色々なIF集   作:超人類DX

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めだかちゃん編の続き。
何で書いたのかわからん!


元・生徒会長イッセーの好きなもの

 兵藤一誠には謎が多い。

 彼を一番に良く知ると自称する黒神めだかと人吉善吉ですら掴めて無い事が多数ある。

 その一つが、一誠の持ち物である財布に入っていた一枚の写真であり、そこに写るのは少年の様に無邪気に笑う一誠を真ん中に、金髪、黒髪、そして紅髪の一誠と同年代と思われる美女がくっつくように写っているというものだった。

 

 長らく……ていうか出会った時から殆ど一誠にくっついて来ためだかと善吉は、いつの間にかこんな写真を――もっと言えば写真的に最近撮っただろうこの少女達と自分達が知らない間に出会って、仲を深めていただなんて気付きもしなかったし、更に一誠にこの人物達が誰なのかと聞いてみた時の見せた反応に、ちょっと嫉妬もした。

 

 

「友だよ……俺の自慢のな」

 

「「……」」

 

 

 懐かしそうに、嬉しそうに、そんなプラスの感情がハッキリとめだかと善吉に分かる表情で言い切る一誠。

 それ以上はこの三人の事について分からなかったが、めだかと善吉からすれば自分達以上にあんな表情を向けられるこの三人に嫉妬を覚えるしか無く、本当なら今すぐ会わせろと言いたかったが…………それを実際に言うことは出来なかった。

 

 出会ってから今まで一誠は自分達のどんな我儘だって笑いながら聞いたり許したりしてくれた。

 だからもしかしたらこの件についても笑いながら『仕方ないな』と笑いながら言って会わせてくれるのかもしれない。

 

 けれどめだかと善吉は予感してしまったのだ。

 根拠なんて無かったが、思ってしまったのだ。

 

 もしもこのまま感情的になって問い詰めてしまったら、一誠が遠くに……それこそ正真正銘2度と会うことが出来なくなってしまうのかもしれないと……。

 だから二人はこれ以上一誠に聞くことは無かった。

 三人が何者で、なんでこんな一誠にくっついて写真に写っているんだとか、一度この三人と『きっちりお話がしたい』とかとかとか色々あるが、そのせいで一誠が遠くへ行ってしまうというリスクを考えてしまうと、どうしても足がすくんでしまう。

 

 だったらこの話しには触れず、何時の日か一誠の方から教えてくれることを信じて、今はこの時間を大事にすべき。

 それが黒神めだかと人吉善吉の至った結論だった。

 

 

 

 

 

 

「逆恨みの下克上も解決したけど、生徒会の役員が三人だけなのも確かに変だよなぁ」

 

「まぁな……」

 

 

 時は現代の箱庭学園廊下。

 放課後になり、様々な生徒達が部活の準備やら下校の準備で廊下が賑わう中、黒神めだかの発足した生徒会唯一の役員である善吉と一誠が、今日もめだかが先に待ってるだろう生徒会室に向かう為、先日起こったある生徒のめだかへの下克上事件について語りながら歩いていた。

 

 

「鹿屋だったか? 気位は大したものだったし、アレでもう一度立ち向かうメンタルがあれば、そのまま役員に推薦したかったのだがな」

 

「そりゃねぇな。下克上つったって所詮逆恨みでしかねーし、そもそもあのセンパイのやり方がめだかちゃんは禁忌するだろうしな」

 

 

 鹿屋という元生徒会長候補者だった上級生が、落選した恨みと選挙時代にめだかに完膚なきまで叩き潰された恨みで下克上を企て、事もあろうに善吉と……最近は黒神めだかと人吉善吉の保護者という称号を噂されてる一誠に持ち掛けた訳だが、勿論そんな持ち込みをこの二人がオーケーする訳もなく、鹿屋と似た理由でめだかを逆恨みしていた他の生徒達を人知れずタッグで潰した……というのが事の顛末だった。

 

 

「ったく、俺も一誠もそんな真似をする訳もねーのに、鹿屋センパイももうちょい調べて欲しかったぜ」

 

「そうだな。まさかいきなり善吉君が殴りかかるとは驚いたがな」

 

 

