色々なIF集   作:超人類DX

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焼き直し
それでいて性格も違う


環境違いのシトリーさん

 突き詰めても人間。

 どこまで行っても人間。

 周りが強くなって行こうとも、俺にはそれだけが……人間である事が誇りだった。

 

 脆いとか、脆弱だとか、人間ごときと魑魅魍魎ともいえる存在達に言われて鼻で笑われようとも、俺は人間として鼻で笑う連中に人間の可能性を示す為に力を鍛え、頑張ってと言ってくれた人の為に高め続ける。

 それが俺という『ちっぽけでさみしがり屋な』人間なのだから。

 

 

 

 何も無かった俺なのに、彼女は傍に居てくれた。

 他の皆は普通なら兄者の元へと行くのに、彼女だけが俺の傍が良いと言ってくれた。

 だから好きになった。

 だから、顔面を剥がしてやっても愛せるか試した。

 その結果……例え肉片となっても俺は彼女が変わらずに大好きだったと知った。

 その瞬間、俺は悪魔である彼女に恋をした……。

 

 飼われる結果となろうと、常に身動きが取れなくなろうとも……。

 俺を拾ってくれた時点で彼女は特別となり、大好きな人へとなったから許せるのだ。

 

 

 それが俺の、マイナスとプラスを行ったり来たりするバカが抱いた本当の恋なのだから……。

 

 

 

 

 

 本日の駒王学園は父兄参加の日。

 俺、兵藤誠八も表はこの学園の生徒として……裏ではとある事件を切っ掛けに転生した悪魔として通っている。

 神器と呼ばれる力があったせいで俺は一度死に絶え、ギリギリの所で悪魔に転生して命を拾った後、その悪魔に転生させてくれたリアス部長と仲間達とで様々な事件を経験した。

 

 俺を殺した堕天使との決着。

 リアス部長の婚約者を名乗る男との婚約解消を賭けたゲーム。

 最近は聖剣を盗んでこの街に潜伏していた連中との戦いがあったが仲間達との絆が、俺達を勝利へと導いた。

 

 そう……皆が居たから俺は生きている。

 これからも色々な困難があるけど、皆となら乗り越えられる……。

 そう思っていた……思っていたんだ――――

 

 

 

 

 

 

「やぁ、こうして会うのも……もうどれくらい振りかな」

 

「っ!? ま、まさか……!」

 

 

 あの日死んだ、いや死んだ筈の『弟』が、父兄参観の日に、12年の時を経て現れるその時までは……。

 

 

「セーヤくんにそっくり……」

 

「だ、誰なの?」

 

 

 何の脈絡も無く、俺の前に姿を現した死んだ筈の弟は、偶々隣を歩いていたリアス部長達が驚く程に、今の俺とそっくりな顔立ちをしていた。

 余りにも突然であり、俺は暫くそっくりな顔ながら病人のように白い肌である弟を見ていると、弟は……一誠は、12年振りとは思えない気安さで話しかけてくる。

 

 

「そんな顔をするのも当たり前か……。

はは、そりゃあそうだ……何せお前にとっての兵藤一誠とは死んだ筈の過去の人間なんだからな」

 

 

 ふふ……と俺と瓜二つな表情を穏やかに緩ませ、笑いながらそう宣う一誠は、確かに偽物とは思えない程に何もかもが俺にそっくりであり、12年の歳月のせいかその性格はあの時とはまるで違っていた。

 

 

「死んだ……?」

 

「っ……!?」

 

 

 弱々しくありながら、俺をずっと憎んでいた様な目では無く、俺を含めた『全て』に関心が無いような、悟った様な目になって……。

 

 

「そうだ……あの当時お前は川に落ちて溺れて、遺体だってちゃんと見たのに……いや、それも最早どうでも良い。

そんな事より、今までお前は……」

 

「今まで何処でか? フッ……必要とされなくなったあの家に居る必要も自分の存在理由も見失ってたからな。

ちょいと死んでみようとしただけだ……ま、失敗したが」

 

「何を訳のわからないことを!

