色々なIF集   作:超人類DX

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無理矢理入れられたオカルト研究部以来の部活に……


楽しく部活(笑)

 これでも一誠時代に比べれば、月音である現在は相当丸くなっている。

 何せかつては人間では無い全ての知的生命体を種族ごと滅ぼすのは当たり前だったし、そのやり方もかなり残虐非道なものだった。

 

 それに比べたら、今の彼は確かに少し無愛想なのかもしれないにしても大分丸くなったと言っても過言ではないだろう。

 人間ではない生物たるバンパイアに絡まれてもなんなかんやと対応してあげてるのだから。

 

 

「さて青野君に赤夜さん! 楽しい部活動のお時間ですよー!」

 

「…………」

 

「えっと、はい」

 

 

 そんな男がよもや妖怪の為の学校で部活に入るだなど、きっと一誠時代の知人が知ったらさぞ驚く事だろう―――――というのはさておき、その月音は現在担任が顧問をしている新聞部の部室に案内されていた。

 もっとも、どうやら部室となる場所が月音と萌香が所属するクラスの教室だったので移動する必要はないのだが。

 

 

「勿論、黒乃さんもよ?」

 

「………はい」

 

 

 なのでそのまま教室に残らされた月音と、月音が入るならという理由で入った萌香はクラスメートが居なくなった教室の席に座って待っている訳だが、その席の後ろに座る頭に包帯を巻いて不機嫌そうにしている胡夢が普通に来ているのだ。

 

 

「でも黒乃さんのその包帯はどうしたの? 怪我?」

 

「ええ……まぁ」

 

「「………」」

 

 

 逆恨みが理由でわざわざ新聞部に入っただけと思っていたのが、頭に包帯を巻いて普通に来た胡夢が猫目の質問に対してこっちを軽く睨みながら返答しているので萌香は微妙に居心地が悪かった。

 

 

「つ、月音……? 黒乃さんがずっとこっちを見てる」

 

「放っておいてやりなさい」

 

 

 もう一人の人格がやったとはいえ、包帯を巻いた理由が自分にあるのは明白だ。

 だからその居たたまれない気持ちを誤魔化す為、逆に胡夢に睨まれても平然と無視してる月音に話しかけてみる訳だが、案の定本人は全くといって良いほど胡夢に対して関心が無かった。

 

 

「チクらないって事は、自分で復讐でもしたいんだろう」

 

「という事はまだまだあの子に狙われるの?」

 

「多分そうなるな。

ま、大した問題じゃあないから放置しとけって」

 

「私は結構問題あると思うけど……」

 

「大丈夫だろ、キミ危がなくなったら銀赤夜さんが守ってくれるだろうし」

 

 

 嘘でも自分が何とかするとは言わない月音の無関心過ぎる言い方に萌香は後ろの席から睨みっぱなしの胡夢からの何か言いたげな視線にただただ居たたまれないのだった。

 

 

「さてと、そんな訳で赤夜さん、青野君、黒乃さん―――えー、特に青野君はよくぞ新聞部に入部してくれました。

これより陽海学園新聞部の活動を開始しまーす!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「チッ」

 

 

 特にを強調しながら月音を見て言うせいで、只でさえ頭数が少なくて微妙な空気が更に微妙になる空気の中、一人だけ妙に張り切る猫目に萌香が居たたまれない気持ちを紛らわそうと質問をする。

 

 

「あのー……部員は他に居ないのでしょうか?」

 

「いえまさか――」

 

 

 チクチクと後ろから突き刺さる視線を背に質問した萌香に猫目が答えようとした時、教室の扉が開かれる。

 

 

「すんませ~ん」

 

「おっと、噂をする前に来たわ、もう一人の部員が」

 

「いや~申しわけない。初日から遅れてもうて」

 

 

 他にも部員は居たらしく、入ってきたのはかなり顔立ちの整った関西弁訛りの男子だった。

 

 

「どーも初めまして、新聞部部長の森丘銀影や。よろしゅう」

 

 

 新聞部の部長という肩書きと共に名乗る銀影は、月音――は目に入らずに胡夢と萌香を見るなりテンションが上がったのか、どこからともなく赤い花束を差し出しながらナンパをし始めた。

 

 

「おっほー! 先生に聞いとたけど何て美しい新入部員なんや! オレのことはギンって呼んでな? あ、ギンちゃんでもオーケー。

ふふん、べっぴんはんには赤い花よう似合う――ん? そこの水色髪ちゃんは怪我でもしたんか?」

 