 下克上よりも何よりも、善吉にとって憤慨すべきは一誠が連中と結託する訳もないのに、勝手に判断して持ちかけて来た事であった。

 もう解決はしてあるし、めだかにも内緒だが、もしもあの時鹿屋が一誠に向けて放った言葉……

 

 

「聞けばテメーは黒神と人吉の保護者みてーな真似事をして苦労してるって話らしいが……。

どうだ? もし俺に付いたらそんなつまらん役回りから開放してやっても―――――ごべばぁぁっ!?」

 

「テメェ、今何つったゴラ?」

 

「お、おい善吉君!?」

 

 

 噂に尾びれが付いたせいか、善吉とめだかに引っ付かれて辟易しているという事になっていた様で、そんな事実も特に目立った事を今のところしてないせいで、完全に勘違いと舐めていた鹿屋が、内心『心意気は良し、後は折れようとしない心がどんな形であれ持っていれば……』と品定めしてて黙ってた一誠に持ち掛けたその瞬間、それまで一誠と同じく冷静に、それでいて冷めた様子で聞いていた善吉が、それまでの態度を嘘の様に引っ込めて鹿屋を蹴り飛ばしたのだ。

 

 憤怒丸出しの、さながら鬼を思わせる形相で。

 

 

「そんなもん部外者のテメーに言われなくても分かってんだよ……。

でも、それでも一誠は俺とめだかちゃんを見捨てないんだよ……それを一誠を知らずに苦労してるだぁ? ブチのめされてぇか? あぁっ!?」

 

「善吉君、もう伸びてるし怒る理由がワケわからんからやめろ!」

 

 

 伸びた鹿屋をボコボコ殴る善吉を一誠が子猫を掴むかの如く首を掴んで持ち上げる最中も、中学の頃に見せていた『なんちゃってグレ』を思わせるメンチ切り顔を気絶してる鹿屋とそれに乗っかってた残りの連中に向ける。

 何がそんなに触れたのか、一誠に首根っこを掴まれて持ち上げられてるというシュールな絵面とはいえ、阿修羅を思わせるその殺気に、鹿屋協賛グループの戦意は一気に喪失……あっという間に散り散りとなってしまうのだった。

 

 

 

 

「まったく、変な所で怒るなよ」

 

「だって、アイツ等何も知らないのに一誠を低く見てたから……」

 

「俺は別に構わんよ好きでやってる事だし、他人からアホだと笑わる事にも結構慣れっこさ」

 

「………」

 

 

 昨日の事について、一誠が咎める様な事を言えば、善吉は叱られた弟……いや子供の様にシュンとなる。

 出会った時から今まで善吉はめだかと同じく一誠か様々な事を教えて貰った。

 

『普通より異常だとかマイナスはあるのかもしれない、けれど結局は皆同じ人間だ。

 だから怖れる必要なんて皆無……それこそだからどうしたと胸を張って言い切ってやれば良い……キミがめだかちゃんと初めて出会った時に言ってあげた言葉の様にな』

 

 

 とても同年代とは思えない包容力を持って教えられたこの言葉は、善吉の中にずっと刻み込まれている。

 傍から見れば鬱陶しいだろうと思うほどにめだかと共にひっついていても、一誠は楽しそうに笑ってくれる事も。

 

 

「ま、私的には嬉しかったがな……フフ」

 

「! そ、そうか……へへっ!」

 

 

 ほら、簡単に許してくれる……。

 自分もめだかちゃんも、だからお前から離れようとは思えない……。

 小さく笑う一誠を見て、幼子の様に嬉しく感じた善吉は至極真面目にそう思うのだった。

 

 

 

 

「一誠、善吉……柔道部に行くぞ!」

 

 

 そんなこんなの前日談があり、今日も元気に生徒会だと最近はめっきり役員として頑張る善吉と一誠だが、生徒会室に入るや否や着替え途中で下着姿のめだかに面を食らった。

 カーテンも閉めずに堂々と着替える……これも半分以上堂々と上半身裸になる一誠を見て影響された結果であり、その事を知って、女性が無闇に肌を見せるな! ……とあまり強く言えない一誠は微妙な気持ちで視線を逸らし、相変わらず人目を憚らない幼馴染みに善吉はカーテンを閉めながら怒る。

 

 

