色々なIF集   作:超人類DX

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要らぬ事を言って、トークをしてしまった結果…………。


日に日に距離を詰められまくる龍帝さん

 たまに思う事がひとつ。

『俺って何の為にこんな人間じゃない生物共だらけの学校に入ったのだろう』と。

 

 いや、勿論理由はちゃんと覚えている訳だけど、この場所にあの猫ガキが居ないと分かった時点でとっとと辞めてしまえば良いのに俺は辞めてない。

 そればかりか散々毛嫌いしてきた人間じゃない生物に混じって、人間でもねぇ生物に偉そうに人間の学問を教えられてる俺は一体どこまで投げ槍になってしまってるのか。

 

 挙げ句の果てにはひょんな事から知り合いになってしまった吸血鬼に毎日毎日絡まれて……。

 いくら青野月音として生まれ変わり、両親の下で普通に育ったとはいえ、一誠としての記憶と精神があるのなら変わる事なんて無いはずなのに。

 

 何時だったか、解放状態の吸血鬼に自分で言った通り腑抜けてしまったのか……俺自身にもわからない。

 あの白ガキに借りを返す為に生きてる今、俺にはこの変化が分からないし戸惑うばかり。

 

 きっと今の俺を見たらアイツ等は怒るかもな……。

 

 

 

 

『馬鹿馬鹿しい、何でそんな真似をしなくちゃならねぇんだ。

覗くぐらいなら渋谷のセンター街で遊んでる人間の女子高生をナンパしてた方が余程有意義だってんだ』

 

 

 心底馬鹿馬鹿しいとばかりに、心底お前という存在そのものに関心が無いとばかりに青野月音は自分に向けてハッキリ言ってきた。

 黒乃胡夢にとってすれば自身の美貌に自信を持っていただけに、また多くの男の心を虜にしてきた経験があるが故に、月音のこの例外かつ眼中ゼロだという主張は種族としても含めたプライドを悉く傷つけるものだった。

 

 

(何よ何よ何よ!! 他の男子は赤夜萌香のことばっかりだし、青野月音は私を見下すし!)

 

 

 無論、女としての人気の差という意味に於いては萌香の事も憎いけど、それ以上に腹が立つのが月音の無関心過ぎる態度だ。

 確かに先日は軽く冤罪を吹っ掛けはしたけど、普通それを言われてそこまで冷静に――かつ死ぬほどとまで宣いながら否定するだなんて、胡夢にしてみれば切り札とも言えるチャームをも簡単にはね除けて来るという意味もあって悔しくて仕方ない。

 

 

「チッ、あの野郎、今日も赤夜さんと一緒だ」

 

「ふざけやがって、いっそ赤夜さんが居ないスキにしめちまうか?」

 

 

 だから色々と胡夢は萌香と月音――特に、まだ何の妖怪すらも分からない月音についてを色々と探っているのだが、わかる事といえば月音が多くの男子から萌香と常に一緒に居るという事で恨みを買っているという事ぐらいであり、逆に女子からの反応は『赤夜さんとしか話をしてるのをみたことが無いからよくわからない』という、結局イマイチよくわからん存在という事ぐらいだった。

 

 

(いっそ、さっきの男達を使って青野月音にけしかけて……いや、バンパイアの赤夜萌香が常に居るから並の妖怪じゃ返り討ちされるわね)

 

 

 とにかくどちらも蹴落としたくて仕方ない胡夢は色々とあの手この手を考える。

 昨日の冤罪吹っ掛けの際のトラブルでさっさと二人が帰ってしまい、しかも部活を辞める可能性まで出てしまったので上手いこと背後に回れる機会が減ってしまう。

 

 どうしたものかと悩む胡夢だったが、ふとその部活の部長の事を思い出す。

 

 

(そうだ、そうだわ! あの女好きそうな部長を部の活動を上手く使って青野月音と二人にさせてボコボコにして貰えば良いのよ!)