「「……」」

 

「………」

 

 

 空気が元々微妙だったせいなのか、銀影の明るさを前に微妙な気分の萌香と、包帯について突っ込まれて機嫌が更に悪くなる胡夢。

 男の月音は未だに挨拶もされないで放置されてる辺りがリアルな世の中の縮図を感じる中、猫目が銀影について説明する。

 

 

「ギンくんは二年生でたった一人の部員。だから部のことでわからないことはギンくんに聞いてね?」

 

「フッ、どんどん頼ってくれや」

 

「でも青野くん―――うんにゃ、月音くんは先生に質問してくれたら手取り足取り教えちゃうわ!」

 

「名前で呼ぶのやめてくれますか?」

 

 

 名前呼びに変え始めた猫目に対して死ぬほど嫌そうな顔をした月音。

 しかし本人は全然聞いちゃいない。

 

 

「本当はこのまま月音くんに教えてあげたいのだけど、残念な事に私はこれから職員会議なの。

だから後の部活の進行はギンくん任せるわ――あ、でも次はちゃんと先生が教えるからね?」

 

「…………」

 

 

 胡夢と銀影も驚いて目を丸くしてる中、苦虫をこれでもかと噛み潰した顔をしてる月音の両手を握りながら、心底残念そうな表情をする猫目は、名残惜しそうにその手を放すと、教室を出ていった。

 

 

「なんや自分、随分と先生にアレやな」

 

「……」

 

 

 嫌そうな顔を終始崩さない月音に銀影が初めて声を掛けるが、それでも嫌な顔は崩れず、またしても変な空気が充満する中部活動は始まった。

 

 

「えーっと、取り敢えず新聞部がどんな部活か教えるな?」

 

「ほら月音、今から先輩が説明するからちゃんと聞こ?」

 

「わかってるけど、その前にウエットティッシュとか持ってない?」

 

「ハンカチならあるけど……」

 

「おーい、説明したいんやけどー?」

 

「ちゃんと聞きなさいよこの鬼畜コンビ」

 

 

 等というやり取りを挟みつつ、気を取り直して説明に耳を傾ける。

 

 

「新聞部の目的は校内新聞の発行! 学園内のあらゆることを取材して新聞にするのが活動内容やな」

 

「………」

 

 

 ある意味取材の材料が今出てきたけど――と、制服のズボンで手を何度も払ってる月音を見て内心呟く銀影。

 

 

「取材のためなら危険の中へも突っこんでいく!

言うとくが、ウチの部をそこらの文化部とは比べ物にならんくらい甘い部ちゃうで、入った以上は覚悟したってや」

 

 

 そう言いながらまずは手始めにとばかりに持参した部のポスターを出した銀影は指示を出す。

 

 

「これはうちの部の宣伝用ポスターや。取り敢えず後ろの壁にでも貼っといてな」

 

 

 半分脅迫とはいえ、入ったからには部活をしなくてはいけないし、ましてや銀影が悪い訳ではないので、言われた通りに作業をする。

 

 

「これくらいですか?」

 

「いや、もっと上らへんやな。このポスター長いし」

 

「はぁ……ではここらへん?」

 

「いやいや、もうちょいや」

 

 

 時折わざとらしく横から肩をぶつけられながらも、胡夢と共に台に乗ってポスター貼りをする萌香に高さが足りないと注文を付ける銀影は、背伸びをする女子二人のスカートの中を実は覗いていたりしていた。

 

 

「………………」

 

 

 そんな銀影を下側の貼り付けを担当させてられていた月音は、台に上がってる二人のスカートの中を覗いている事に気付いていたのだが、敢えて何も言うことは無かった。

 

 

『そこの小僧が小娘のスカートの中下から覗いてるぞ』

 

(良いよ放っておけよ、そういう年頃なんだろう)

 

『お前も一応そういう年頃だろう。昔はお前もこの小僧と同じタイプだった癖に』

 

(そりゃあ人間の女の子だったらそうかもわからないけどさぁ)

 

 

 ニヤニヤしながら萌香と胡夢のスカートの中を覗いてる銀影にドライグが月音の昔についてを話せば、本人は否定はしないもののそれが人間の女の子だったらと返す。

 人間以外の生物は女子供だろうが容赦なくぶちのめしてきた最悪な災厄と呼ばれた破壊の龍帝も、異なる世界にて生まれ変わってまで手に掛ける気は無いらしい。

 

