色々なIF集   作:超人類DX

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えーっとですね、区切り地点までやってたら相当長いので一旦ストップして、前々回の続きを再開します。

んで、暫く更新を控えて削除したりの整理をしようかと思います。


精々~以下略
たっちゃんの決意表明


 ここ最近、更識先輩の元気が無い。

 理由はそう、更識先輩の妹さんが春人とかなり仲を深めているからという理由だ。

 

 春人自身がその妹さんに何をしているって訳じゃないので、本人の意思で仲良くなってるのだから俺は別に良いんじゃないのかなとは思うけど、それでもやっぱり心配は心配らしい。

 

 暴力を振るうタイプでは無いので出来れば俺も杞憂であって欲しいと思う。

 だが、そんな妹さんは現在更識先輩を恨んでいるらしく、その恨みの思いを残してるからこそ、先日起こった小さな騒動が先輩と妹さんの仲を決定的に悪くさせてしまった……。

 

 

「一夏、簪のお姉さんは何処にいるの? 探しても見つからない」

 

 

 春人について妹さんが先輩を完全に誤解してしまったせいで……。

 

 

「それを聞いてどうするんだ?」

 

「決まってる、謝りに行く。

僕のせいで簪との仲を悪くしたか――」

 

 

 事の始まりは昨日。

 最近はオルコットさんや凰さんや仕事はどうしたのかと思ううちの姉さん――そして先輩の妹さんに囲まれながら生活している春人が、その四人の小競り合いの余波で転びそうになった際、偶々角を曲がって来た更識先輩と衝突し、威力を殺せずに転んでしまった先輩を押し倒す様な体勢になってしまったらしい。

 先輩の胸を思いきり掴む形で。

 

 

「残念だけど俺だって知らないし、今先輩に会って謝るべきじゃないと思うぜ?」

 

「何で一夏がそれを言うの?」

 

「いやだって、事故にせよそれが原因で先輩の妹さんが怒って先輩に色々と言ったんだろ? 先輩にすればショックに決まってるし、今はソッとすべきだぜ」

 

「ましてや更識先輩からしたら、初対面の男に事故とはいえ胸を掴まれたのだからな」

 

「だからそれを早く謝りに――」

 

 

 妹さんに思いきり呪詛の言葉を吐かれたのもそうだけど、きっと同じくらいに押し倒されたショックも大きい筈。

 だってあの先輩って分かってる上でそれでもイチ兄を……。 

 

 

「その前に更識さんに誤解だと説明する方が先じゃないのか春人? やけに先輩の事ばっかり気にするけどよ?」

 

「………」

 

 

 俺の意見に春人は口を閉ざし、どこか睨む様に見てくる。

 ……………。まさかとは思うが、妹さんの方のフォローをしてないのか? おいおい……。

 

 

「お姉さんの事を話すと簪の機嫌が悪くなるから……」

 

「だからそれを上手くフォローするのがお前のすべき事だろ? 謝るのも良いけど、その事故で先輩と妹さんの仲を悪くさせてしまったという自覚があるんだったらまずはそこから――」

 

「言われなくても分かってる! 知った様な事を言うな!!」

 

 

 挙げ句の果てに怒鳴られてしまった。

 おかしいな、俺が悪いのか? あぁ、あんまり人から怒られなかったからかな?

 

 

「逆ギレする前にちゃんとするべきだな、一夏の言うとおりに」

 

「っ!」

 

 

 箒も同じ事を思ってたらしく、言っちゃったよ。

 その瞬間なんとも言えない顔して行っちゃったけど。

 

 

「アイツ本当に大丈夫か?」

 

「図星だったのだろう、困ったものだ」

 

「あぁ、今回の事で先輩が完全に妹さんに恨まれてしまってるからなぁ。

妹さんに誤解である事を説明しようにも話に応じてくれんし」

 

「彼女の目には私とお前は更識先輩の肩を持つ者に見えるのだろう」

 

「確かにどっちの味方するかとなれば先輩だけどさぁ、誤解は誤解なんだから説明くらいさせて欲しいもんだぜ」

 

「一度そう認識したものを改めるのは難しい、人間というものはそういう感情の動物だからな」

 

 

 箒の言葉に俺は同意しながら、春人の背中を見るのだった。

 てか、用務員室に居るなんて言うわけが無いだろ。

 

 

 

 

 謝る前に更識簪が抱いた誤解を解く方が先だろう? 的な事を言われ、ついカッとなってしまった春人。

 よりにもよって一夏と箒に言われて腹が立ったからというのもそうだけど、春人はそれ以上に焦っていたからだ。

 

 

(何で一夏が既に生徒会の人達と親しいんだ。一体何時の間に知り合ったのだろう……?)

