色々なIF集   作:超人類DX

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元執事シリーズの続き。




元執事と魔王少女シリーズ
元執事の自覚


 弟が強い事を知り、そして自分も知らなかった独自の繋がりを持っていた。

 劣等感を抱き、嫉妬する。

 どこぞのトゲトゲ肩パット搭載のショットガン使いならば

 

 

『兄より優れた弟など存在しねぇ!!』

 

 

 と狂気の劣等感を爆発させるかもしれないが、生憎この兵藤一誠という少年は違う。

 確かに嫉妬はしたかもしれない……ただし、相手は弟ではなく弟の心を開かせている者達に対して。

 

 彼はちょっとスケベで間の抜けた部分はあるけど、呆れる程にブラコンなのだった。

 故に彼が考えるのは何時だってこうだ。

 

 

『マコトが強い理由なんてどうでもいい。

強いのなら俺が追い付いて最強の悪魔ハーレム王兄弟として名を轟かせてやるぜ!』

 

 

 同じ日に生まれ落ちたが故の強い繋がり。

 その繋がりを何時だって大切にしてきた一誠はいっそ笑える程に真っ直ぐなのだ。

 故にそんな彼に惹かれていく者は多く、日之影一誠には無い強さなのかもしれない。

 

 

 

 

 ディオドラ・アスタロトとのゲームは終了した。

 結果だけを見たらリアス陣営の勝ちといえば勝ちなのだが、正式なゲームでの勝利とはあまり云えなかった。

 というのもそのディオドラがどうやらアーシアの身を貰い受けるのを条件に旧魔王達と繋がっており、ゲームの最中に大量の構成員達が襲い掛かってきたのだ。

 

 恐らくこの混乱に乗じてディオドラはアーシアを拐うつもりであり、不気味なセラフォルー達の介入を完全に防いだ事もあって勝利を確信していた。

 だが……。

 

 

「嘗めて貰ったら困るな。

この程度で私達を足止め出来たと思うのはさ」

 

「…………」

 

「あーぁ、せっかくイッセー君と白音のコンビネーションが見られると思ったのに」

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 

 不気味で底が知れなかったが故に、セラフォルー達の力はディオドラの予想を遥かに越えてしまっていた。

 呆気なく、コンビニに行くノリで直ぐにでもゲーム会場内に入り込んだ魔王とその眷属二人に、旧魔王派のしたっぱ達は特にセラフォルーへの恨みもあってか、一斉に襲い掛かってくる。

 

 

「セラフォルー・シトリーだ! 殺せ!!」

 

「組織の裏切り者もいるぞ!!」

 

 

 顔も名前も覚える気も無い誰かがセラフォルーと組織を抜けた黒歌に殺意を向けながら襲い掛かってくる。

 数は決して少なくは無い。

 

 

氷河時代(アイス・エイジ)

 

「樹界降誕」

 

 

 しかしセラフォルーがゲーム会場全体を一瞬で凍結させ、黒歌が両手を合わせると同時にその凍結した地面から巨大な樹海を生成する事で全てを跳ね返した。

 

 

「アイス・サーベル」

 

「グギャア!?」

 

 

 そしてその間を縫う様な超速度でマコトが一人一人を確実に、セラフォルーと同質の氷の魔力を器用に駆使してぶちのめす。

 たった三人によって一瞬にして制圧されてしまったディオドラは戦慄してしまって動けない。

 

 

「う、嘘だ……」

 

 

 決してセラフォルー達の力を侮っていたつもりは無かったし、万全の対策を施したつもりだった。

 けれど、セラフォルーだけではなく眷属の二人もまたセラフォルーに並ぶ程の力を保持していたのだ。

 

 

「殿は俺達でやる……。兄貴、奴をぶちのめしてこい」

 

「あぁ、勿論だぜ」

 

「な、嘗めるな! 僕にはまだ切り札がある!!」

 

 

 そしてディオドラ自身もまた一番見くびっていたイッセーにより完膚なきまでに叩きのめされた。

 切り札の蛇も意味をなさない……覚悟を持ったイッセーの進化は既に並の領域を越えていたのだ。

 

 

「強い……やっぱりこの手元に彼を……」

 

「リアス! イッセー君がディオドラと戦っている間にアーシアちゃんを!」

 

「……。ええ、わかってるわ」

 

 

 イッセーを短時間でここまで引き上げる手腕、そして彼自身のセラフォルーにも負けぬ力。

 彼の出現により冥界内では既に最強の将軍と噂され始めている。

 それは間違いでは無く、顔色ひとつ変えること無く敵を魔力で作り上げた氷の刃で切り伏せていくその姿は間違いなく異常な姿だった。

 

 故にその姿を間近で改めて見たリアスは皮肉にも彼の『力』をより欲していた。

 …………彼自身では無く彼の力だけを。

 