 

「ちょっとアンタ!!」

 

「!?」

 

 

 しかし往々にしてそういう行為は本人にバレてしまうというのがお約束であり、気配という名の視線をふと感じた胡夢が怒声をあげた。

 

 

「下から何を覗いているのよ――青野!」

 

「!」

 

「は?」

 

「え……?」

 

 

 何故か覗いてすら無かった月音に向けてなのだが……。

 

 

「覗いた? 俺が?」

 

「そうよ! 今絶対私のスカートの中覗いた!」

 

「お、おぉ、そうなんか? イカンで自分、そんな卑劣な行為をしたら~」

 

 

 あからさまにホッとした顔をしてる銀影が覗いてたのに何故か自分が覗いてるという冤罪をふっかけられてる月音に、漸く自分の立ち位置を理解したのか萌香が口を開く。

 

 

「えっと、見たの?」

 

 

 これでもかと睨む胡夢と、注意する銀影に挟まれてる月音に萌香が問うと、当然アホらしいものを見るような顔で首を横に振る。

 

 

「見ないよ馬鹿馬鹿しい、何でそんな真似をしなくちゃならねぇんだ。

覗くぐらいなら渋谷のセンター街で遊んでる人間の女子高生をナンパしてた方が余程有意義だってんだ」

 

「言い訳なんか聞きたくないわ!」

 

「そやでー? 見ておきながら……」

 

「おいおい先輩よ? アンタが俺に言える立場かよ? そもそも覗いてたのはアンタだろ?」

 

 

 どうにかして月音に復讐したい胡夢が実はでっち上げただけの件を平然と否定する月音が然り気無く銀影が覗いていたと言うと、萌香がスカートを押さえながら台から降りると、ササッと月音の背中に隠れた。

 

 

「ちょ、ちょお待ってぇな赤夜さん! 俺じゃなくてそっち……」

 

「いえ、月音の事は知ってます。多分ですけど、仮に私と黒乃さんが目の前で全裸だったとしても顔色ひとつ変えずに寧ろ鼻で笑うので覗く事はしません」

 

 

 裏萌香と遊んでる時に大体は見てたので、今更覗きをするとは思えなかった萌香は、逆に月音の言った事を信じ、銀影を睨む。

 

 

「ず、随分と信頼しとるようやな」

 

「ええ、何だかんだ良くしてくれますから」

 

「してねーよ」

 

「単に媚びてるだけなんじゃないの?」

 

 

 萌香の信用され具合に軽く頬をヒクヒクさせる銀影と、とにかく月音と萌香がムカついてしょうがない胡夢に睨まれ、部活動初日にしては最悪すぎるスタートになってしまったのは云うまでも無いだろう。

 

 

「何ならそれを理由に退部させて貰っても結構ですよ俺は。

元々あの猫アマに入れられただけの部活ですからね」

 

「月音が退部するなら私もしますので」

 

 

 そう言いながら終わりでも無いのに月音と萌香は教室を出ていってしまう。

 

 

「くっ、ああ言えば赤夜萌香が幻滅して彼から離れると思ったのに……」

 

「えらい二人に恨みがある様やな……」

 

「ふん!」

 

「それにしても、あの青野とかいう奴、随分と赤夜さんと距離が近いな………羨ましいやっちゃで」

 

 

 胡夢がどうしてこんなに嫌っているのかはさておき、あの二人の距離感を調べてみる必要があると銀影は思うのだった。

 

 

 

 

 

 

「あーぁ、だから集団行動は向かないって言ったんだ」

 

「でもさっきのは黒乃さんが月音に冤罪を吹っ掛けて来たからで……」

 

「どっちにしろその内亀裂が生じてたよ。多分あの部長、キミの事狙ってたし」

 

「え、そうなの?」

 

 

 部活の途中で教室を出てしまった月音と萌香は、食堂近くの自販機で飲み物を買って飲みながら話をしていた。

 

 

「いっそ俺だけ退部したら全部丸く収まる気がするから、そうしようか……」

 

「嫌よ、月音が辞めるなら私も……」

 

「あのさ、キミもそろそろちゃんとした友人を作るべきだと思うわ」

 

「月音はちゃんとしたお友だちだもん……」

 

『お前が居ないとつまらん』

 

「つまらんってな……」

 

 

