッセーは原因の癖に微妙に呆れた顔をする。

 

 

「キミって稀に見るチョロさだな、妹さんと似てるんじゃね? てかそんなんで本当に暗部だかの当主やれるのか? 将来が地味に心配なんだけど」

 

 

 …………。あれ、という事はもしかして俺はあの餓鬼と同じなのか? と内心気付いて軽く自己嫌悪しそうになるが、顔を真っ赤にする楯無が意地っ張りの様に声をあげた。

 

 

「ち、違いますぅ!! これはイッセーさんだからです! というかイッセーさんのせいなんですぅ~!!」

 

「はぁ?」

 

「さっきだって地味に優しくしてくるせいで、さっきからドキドキしちゃってるだけですから!」

 

「いやだからそれがチョロいってんだよ。本当に大丈夫か? 詐欺男に引っ掛かりそうな気がして」

 

「暗部の当主なんで大丈夫です! 第一イッセーさんは私を騙そうとしてるんですか!?」

 

「いや」

 

「そうでしょう!? だからですよ! ぐぅ、グレモリー先生が本当に羨ましいわ!」

 

 

 リアスがその優しさの全部を貰ってるのが本当に羨ましいと叫ぶ楯無は、ほんの少しだけ悩みを吹っ切りながら何時もの様にイッセーに絡む。

 

 

「元の調子に戻ったみたいで何よりだよ。

ま、キミはそっちの方がキミらしいからな」

 

「あ……」

 

 

 良くは分からないが、取り敢えず何時もの調子に戻った様だと、ちょっと実は安心したイッセーは無意識にぽんぽんとその頭に手を置いた。

 

 

「頑張りな。俺と違って友達に恵まれてるんだから、一人で抱え込むな」

 

「あ、あぅ……は、はい……」

 

 

 それがダメなのに。

 

 

終わり。

 

 

 

 

 アドバイスと、一夏や箒、本音や虚という友人によって過剰にならないようにしようと決めた楯無は妹の行く末を見守る。

 

 その結果、日に日に簪は春人と親しくなり、また春人を囲う女子や姉ともそれなりに対抗出来ている様なのでこれなら大丈夫なのかと思ったのだが……。

 

 

「あ、ごめんなさい……」

 

「……………」

 

 

 その春人により、またしても災難が降り注ぐ。

 

 

「へぇ、あんな事を言って無理とわかったら自ら出陣って感じ? しかもそんな色仕掛けまでしてさ。最低だねアナタって」

 

「ちょ、か、簪? そんな言い方……」

 

「春人は黙ってて、この人は昔からそうだ。私が求めるものを全部持ってて、その上奪おうとする」

 

 

 たまたま曲がり角で出くわし、何故か身体がその一瞬硬直し、その間に春人と衝突した際にそのまま倒れ込んで胸に思いきり顔を突っ込まれた。

 しかも最悪な事に後ろに居た春人の友人達に簪を含めて見られたせいで完全な誤解までされた。

 

 

「ま、待ってよ! ぶつかっただけで私はそんな――」

 

「へぇ、アナタくらいなら避けられたと思うんだけどな? 白々しいよホント」

 

「っ!!」

 

 

 本当に春人と出会した瞬間、金縛りの様に身体が動かなくなった――という証拠が出せずに簪から白い目で見られた楯無は、春人に胸を掴まれたというショックもあって逃げよるように走り去った。

 

 

「……………………………」

 

「そんな事が……。

ショックだったでしょう? これを飲んで落ち着きなさい」

 

「わ、私、そんなつもりじゃなかったのに……! 見守るって決めたのに!」

 

「わかってる、わかってるわ。

ほらイッセー、泣いてるのだからちゃんと慰めてあげなさい?」

 

「え、俺!? ………いや、わかったよ」

 

 

 リアスとイッセーに悲しみを吐露し、リアスの勧めで初めてイッセーに優しく肩を貸して貰って泣く刀奈。

 流石にイッセーもそんな心中を察してか、リアスと一緒に背中を撫でながら慰めている。

 

 

「っ……ふ……! うぅ……!」

 

「……………」

 

 

 ここまで打ちのめされた姿は見なかったので、ただ無言でイッセーは彼女を慰める。

 そして……。

 

 

「一夏、簪のお姉さんは何処?」

 

「……。それを聞いてどうするんだ?」

 

「決まってる、謝りに行く。

僕のせいで簪との仲を悪くしたか――」

 

「ほう、自覚はしてるようだな春人? だがお前が更識先輩に謝る必要は無いな」

 

「寧ろ今会って貰っても余計に話が拗れるからやめて欲しいかなーって?」

 

「お嬢様の事は私達が対応しますので、貴方は簪様の事をお願いします」

 

「でも……」

 

「でもじゃない。良いか、少しでも自分のせいって自覚があるなら今はそっとしてやれよ? 言いたくないが、そうなるから波風が立つんだからな」

 

「っ!」

 

 

 友人達は意地でも刀奈に会わせまいと本気を出す。

 だが、それで納得する聞き分けの良い性格をしてる訳じゃない春人は……。

 

 

「あの、この前は……」

 

「……」

 

 

 なんとほぼ無理矢理消灯時間後の楯無の部屋に押し入ったのだ。

 所謂旗立ての為に。

 

 

「大声を出してあげましょうか?」

 

 

 だが既に自己を確立させ、更には春人にセクハラされて完全に嫌いになった刀奈は恐ろしいほど冷たい。

 

 

「事故にせよ何にせよ、好きな人の為に磨いた自分を他人に土足で汚されるショックはわからないでしょうね? 五秒あげるからとっとと私の目の前から消えろ」

 

「………」

 

 

 そしてこれ以降、更識楯無としてではなく、刀奈として進化する。

 

 

「グレモリー先生~!」

 

「どうしたの更識さん? 随分元気だけど……」

 

「皆のお陰でちょっとは前に進めたからかな? ふふ、それより先生、私……先生に負けませんから!」

 

「……。そう、ふふ……可愛いライバルが現れたって訳ね?」

 

 

 イッセーとその隣を歩くリアスに追い付く本物の覚悟と共に。

 

 

「お前のせいで簪と先輩が仲直りできない」

 

「は? どこに俺のせいの要素があるんだよ?」

 

「凄まじい八つ当たりだな。聞いたぞ? 消灯時間後に部屋を抜け出して更識先輩の部屋に無理矢理押し入っとたな」

 

 

 そして一番に近い目的の旗をヘシ折られた転生者はまだ簡単に捻り潰せる龍帝と滅殺姫が居ることに気付けない。

 

嘘だぜこんちくしょー




補足

実はたっちゃん狙いだった転生者だったが、はい残念でした。
かんちゃんがやらかしたせいで寧ろ遠退きました!


その2
てかそうで無くても色々と遅い。


その3

転生者のラキスケ発動→かんちゃんがたっちゃんが誘惑したと誤解してキレる→→たっちゃんはかんちゃんに言われたのと、リーアたんに対抗するために磨いた自分を関係ない奴に触られたのがショックでマジ泣き→→→リーアたんのフォローによりイッセーくんによしよしされて回復→→→→→結果、完全に吹っ切った事で進化開始。

姉妹仲はバッドエンドになっちまうかもしれねぇ。


………と、まぁ進化した結果のスキルはどうすっかなぁと考え中。

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