 

 

 こうしてディオドラの野望は呆気なく、この後介入してきた旧ベルゼブブによって役立たずの烙印を押されて殺されてしまった。

 だからその後どうなったかは彼にはわからない。

 シャルバ自身も更に怒りで覚醒したイッセーに瀕死の重症を負わされたばかりか、苦し紛れの一撃をセラフォルーに放とうとしたその瞬間、プッツンしたマコトに肉塊になるまで殴り続けられた事など知るよしもない。

 

 

「どこへ行くんだ?」

 

「て、撤退の準備を……」

 

「必要は無いなァ? そのまま死ね」

 

 

 覚醒したイッセーによって瀕死のダメージを負わされたシャルバは悪夢を見ていた。

 せめて傷跡を残してやろうという悪あがきでセラフォルーに攻撃しようとしたことによって、燕尾服を来た少年が完全にプッツンしたのだから。

 

 命乞いは聞かず、返り血まみれになろうとも殴り続ける姿は恐怖を駆り立てるものだった。

 セラフォルーと黒歌が止める事で落ち着きはしたが、赤い鮮血を浴びながら佇むその姿は他の現魔王達を戦慄させる程だった。

 

 

「セラフォルー、キミと眷属達のお陰で大事には至らなかったが……その、彼は……」

 

「なぁに? 顔色ひとつ変えずに敵をやっつけたのがそんなに気になるの?」

 

「赤龍帝によって瀕死だったとはいえ、シャルバの息の根を完全に止めたのはお前の将軍だろ……」

 

「だから? 寧ろ褒めてあげて欲しいんだけど? 何なの、皆して怖がってさ?」

 

 

 躊躇するという感情が一切感じられない非情さ。

 それはある意味もしも敵に回った時の危険さを意味している。

 まだ半年にもみたない転生悪魔としての力も逸脱したレベルなのもそうだが、どうしても彼は危険な爆弾の様な気がしてならないのだ。

 

 

「ちぇ、皆の為に身体を張ったら怖がられるだなんていーちゃんもツイてないね」

 

 

 三人の同志に微妙な顔をされてるセラフォルーは大きくため息を吐いた。

 サーゼクスにまでこんな顔をされるだなんて、とことん違うのだと。

 

 

「危険そうだからだとか、敵になったら厄介そうだからとか、そんなつまらない理由で私の大切な子達に手を出すのなら、先に忠告しておくよ。

………確実にアナタ達の敵になるからね私は」

 

「「「………」」」

 

 

 だからセラフォルーは釘を刺した。

 かつて幼い日之影一誠に馬鹿にされてから鍛え直し、何時しか気になる男の子としてその力に追い付きたいという目標に変わった事で進化した力はこの世界にとって強大すぎる代物だった。

 しかも今尚、反抗期が完璧に終わったマコトとの繋がりによって進化し続けている。

 

 

「じゃ、後処理はよろしく」

 

 

 別に恐怖したければすれば良い。

 怖いなら監視でもなんでもしたら良い。

 だが拒絶するなら自分は躊躇なく敵となる。

 

 ヒラヒラと手を振りながら去っていくセラフォルーに何も言えなくなる三人の魔王は、昔から少しわからない所があった彼女が欲しているものが漸くわかった気がした。

 

 

 

 

 拒絶しようとしていた反動のせいなのか、ちょっとした事ですぐに頭に血が昇りやすくなってしまってると、シャルバを殺した時に自覚し始めたマコトは、『最強のハーレム王兄弟の誕生だーー!!!』と、あんな姿の自分を見ても拒絶どころか肩まで組んで喜んでるイッセーのある意味の精神的強さに苦笑いしながら、どうしようかと考えていた。

 

 

「あのさ、俺ってもしかして重いか?」

 

 

 ディオドラ騒動から数日、冥界はその後処理に追われてる様だが、不思議と呼び出しは無く、人間界の自宅に居たマコトは、さも普通に遊びに来たセラフォルーに、ちょっと言いづらそうに自分の重さについて問う。

 

 

「へ? 重いって何が?」

 

 

 遠慮しがちなマコトの質問に、セラフォルーはマコトの使ってる枕を抱えながらキョトンとしている。

 

 

「普通に考えても、お前達に何かあるとすぐに頭に血が昇るっつーかさ……誰かがお前達に近づこうとすると、そいつに殺意が沸くから」

 

 

 黒歌にストーカーするヴァーリしかり、シャルロットにストーカーするサイラオーグしかり、最近は彼女達に近づこうとする輩に対して普通に攻撃的になってると自己分析し、それが重くてめんどくさい奴だと思われてないかが心配だった。

 

 

「ムシが良すぎるってのも自覚してるし……今更そんな資格が無い俺が何でお前達の事を縛ろうとしてるのかと思うとよ……」

 