答えろ、一体今まで何処で何をしていた!!」

 

 

 そして嫌でも分かってしまう12年という時間。

 訳のわからないことを口走る時に見せる、不思議な雰囲気。

 何でも比べられて育てられ、一誠は劣っていると親にすら罵られながら生きていた影響で、当時あれだけ俺を憎んでいた筈だった。

 でも今の一誠はまるでそういった負の感情が感じられず、寧ろ『どうでも良い』といった様子が、12年間秘めていた一誠に対する罪悪感が再び心を蝕むけど、死んだと思っていたのが生きていたのも分かった。

 だからこそ、今まで何処で何をしていたのかを聞かなければならない。

 

 何処かの執事を思わせる燕尾服姿からして、とてもホームレスとは思えない。

 つまり、誰かの所で世話になっているという事であり――

 

 

「何処で、ねぇ?

キミが俺を気にする事に俺は驚きを隠せん訳だが、ふふ……今の兄貴が持ってる事情が事情だし、別に話しても良いよ。

そこの紅髪の女の子と、この学園の生徒会長の女の子に関係あるといえばあるからな?」

 

「え……?」

 

「なに……!?」

 

 

 紅髪の悪魔……つまりリアス部長と生徒会長――ソーナ先輩にも関係するだと?

 まさか……いや……そんな……! こいつがまさかそれを知るはずが……!

 

 

「おぉ、昔から『何でもできるご優秀な兄貴』は変わらんなぁ?

そうさ、今のお兄ちゃんがどんな存在なのか、そしてそこに居る紅髪人とか生徒会長の人とかの正体も俺は分かっているつもりだよ」

 

 

 なんだと……!?

 

 

「何でお前が……!」

 

「んー? だって今俺が居る所って―――――」

 

 

 思わず、ありえないと一誠に対して声を荒げてしまうも、軽く流されてしまい、遂にこの12年の間どこで何をしていたのかを教えるつもりなのか、口を開き掛けたその瞬間だった……。

 

 

「一誠くーん!!」

 

 

 話そうとした一誠の声を掻き消す程の大きな女性の声に、俺達は固まり……そして続けざまに驚く事になる。

 それは一誠を呼ぶその声と共に現れ、抱き着いた声の主の姿がそうさせたのだから。

 

 

「もー! 一人でフラフラするのは禁止って言ったでしょう? せっかく撮影会してたのにー」

 

「いやすまんね……くくっ、懐かしい顔を見たらついフラフラと」

 

 

 

 

 

「レ、レヴィアタン……様!?」

 

 

 ヘラヘラする一誠の身に抱き着いて笑う、奇抜な格好をした女性が……現魔王の一人だったのだから……。

 

 

 

 

 

 初めは迷子かなって思った。

 けど、話をして理解した。

 この子は帰る家が無いんだと。

 だから私は、本当はイケナイ事だとわかってた上で、連れて帰り、誰にもその事を伝えず内緒で彼を育てた。

 小さく……今にも壊れてしまいそうな程に脆い男の子……。

 言ってしまえばそれだけだったのに、何故か私は放って置けず12年もの間彼を……一誠くんを育てた。

 その間に分かったのは、一誠くんは普通の人間とは明らかに違うという事だった。

 

 それは他の人間とは違って強い力を持っている訳でも、物凄い才能を持っている訳でも無く寧ろその逆で、一誠くんは生まれながらにして全てがマイナスだった。

 才能も、人格も、強さも、何もかもが0ですら無いマイナス。

 何も無い……敗北を約束された可哀想な男の子。

 だからますますそのままには出来ないと、出来るだけ一誠くんに色々と教えてあげ、親に与えられなかった愛情を出来るだけ与えた。

 

 その結果…………。

 

 

