色々なIF集   作:超人類DX

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男のストーカーが妙に多いこの世界において、彼女もストーカーをされていたらしい。


何か多いストーカー

 マコトは解せなかった。

 この世界のリアスが急に自分達に対しての関心をどういう訳か強めている事に。

 

 

「ひとつ聞いて良いかイッセー? あの先輩は最近何で頻繁に現れるんだ?」

 

「それが正直分からないんだよ。

確かに前々からマコトを仲間にすべきだとは――悪い、余計な事を言ってたけど、その時の部長はずっと断ってたんだ。

だから俺も急に部長がお前を仲間にすることを賛成するのかがわからなくて……」

 

「…………」

 

 

 夏休みも終わって新学期となったこの日、珍しくマコトはイッセーにこんな質問をしていた。 

 その内容は今の通り、夏休み中から急に話し掛けてきたり行くところに現れたりするリアスについてである。

 

 

「別に思う所は無いが、あの先輩は妙にやりづらい」

 

「美人に話し掛けられてると思えば役得じゃあ……」

 

「そういう問題じゃないんだよ」

 

 

 この世界のリアスとは関わりをなるべく避けたいマコトとしても、今の状況は非常にやりにくい。

 

 

「何の話?」

 

「クロか。

いや、イッセーの主さんについてをだな……」

 

「…………あー」

 

 

 それは兵藤家に住むことになった元白音こと黒歌にまで手が伸びており、どうもリアスは小猫とイッセーの肉親である事を利用してマコトと黒歌を引き込もうとしている様なのだ。

 

 

「別に悪い人では無いのはわかるけど、最近妙に接触してくるよね」

 

「ああ、冥界に居た時も終始部活に勧誘してきたしよ」

 

「俺のせいだ……マジすまん」

 

「別にイッセー君のせいだとは思ってないよ? 気にしなくても良いよ」

 

「お、おう……」

 

 

 別にリアスが嫌いな訳ではない。

 いや寧ろ、黒歌にとってもマコトにとっても中身や気質が別物とはいえ、かつて揃って世話になってた者の一人なのだから嫌いになる理由がない。

 とはいえ、明らかに自分達を利用したいですな思惑を顔に書いたまんま接近されるとなると、微妙に物悲しい気分になってしまう訳で。

 

 

「てかそのスウェットってマコトのじゃないのかよ?」

 

「? そうだけどそれが?」

 

「………なんで黒歌が着てるんだよ? 着替えならある筈だろ?」

 

「だってマコトくんの匂いがするんだもん」

「なんだと、いくらお前でも今の発言は聞き捨てならないぜ」

 

「どうでも良いから飯食おうぜ」

 

 

 勝手にマコトのスウェットを着てるのに対してイッセーがムッとし始めたので話は中断してしまったが、リアスの事は何とかしないといけない――と、思いながら軽く喧嘩になり始めてる二人を仲裁するのだった。

 

 

 

 

 そんなこんなで新学期に入ってからの小さな問題はリアスに関してであるのだが、実の所マコト達には直接関係ないせよの別の問題もあった。

 

 

「うっ……! ま、また来てます」

 

「ま、またかよ」

 

 

 この物語において――というより前世フェイズ含めて名前が一瞬出る程度の影しか無かった元シスター見習いであるアーシア・アルジェントの抱える問題が今発生しているのだ。

 それは郵便ポストに投函されている小綺麗な便箋の宛名を見て怖がっているのを伺えば、誰にでも物腰が柔らかい彼女がいかに嫌がっているのかがわかる。

 

 

「冥界から帰る時に現れて、アーシアにいきなり求婚して断られてからちょっと酷いなこれは……」

 

「さ、流石に怖いですイッセーさん」

 

「だよなぁ……うーん」

 

 

 とある上級悪魔からのしつこすぎる行為に対して最近のアーシアはめっきりと滅入ってしまっており、イッセーもなんとかしなければと考える。

 

 

「…………。マコトに相談してみようか」

 

「え!? お、弟さんにですか?」

 