 

 

 織斑春人は記憶がある。

 この世界のある程度の道筋という記憶を……。

 だから更識簪という存在を知った上で話しかけたりもしたし、色々とその記憶を頼りに立ち回ったりもした。

 その結果セシリアや鈴音や簪等といった少女達とはかなり仲を深められた訳だけど、春人はそれ以上に簪の姉である更識楯無に近付きたかった。

 理由は彼の生前からの欲といわれたらそれまでだが、とにかく近付きたかった春人にしてみれば確かに先日の対面は悪手に他ならない。

 

 

(のほほんさんもどういう訳か一夏と仲が良くなってるし、多分その繋がりなんだろうけど……)

 

 

 お陰で簪が元々仲が拗れていた楯無相手に完全な訣別めいた啖呵を切ってしまうし、それを聞かされた楯無はショックに打ちのめされた表情と共に走り去ってしまったせいで何も出来なかった。

 本当ならこの偶然を利用すべきだったのに、それが出来なかった。

 

 ならば探してしまえば良いのだけど、どこを探しても楯無の姿は見つからない。

 だから一夏達に行方を聞いたのに、箒共々知ってるだろう癖に意地悪のつもりか教えもしない。

 

 

(僕の邪魔をするなら、僕にも考えがある)

 

 

 だから春人は確実に会える手段を思い付き、それを実行に移そうとするのだ。

 

 

 

 

 

 そんな織斑春人に対してどうとも思ってない楯無はといえば、先日のショックで精神的に滅入ってしまったままリアスが居る保健室へと来ていた。

 

 

「来てくれてありがとうイッセー」

 

「殆ど終わってるから別に良いさ。

それよりも、その様子からしてまだ立ち直れそうにないのか?」

 

 

 病は気からとは良く言うもの。

 幸い今の楯無の体調は悪くないものの、精神的には死にも等しい衝撃だった為、何時もの元気さが全く無く、元々赤い瞳を涙で更に真っ赤にさせながら保健室の机に突っ伏して泣いていた。

 

 

「そうよ、私よりイッセーの方が良いと思って……」

 

「一応この子の妹さんの事は何度か聞いてはいるが……」

 

 

 そう言いながらパイプ椅子を持ってきたイッセーは突っ伏して肩を震わせながら泣く楯無の隣に座り、リアスは保健室に備えてある簡易キッチンに移動し、お茶を用意する。

 

 

「い、イッセーさん……」

 

「昨日からずっとその調子なのは察するよ。

間が悪すぎたな、キミの妹さんと仲の良い織斑君と運悪く衝突してその拍子に押し倒された体勢になってる所を一緒に居た妹さんに見られて、散々罵倒されただなんてよ……」

 

 

 常々妹の簪に関しては間が悪くなると自嘲してた楯無だけど、今回ばかりは最悪に悪すぎたし、流石のイッセーも同情してしまう。

 勿論それはリアスも同じであり、イッセーとは反対側に座ると背中を擦りながらお茶を勧める。

 

 

「そんな事が……。

ショックだったでしょう? これを飲んで落ち着きなさい」

 

「わ、私、そんなつもりじゃなかったのに……! 見守るって決めたのに!」

 

 

 肉親に罵倒される苦しみはリアスが痛い程よくわかる話なので、漸く顔を上げた楯無がする心中の吐露に、よしよしと背中を擦って労る。

 

 

「慰めになるかは分からないけど、多分そのぶつかった織斑君がキミの妹にフォローしてる筈だから、誤解だというのは伝わってる……と思うけど」

 

「……」

 

 

 してなかったら場を荒らして放置するだけの役立たずだが……と内心転生者だろう春人の心中の欲を察したイッセーはリアスに背中を擦られながらゆっくりとお茶を飲む楯無の泣き晴らしたら横顔を眺める。

 

 

「どっちにしろ、妹にとって私は織斑春人に色仕掛けしたビッチ女らしいですから……あ、あはははは……は、う……くっ……うぅぅ……!」

 

「それは……酷いわね、言い過ぎじゃないの」

 

「俺がキミの立場だったらその時点でどっちも半殺しにしてやってたかもしれねぇ……。それを思えばキミはよく堪えたよ」

 

 

 やはり簪に罵倒された方がショックだったのだろう、無理して笑おうとするも、感情が決壊して再び泣き出す楯無の頭を軽く撫でるイッセー。

 

 

「べ、別に良いんです……簪が誰を好きになろうとも、誰もどうこう言える事じゃありませんし。

ただ、その彼が少し特殊だから心配なのは本当で……う、うぅ……」

 