「一誠くんは駄目な男の子だね♪

でも大丈夫……どんなに失敗して周りから責められても、私だけは許してあげるから……」

 

 

 私はこの駄目が特徴としか言えない一誠が好きになった。

 誰からも無意味に嫌われてしまう中、私だけは嫌うこと無く内緒で一緒にいる間に、一誠くんは私が居ないと余計駄目になってしまうと思うようになっていた。

 いや、思うようになったというより、実際そうなんだから間違いじゃない。

 何をやらせても駄目。

 何をやらせても結果が無い。

 あるとすれば、全てをかき混ぜてから全部台無しにする力だけ。

 見捨てる事なんて何時だって出来た。

 しかし見捨てる事が私には出来なかった。

 放って置けなかった? いや違う。

 弱かったから? それも違う――

 

 

「知ってる理由はこういう事さ『兄貴。』

改めて自己紹介をするよ。俺は一誠……名字は無くて、彼女の…………あれ? あーセンパイ? 俺って何ポジ?」

 

「今日のお洋服のイメージは執事さんだよ☆」

 

「……。だ、そうだよ」

 

 

 その生まれながらにして負けを約束された弱すぎる気質が、堪らなく大好きなんだもん。

 だから私は愛して、どんなに失敗しても許した。

 けれど……ふふ、一誠くんは元々諦めが悪い性格だったらしく、それでいて義理堅いところもあった。

 いくら君には才能が無いと言っても――

 

 

『死のうと思った所でアンタに拾われた身だ。

だから、アンタを失望されない程度に……俺は俺なりのやり方でアンタが危なくなった所で守れるくらいの盾程度にはなって見せる……!』

 

 

 何もしなくても良いと私に真っ向から逆らって見せ、効率も何も無い無茶苦茶すぎる我流で一誠くんは自分を鍛え続けた。

 どんなに失敗しても、どんなに負けても、どんなに死にかけても、一誠くんはそれでも折れず、めげず、ネジ曲がらずに『私に対する恩義』を原動力に足掻き続けた。

 だからかな……最初は何をやっても駄目な子としか思えなかった一誠くんが、徐々にその欠陥を克服していく様を見るたびに更に好きになっていった。

 

 

『ま、まだだ……!!

ま、魔王だかなんだか知らねぇが……俺は欠陥のまま終わらねぇ……! アンタに拾われて、駄目野郎と言われたあの日からアンタを――――ぅ、おぉぉぉぉっ!!!』

 

 

 まるで神に定められた運命に逆らうかの様に力を付け、何もさせずにしようとする私に真正面から逆らい。

 

 

『ざ、ザマァ見さらせ。

へっへっへっ、欠陥人間も頑張りゃどうにでもなるんだよ……!』

 

 

 駄目も良いも兼ね備えた……私だけのヒーローさんに。

 

 

 

 

 

 思えば誠八は今まで強烈な挫折を味わった経験が無かった。

 何だかんだで上手く事が運び、何だかんだで上手く周りに溶け込め、何だかんだで上手く進むことが出来た。

 しかし、そんな彼にも秘密があり、その秘密こそがまさに目の前で……魔王の隣に立つ己とそっくりな容姿をする、死んだ筈の双子の弟……一誠だった。

 太陽を浴びてないせいなのか、病人の様に青白い顔が、12年の歳月をどう生きてくればこうなってしまうのかが分からないし、もっと分からないのは、何故一誠が四大魔王の一人の傍に居るんだという事だったのだが、その質問に対する答えは実に単純なものだった。

 

 

「そいつは簡単だぜ。

取り敢えず生きる意味が全く無くて、物試しで死んでやろうと川に飛び込んだら、この人に拾われて冥界に連れてかれたのさ」

 

「な、に?」

 

 

 言ってることと、浮かべる表情の差が更に気持ち悪さを助長することとなり、ニコやかにこれまでの経緯を簡潔に話す一誠に、誠八の顔は歪む。

 声を聞くたび、見せる表情が変わる度に一誠から放たれるドロドロとしたナニカが、見ている者達の身体にまとわり付く錯覚を覚えさせる。

 

