色々なIF集   作:超人類DX

365 / 520
ロリコンと罵倒され、ついに…………


セルフ鬼畜コンビ

 柄にも無く、人じゃない生物に対して親切心を出すのは間違いだったのかもしれないと少し後悔しそうになっている月音は、紫の同属を名乗る魔女の留妃なる少女にロリコン扱いされながらちょっと凹んでいた。

 

 

(クソが、俺が何でこんな連中にこんな気分にさせられなきゃならないんだよ!)

 

『見事に裏目に出てるのがまたアレだな』

 

 

 やること為すこと全部が裏目に出てしまう。

 今まで散々怒りと憎悪を他者に剥き出しにして、思う通りに生きてきたツケなのかどうかは知らないが、だとするならせめて『制御不能の殺戮マシーン』なんて扱いの方が箔が付くもんだと月音はがっくりと肩を落とす。

 

 

「オーケーオーケー、どうしても俺をロリコンにしたいなら勝手にすりゃあ良いよ。

そんな事よりテメーはどうしたいんだ?」

 

 

 非常にめんどくさくなってきた月音は、すっかり己を性犯罪者みたいな目で睨む留妃に、改めて目的を問う。

 若干口調が荒くなってるのは、留妃に対して半分以上は敵認定し始めてるという意味であり、特に彼女の背に現れてる漆黒の翼は堕天使を思い出す。

 

 

「決まっているでしょう、この子を我々の仲間として迎え入れてお館様のもとへと連れていくのよ」

 

「お館様……?」

 

「…………」

 

 

 お館様なる存在が背景に居るらしい。

 意外とお喋りである彼女から情報を聞き出していく月音はそいつもろとも殺してしまおうかと考え始める。

 

 

「我々魔女と人間は関わるべきではない。あの街には何もない。

風も水も花も土や緑の香りさえも……あるのは人間のエゴと欲望だけ。

魔女である我々にしてみればとても愚かに映る」

 

「だから仙童さんを連れていくと?」

 

「そうよ? 慣れてない彼女にしてみたら人間の放つ思念は毒にしかならないの。

アナタはそれを知ってか知らずか、この子にスケベな事を目的に街の外まで連れ出したみたいだけど」

 

「ちげーよ、マジでいい加減にしろよテメェ……」

 

 

 秒で肉片にしてやりたくなる衝動を抑えながら、違うと否定する月音だが、留妃は鼻を鳴らすだけで信じてる様子はない。

 

 

「あの、月音さんは私が気分悪くなったのを誰よりも早く気付いて私を連れ出してくれたんですよ? ここに居るのも、人間が居ないからって……」

 

「騙されちゃ駄目よ。見なさいよあの餓えた獣みたいな目を? 私が止めに入らなかったら絶対にえっちな事をされてたわ」

 

「…………………………」

 

 

 紫本人がそうじゃないと言ってても、あくまで月音をロリコン野郎にしたい留妃は信じちゃ居ない。

 まあ確かにこんな廃工場に幼女を連れ込む……と文にするだけで結構変な響きではあるが、月音は本当にただの親切心でやってるつもりだったのだ。

 

 

「口では何とでも言えるわ。

アンタは人間とは違うみたいだけど、やってることは人間と変わらないわ」

 

「……!」

 

『馬鹿、敵に人間みたいだと言われて露骨に喜ぶな』

 

「アナタが異様な力を持っているのは視ていたから知ってる。

きっと妖怪の一種だけど、人間に肩入れしようとしている時点で人間と同罪よ……!」

 

「ほっほーぅ? 同罪だとしたらどうするんだよ?」

 

 

 人間みたいだと言われてちょっと喜んでる月音に留妃は再び背に出現させていた無数の漆黒の翼の先端を月音に向ける。

 

 

「アナタを始末してこの子を助ける!!」

 

 

 殺意と憎悪を向けながら留妃が宣言する。

 その瞬間、久しくなかった『勘』が月音と中に甦り――そして凶悪に嗤った。

 

 