 

 

 部長というのは森丘銀影の事であり、あの性格からして恐らくそこら辺の男子共同様、萌香を狙っている可能性は大いにある。

 彼がどんな妖怪かは別にして、月音のあの弱そうな見た目を考えたら誰でもボコボコに出来そうだから、上手く誘導すれば―――と、ボコボコにされて倒れ伏す月音の背中に腰掛けて高笑いしている自分の夢想までした胡夢は行動に出た。

 奇しくも、銀影の思惑が当たっていて月音を邪魔に思っている所までが大当たりしていて、上手いこと誘導させる事に成功して……。

 

 

 

 

「チッ」

 

 

 放課後、既に辞める気でいた月音は萌香と共に顧問である猫目静に退部届けを理由と共に提出したのだが、一言で却下されてしまった。

 

 

「駄目よ月音くん? 黒乃さんにそんな事を言われたのは分かったけど、それは先生がビシッと注意するから辞めるのは駄目。

そもそも一度入部を決めたら原則的に半年は所属して貰う決まりがあるんだから」

 

 

 この一言と、妙に熱っぽい顔で言われて本能的に怖くなった月音は逃げるようにして萌香と部室に向かってしまったのだが、来るなり妙に機嫌の良い部長の銀影に言われて学園内の取材というものを二組に別れてする事になってますます気分は悪かった。

 

 

「おーおー、機嫌が悪いなぁジブン?」

 

「冤罪吹っ掛けられた部に所属しなきゃならない気持ちは先輩にはわからんでしょうよ」

 

「そら本当に見たんやからしゃーないやろ?」

 

 

 あくまでとぼけた顔で罪を押し付けてくる事には別に腹は立たないが、取材で学園内を回ってる割りには体育館裏等の人気の無い場所ばかりを歩いてるのが妙に怪しい。

 

 

「こんな誰も居ない所で取材なんかできるんすか?」

 

「ふっ、素人やなぁ? こういう人気がないところに特ダネが眠っとるんや」

 

「誰かがヤッてるとこなんて撮りたかありませんよ」

 

 

 ましてや畜生共同士の交尾シーンなんざ単なるグロ映像だろ……と、機嫌が悪いせいか、声には出さないが色々と酷い月音の思考を知らずに銀影は、チッチッチッ、と指を振る。

 

 

「それはそれでおもろいけど、流石に記事にはでけへん。

良いか? 例えば特ダネっちゅうのは――そやな、そこの高いとこに小さい窓があるやろ? あそこから中をのぞいてみ?」

 

 

 そう言って建物の少し高めに設置されてる小窓を覗けと命令する銀影だが、月音は拒否する。

 

 

「勘なんすけど、覗いたら女子更衣室でしたとかオチだったら最悪なんで、まずあの中が何の部屋なのかだけ教えて貰えます?」

 

「!」

 

「…………図星か。昨日の今日で引っ掛かる訳ないだろ、間抜けが」

 

「な、なんやと」

 

 

 顔に出てしまって図星と見抜かれた銀影が、アホらしいものを見るような目で間抜けと言われて少し怒りを見せる。

 

 

「先輩に対する態度ちゃうやろ」

 

「そんな態度にさせるアンタが悪いんだろうぜ。全く、あのどうでも良い水色髪といい、どいつもこいつも鬱陶しいったらありゃしねぇ」

 

「モカさんと毎日一緒に引っ付いて調子に乗っとるからやろが……!」

 

「へぇ、アンタも彼女がねぇ……」

 

「当たり前や、あないな美少女は他に居らへん! 絶対にモノにしたるわ!」

 

「じゃあさっさと口説くなりしとけってんだよ、くだらねぇ……」

 

 

 この手の輩に対して、向こうが勝手に俺を良い奴と勝手に誤解して付いてくるんだと一から説明したところでわかりゃしないのは経験上解っていたので、敢えて怠そうにかつ、鬱陶しいと言った態度と共に吐き捨てた。

 

 その瞬間、銀影の表情に殺気が帯び始める。

 

 