 

「で、まあ……。

冥界の人達に内緒でこの人に飼われた結果、こうして表側に出ることになったわけ」

 

「………」

 

 

 あっけらかんと宣うその表情もそうだが、飼われたという言葉が誠八と傍に居たリアス達を疑問を抱かせる。

 

 

「飼われたって……」

 

「そのまんまの意味さ。

キミ達がどうイメージするかは知らないけど、この人って割りと酷いぞ」

 

「むー! 酷いことしてないじゃん!」

 

「いやいやぁ、生きる意味が無いから死にたいって訴えてるのに、誰も来ない地下の牢獄みたいな所に縛り付け、餌だけ与えて生かされでもすればそう思いますぜ……。

まあ、それは最初だけだったけど」

 

 

 プンプンと可愛らしく怒るセラフォルーに背中をバシバシ叩かれてもヘラヘラ笑っている一誠の言葉は、セラフォルー・レヴィアタンという人物に対するイメージを各々持っていた誠八達にショックを与えるのに十分だった。

 

 

「だ、だから今までお前は……」

 

「うん、帰るに帰れなかったって訳だな。

といっても、自由に動けたとしたってあの家に帰るつもりはさっぱり無かったがな」

 

 

 一誠の話が本当だとするなら、とてつもなく壮絶な人生だったのが容易に想像できる。

 リアス達が信じられないといった顔をしているのも誠八には理解できるが、今の一誠の肌を見れば、まともな光を浴びてこなかった事が簡単に想像できてしまう。

 

 だから信じてしまうのだ。

 双子ゆえの波長だからなのか、理解してしまうのだ。

 言ってることが嘘が無いと……。

 

 でも一つだけ理解できない所を挙げるとするなら……。

 

 

「それが本当なら……なんでお前はヘラヘラ笑ってられるんだ……!」

 

 

 さっきから……再会した時からずっと一誠はヘラヘラした笑みを崩してないのだ。

 日の光すら浴びずに、暗い闇に縛り付けられたまま12年というのが本当だったら、いくら壊れてるとしてとそんな貼り付けた様な顔で笑える訳が無い。

 なのに一誠は……。

 

 

「さてな、命を拾われ、生きる意味を与えてくれた恩義か……それとも単純に死ぬのが怖くなったのか。

どちらにせよ、何やかんやで優しくしてくれるのがこの人だけだからな、生き心地が良いかもしれん」

 

 

 心の底から笑って答えるのだ。

 誠八も、リアス達も、騒ぎを聞いて駆けつけたセラフォルーの妹で、一誠の存在を全く知らなかったソーナの誰も彼もが、心の底から笑っている一誠に何もされてないのに心が折れそうになる。

 

 

「それに、反抗的な生まれ損ないが死んだ時、あの親達が言ってた事も知ってるよ……『誠八が居ればそれで良い』ってな」

 

「そ、そんな事……!」

 

「良いって良いって隠すな、偽装させた俺の遺体で葬儀やった時の内容をセラフォルーちゃんから聞いてるから」

 

 

 ふふ……と静かに笑いながら指摘する一誠に、誠八の顔が大きく歪み、そして言い返す事が出来なかった。

 全くその通りだったからだ。

 

 

「…………」

 

「おいおい、なんだその顔は? 別に俺はもうアンタやあの元親達とは他人だと思ってるんだぜ?