「始末するって言ったな? じゃあ覚悟はあるんだよなぁ? 他人を殺すって事は逆にテメーが殺されるかもしれないって危険を常に覚悟してるって事だよァ……!!」

 

「ひっ!?」

 

 

 その瞬間、留妃は月音から生まれてこの方感じた試しがない程の凶悪で強大な殺意を受けた。

 

 

「な、なによ……こ、これは……!」

 

 

 どこまでもドス黒く、どこまでも重苦しく、これ以上近くに居たら気が狂ってしまいそうな程の、多くの人間の汚い思念がまだ綺麗に思えてしまう程の濃厚な殺意。

 

 

「つ、月音さん……!」

 

 

 人間だとか、妖怪だとか魔女だとか……そんな隔たりが全て平等に無へと帰す月音の殺意は留妃の戦意を一撃で粉砕し、紫は月音の背に赤い龍の幻影が見えた気がした。

 

 

「人をロリコンロリコンとほざきやがってよぉ。

まったく、ムカつくぜテメーは……? よかったな、出血大サービスで二度と表を歩けない身体に外科治療してやんよ」

 

「あ、あぁっ……!」

 

 

 パキパキと指の関節を鳴らして処刑宣告する月音に、紫は以前公安委員会相手に見せた凶悪な殺意と同じだと思い出し、だとするなら留妃の顔がグチャグチャにされてしまうかもしれないと、咄嗟に既に戦意喪失してしまってその場に膝を折る留妃にゆっくりと嗤いながら……これこそいたいけな少女にイタズラでも仕掛けようしてる性犯罪者みたいな構図になってるのに気付いてないのか、近付く月音の間に入って止め出した。

 

 

「ま、待ってください月音さん! この方は誤解してるだけですし、もう少しだけ話し合ったらわかってくれますよぉ!」

 

 

 あの時は自分が怪我をしたから月音は凶暴化し、怖くて止められなかった。

 だけどあの後紫は萌香と共に誓ったのだ……月音が凶暴化した時はどんな事をしてでも止めると。

 

 

「月音さんが私達をそんなに好きじゃないのは分かってます! 月音さんが時々怖いと思ってしまう事だってあります! でも……それでも私たちは月音さんが大好きなんです! だから絶対に止めますぅ!」

 

 

 瞳の色が赤く輝き、ハッキリ言って進化を重ねすぎて既に人ではなくなってるかもしれない月音に向かって両手を広げて留妃を庇いながら宣言する紫はちょっと泣いてるけど強い覚悟を示した。

 

 頭の良い紫はほんの少しだけながら、何故月音が人間に肩入れしようとしているのか察していた。

 赤い龍という聞いた事もない力が月音に宿る赤い龍自身の力であって月音の力そのものじゃない……だからきっと月音は――――

 

 

「……………」

 

「そんな顔しても退きません……! あの時萌香さんと誓ったんです! 月音さんがどんな方だろうと、もう怖がらないって……!」

 

 

 ひまわり畑で人間の女に鼻の下を伸ばしながらナンパして失敗していた。

 

 怒った自分に対して、普通なら一蹴するのだってわけないのに向き合ってくれた。

 

 人間の街で人間に囲まれた時、助けてくれた。

 

 気分が悪くなってしまうと知ったらわざわざ自分の為だけに人間の居ない場所を探してくれた。

 

 そんな月音だって本当の月音なのだから怖がるのはもう嫌だ。

 目はつぶらない、例え今この場で月音の手でバラバラに身体を引き裂かれようとも、その瞬間まで決して怖がらずに最後まで目は逸らしはしない。

 それが萌香やもう一人の萌香と交わした誓いと覚悟なのだから。

 

 

「………………チッ」

 

 

 そんな覚悟が通じたのか、空間が歪みそうな程の濃厚な殺意を放っていた月音の赤く輝いていた瞳が元の色へと戻り、放たれた殺意も一瞬にして消え去った。

 そして何時もの……妙に締まりのない表情へと戻ると、泣きながらもしっかり月音から目を逸らさなかった紫の頭をとんがり帽子越しに手を置いた。

 

 