 

 別にシャルバを殺した事に対しての罪悪感はない。

 寧ろ、イッセーの晴れ舞台を壊してくれたという意味でも消して当然だと思ってる。

 結果的にイッセーは奴の行動に怒りを覚えて更なる覚醒に至った訳だが、それとこれとは別なのだ。

 

 今も下のリビングでリアス達と何かしてる様だが、今回の件で完全にヤバイ奴認定されてるのは間違いないだろう。

 

 そういう諸々の事を含めて、マコトは自分のやってることが重いのではないかと、セラフォルーに吐露するのだが、当の本人はなんてことないといった顔だった。

 

 

「逆にもしいーちゃんが全然知らない女の人にちょかい出されてたら、私も黒歌ちゃんもおば様も許さないと思うけど? 下手したら二度といーちゃんの前に現れないようにしちゃうし」

 

 

 寧ろ反抗期が完全に終わってる今のいーちゃんも好きだよ? と平然と言ってのけたセラフォルーにマコトはちょっとだけホッとした。

 

 

「めんどくさいと思ったらすぐに言えよ? なるべく直すから」

 

「えー? 言わないよー☆

今のガチガチの独占欲の強いいーちゃんに独占されたいしー☆」

 

 

 セラフォルーもセラフォルーで変だし、黒歌も黒歌で変だし、シャルロットもシャルロットで息子の反抗期終わりの姿に感激してるので、誰一人として直して欲しいとは思わない。

 そんなちゃちな繋がりではないのだ。

 

 

「そんな心配性ないーちゃんを安心させてあげようかな☆ ほら、おいで?」

 

 

 シャルロットはまだ縛られているものの、黒歌同様必ずまた一緒に生きていける様にする。

 その決意を持つマコトには賛成だし、バックアップだって惜しまない。

 しかし今はせめて、黒歌も留守な今だけはちょっと不安がってるマコトを独り占めしようと、持ってた枕を置いて両手を広げる。

 

 

「ふふ、昔のいーちゃんだったら嫌だって言ってたのにね。今でも夢みたい」

 

「………」

 

「よしよし、大丈夫だよいーちゃん。

いーちゃんが思う通りにして? 私達を他の誰にも渡したくないってその気持ちが嬉しいんだから☆」

 

 

 ちょっと照れくさそうにセラフォルーの胸に顔を埋めたマコトを抱きながら頭を撫で、変わらないで欲しいと囁く。

 独占欲を向けられる? 寧ろそれを望んでいたのだから重いだなんて思うわけがないし、多分それ以上に自分達の方が重い。

 

 

「今度はずっと一緒。

あの時の様な事はこの先絶対に起こさない」

 

 

 この世でマコトが恐れるのは失う事だ。

 どれだけ強がっても、マコトは繋がりを失う事を何よりも恐れている。

 それは今も昔も変わらない。だから二度と独りにはしない。

 そこに正しいとか間違いとかは関係ない。

 

 その証明だとばかりにマコトの額にキスをするセラフォルーにとってもかつての繋がりは何よりも大切なのだ。

 

 

「早くおば様を自由にしてあげようね? 大丈夫、いーちゃんと同じ様に、私だって何でもしちゃうから」

 

「…………セラ」

 

 

 改装により豪邸と化した兵藤家の中で唯一元の家の部屋と変わらないマコトの部屋にて、魔王は優しく言葉を紡いでいく。

 小さい時から知る、自分より強いけど寂しがり屋な男の子に惜しみない愛情を……。

 

 

「ふふ、私達にとってのリアスちゃんとソーナちゃんが見たら焼きもち妬いちゃうかな?

ふふ、いーちゃん……私の大好きないーちゃん☆」

 

 

 それはとても深く、とても母性愛に溢れ……。

 

 

「セラ……俺っ……!」

 

「わかってる、良いよ好きにして。

解りきってる事だけど、もっと私をいーちゃんのモノにして?

もっともっと、いーちゃんのモノだって証を私にちょうだい?」

 

 

 とても強い独占欲だった。

 お互い様……それがマコト達の間にある不文律。

 マコトの首に手を回しながら、自分から倒されたセラフォルーは少女の様に頬を染めながらマコトを受け入れていく。

 

 

「ずっと大好き……」

 

 

 それが彼女の叶えた夢なのだから。




補足

若干重い事を自覚するけど、周りも重いのでWin-Winでした。


その2
とにかくマコトと同様にセラフォルーさん達もまた失う事を恐れてます。
だから結束力は凄まじい。


その3
やっと年上のお姉さんっぽくなってきたセラフォルーさん。

その昔、幼児一誠に服を吹っ飛ばされてケタケタ笑われていたのが信じられないぜ。

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