今さらそんな顔されてもなぁ」

 

「違う……俺は!」

 

「なーんて、冗談だよ。

そんな訳で、今日の俺はこの人の執事的ポジションで、此処に居るのも『兄貴』やそのお仲間とかに挨拶しに来ただけなのよん」

 

 

 人をなめ腐った態度で楽しげに語る一誠に誰もが閉口し、この人物を傍に置いておいた元凶であるセラフォルーに妹のソーナ含めて戸惑いを隠せない表情を向ける。

 

 

「まあ、大体一誠ちゃんの言う通りだよ。

死にかけてた所にビビンと来てお持ち帰りし、ずっと内緒で育てたんだ」

 

 

 どっかの魔法少女を思わせる服装をする現レヴィアタンであるセラフォルーが、ニコやかにそう言いながら、同じくヘラヘラしたまんまの一誠にもたれ掛かる。

 

 

「皆が要らないって言うから私が貰った。

殺すなんて酷いことをするより、こうして笑い合える方が良いでしょう? ねぇ、私は間違ってるのかな?」

 

『………っ!』

 

 

 可愛らしい笑顔。

 しかし、誠八から見れば一誠が見せるその笑みとどうしても重なってしまう。

 殺すくらいなら貰った方がまだ健全……それが正しいのかだなんて誰にも答えられる訳も無く、シーンと誰もが閉口してしまう。

 妹のソーナに至ってはその元凶が姉である事が重なり、姉の事が分からなくもなった。

 

 

「姉さん……」

 

「ん、なぁにソーナちゃん?」

 

「っ……!」

 

 

 思わず呼んでしまい、昔からの笑顔で返事をされるが、今のセラフォルーの笑顔もソーナにとっては怖いとすら感じてしまう。

 

 

「へぇ、彼女がセラフォルーちゃんの妹さんね……初めて見るけど頭良さそうな顔だな」

 

「………!」

 

 

 それに加えて、一誠が今気づきましたとばかりに、セラフォルーに怯えるソーナへ視線を向け、ジロジロと見つめる。

 まるで品定めするような不快な視線に、ソーナは思わずその場から逃げ出したくなったが、彼女の眷属である兵士の少年が、ソーナを庇うようにして立ちはだかる。

 

 

「っ……会長に何をする気だ……!」

 

 

 セラフォルーが持っていた秘密には驚いた。

 しかしどうであれ今は王であるソーナを守らなければという使命がある。

 だからこうして、似合わない燕尾服を着ている一誠を睨むのだが……。

 

 

「いや別に? 俺ってば基本地下牢獄みたいなみたいな所に住んでて、あんまり外とか出れなくてな?

セラフォルーちゃん以外の人間、もしくは悪魔を見るのが初めてで、ついついな……」

 

「っ……!?」

 

 

 ニコリと、セラフォルーを思わせる笑顔を向けられた兵士の少年は、背中に氷柱を入れられたかの様な寒気に襲われたの同時に思った。

 良いも悪いも無い……それが逆に怖いと。

 思わず飛び掛かってしまいそうになる衝動が兵士の少年を襲うが、軽く笑って見せてる一誠という少年が見せる形容しがたい雰囲気がそれを許さず、足がすくんでしまう。

 

 

「っ……うぅ……!」

 

「ん、やはりマイナス面のせいか、別に何もしてないのにやっぱり怖がられてしまったか……ま、良いけど別に」

 

 

 一誠からすれば、別に何をした訳でもなかったのに、こうして怯えられてしまう。

 どうしてなのとかは特に考えず、やや諦めきった様にソーナと少年から視線を外すと、笑って見ていたセラフォルーに対して軽い口調で文句を言う。

 

 

「俺を出して関係者と言うのやはりマズかったんじゃないのか?