「あー、はいはい、参った参った。

ロリコン呼ばわりされまくってたからイライラしてんだよ、悪いな」

 

 

 少し自己嫌悪した様な表情を浮かべる月音が小さく謝る。

 それは何時もの月音であり、自分の言葉が届いたのだと紫は安心した拍子に腰が抜けてその場にへたりこんでしまった。

 

 

「よ、良かったですぅ。

月音さんがあの時みたいに滅茶苦茶にするかと……」

 

「キミが止めなかったらマジでしてやってたよ。

で、その当の本人は――」

 

「た、助かった……?」

 

「あぁ、正気は保ってるみたいだね」

 

 

 カタカタと顔を真っ青にしながら自分が生きていて助かった事に完全に安堵してしまってる留妃は、ボロボロと涙を流しながら腰が抜けていた紫に抱き付きながら何度もお礼を言った。

 

 

「あ、ありがとう! ありがとう……!」

 

「あはは、無事でなによりですぅ」

 

 

 年下の紫に心底安堵したように抱きつきながら何度もお礼を言う留妃。

 今ほど生の実感は沸かないと思えるほどに死を覚悟させられたのだからしょうがないし……。

 

 

「あの、ちょっと足下が湿っぽいのはなんでですか?」

 

「ふぇ?」

 

「……………………あ」

 

 

 留妃越しに下半身に違和感を感じた紫の疑問に傍で見ていた月音と共に下を向くと……。

 

 

「あ……あぁっ!? ち、違うのこれは!」

 

 

 留妃の足下に不自然な水溜まりができていて、それが何なのか直ぐに察知した紫は元気の良いザリガニみたいに後方へと飛び退いた。

 留妃は自分の身に起こった事を理解した途端、子供みたいに泣きじゃくりながら何度も違うと言い続けるが、多分何も違わないだろう。

 

 

「月音さん、私の服汚れてませんか?」

 

「……。やっぱり一応着替え持ってきた方が良いだろ」

 

「はい、お願いします」

 

「違うのぉ! これは違うのよぉ!!」

 

 

 イヤイヤと泣きながら首を何度も横に振りながらその場にしゃがみこんでしまってる留妃の身に何が起こってしまってるのかは敢えて二人は触れず、取り敢えず月音は萌香たちが居るだろう宿にある紫と自分の荷物を宅配業者泣かせの速度で持ってくる。

 

 

「えーっと、これが仙童さんの着替えで、途中で見つけたドラム缶に水を入れておいたから、後で火を起こして沸かして入った方が良いと思うぜ」

 

「そうします」

 

「ねぇちょっと!? 二人してどうしてこっちを見ないのよ!?」

 

 

 留妃の言うとおり、先程かは月音と紫は一切留妃とは目を合わせてない。

 それがまた自分の仕出かした事が恥ずかしい事なんだと自覚させられてしまい、ますます泣いてしまう。

 

 

「そ、そもそもこの男のせいじゃない!」

 

「私、確かにアナタと同じ魔女ですけど、お漏らしは4歳で卒業しましたので……」

 

「お漏らしの魔女だなんてこえーなオイ? 悪い、俺なんとなくキミに勝てない気がしてきた」

 

「やめてよ!」

 

 

 訴えが通じて目を合わせて貰ったかと思えば、二人して優しい目をしながら肩をポンと叩かれ、寧ろ精神的ダメージの方が大きかった。

 

 

「この子に言われて仕方なくド○キで着替えと下着買った訳だが、あとで金返せよ」

 

「な、なによこの服は……?」

 

 

 挙げ句の果てに紫に頼まれたからと、某ディスカウントストアで購入した一時しのぎの着替えを渡された留妃は、そのデザインに屈辱通り越してまた泣きたくなった。

 

 

「『働きたくないでござる!』って書いてあるシャツってなによ!? しかも下着はお尻の部分に毛筆体で『島根LOVE』って……私を馬鹿にしてるの!?」

 

「ぷぷぷ……!」

 

 

 どう考えても追い討ち目的に買ってきたとしか思えないふざけたデザインの着替え一式を寄越され、羞恥やらなにやらで顔を真っ赤にして憤慨する留妃だが、見ていた紫にまで軽く笑われてしまってポッキリと心が折れてしまった。