「間違ってはないさキミは」

 

「大丈夫よ更識さん、言いたいことを今全部吐き出しちゃいなさい」

 

 

 簪への想いを吐露していく楯無をリアスとイッセーはただ受け止めていく。

 元慈愛のグレモリーとして、本来はスケベだけど受け止める大きさを持つイッセーの二人に楯無の名を継いだ更識家当主としてではなく、一人の少女である刀奈として抱えてきた思いの全てを吐き出していく。

 

 

「イッセー、泣いてるのだからちゃんと慰めてあげなさい?」

 

「え、俺!? ………いや、わかったよ」

 

 

 リアスとイッセーに悲しみを吐露し、リアスの勧めで初めてイッセーに優しく肩を貸して貰って泣く刀奈。

 流石にイッセーもそんな心中を察してか、リアスと一緒に背中を撫でながら慰めている。

 

 

 やがて吐き出してすっきりしたのか、楯無は本調子とまではいかぬものの少しは持ち直す。

 

 

「あはは、二人に恥ずかしい所を見られちゃったなぁ」

 

「ちょっとは調子が戻って何よりだ」

 

「大丈夫よ、誰も貴女を笑う人なんて居ないし、もし居たら私とイッセーでひっぱたいてあげるから」

 

「………。ちぇ、グレモリー先生には敵わないなぁ」

 

 

 まだ流れた涙で目は腫れてるけど、漸く笑った楯無はイッセーの隣に立てるリアスの大きさにちょっとした敗北感を抱く。

 しかし、だからこそ楯無は決意を固める。

 

 

「決めた、もう私は簪に対して中途半端をやめる」

 

 

 『今日は用務員室で寝たら良い、リアスちゃんを一緒にして俺はどっかで寝る』というイッセーの提案を断って保健室を出た楯無は一人呟く。

 

 

「私は私、簪は簪。

強要はしてはいけない……それが人生なんだもの」

 

 

 肉親であろうともその意思の邪魔をしてはいけないその決意を……。

 

 

「えへへ、グレモリー先生に弱ってる所を見られちゃったなぁ。ライバルなのにさぁ」

 

 

 だから楯無は何時もの様に扇子を取り出しながら堂々と歩く。

 既に時刻は放課後になったばかりだが、その足の向かう足はひとつ。

 

 

「失礼しま~す、織斑春人君はまだ居るかしら?」

 

『!?』

 

 

 ケジメをつけるべき相手である者の居る場所。

 

 

「あ、あの人は確か生徒会長……?」

 

「一体どうしたのかしら?」

 

「そういえば昨日変な噂があったけど……」

 

「え、どんな?」

 

「弟君に押し倒されてたって……」

 

「え!? じゃ、じゃあまさかそれで生徒会長さんが弟君が気になって……?」

 

 

 

 

 

「た、楯無お嬢様……?」

 

「春人が面食らってるぜオイ」

 

「大丈夫か? 妹の方が居るのに」

 

 

 誰もが驚きの視線を向け、それを一身に受けながら一夏、箒、本音と一瞬目が合って微笑んだ楯無は、その笑顔そのままに面食らってる春人と昨日の現場を見ていたセシリアや押し掛けている鈴音―――そして簪のもとへと歩く。

 

 

「……。何しに来たの?」

 

「まさか昨日の事で春人さんに何かするつもりですの?」

 

「まさか春人が気になってるとか……」

 

 

 驚く春人をかばう様に前に立つ三人。

 しかし楯無はそんな三人――簪を含めた少女達ににっこり微笑みながら一言―――

 

 

退()いて?」

 

 

 ほんの少しの威圧と共に一言退けと発した。

 

 

「「「!?」」」

 

『っ!?』

 

 

 その瞬間、三人は全身から嫌な汗を吹き出し、意思とは無関係の心の奥底に根付く本能の何かに命じられたかの如く道を開けた。

 

 

「やぁねぇ? そんな怯えた顔して? 別に何もしないわよ? 用があるのはそこの織斑君だし?」

 

「「「…………」」」

 

 

 シーンとする教室に聞こえる楯無の弾んだ声が実にアンバランスに感じる中、後ろに居た春人が楯無と前に出る。

 

 

「更識先輩……」

 

「やぁ、昨日振りになるかしら? あの時は色々とお世話になったからその()()に来たの」

 

「お礼……?」

 

 

 春人が首を傾げる。

 何の事だかは解らないが、探しても見付からなかった楯無の方から来てくれたとなれば却って好都合。

 一夏と箒が無言でこっちを見てるだけの辺り邪魔をしくる気配は無い――――ならば、思う存分自分側に引きずり込み、そのまま……と、春人は何かを呟こうとしたその瞬間だった。

