色々なIF集   作:超人類DX

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わざわざリアス達とゲームするのは『自信』を取り戻す事。

そして『確認』の為です


三人の目的

 己の進退を賭けたライザー・フェニックスとのゲーム。

 リアス・グレモリーの気合いの入れ様は、これまで以上に強いものがあった。

 

 

『ゲームは10日後。

それまでは学校を休んで修行をするわよ!』

 

 

 自由を勝ち取る為の修行。

 眷属達にそう告げたリアスはグレモリー家が所有する別荘地へと向かう。

 新人であり、兵士であり、そして神滅具を持つイッセーに対する成長への期待を込め、彼には特に多めの修行をさせるつもりだし、わざと重い荷物を眷属全員分持たせて山を登らせるのもまた修行の一貫だった。

 

 

「相手は王のライザーを含めて三人だった訳だけど、実力の程がわからない以上は一切の手を抜かないつもりよ」

 

「当然っす! 部長の為に頑張りますよ俺は!」

 

「ふふ、頼もしい言葉をありがとうイッセー」

 

「へへへー」

 

 

 相手は三人だったという希望の光も見えた。

 てっきりフルメンバーかつ全員が女性だったと、彼の性格を聞いてただけにそう予想していたリアスとしてもある意味嬉しい誤算だった、

 自分以上に人手が足りてない相手ならば、ゲーム盤次第では裏をかいて王を討ち取れる。

 

 

(でも、ライザーの言っていた『どこの誰かの考えたデキレース』ってどういう意味なのかしら……?)

 

 

 出来る限りの磐石を敷く。

 それが今できるリアスの最大の手なのだが、ふとあの時グレイフィアに向かって意味深な台詞を言っていたライザーの言葉が気になる。

 どこの誰かが考えそうなデキレース……それはつまりこのゲーム自体が誰かの作為であるという事。

 

 

「……。考えすぎねきっと……」

 

「? どうかしましたかリアス?」

 

「何でもないわ。

さて、私も少し身体を動かすわ。相手になってくれるかしら朱乃?」

 

 

 少し引っ掛かるが、今は何よりもそのライザーに勝つことが最優先だと判断したリアスは、その引っ掛かりは心の奥底へと押し込み、修行に没頭する事にした。

 

 不死鳥との戦いまで残り9日……。

 

 

 

 

 

 ライザー・フェニックスは確かに女にだらしなかった。

 それは後年になって自分でも認めていた事であるし、かつてグレモリー家のリアスとの縁談の時もテンションが上がって調子に乗ったことも認めているし、結果その慢心が全ての崩壊の始まりでもあった。

 

 

「もうあんな目に遇うのはゴメンだ。

徹底的に奴等を叩くぞ」

 

 

 自信を失う事で拭えぬ『恐怖』。

 それでも眷属達という身近な存在や、肉親達という繋がりでなんとか自分を保てたし、その後リアス達とはそれなりに仲良くなれた筈だった。

 

 だが、それも長くは続かなかった。

 あの敗北のMVPとも言える青年の持つ『異常性』と彼を疎んじていた男の持つ吐き気すら覚える『存在感』によって、MVPだった青年は徹底的に束縛された上で狂い始めたリアス達から力をしゃぶり尽くされ、ライザーはその存在感を放つ男によって眷属達を奪い尽くされた。

 

 

「……………」

 

「ギル、怖くはない?」

 

「そこまで怖がりじゃないぜレイヴェル。

寧ろ当日は奴等の鼻っ柱をどう折ってやるかで楽しみなぐらいだぜ」

 

「その気迫は良いが、顔だけは見られないようにしろよ? 俺もレイヴェルもお前も特殊な『炎』を持った類を見ない存在だ。

また実験動物みたいに扱われてしまうことだけは避けなければならない」

 

「わかってるよライザーの兄貴……もう二度と俺は奴等に奪われねぇ……」

 

 

 妹だけが正気だった。

 何故なら妹はリアスの所に当時居た、今はギルという名前のイッセーにホの字で、あの男の放った存在感に惑わされぬ『意思』があったからだ。

 

 だが、その強い意思が男の琴線に触れてしまった――というよりは男のちっぽけなプライドを傷つけたのだろう。

 その日からフェニックスの下の兄妹は周囲のものをじわじわと奪われていった。

 ライザーの眷属から始まり、上の兄弟や両親の信頼からなにまでじわじわと奪い尽くされた。

 

 とりわけライザーの眷属達に至っては、ライザーを主とせず罵倒までしてきたのには流石のライザーも心が折れそうになった。

 

 だがそれでも妹のレイヴェルに危害が加わらないようにわざと連中の怒りを買うような行動を取り続けたのだ。

 レイヴェルと、そしてレイヴェルが心配し続けた豹変したリアス達に精神が壊される手前まで利用され続けたイッセーの為に。

 

 

「ですがあちらの彼は良いのですか? 今はまだ良い信頼関係を結べている様ですが、何時かきっとギルの様に……」

 

「彼とギルの最大の違いは『有るか無い』かだ。

当時ギルには永久に強くなり続けるという今して思えばとんでもない気質があったが、彼は探ってみてもその兆候が欠片もなかった。

それはつまり利用される捨て駒にされる可能性も低いって訳だ―――――あの男さえ現れなかったらな」

 

 