 

 そして沸かしたドラム缶風呂に紫と一緒に入って着替える事になった留妃だが……。

 

 

「ブワッハハハハハハハハハ!!!!」

 

「あはははははははは!!!」

 

 

 働きたくないでござる! という吹き出しが入ったこにくたらしい豚の絵が入ったシャツ、干物女が家で穿いてそうな深緑のジャージ。

 そしてトドメに、見えないけど『島根LOVE』と書かれたパンツ……。

 あんまりな服装を前に月音と紫は恥ずかして顔を真っ赤にして俯いてる留妃を揃って指差しながら大笑いしていた。

 

 

「わ、笑うなぁ!」

 

「ひーひー! 働きたくないないのかよ!? ニート志望か!? ニートお漏らし魔女が現れたぞ!?」

 

「きゃー! ニートにされちゃうですぅ!」

 

「うわぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 軽く苛めじゃないのかという位ひどいやり取りに、とうとう頭に来た留妃は魔法を行使してやろうと思ったが、ドラム缶風呂に入れられてる最中、紫にこっそり媒体となるステッキを隠されたので使えずにそこら辺にあった椅子を月音に投げつけた。

 

 

「死になさいこの鬼畜!!」

 

「うぉわ!? お漏らしニート魔女が怒って椅子を投げてきたぞ!? このままじゃ俺達までお漏らしニートにされちまう!」

 

「逃げましょう月音さん!」

 

「待てゴラァァァッ!!!」

 

 

 遂に自分の性格が崩壊するブチギレに達し、笑いながら逃げ回る二人を追いかけ回す留妃。

 もっとも、小柄で小回りの利く紫や普通に後ろに回り込まれる速度の月音を捕らえるなんて無理で、先にダウンしてしまった訳だが……。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ……こ、この私がこんな屈辱……」

 

「あー面白かった。

まぁ、人を勝手にロリコン扱いした報いだと思うんだな」

 

「ジュース飲みますか?」

 

 

 紫から差し出されたジュースを受け取り、疲れてたのもあって豪快に飲み干す。

 

 

「そ、それより私の魔具(ステッキ)はどこ?」

 

「それなら私が隠しましたけど?」

 

「か、隠した!? どうしてよ!?」

 

「また勝手に暴れられても困りますし、大人しく帰ってくれるなら別に返しますが……」

 

「嫌よ! やっと同じ魔女のお友だちができると思ったのに、このままおめおめと帰れないわ!」

 

「えぇ……? お漏らしでニートになりたい魔女さんとお友だちにはちょっと……」

 

「お漏らししてないしニートになりたくないわよ!!」

 

 

 何なんだコイツ等は!? 魔具まで隠されて打つ手無しな留妃はまだ弄ってくる紫に対して、ちょっと友達になれない気がしてきた。

 ましてや今は穏やかに見える気がするが、魔具もない状態でまたあの月音とかいう男に殺意を放たれたら今度こそ終わってしまう……。

 

 故に一旦は諦めたフリをする事にした留妃は大きく深呼吸して心を落ち着かせる。

 

 

(冷静に……冷静になるのよ私。

お館様だって言ってたじゃない、常に冷静にって……。

そうよ、上手く誘導して魔具さえ返して貰えればこんな所さっさとおさらばしてやるわ)

 

 

『るび・・・』

 

『ほら ここが人間の街だよ』

『わぁ』

『光がキラキラしてお星さまみたい~~~』

『ははは もう気に入っちゃったのかい?』

『るび・・・いつか魔女も人間も皆がわかりあえる時代が来ればいいのにな』

 

 

 

 過去の記憶がフラッシュバックさせながら留妃は今の状況から抜け出す為に考える。

 

 

「ニートお漏らし魔女がブツブツ言ってるぜ?」

 

「流石に月音さんの殺意を知ってどうこうしようとは思えませんけど、一応警戒しておきましょう」

 

 

 とにかく魔具を取り戻さなければ……。留妃は既に怪しんでる二人に対して突然にっこりと微笑みながら話し掛けた。

 