 

 結果、やはりブラコンのせいなのか、最近は何かある度に一々報告する相手になっていたマコトへこの事についての相談をしてみようと呟いたイッセーに対して、アーシアはどこか躊躇したような声を出してしまう。

 

 

「何だよアーシア? マコトに相談して何か都合の悪いことでもあるのか?」

 

「い、いえ無いですけど……断られたりしませんかね?」

 

「ちゃんと事情を話したら少しは乗ってくれるよ。

それに、夏休みの時にサイラオーグさんを何故かボッコボコに止められるまで殴り倒した実力を考えたら、ボディガードにもなってくれそうじゃん」

 

「………」

 

「あ、勿論俺もちゃんとアーシアを守るし、マコトに頼りっぱなしだなんて事もしないぜ。

けど、こうまでしつこいし、確かその内会いに来るみたいな事も言ってただろ?」

 

 確かに以前冥界に居た時にどういう訳かサイラオーグとマコトの決闘が発生したのだが、その際周囲が引くレベルでサイラオーグがボコボコに殴り続けられてたのをアーシアは恐怖を覚えながら見ていたのを思い出す。

 

 あの決闘以降、それまでセラフォルーの権力目当てに近づいた人間風情という評価から少なくとも若手の純血悪魔を一蹴できるセラフォルーの将軍に相応しき存在へと認識が変わっていた。

 

 

「何でサイラオーグさんと決闘をする事になったのかはよく分からなかったけど、思えばリアス部長が更にマコト達に接触しようとし始めたのもアレの後だよな」

 

 

 弟がなんでそんな強いのか――という疑問はブラコンのせいか取り敢えず横に投げてるイッセーは、寧ろ日に日にセラフォルーによってはぐれ認定を取り消されたばかりか僧侶として傍に居る様になった黒歌がマコトと仲良くなっていく方のが焦りを覚える様だ。

 

 

「とにかく相談してみようぜ?」

 

「は、はい……」

 

 

 黒歌の事も愛称で呼ぶばかりか、基本的にセラフォルー同様に引っ付かれても顔色は変えないものの拒みはしないのが悔しくて仕方ない。

 が、それも取り敢えずは横に置いておく事にしたイッセーはアーシアのストーカー被害についての相談をすることにした。

 そのストーカー被害のアーシアがマコト達に怯えてる訳だが……。

 

 

「――――と、いう訳なんだよ。

多分マコト達も知ってるとは思うけど」

 

「あぁ、最近妙に変な花束が送られてくるのってそういう事なんだ? 大変だねキミも……」

 

「…………」

 

「どこの男も似た連中ばかりだな。いや、今の俺も似た様なものなのかもしれないがな」

 

 

 

 早速とばかりに兵藤家が改築されても、内装を変えなかった部分――つまりマコトの部屋を訪ねてアーシアの事について相談してみるイッセー。

 部屋を訪ねたら当たり前の様に黒歌が居たので突っ込みたくなったが、今はアーシアの事が優先だと思える辺りはイッセーはまだマシなのかもしれない。

 

 

「ほら、夏休みの会合の時に居たディオドラ・アスタロトって奴。

そいつがこっちに戻ってくる時にアーシアに求婚しやがったんだ」

 

「………へー?」

 

「………。どこかで聞いた話だな」

 

 

 自分達に対してビクビクしながらとなりに座るイッセーの服の袖を掴んでるアーシアのストーカー被害に対して、黒歌とマコトはデジャビュというものを感じた。

 

 

「今のところは全部無視をしてるんだけど、その内会いに行くって言ってたらしいから、何をされるか心配でさ。

勿論俺がアーシアを守れたら良いけど、相手の実力も知らないで守れるだなんて宣言できるほど俺は強くもないし自惚れてるつもりもなくて……」

 

「じゃあ修行メニューをハードなものに変える? 白音のついでにキミも見てる私としては構わないけど?」

 

「して貰えるならありがたいが、あまり時間も無いからよ」

 

 