「カーテンくらい閉めろ! 見られたらどーするつもりだ!!」

 

「ふん、この練り上げた肉体を見せつけても私は問題ない! 一誠の気持ちと同じだ!!」

 

 

 寧ろ見ろと言わんばかりに堂々とした物言いに善吉は額を押さえ、チラリとその原因である一誠を見る。

 包容力もあるし、自分達の謂わば師匠でもある一誠だが、実はテンションが上がると上半身の服を脱いでしまうという悪癖とも言うべき癖があるのを昔から知っている。

 それがあろうことに自分じゃなくてめだかに感染してしまったことも……。

 

 

「む……どうした一誠。何で見てくれない?」

 

「いや……俺もよく友に怒られた事を思い出してな。

それに、お前も女性だし、俺のせいとはいえ女性の肌は無闇に見ない主義というか……まあ、そういうことだ」

 

 

 あからさまに視線を逸らす一誠に、一番に見て欲しいと思ってためだかが不満そうに詰め寄るも、一歩近づけば後退するというやり取りをしながら理由を話す。

 

 

「なら私は構わんというか、寧ろ見てほしいから見てくれ!」

 

「いやー……それはちょっと。(もしなじみがこの状況を知ったら何を言われるかわかんねぇし……)」

 

「おいめだかちゃん、一誠も困ってるし、そもそも柔道部が何だってんだよ?」

 

 

 壁際にまで追い込まれながら、尚も目を閉じながら逸らす一誠に、ちょっとムキになり始めためだかが飛び掛かろうと腰を落とすと、そこで善吉が助け船を出す。

 すると、一瞬だけ忘れてたのか『あっ……』という表情を浮かべてから残念そうは表情へと切り替えると、コホンと一つ咳払いをしながら会長席の上に置いてあった柔道着とその隣にある封筒を指差した。

 

 

「生徒会への投書だ。

何でも三年の鍋島猫美が率いる柔道部の後継者探しを手伝って欲しいとか……」

 

「鍋島? って、確か反則王とか言われてる人だよな?」

 

「ほう……つまり次期部長決めをしたいということだな?」

 

 

 鍋島猫美という名前に眉を潜める善吉と、依頼の内容を確認する一誠に、柔道着の上だけを着ためだかがウムと頷く。

 

 

「私達部外者が果たして力になれるのかは別として、依頼されたのなら全力で応えるべきだと思ってな、だから引き受けた。

という訳で今から鍋島三年生の元へと行こうと思う…………柔道部といえば懐かしい顔も居るだろうしな」

 

「あ、そう……まあ行くつもりなら付いてくけど、あんま気は進まねーなぁ」

 

「元・破壊臣だったか……確かに懐かしいな」

 

 

 めだかの言葉に、気乗りしなさそうな顔で一応は頷く善吉と、何やら笑いながら意味深な言葉を口にする一誠。

 その様子的に柔道部に顔見知りが居るというのが見てとれるが、果たして誰なのか……。

 

 

 

 

 

「どもども、ウチが依頼人の鍋島猫美でっす! 本日はよろしゅー!」

 

 

 バタンバタンと畳を叩く音と気合いの声が響く柔道場にやって来た生徒会三人組を流暢な関西弁で出迎えたのは、柔道部現部長の鍋島猫美であった。

 見た目と雰囲気から何処と無く猫を思わせる。

 

 

「うむ、私が黒神めだかだ」

 

 

 生徒会代表ということでめだかも挨拶しながら握手を交わすのを後ろで見ていた善吉と一誠は、邪魔にならないように柔道場の端に移動する。

 

 

「……。近くで見ると鍋島三年は猫を思わせるな」

 

「っ……確かに(げ、マジかよ……)」

 

 

 郷に入りてはのつもりか、柔道場の端で正座しながらめだかと話をする鍋島を監察し、ポツリと呟く言葉に善吉は同意しながらも、内心『しまった』と思った。

 それは流暢に話す鍋島と会話しているめだかも実は内心同じ事を思ってたりしており……。

 

 

「んー? 黒神ちゃんのお仲間さんは隅っこかいな? しかも正座しながら……」

 

「っ……ま、まぁな……柔道場に来ておきながらふんぞり返る訳にもいかぬだろうという、一誠の教えに……」

 