 

「冷静になって二人に聞きたいのだけど……。あぁ、紫ちゃんだったかしら? アナタは人間が憎くないのかしら?」

 

 

 情に訴えて力を貸して貰う作戦。

 紫と月音を見てみるに、どうやら紫が望むことは大概叶えてくれる程度には親しいので、もし紫が自分達に協力してくれるなら月音の力も利用できるのかもしれない……と、いう算段らしい。

 しかし留妃のその質問に、一瞬月音を見た紫は首を横に振る。

 

 

「今だって怖いと思いますけど、憎いとは思いません」

 

「どうして? あんな思いをさせたのは他ならない人間なのよ? 私は人間は信用できないし、最低の存在だと思ってるわ」

 

 

 そう言いながら悲しげに目を伏せる。

 

 

「魔女の丘……あのひまわり畑だって人間の勝手な欲で壊されるの」

 

「え……」

 

「そういやあの場所の近くに工機が放置されてて看板もあったな。

土地開発計画がどうとかってあったし、ビルでも建つんじゃねーの?」

 

「そ、そんな事が。だから留妃さんは人間がお嫌いなんですか?」

 

「それだけじゃ無いけどね……でも主な理由はそういうこと。

自分勝手に自然を壊し、この使われてない工場だってそう、要らなくなったら身勝手に捨てて放置する。

自分の事しか考えられない人間なんて大嫌いよ」

 

 

 そう言いながら顔を伏せた留妃にちょっと紫は同情した。

 確かにそんな理由があれば人間を嫌うのも無理はないと思う……。

 

 

「だからあの場所を守る為に私達に力を貸して紫ちゃん……! 私達はあの場所が大切なのよ! そして月音くんと言ったわね? アナタにも人間に肩入れしているのを承知でお願いしたいわ!」

 

 

 そんな同情心を察知したのか、留妃はここぞとばかりに紫とついでに月音に手を差し出しながら力を貸してくれと懇願した。

 決まった……と若干自画自賛してしまってる辺りは少し残念だが、その信念は本物だ。

 

 そう、本物なのだが……。

 

 

「「………」」

 

「?」

 

 

 二人の反応が無い。

 もしかして自分の思いが伝わりすぎて逆に感動した!? と、自己陶酔に走りかけた留妃だけど、よーく見てみると紫と月音は自分を見ながらピクピクと口の端を痙攣させていて、若干つり上がっていた。

 

 そう、それはつまり……。

 

 

「「あっひゃひゃひゃひゃ!!!!」」

 

「…………」

 

 

 大爆笑の前触れであり、その2秒後には大爆笑していた……揃って悪魔の様に。

 

 

「ご、ごめんなさい! 凄い複雑なご事情があるのはわかりましたけど、き、着ている服が全部台無しに……あははは!」

 

「そんなギャグ丸出しの格好で言われても笑うわ! あ、ごめんごめん! 買ったの俺だっけ? グハハハハ!!」

 

「………………………………う、うぇ……!」

 

 

 必死に訴えた。必死に懇願した。

 なのにこの二人は自分の着せられてるTシャツの絵柄を指差しながらまた大笑いした。

 その瞬間、留妃は今度こそ……本気の本気で。

 

 

「ひ、酷い……ひ、必死になって言ったのに笑うなんて酷いわよぉ……! うわーん!!!」

 

「「あ」」

 

 

 泣いた。

 幼子の如く本気泣いた。

 これには二人も『やべっ』と思って笑うのを止めたが遅すぎた。

 

 

「あー、ごめん? もうお漏らしニート魔女だなんて言わないから……」

 

「月音さん、多分そっちじゃないです」

 

「お漏らししてないもん! ニートじゃないもん!!」

 

「もんって……」

 

「からかい過ぎて精神退行し始めてるのかもしれません……」

 

「えぇ……?」

 

 

 じゃあ逆にめんどくせーやん……。

 と、メソメソと泣く留妃を前にほんの数秒前までの行為を別の意味で後悔するが反省はしない月音。

 