 夏休み中に何度シャルロットと会う事をサイラオーグやジオティクスに阻まれたかわからない。

 いや、実質シャルロットの雇い主であるジオティクスはまだ納得できたが、リアス同様に行く先々に現れては『シャルロットさんは?』と、彼女の行方を訪ねてくるサイラオーグに関しては最早完全に殺意すら沸いたぐらいだ。

 

 故に二度とそんな気も起こさせない様に半殺しにしてしまった訳だが、皮肉にもその一方的すぎる獄殺現場再現が、セラフォルーの将軍としての格を上げる事になったのだから世の中はわからないものだ。

 

 

「まあ、出来る事があるなら協力はするが……」

 

「ホントか!? ほらアーシア言っただろ!? マコトは良い奴なんだよ!」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「…………」

 

 

 本音を言うと、かつての世界でも一切関わりの無いどころか寧ろムカついてた相手に協力する気なんてなかったが、別にこの世界のアーシア・アルジェントに罪は無いので、困ってるというのならイッセーの顔に免じて協力してやらないことはなかった。

 もっとも、会話が成立するかとなれば今も全くしないのだが。

 

 

 こうしてオーバーキルになりかねないボディガードを得た訳だが、こういった悪いことばかりではなかった。

 というのも、以前聖剣事件の際に再会していたイッセーの幼馴染みの紫藤イリナが転生天使となって駒王学園に転入してきたのだ。

 

 これにはイッセーも喜び、ゼノヴィアも相棒との再会に頬を緩ませたのだが………………正直マコト達には殆ど関係も関心も無い話だった。

 

 

「えっと、イッセーくんから聞いたんだけど、弟君も悪魔に転生しちゃったんだね? でもまあ友好関係を築きたいしこれからよろしくね?」

 

「…………………………………………………………………」

 

「あ、あはは……! ご、ごめん、それじゃあ」

 

 

 イッセーにとっては幼馴染みのだが、マコトにとってはそうではないし、もっと云えば紫藤イリナがどんなのかすら記憶になかった。

 覚えてる事といえばゼノヴィア共々転生者と共にどこぞのテロ組織だかに入って碌な最期ではなかったらしいという末路ぐらいか。

 ともかく声が出ないマコトがイリナを無表情で見てると、気まずくなったのかイリナはさっさとイッセー達の所へ行ってしまった。

 

 

「私達が生きた世界とは全く違う立場ですねあの人も」

 

「だな。だからどうだこうだでも無いがよ」

 

 

 きゃぴきゃぴとイッセー達に笑顔を振り撒いてるイリナや、その輪に入るゼノヴィアやアーシアを遠巻きに見て、自分達の生きた世界との差を実感するマコトと黒歌。

 ちなみに黒歌は今駒王学園の制服を着ており、なんとマコトとイッセーのクラスに転校した形で入ったのだ。

 当初はリアス達と同じ学年の筈だったが、黒歌本人がマコトと同学年が良いと言った結果こうなった。

 

 故に基本的にセラフォルー、シャルロットを含めて四人だけの時はマコトを先輩と呼んで口調も白音時代のものへとなるが、黒歌としての時はマコトを君付け呼んでため口だ。

 

 

「あら黒歌にマコト君、そんな遠くに居ないでアナタ達も一緒にお茶しましょう?」

 

「「……………」」

 

 

 そんな二重の生活を送る中、案の定今日もリアスに絡まれてしまう二人は、変に断る事も出来ずに部室へと連れていかれてしまうのだった。

 

 

「リアスの次のレーティングゲームの相手の前回の映像を見るぞ」

 

 

 凄まじく気の進まない気分で部室へと連行された二人は部外者気分そのままに、どうやらこの学園の教師的な位置として居座るアザゼルの見せるレーティングゲームの映像を見せられていた。

 

 

「お、ゲストを連れてきたのかリアス?」

 

 

 厄介な事にそのアザゼルにすら眷属を持たがらなかったセラフォルーの眷属だからという理由か何かで目を付けられてしまっており、連れてきたリアスに『よくやった』といわんばかりの笑みを浮かべながら近付いてくる。