「……。一度お前とはじっくり話をつけなアカン様やな。よっしゃ、今此処で騒ぎを起こすのもなんやし、今夜面ァ貸せや? あぁ、来ないなら来ないでええけどな? その代わり、明日には俺がお前に関する捏造した記事を書いた新聞をばら蒔くから」

 

「…………………」

 

 

 そう言って消えていく銀影。

 

 

『どうするんだ?』

 

(正直死ぬほどかったるいが、あんまり変な捏造を広められても困る可能性もあるしなぁ……あぁ、あの吸血鬼のせいで妙な面倒事ばっかりだ)

 

 

 どうせ呼び出して半殺しにでもして来るんだろう……と予想しながら、取り敢えず『捏造はしません』と言わせる為に乗る事にした月音の顔はゲームのレベル上げの作業が面倒で仕方ないといった顔だった。

 

 

(よしっ! よーっし!! これで森丘先輩にボコボコにされる青野月音がみれるわ! 妙に偉そうな態度は変わらないけど、流石にあんな弱そうな見た目なら弱いに決まってるわ!! 後は、上手く助けに行けないように妨害しつつも赤夜萌香に言えば……くふふふ、絶対に幻滅して終わりよ!)

 

 

 

 

『なぁ、あの淫魔の小娘が物陰から見てる……』

 

(どうでも良いよ、どうせグルなんだし)

 

 

 

 

 

 

 

 とにかく理由は無いけど、赤夜萌香が自分に靡きもしない男と楽しくしてるのが気にくわない胡夢は、月が照らす時間に男子寮から月音が一人で出てきたのを見計らい、女子寮の萌香の部屋に行ったのだが……居なかった。

 

 

「あ、あれ? 何で?」

 

 

 こんな時間に一体何処へ………と、思って部屋を出ようとしたのだが――

 

 

「おい、私の部屋で何をしてるサキュバス女?」

 

「げっ!?」

 

 

 ちょうど戻ってきた――しかも何故か封印解放状態の萌香とかち合ってしまい、胡夢は先日叩き潰された時の恐怖が蘇って少し震えてしまう。

 

 

「な、何で封印が解かれてるのよ……?」

 

「それをお前に答える意味が無いし、質問を質問で返すな愚か者」

 

「ぐっ……!」

 

 

 何故か少し不機嫌な様子の裏萌香に睨まれ、胡夢は足がすくんでしまう。

 しかしこうしてかち合ったのはある意味幸運でもある訳で……。

 

 

「せ、折角青野くんの良い情報を教えてあげようとしたのに、ず、随分な言い種じゃないの?」

 

「なに、月音に関する良い情報だと?」

 

 

 食いついた! 思ってた以上に食い付いた! と、裏萌香の無関心を装った『興味あります』が顔に書いてる態度に胡夢は内心ホッとする。

 

 

「お前ごときが知ってる月音の情報なんぞ聞いた所で私が既に知っている話しかもしれんが、まぁ一応聞いてやろう。何のことだ?」

 

「そ、それがねー……森丘先輩がアンタに惚れて、近付くには青野君が邪魔だからって、呼び出されて男子寮を出ていったのを見たのよ」

 

「何?」

 

 

 予想した様な反応を示す萌香に胡夢はニヤニヤとアドバンテージを取ったつもりで煽る。

 

 

「大変じゃないの? 青野君ってそんな強そうに見えないし、下手したら学校に通えなくなるくらいの怪我でもしちゃう――」

 

「アイツめ、急に野暮用だなんて部屋を出た理由はそういう事だったのか……!」

 

「――って、へ?」

 

「だったらそのまま待ってた方が良かったな。今からでも戻るか……」

 

 

 

 と、一人のけ者にされて拗ねた顔をした萌香が自分の部屋から何故か離れようとするので、胡夢は聞いてしまった言葉に動揺しつつ呼び止める。

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!? アンタ今何処に居たって……」

 

「何処だと? 月音の部屋だが、それが何だ?」

 