 

「えーっと、どうどう……落ち着けよ魔女さん」

 

「お漏らししてないし、ニートじゃないもん……」

 

「わかったわかった、キミはどっちでもないよ。はいはい」

 

 

 うっわ、超めんどくせー……と自分のせいなのに最低きわまりない事を考えながら取り敢えず泣き止ませようとはする。

 

 

「ぐすん、じゃあ力を貸してくれる?」

 

「は? 嫌だよ、別にあの畑がビル郡になろうが俺の知ったこっちゃ……」

 

「ふぇぇん……!!」

 

「あー! わかったわかった!! 貸すよ貸す貸す!! ひまわりの種って美味いもんな!」

 

「月音さん……」

 

 

 思わず途中で素が出そうになり、また泣かれそうになったところを食い気味で誤魔化して阻止するが、紫からちょっと引かれてしまった。

 

 

「どうするんですか無責任に……」

 

「キミだって一緒になって笑ってたろうが? ここは適当に合わせて適当にやって適当逃げちまえば良いだろ。

それに考えてみろ、このままこの魔女を放置してたらその背景にいるお館様とやらと何仕出かすかわかんねーぞ?」

 

「確かにそうですけど……」

 

 

 留妃自体は別にどうにでもなるが、その彼女の後ろに居るお館様とやらの存在を考えると、ひまわり畑に人間を襲わせる草を仕込んでる事もあるし、放置は逆に危険な気がしてならない――――と、さっき散々留妃をバカにして笑ってただけに説得力に欠ける事を言われる紫も、確かにと頷く。

 

 別に人間がどうなろうが知らないとは思うけど、それによって人間にとって魔女が危険で排除されるべき種族と認識されるのは紫的にもかなり困るのだ。

 ましてや、もしもそうなったら月音はきっと人間側に付いてしまうのだから。

 

 

「ぐすん、どうして二人だけで内緒話してるの? 私を仲間はずれに……ひっく……するのぉ……?」

 

「あ、やばい。違う違う! えーっと、ほら! き、キミの仲間になってあげようぜって話し合ってたんだよな! なっ、仙童さん!」

 

「そうですぅ! これで留妃さんの仲間ですぅ!」

 

「ほ、ほんとにぃ?」

 

「「ほんとほんと!」」

 

 

 結果、凄い滅茶苦茶な流れによってよくわからないまま留妃に仲間扱いされる事になった二人。

 

 

「やったぁ! 仲間がふえたぁ!」

 

 

 そして妙に喜ぶ留妃が紫に飛び付く。

 どうも同じ魔女の仲間が増える事に関してだけは本当に望んでいたらしい。

 

 

「てか俺魔女じゃないんだけど……」

 

「でも人間じゃないんでしょう? それなら問題ないわ。紫ちゃんと仲良しさんみたいだし」

 

「あ、あぁ……うん」

 

 

 いや、人間ッス――――とは言えずに曖昧にうなずいてしまう月音。

 殺意をぶつけて消そうとしたのに、なんでこうなった? ただただ月音はそう思うのだった。

 

 そして……。

 

 

「それじゃあ今からお館様を紹介するわ! 一緒に来て!」

 

「ど、どうするんですか月音さん?」

 

「な、なるようになるだろ……うん」

 

 

 お館様の下へとそのまま連れていかれるのであった。

 

 小さな奇妙な冒険はまだ続く。




補足

えっとね、簡単にまとめると……。


ロリコン扱いされてイライラしてた上に殺すと言われたので乗っかってやったら紫ちゃまの覚悟と必死の制止で何とか殺戮モードにはならずに済んだ。

でもその殺意に腰が抜けて………となってしまった留妃さん。

しょーがないから着替え持ってくるついでにド○キで留妃さんの分の着替えを――ちょっと仕返しつもりで変な奴のを買い与える。

それを着たら思ってた以上にツボに入って紫ちゃまとセルフ鬼畜コンビが完成してゲラゲラ笑いまくる。


結果大泣きし、気付いたら彼女に仲間認定されて連れていかれましたとさ。


………なんだこりゃ。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。