完全にアンタのイメージがぶち壊しだぞ」

 

「だから? 別に良いよそれならそれで。

言ったじゃない、何を誰に言われようとも私は一誠くんの味方になり続けるって」

 

「へ、魔王様とは思えない物言いだね。

一介の欠陥人間ごときにそんな事言っちゃうなんて、アンタぐらいだぜ。

ま、良いや……それならそれで食い扶持には困らないし、アンタが飽きるまで玩具でもなんでもなってやるよ」

 

 

 そこら辺に落ちてそうな人間一匹でしかないで自分の傍に、12年間捨てずに置いていたセラフォルーという悪魔は、もしかしたら自分よりイカれてるのかもしれない。

 だからなのか、何やかんやで優しくしてくれる彼女が実は大好きだったりする。

 なので、どう扱われようが構わない……。

 

 

「会議ってのがあるんでしょ? なら俺は終わるまで適当にフラフラしときますわ。

んじゃ、『また後でとか。』」

 

 

 急に裸にひん剥かれようが、犯されようが何されようが……。

 一誠にとってセラフォルーから向けられるものの全てが愛情と解釈されて育てられてしまったが故に、簡単に許すのだ。

 

 

「良いけど、久々に人を見るからって他の女の子と浮気したら許さないからね♪」

 

「なんだそれは? フリのつもりか?」

「もー! 本気だもん!」

 

「はいはい……仰せの通りにオジョウサマ」

 

 

 兵藤一誠

 種族:人間

 所属:セラフォルー・レヴィアタン

 

 

備考

マイナスから這い上がった人外

 

 

 

オマケ

人外くんも男の子。

 

 

 思わぬ再会と思わぬ事実に誠八達は、言葉が見つからず、手を振りながら去っていく一誠とそれを見送るセラフォルーを見ながら、ただ立ち尽くすだけだったのだが……。

 

 

「まったくもぅ……大人になるに連れて多感になるから困っちゃうよねー」

 

 

 ナンパをするなと一誠に釘を刺したセラフォルーがヤレヤレと首を横に振りながら立ち尽くしていた誠八達に向き直る。

 どうやら一誠はセラフォルーによる禁欲的な生活によって割りと異性に対してだらしなくなりつつあるようで、セラフォルーのすぐ背後を見てハッとした表情を見せたリアスが、物凄い遠慮しがちに口を開く。

 

 

「あ、あのレヴィアタン様……」

 

「ん、なぁに?」

 

「いえ、その……後ろ……」

 

「え、後ろ? 後ろって何が―――――」

 

 

 リアスに後ろと言われたので振り返ってみるセラフォルー

 すると、そこに映るのは今さっき念を押してから送り出した筈の一誠が――

 

 

「これはこれは麗しき銀髪のレディよ。

出来ればこの私と学校見学と見せかけたデートを……」

 

「あ、あの……」

 

 

 メイド服を着た銀髪の同族の手を取って膝付き、何か口説いているではないか。

 隣に自分と同じ魔王の称号をもつ銀髪メイドの夫がひきつった表情になっているのすら無視して……。

 

 

「ちょ、ちょっとキミ……僕の妻をナンパするの止め――」

 

「知るか、てか黙ってろ。

さっき拾ったエロ本に人妻ってものがあったせいで、それを言われたら余計燃えるぜ……!」

 

 

 しかも質が悪いことに、誠八に会う前に学園内で拾ったエロ本が一誠に余計な知識を与えてしまったせいで、止める気が全く無い。

 

 

 

 

 

 

 

「……。ごめんね皆……ちょっと用事が出来ちゃった」

 

 

 あれだけ念を押したのに、刹那で裏切った一誠を見たセラフォルーは殺気だけで氷付けになるのでは無いかと思うレベルの凍てついた表情を浮かべながら、ちょっと戸惑ってる銀髪メイドをナンパする一誠の背後に一瞬で立つと……。

 

 

「何をしてるのかな……?」

 

「見て分からんか……この麗しきレディ――とほぉん!?」

 

 

 後頭部にキツイ一撃をお見舞いして昏倒させたのである。

 

 

「あ、や、やぁセラフォルー……えっと、彼は……」

 

「後で説明するからさー……取り敢えず二人ともごめんねー?」

 

「あ、いえ……」

 

 

 ブクブクと口から泡を吹きながら白目で昏倒する一誠の身体を軽々と持ち上げるセラフォルーはそれだけ言うと、そのまま一誠を抱えたまま何処へと去っていくのであった。

 