 

 

「サイラオーグとの決闘は見せてもらったぜ兵藤誠? イッセーよりも後に悪魔に転生した新人としては破格すぎる活躍だったからな」

 

「……………………」

 

「どうでも良いからあんまりこっち見ないでくれる? マコト君は人見知りなの」

 

「大体わかってるよ。けど、逆にお前やセラフォルーには心を開いてるみたいだが、それはなんでだ?」

 

「………………………………………………………」

 

「それこそアナタの何の関係がある―――ん? どうしたのマコトくん? 耳を貸せって?」

 

 

 これまた正直言うと、かつての世界を含めてアザゼルという堕天使に対して関わりがそんなにあるようで無かったマコトは、妙に質問ばかりの彼に対して面倒さと鬱陶しさを感じていた。

 かといって声に出そうにも気持ち悪くなるので出せず、仕方ないので代わりに追い払おうとしてくれていた黒歌に耳打ちをして代弁してもらう。

 

 

「うんうん――えっとね、『それ以上ガタガタ抜かすとその舌切り落としてカラスの餌にするぞクソボケ』…………だってさ?」

 

「………………………………」

 

 

 かつて日之影一誠としての自分の人体の解析がしたいと近づいてきたアザゼルを二度とそんな気を起こさぬ程度に半殺しにしてしまった事があったからか、割りと辛辣な毒舌を黒歌に代弁の形で言われたアザゼルは固まってしまう。

 

 

「あ、あれ? 俺何か悪い事したのか?」

 

「さぁ? 自分の胸に聞いたらどう?」

 

「…………」

 

 

 一切目も合わせずに無言を貫くマコトと黒歌の辛辣さにアザゼルはちょっと困惑する。

 結局この一言によりアザゼルは引っ込み、リアス達にレーティングゲームの映像を見せる事になった。

 

 

「な、なによこれ……中盤まで有利だったシーグヴァイラが……」

 

 

 何やら映像を見てリアスが唖然としてる様だが、正味レーティングゲームのルールを未だに把握してないマコトは何をそんなに驚く事なのかが解らなく、隣で見ていた黒歌に説明を求めた。

 

 

「そんなに驚く事なのか? キングが前線に出て相手を殲滅してるだけじゃんか」

 

「彼一人によるワンサイドゲームに一気に傾いたからだと思う。

……もっとも、こんな程度の事で部長が驚いてる事に違和感を感じるけど」

 

「だよな。でも進化したリアスじゃないしな彼女は」

 

 

 ワンサイドゲームへと傾けたあの悪魔がどうやら今朝イッセーの言っていたディオドラ・アスタロトらしい。

 悲しいかな黒歌にもマコトにも彼に関するかつての世界での記憶はなかったので関心が薄い。

 

 結局、映像を見せられても何に驚く要素があったのか理解できなかったマコトは、映像に釘付けになってる皆の隙をついて黒歌と共にこっそり部室を出て、このまま帰ってしまおうかと話し合ったのだが……。

 

 

「あら、塔城さんと兵藤君ではありませんか、こんにちは」

 

「……げ」

 

「ソーナ・シトリー?」

 

 

 タイミングの悪さは続くもので、今度はリアスとは違って別にしつこくもなんともないソーナと鉢合わせしてしまった。

 

 

「今、私を見て嫌な顔をしましね兵藤君?」

 

「あ、いえ……反射的に……」

 

「ふーん、私何かアナタにそんな顔をされる事をしたかしら?」

 

「してないです別に……」

 

 

 別の意味でこの世界のソーナとは可も不可も無い関係になってしまってるせいで、この世界の匙から敵視されてしまっていたマコトとしては余程の理由が無ければリアス共々関わりたくはなかった。

 なので鉢合わせしたさいに反射的に顔を歪めてしまったのだが、マコトに対して変な慣れ方でも覚えてしまったのか、ソーナは妙にクスクスと笑いながらマコトに対して絡んでくる。