「はぁ!? こ、こんな時間まで男の部屋に居たの!?」

 

 

 しかも赤夜萌香が! とシレッと話す本人に驚く胡夢。

 淫魔故か、何となくアダルティな想像もしてしまうのは仕方ないが、実情はそんな事実はゼロだ。

 

 

「居たから何だ? 別に貴様みたいに男を呼んで邪な真似をしてる訳ではない」

 

「わ、私だってそんな事しないわよ!!」

 

「ふん、どうだかな。それにしても森丘銀影に呼び出されて……か。くく、バカな真似をしたものだ」

 

「な、なによアンタ? 心配じゃないの? 大事な友達がボコボコにされちゃうかもしれないのに……」

 

「心配なぞするものか――いや少しは心配かもしれんな。あの森丘銀影とやらが死にはしないかとな」

 

 

 戦闘力に関しては指ひとつで文字通り一蹴された経験がある萌香だからこそ、ボコボコになぞされる訳がないと言い切ると、驚きつつもどこか疑っている胡夢の首根っこを掴み、無理矢理外へと連れ出した。

 

 

「な、なにするのよ!?」

 

「折角だ、そのくだらん逆恨みすら沸く気にならん差というものを、その森丘とやらを使って見せてやろう」

 

 

 最近月音を話したら出てくる胡夢に知らしめてやる為に……萌香はちょっとウキウキした足取りで戦いの気配がある校舎屋上へと向かうと……。

 

 

「ウォォォォォン!!」

 

「うるせ……」

 

 

 遠吠えと共に人から人型の獣へと姿を変えた銀影と、脱力した姿で耳を抑えてる月音が居た。

 

 

「お、ちょうど始まった様だが……」

 

「あ、あれはウェアウルフ!? あの先輩、スピードの大妖だったの!?」

 

「らしいな」

 

「ら、らしいなってアンタ、ウェアウルフだったら彼は殺されるのかもしれないのよ!?」

 

「寧ろそれが貴様の望みではないのか?」

 

「う……」

 

 

 人狼が月音の周囲を超スピードで動き回るを隠れて見ながら、裏萌香に図星を突かれてしまう胡夢。

 しかし裏萌香が何故助けに入ろうとしないのか……それを知るまでにそう時間は掛からなかった。

 

 

「バンパイアが力なら、人狼は速さの大妖!

そしてこのスピードは月の光が強い程速さを増す! 今夜は月が最も輝く満月!!!」

 

「…………」

 

 

 わざわざ説明ご苦労様……と心にもない事を思いながらボーッと目で追うもせず、超スピードで走り回る銀影を前に棒立ちを決め込む月音。

 

 

「チッ、ウェアウルフ程度ではやる気も起こさんのか、自堕落月音め」

 

「……」

 

 

 そんな様子を見ながら、ちょっとやる気のある姿を見たい裏萌香は毒づき、根は基本的に良い子な胡夢は遠回しにけしかけてしまったとはいえ段々と不安になっていく。

 

 

「おい月音!!」

 

「!」

 

「あ?」

 

「ぬ!?」

 

 

 それが我慢ならなかったのだろう、段々不安になってた胡夢の横から裏萌香が月音を呼び始めた。

 これには銀影も動きを止めるも、封印が解かれた状態の姿に興奮し始める。

 

 

「おほぉ!? それがモカさんの本当の姿かいな! ますます欲しくなったで!」

 

「月音、わざわざ私と遊ぶのを中断させたのだ。そのまま適当にあしらうだ等許さん」

 

「無視せんといてぇな!」

 

「適当にってなんだよ? どうしろと?」

 

「決まってる……あの時見せた力を見せろ」

 

 

 勝手に興奮してる銀影を無視し、つかつかとやる気ゼロ顔の月音に詰め寄り、よりにもよってのオーバーキルを注文する萌香。

 しかし無視された事にカチンと来たのか、銀影が二人の間を割るように月音に襲い掛かる。

 

 

「無視すんなワレェ!!」

 

「あ、危ない!!」

 