 

 

「ぶべ!?」

 

 

 突如左頬に襲う激しい衝撃に虚弱を吟う春人は盛大にひっくり返った。

 何故か? それは右手に畳んだ扇子を持っていた楯無を見たらお察しが付くだろう―――ひっぱたいたのだ。

 

 

「春人さん!」

 

「ちょっとアンタ! 春人に何するのよ!!」

 

「…………許さない!」

 

 

 当然暫く呆然としていた三人が激怒しながら楯無に詰め寄ろうとするも……。

 

 

「あら、昨日あんな真似されたのだから一発くらい仕返ししたくもなるじゃない?」

 

 

 あんな真似とは当然春人に押し倒され、挙げ句その拍子に胸を掴まれた事だ。

 だがそれを聞いて三人が納得する訳もなく、わーぎゃーと騒ぐのだが、それを悉く無視した楯無は頬を抑えながら呆然としている春人を見下ろし――いや、見下(みくだ)しながら口を開く。

 

 

「妹の簪が好意を寄せてるからって、許されると思う? 大方その様子だと何をしても許される環境に居たんだと思うけど」

 

「い、いや……」

 

「それが例え事故にせよ何にせよ、好きな人の為に磨いた自分を、他人に土足で汚されるショックはわからないでしょうね?」

 

「………え!?」

 

 

 その言葉に春人は――それと簪も我が耳を疑った。

 好きな人が居ると今ハッキリ言ったのだから。

 

 

「好きな人って……」

 

「あら意外かしら簪? 私も人間なのよ? 好きな人が出来てもおかしくはないでしょう?」

 

「そ、その呼び方も……」

 

「何時までも子供扱いみたいな呼び方は失礼かと思っただけよ」

 

「…………」

 

 

 様子が明らかに昨日と違う姉に戸惑う簪ににっこり微笑む楯無は、動揺しながら一夏の方を睨んでた春人に再び口を開く。

 

 

「あら、あなたのお兄さんでは無いわよ? 勘違いさせたのなら謝るけど」

 

「一夏じゃない……? じゃ、じゃあ誰――」

 

「あなたの知らない人だし、他人の貴方に一々教えない。

でも理解頂けたかしら? そんな好きな人の為に磨いた己を、事故だろうがどうでも良い男に触れられるのは嫌なの。

ま、そういう訳だから悪しからず……ふふ」

 

「ま、待って! だ、誰なんですか!! そ、その男というのは!?」

 

「は、春人さん?」

 

「どうしたの、何でそんなに気になるのよ?」

 

 

 妙に必死な春人にセシリアと鈴音は驚く中、楯無はそんな春人の質問に答える事も無く背を向けると、戸惑いっぱなしだった簪に向かって言う。

 

 

「簪、貴女が心配しなくても彼に欠片の興味なんて無いから安心しなさい? 私って、不器用だけど然り気無い人がタイプだから」

 

「え……」

 

 

 ハッキリと背越しに興味が無いと言われてショックを受ける春人等気にも止めず、ヒラヒラと手を振りながら楯無は教室を出ていく。

 

 

「お相手は生徒会長・更識楯無でした~」

 

 

 去り際の台詞もキッチリと決めて。

 

 

 そして……。

 

 

「グレモリー先生~!」

 

「更識さん? どうしたの? イッセーなら仕事に戻ったけど……」

 

「イッセーさんには後で会ってお礼を言いますけど、最初に先生にお礼と、ちょっとした決意表明をしようと思いまして」

 

「?」

 

 

 更識刀奈は前進する。

 

 

「今回はありがとうございます、少し前に進めたし吹っ切れました。

だから先生……改めて先生には負けませんから!」

 

(まさかこの子……)

 

 

 普通(ノーマル)とは違いすぎる強い自我を感じさせる瞳。

 それはかつて自分とイッセーがしていたものにとても似ているからこそ、リアスはひとつの予感をした。

 

 一夏と箒の様に化けると……。

 

 

「そう、ふふ……! 可愛いライバルが現れたわね」

 

「その可愛さに足元掬われても知りませんからね! えへへ、イッセーさんと先生と出会えて良かったです」

 

「うかうかしてられないわねぇ」

 

 

 それは新たな世代の幕開けなのかもしれない。




補足

取りあえず、たっちゃんが吹っ切りました。

リーアたんとイッセーくんが受け止めたお陰で復活しました。

その2
んで、取り敢えずそれとは別にムカついてたのでひっぱたいてやりましたとさ。

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