 

 

「お二人はこれからどうするのですか?」

 

「普通に家に帰りますが……」

 

「あら、それなら時間が余ってるという事ですよね? 実は私もこれから帰るのですが、良かったらご飯でも食べに行きませんか?」

 

「え、嫌です」

 

 

 多分セラフォルーがやっと持った眷属としての興味となまじ話せる様になったからというのが理由なのだろう、セラフォルーの妹としてを理由に妙に絡んでくるソーナにマコトは、損得感情が無い分逆にやりにくかった。

 

 

「第一、そんな事を我々にして頂けるのであれば、ご自身の眷属の方々にしてあげたらどうですか?」

 

「アナタの兵士君に睨まれたくないし」

 

「あの子の態度については常々注意はしてるつもりですがね……」

 

 

 そりゃあお前が好きだからだよ。

 と、いっそ言ってやりたい衝動を我慢するマコト。

 自分の知るソーナがイメージとして強すぎる分、この世界のソーナは妙に落ち着いてるから本当にやりにくい。

 

 

「何かまたいって来るなら遠慮無く言ってください、ちゃんと教育をし直しますから」

 

「いえですから……」

 

(…………。世界や中身は違えど、先輩の何かに引かれてるって事なのかな)

 

 

 マコト本人は本気でこの世界のリアスとソーナにこゆなに絡まれるとは思わなかったと思ってる様だが、黒歌にしてみればかつての世界での三人の距離の近さを思えば寧ろ自然に思えた。

 確かにムッツリスケベな部分があったかつてのソーナと比べたら、目の前のソーナはとても落ち着いてるように見えるし、マコトも非常に対応しにくいのだろうが……。

 

 等と微妙にしつこいソーナに戸惑うマコトを見て昔を思い出していると、遂に線が切れたのか、突然マコトがキレだした。

 

 

「だーかーらぁぁぁっ!!!! アンタの近くに居るだけでおたくの兵士の匙とかいう奴に嫌味言われんだよ! 何度も言ってるよな俺は!? それわかってて一々絡むとか性格疑うんだけど!!」

 

「え……え……?」

 

「あーあ、しつこいからだよ」

 

 

 ストレスが限界だったのだろう。

 突然火山が噴火したように大声を出して怒鳴り散らすマコトにビクッとしてしまうソーナ。

 黒歌は遂に来ちゃったか……と、ソーナに対して同情する気にはなれなかった。

 

 

「あ、あのごめんなさい。そんなにしつこくしたつもりはなくて……」

 

 

 無表情で淡々と普段からしてるだけに、この怒声は効いたのか、オロオロしながら謝るソーナをマコトはギロリと睨む。

 

 

「前にも匙とやらに言ったがこの際ハッキリ言ってやる。

いくらアンタがセラの妹だろうと、俺はアンタなんぞに欠片の関心もねーんだよ!」

 

「ぁ……う……」

 

「先輩言い過ぎです。泣きそうになってます」

 

 

 とはいえ流石に止めないとソーナのメンタルが大変な事になりそうだと、今にも泣きそうな顔をする彼女を見て思った黒歌が止めに入ろうとするが、ストレスの蓄積はやはり相当だったのだろう……マコトは更にソーナへと言ってしまった。

 

 

「失せろこのド貧乳眼鏡!」

 

「ど……!?」

 

「あっちゃぁ……」

 

 

 隠してるつもりだが、前世のソーナがコンプレックスに思ってた部分をこの世界のソーナに対して罵倒気味に言ってしまったマコトは、怒りそのままに踵を返す。

 

 

「どいつもこいつも……!」

 

「先輩、シトリーさんがスカートの裾を掴みながら涙目で睨んでます」

 

「知らん! 絶対に匙の気持ちに気付いてる癖に放置してるのが悪い!」

 

 

 お陰でとばっちりだバカ野郎! と、蓄積されたストレスを吐き出す様に悪態を付くマコトは一切ソーナの方へ振り向く事はせずに大股で歩く。

 