 

 鋭い爪が月音に向けられ、胡夢が思わず危ないと声をあげた。

 しかし無視して勝手に二人でくっちゃべっていた月音は、萌香に詰め寄られてダルそうな顔そのままにその腕を掴んで簡単に止めた。

 

 

「なっ!?」

 

「何で一々そんな事しないといけないんだよ?」

 

「見たいからだ。昨日は色々と話せる範囲で互いに付いて話はしたが、やはりまだまだ知らぬ事は多い。

だからこの眼で表の私共々見ておきたい」

 

「だからって何で……あー怠い」

 

「離せ……離せこのボ――おわっ!?」

 

 

 腕を掴まれ、振りほどけずに暴れる銀影を無視してまだくっちゃべる内に、蹴りを入れようとしたが、その前に軽々と投げ飛ばされてしまう。

 

 

「くっ!」

 

 

 上手く着地はしたものの、自分を見ることすらせずに攻撃を防がれたという事で月音は最早ただの雑魚では無いと理解した銀影は今度こそMAXパワーの一撃でぶちのめそうと全力の速力を込めた一撃を放とうと決めたのだが……。

 

 

「この前のとは違うので良い? アレ割りと疲れるし」

 

「違うのがあるなら寧ろ見せろ」

 

「へーいへい、我儘っ娘さんめ――――起きろドライグ」

 

 

 相手はそんな力も何もかもを真っ向から平等的に捻り潰す化け物だった……と知るにはあまりにも遅すぎた。

 

 

「っ!? な、なんやその腕……」

 

「赤い腕……?」

 

 

 初めて見る胡夢と銀影は、月音の左腕全体を覆う真っ赤な装甲に目を見開く。

 だがそんな疑問に答える訳も無く、言葉の代わりに知るのは……。

 

 

『Boost!』

 

 

 新学期早々に起こった吐き気のする巨大なエネルギーと大地震の正体が、瞳と髪の色を真っ赤に変色させながら全身に巨大なオーラを放つ月音であるという事だけだった。

 

 

(な、なんや、こ、こいつ……よ、妖怪とかいう類ちゃう――空の上に海があると感じさせる様に巨大な――)

 

(い、今解ったわ。あ、あの時の地震は彼が起こしてたのね……!)

 

 

 一瞬にして戦力差を理解してしまった銀影は、吐き気を堪えながら全身から汗を吹き出し、胡夢は月音が萌香以上に―――いや、最早妖怪という概念ですら怪しいと感じる化け物さに戦慄してしまう。

 

 

「う、動けん……こ、これが恐怖……なんかいな……!」

 

 

 最早速さとかいう次元では不可能だと悟り、後は恐怖だけしか残らない。

 其ほどまでに今の月音から感じる力の感想は――異常だった。

 

 

「ふふん、どうやら二人とも恐怖を感じてる様だ。しかし私は怖くない」

 

「はいはい、偉いね」

 

 

 そんな異常者の横で萌香が自分は怖くなんかないと、ドヤ顔で胸を張り、月音が子供を適当に相手にする様な態度で返すのが地味にシュールなのだが、それは何の慰めにもならなかった。

 特に喧嘩を売ってしまった銀影にとっては。

 

 

「心配しなくても殺しはしませんよ。一応、高卒の証くらいは持ってないと両親に怒られますから」

 

「ギャイン!?」

 

 

 だから本能で上下の差を理解した銀影が降伏腹見せポーズをするも、両手から赤いエネルギーの塊を出した月音はそれを合わせながら無慈悲にもへし折りに来た。

 

 

「ビッグバン――」

 

『Boost!』

 

「ド――」

 

『Boost!』

 

「ラ―」

 

『Boost!』

「ゴ」

 

「ン」

 

 

 

 

 

 

『explosion!』

 

波ァァァァァッ!!!!!