 辞めるなら自分も辞めると、何故そこまで頑なになるのかがイマイチわからない月音は、ロザリオ越しに声を出す裏萌香までも同じ意見な事に軽く辟易する。

 

 

「はぁ……取り敢えず今日は帰ろう。辞めるか辞めないかについては、めっちゃ嫌だけどあの担任に事情を話して……」

 

「そうか、なら今から存分に遊べるという訳だな」

 

「………………。サイレントで入れ替わるなよ」

 

 

 今戻る気にはなれないという言葉を聞いた途端、待ってましたとばかりに入れ替わって出てきた裏萌香。

 

 

「あの変な訛りで喋る男から強い力を感じたが、考えてみたらお前が放った力の方が意味不明だったし、今更感も凄まじい」

 

「あぁ……あの先輩さんね」

 

『え、そーなの?』

 

「そうだぞ、ちなみにあの逆恨み女とお前のスカートの中を覗いていたと月音の言った事も本当だ」

 

『や、やっぱり……』

 

「敢えて放置してたけどな俺は」

 

『な、何でよ!? 言ってくれたら良かったのに……うぅ』

 

「年頃の男にはよくあるんだよ。もっとも、あんなのとキミのパンツを見たがる趣味はよくわからんけどさ」

 

「チッ、真顔で言ってくれる……」

 

 

 微妙に銀影の肩を持ちつつ趣味は悪いと覗かれた本人を目の前に言い切る月音に裏萌香は不機嫌そうに舌打ちをするが、つい先日にも散々小馬鹿にされまくってたので手を出すならぬ足を出す事はしなかった。

 

 

「お前の見る目の無さについては今置いておいて、とにかく遊ぶぞ」

 

「えぇ? たまには違うことしようぜ?」

 

「違う事だと?」

 

「例えば―――えっと……そう、此処で駄弁るとか」

 

「それは何の意味がある?」

 

「そりゃ………あー………………互いの事をもっと知るとか?」

 

 

 また同じ事の繰り返しを何時間も付き合わされるのが嫌だった月音が、その場で思い付いた事をそれっぽく言う。

 しかしこれで裏状態の萌香は多分納得しないかもしれない……と、一瞬固まっている姿を見ながら思っていたのだが……。

 

 

「知りたいのか? 私の事を?」

 

「へ? いや別に――――あ、違う! 一応は知っときたいかな! ほら、何だかんだ俺と話せるのってキミ達くらいだし?」

 

 

 思わず本音が飛び出そうになるのを堪え、嘘臭さ半端ない笑顔を浮かべて取り繕うと、裏萌香は暫し口を三角お握りみたいな形に開けてこっちを見ると……。

 

 

「あー……うん、まぁ、お前がそこまで言うなら仕方ないな、話せる範囲でなら話してやってやらんこともない」

 

『すっごい動揺して―――』

 

「ゴホンゴホン!! で、何を知りたいんだ? いや、私も話すのだからお前も話してくれるのだろうな?」

 

「答えられる範囲でなら……」

 

「そうかそうか。そうと決まればこんな場所では盛り上がりに欠けるし、場所を変えよう。

ええっと……そうだ、お前の部屋が良いな! 早く移動するぞ!」

 

「ちょ、急に掴むなよ!?」

 

 

 妙にそわそわしながら月音の手首を掴み、そのままずんずんと月音の独房みたいな部屋を目指して前を歩く裏萌香。

 ある意味口から出任せだったとはいえ、成功したといえば成功したのかもしれないが……。

 

 

「っ!?」

 

「危な……。おいおい大丈夫か?」

 

「す、すまん、しかしちょっと石ころにつまづいただけで大袈裟な――あぶ!?」

 

『お、思いきり余所見してドアに顔をぶつけてる……』

 

「っっ~~~!!」

 

「具合悪いのか? 帰った方が……」

 

「だから大丈夫だ! そもそもお前のせいだ! 急に変な事を言うから!!」

 

「はぁ?」

 

 

 当初の月音の目論見的には外してるのかもしれない。

 

 

「あ、あの男子、凄い美人と手を繋いで歩いてるぞ?」

 

「確か三組の青野じゃなかった?」

 

 

 目立ち的な意味で。




補足

恨まれてるので普通に冤罪を吹っ掛けられましたけど、その前に裏萌香さんとの遊び風景を知ってる表萌香さんは信じなかったとさ。

その2

急に言われてソワソワしちゃった裏萌香さんはドジッ娘度が上がりましたとさ

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