 

「今度リアスの方にも言ってやろう、でないともうやってられん」

 

「……」

 

 

 この際だからリアスにもあれこれ言って寧ろ嫌われてしまうか? とすら考え始めたその時だった。

 

 

「ま、待って!」

 

 

 半泣きのソーナがなんと追い掛けてきたのだ。

 これにはマコトの怒声で心が折れてたと感じていた黒歌も驚いて思わず立ち止まってしまう。

 ひょっとして割りとメンタルだけはかつての頃と変わらないのか……とすら思った黒歌だが……。

 

 

「わ、私は貧乳じゃない!」

 

「あれ?」

 

 

 どうやら怒られたよりも貧乳と言われた事に対して思うところがあったらしく、涙目になってキッと睨むソーナ。

 

 

「ちゃんとありますし! 大人になったらセラフォルーお姉様よりもきっと大きくなるわ!」

 

(いえ、残念な事に結局アナタの胸のサイズはそのままでしたよソーナ先輩……)

 

 

 胸に手を当てながらセラフォルーよりも大きくなると宣言するソーナに、黒歌は内心非情な未来を告げる。

 それは勿論マコトも知ってる事なので、立ち止まったマコトがゆっくりソーナへと振り向くと……。

 

 

「寝言は寝て言え、この永久貧乳眼鏡」

 

 

 トドメの一撃を躊躇無く与えた。

 

 

「そもそも今だってあるだぁ? へ、クロと比べたら可哀想になるくらいに薄い奴の台詞じゃねーだろ」

 

「………。やっぱり先輩って胸の大きい人が若干好きですよね?」

 

「そ、その子が大きすぎるのよ! な、なによ! そ、そんなに要らないわよ絶対に!!」

 

「え、私まで睨まれてるんですけど」

 

 

 胸を怨めしそうに睨むソーナ。

 とんだとばっちりだった。

 ただ、微妙にマコトと黒歌の知るソーナっぽくなってるのは気のせいじゃなかった。

 

 

「ふ、普通よ私は……普通にある……あるんだから……! な、なのに……なのに、アナタは私の事を貧乳って………グスッ……うわーん!!!」

 

 

 こういう所は特に似ていた。

 リアスの胸にコンプレックスを抱き、結果マコトに貧乳と言われたらムキになって泣き出したりする所は特に。

 

 

「まずいですよ先輩、本気で泣いてます」

 

「知るか」

 

「でもこの泣き声を匙さんに知られたら余計厄介なことに……」

 

「…………………」

 

 

 おいおいと大泣きしてしまってるソーナを前に黒歌の指摘を受けて確かにと、言ってしまった事を若干後悔するマコト。

 

 

「…………。あの、すいません、ちょっと言い過ぎました」

 

 

 結果取り敢えず泣くのはやめてもらう事にしたマコトは面倒だけどというオーラ全開でソーナを泣き止ます事になった。

 

 

「……私って貧乳じゃない?」

 

「はい、違います。俺の間違いでした」

 

「グスッ……えへへ♪」

 

 

 こういう所はセラフォルーの妹だと思うマコトは、貧乳じゃないと言ったとたん笑うソーナに苦い顔をするのだった。

 

 

「匙君には何卒内緒に……」

 

「うん、匙には内緒にする。

それより……私は本当に貧乳じゃないって思う?」

 

「はいはい思います思います……。(クソめんどくせぇ……!)」

 

「えへ♪ えへへ……!」

 

 

 泣いたせいか幼児退行し始めてる時点で言わなきゃ良かったという後悔と共に。




補足

元祖ストーカーは全くどうでも良かったらしい。 影も薄い。


その2
夏休みの間、一度完全にプッツンしたマコトはサイラオーグ君を周りが止めるまで殴り倒しまくってた様です。

 全治半年程度に済んだのは多分奇跡。


その3
ソーナはそんな事なかったのですが、リアスのこともあってストレスが極限に溜まったマコトに遂に言われてしまい……まあ、うん。



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