 

 

 全てを破壊してきた一撃を……。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 強烈な赤い閃光と共に放たれた巨大ビームは腹見せポーズをしていた銀影の鼻先を掠め、そのまま空へと軌道が変わって飛んで行くと、空を照らす、目視可能な名も無き無数の星を消し飛ばした。

 それをただ唖然と、恐怖に染まる顔色で見ているだけしかできなかった銀影は既に人間態へと戻っており、腹見せポーズがシュールだ。

 

 

「やっべ、めっちゃ手加減したのに星を何個か吹っ飛ばしちまった……」

 

「加減してこれだと? やはり変態だな月音は。しかし良いものを見れたし良しとしてやろう」

 

「良しとしてやろうって……」

 

「これで二度とそこの連中に余計な真似をされることも無いだろうし、取り敢えずお前の部屋で遊び直すぞ」

 

「いや、もう消灯の時間じゃねーの?」

 

「問題ない最悪お前のベッドで寝る。

ふふん、私が泊まってやるんだ、感謝しろ?」

 

「図々しいにもほどがあるし、何の罰ゲームだそれは」

 

「? ベッドを使われと床で寝なくてはならないと懸念しているのか? 何だこのヘタレスケベめ、私と寝たいのか? そうなのか? ん?」

 

「おい」

 

「こ、こほん。

しょ、しょうがない、お前がそこまで言うなら! 考えてやらんことも――」

 

「ねぇちょっと、ピンクさん聞こえてたらすぐ変わってくんね? 全然話聞かないしこの子……」

 

『あはは、許してあげて? きっと自分と対等以上の人と会えて嬉しいんだろうから。あ、私も同じだよ?』

 

「同じだよ言われても……」

 

「あ、あれだからな!? ね、寝てる間に襲うのは無しだぞ!? そ、そういうのはもっとお互いを知ってからというかその……」

 

「しねーよ、てか自分の部屋帰れや」

 

『最近勝手に合鍵まで作っちゃったせいで、入り浸り気味だもんね』

 

「お陰でキミ等の私物だらけだよ……ったく」

 

「表の私ばかりと何を話している! 早く行くぞ!! ……………えっと、しゃ、シャワーは浴びた方が良い のか?」

 

「要らねーよ! 帰れよ!? 最近キミ変だぞ!?」

 

「お前がそうさせたんだ!! へ、変な所で優しくなったりするから!!」

 

「そんな覚えはねぇ!!」

 

『私も月音のたまに見せる優しさって好きよ?』

 

「やめろやめろ!!」

 

 

 

 

 

「………」

 

「………」

 

 

 挙げ句の果てに萌香とくっちゃべりながら去っていき、放置される。

 完全に眼中にすら無いのが改めて思い知らされた銀影と胡夢は改めて折れるのだった。

 

 

『小僧と水色小娘はあのままで良いのか?』

 

「え? あぁ、良いんじゃねーの? 寧ろこっちが面倒過ぎるし」

 

「む、ドライグか」

 

『こんにちはドライグ君?』

 

『ど、ドライグ君だと? な、慣れんぞその呼ばれ方は』

 

「ピンク赤夜さんはある意味スゲーと思える時はある。ドライグをそんな呼び方するなんてな……」

 

「む!? ま、待て待て、私も凄いだろう?」

 

「キミは単にアホの子疑惑が……」

 

「あ、アホとはなんだ!」

 

 

 色々とナチュラルに月音を知ってる時点で破綻してた話なのだから。




補足
裏萌香さんにねだられ、しょうがないから乗ったらその時点で心をへし折り、挙げ句に掠りドラゴン波までされて完全にトラウマりました。

胡夢さんは月音こそがヤバイとポケーッとみてました。


その2
呼び出しされた時、時間まで月音は萌香さんと部屋でじゅんじゅんなるトランプゲームをしてました。

曰く、勝手に押し入るし、勝手に独房テイスト部屋に私物持ち込んで飾るし、ベッドまで最悪占領されるしで、日に日に図々しさに拍車がかかりまくりらしい。

しかも、トークの時にドライグが『ハロー』と声を出したせいでその説明もしたりで大変らしい。

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