「イッセー?」

 

「ハッ!?」

 

 

 早々に善吉と一誠が隅っこで正座しているのが気になる鍋島にめだかついうっかりと一誠の名を口にすれば、生徒会の中では割りと影が薄い保護者の称号を持つ一誠が気になってしまうのは定石であり、しまったとめだかが口を押さえたが時すでに遅しであった。

 部活荒らしの人吉善吉と生徒会長の黒神めだかの二人は学園でかなり有名なので知っているが、その保護者と称されつつある一誠はこの二人に比べたら特に目立っても無いし、あっても毎朝美化委員でも無いのに学園の掃除をしている変な奴という所くらいだ。

 

 つまり何の情報が無く、善吉とめだかを御してる何か普通に凄い奴程度しか鍋島は知らないので、ほぼ自然にさっきからナチュラルに自分を正座しながらじーっと見ている一誠の元へと向かう。

 

 

「げ……鍋島先輩」

 

「何やねん『げっ』って、酷いやっちゃなぁ人吉クン! ま、ええわ。それで、キミが兵藤クンやな?」

 

「…………………………………………………」

 

 

 露骨に嫌そうな顔をする善吉にちょっと傷つきつつも、今は監察やと一誠にコンタクトを取ってみる。

 が、一誠はといえばまるで見透かして来ようとせんばかりに鍋島をじろ~っと見つめるだけで何の返事もしない。

 

 

「? 人見知りかいな? 反応くらいしてーやジブン?」

 

「…………………………………………」

 

「お、おい一誠?」

 

「ぐっ……」

 

 

 気が付けば練習が中断され、柔道場にいる生徒達全員がシーンとしながら話し掛けて無視されてる様な感じになってる鍋島と、黙りこくって見つめてるだけの一誠に視線が集中する。

 その中には、めだかと善吉の言う懐かしい人物が居たりするのだが、めだかと善吉は戦々恐々状態でそれどころでは無い。

 

 

「………………」

 

「お、おぉ……なんやねん黙って立ち上がって? へ、返事くらいしたらどうや?」

 

 

 こうまで返事がないと逆に圧されてしまった鍋島は、やはり無言で立ち上がる一誠にちょっとびっくりする。

 頭一つ分一誠の方が背が高いので、今度は鍋島が見上げる形になるのもあって余計だった。

 が、そんな鍋島や柔道部員の一誠に対するワケわからない気持ちとは真逆に、めだかと善吉は気が気では無かった。

 それは、実は一誠が持っているとある好みのせいであり――

 

 

「…………」

 

「へ?」

 

「「!?」」

 

『!』

 

 

 ポンと無言で鍋島を見下ろしていた一誠の手がその頭の上に置かれる。

 その突然過ぎる……一誠にとっては気安すぎる行動に良く知る善吉とめだかは一気にもやもやとした気分になり、頭を置かれた鍋島も鍋島で一瞬ビックリしてから目を丸くする。

 

 

「え、ええっと……これはなんなん?」

 

「くっ……盲点だった……」

 

「ちくしょう……!」

 

「え、なにが?」

 

 

 振り払うのも躊躇してしまうまま、何だこれはと一誠を知る善吉とめだかに聞いてみるも、二人は露骨に悔しがってるだけで答えが得られずであり、代わりに答えたのは――

 

 

「ふぁ!? ふぁにふんへ!?(な、なにすんねん!?)」

 

「あー……猫さんじゃないけど猫さんっぽい……うへへへへ!」

 

 

 とろーんとした目と上気させた頬で、頭を撫でてから頬を弄くる一誠だった。

 つまり、猫が単に好きなだけだった。

 

 

「落ち着け、鍋島三年生は猫ではない!! なんてうらやま……じゃなくて止めろ!」

 

「そうだぞ! 女性に無闇に触れないんじゃねーのかよ!! 鍋島先輩がうらやま――じゃなくて迷惑してんぞ!!」

 

 

 一誠らしからぬラリった表情で鍋島とのスキンシップ(?)をする姿に、めだかと善吉は本音混じりで止めるのであった……20分掛けて。

 




補足

マイナス一誠だとか数多のIF同様、にゃんこ好きな一誠だった……てなだけです。

続きは……まあ、うん……

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