「な、何だったんだ……」

 

『…………』

 

 

 余りにも余りにな訳の分からない展開に、誠八のこの言葉に答えられる者は誰もいなかった。

 そして……

 

 

 

 

「じょ、冗談だったのに……ぐぅ」

 

「目の前で浮気されて怒らない女の子が居ると思う?」

 

「お、女の子って……アンタ、それ自分の年齢で女の子は――あ、はい! セラフォルーちゃんは可愛い女の子だなぁー!!」

 

 

 意識を取り戻した一誠は、誰も居なかった空き教室に連行され、怒るセラフォルーを宥める作業をする。

 基本的に軽い性格なのに、セラフォルー以外の女性の話を聞こうとすると大体こうなるわけで、ほんの冗談で先程ナンパ紛いな真似をしただけでこの様になる。

 しかも何時まで経っても『女の子』だと言い張るセラフォルーにそれは無いだろうと言うと同様に怒る。

 

 

「わ、悪かったよ。久々に他人と会うからちょっとテンションが上がってたというかさ……な、わかるだろ?」

 

「………」

 

 

 故に低姿勢。

 立場的にセラフォルーの方が上な為、一誠は直ぐに謝ろうとするも、セラフォルーの機嫌は直らず、プイッとソッポ向きながらチラチラと一誠の顔を見る。

 

 

「え……まさか此処で?」

 

「じゃないと許さない」

 

 

 それは所謂『合図』という奴だった。

 あくまでそれをしなければ許さないと言い切るセラフォルーに一誠は深く溜め息を吐くと、いつの間にか背丈だけなら追い抜いてやったセラフォルーの前に立ち、背に手を回して抱き寄せると――

 

 

「ん……」

 

 

 一誠に抱き寄せられてから目を閉じるセラフォルーの唇に己の口を重ねるのであった。

 色々と失敗する度にコレを罰として強要されてきたので、今更恥ずかしいと思うことは無いのだが……。

 

 

「っ!? ちょ……お、おい――んむ!?」

 

「んっ……ちゅ……はむ……!」

 

 

 最近徐々に過激というか、一誠の首に腕を回して逃げられなくさせてきたセラフォルーからの、窒息させられる勢いの接吻をされる羽目になるのが最近の悩みであった。

 何も知らない人間が機材を運びに入って見られてしまおうが、セラフォルーは構わないとばかりに一誠と存分に唇と舌を重ねるのであった。

 

 

「けほ……! し、死ぬかと思った……」

 

「ん……はぁ……えへへ……♪」

 

「えへへ、じゃねーよ……ハァ」

 

 

 しかし許せてしまう。

 実の親以上に親しくなった彼女に弄ばれた挙げ句殺されてしまおうが、一誠は笑いながら受け入れる。

 飽きたからと捨てられても文句なんて言わない。

 

 

「本で読んだけど、こういう行為ってそう易々とするもんじゃないんじゃないのか?」

 

「いーの、一誠くんとなら毎日したって。さ、おいで……」

 

「変な女……格好もそうだけど」

 

 

 深く、抜け出せない程にセラフォルーという存在に傾倒してしまっているのだから。

 個性的な格好であるセラフォルーに促される形で、その場に腰を下ろした彼女の膝に頭を乗せて横になり、ニコニコと笑って自分の頭を撫でる親代わりでもある少女を見つめながら、ぼんやりとする一誠だった。




補足

大まかな違いは。

自力で『人外化』を完了させたということですね。

あらゆる技術を無限に昇華させるアブノーマル。
あらゆる現実を否定して逃げるマイナス。

その両面を上手く使いこなせているので、風紀委員イッセーの弱点を完全に無くしているイッセーさんという感じです。

ちなみに、銀髪のメイドさんをナンパ云々は彼なりのセラフォルーさんに対するジョークのつもりでした。

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