 最初はザマァ見ろと思ったかもしれない。

 自分の自信を喪失させた者の一人だからと、ぼろ雑巾の様に使われてすり減らしていた彼を嘲笑っていたのかもしれない。

 けれど妹が、そんなボロボロの彼を前にしても尚献身的に救いの手を差しのべようとしていたのを見て、妹の覚悟を知ったライザーもいつの間にか彼に手を差しのべていた。

 

 そして密かに義兄弟の契りを交わし。

 妹と義弟の密かな契りも見守り。

 豹変した者達の目を掻い潜って繋がりを深めてきた。

 

 だが、そんな小さな幸せすら結局は壊された。

 だからこそ時を遡った現在(イマ)は、磐石の体制を敷いて奴等への対抗――それが無理なら遠くへと逃げる準備を整えてきた。

 

 天の七色の炎。地の七色の炎。そして漆黒の炎をそれぞれが覚醒させ、念入りに磨き続けて。

 

 

「もっとも、念入りに調べても奴自体は居ないらしい。

…………この世界の魔王共まではまだわからんがな」

 

「……このゲームを仕込んだ時点でかなりグレーじゃないのか?」

 

「お兄様は私とギルしか眷属にしてませんし、何故か女好きで女だけの眷属にしてるって話にされてますからね」

 

「俺の風評なんぞどうでも良いが、誰かが俺を知ってるとみても間違いないし、どこかに紛れている可能性もある。相手によっては俺達はこの場所を捨てなければならないな」

 

 

 ライザーの眷属だった者達が現在の世界で何をしてるのかは知らないし、知る気にもならない。

 野垂れ死んでるか、他の誰かに蹂躙されているのか、普通に生きているのか……それはわからないし、最早関心も無い。

 

 

「まずはリアス・グレモリー達を叩きのめしてみてだな。

それに対して反応を示した奴を炙り出せれば御の字だ」

 

「「……」」

 

「出来れば誰も居なければ良いんだがな……」

 

 

 妹と名と心の根っこをも喪った義弟の為に。

 皮肉にも、全てを喪ったからこそ、ライザーはその才と王たる風格を覚醒させていた。

 

 

「もし居たとするなら、それは『試練』だ。

過去に打ち勝てという『試練』と受け取らなければならない。

成長というのは………未熟だった過去に打ち勝つというう事に他ならないし、打ち勝つ事で『安心』を初めて手にする事ができる。

お前達もそう思うだろう? レイヴェル、ギル……?」

 

「「……」」

 

 

 未熟な過去を拭い去る為に鍛え続けた日々はライザーの肉体を強靭なものへと変えていた。

 例えるならギリシャ彫刻の様な無駄の無い均整な肉体というべきか……。

 もしも今のライザーを前にすれば、かつての眷属もあんなアッサリと向こうに傾倒することも無かったのかもしれない……。

 ギルとレイヴェルは今のライザーを前にただただそう思ったのと同時に、今の彼を知るのは自分達だけだという一種の優越感があった。

 

 

「その為の一歩だ。

悪いがリアス・グレモリー達は俺達の踏み台になって貰う……。

俺達『自信』を取り戻し、俺達の『安心』を得る為にッ!」

 

 

 大地を統べる七色の炎を宿す不死鳥の王。

 それが今のライザー・フェニックスなのだ。

 

 

 

 レイヴェル・フェニックスにとって、心から自分で居られる相手は両親でも二人の兄でも無く、一番歳の近い兄のライザーと、愛するギルだけだった。

 

 

「何時に無くやる気満々だったな。

炎の純度も凄まじかったし」

 

「お兄様にとってはあのレーティングゲームが全ての始まりだと思っていますからね」

 

「……てことは、俺のせいだよな?」

 

「ふふ、どうかしら? 私はあのゲームがあったからこそアナタと出会えたと思ってますわよ?」

 

「だとしたら本当にターニングポイントだな」

 

 

 誰も居ないのを見計らい、フェニックス家の城壁の上に腰掛けながら、冥界の夜空を見上げるギルと出会いの頃を語り合うレイヴェル。

 

 

「皮肉なものだわ。

豹変した彼女達に使い潰される事によって、お兄様と私がアナタと一番近しい者になるなんて」

 

「お陰で俺はお前の可愛らしさに気づけたから、結構ラッキーだと思ったぜ?」

 

「ふふん、じゃあお互い様ね?」

 

 

 全てに使い捨てられ、あれだけ英雄の気質まで備えていたのが、その精神の力を失う代わりに絶望を糧に宿した漆黒の炎。

 それは復讐と憎悪という一種の負ともいえる感情の集大成であり、元々精神を軸にした力を持っていたというのもあってか、ギルはその炎に対しての『到達点』という領域まで成長している。

 

 

「でも結局、俺に関わったおかげで兄貴もお前も巻き込んでしまったんだけどな……」

 

 

 かつて無限に成長し、赤き龍と共にどんな困難をも乗り越えてきた男が絶望と憎悪を糧に別の力に覚醒するというのはなんたる皮肉なのか。

 

 

「無神臓もドライグも完全に喪った。けれど俺はこの黒い炎を宿したお陰でお前とライザーの兄貴に近付くことが出来た。

あまり言いたくはないが……今はそれで良かったと思ってるよ。二人もいるしな?」

 

「そういう正直さ、やっぱり大好きよギル?」

 

「よせよ、二人だから言えるだけだぜ」

 

 

 けれどこれで良いのかもしれないという気持ちはレイヴェルも同じだった。

 もしも彼はあの無神臓なる力を持ち続け、何事もなく生き続けたらきっと今の関係は持てなかっただろう。

 

 

「その信頼が私とお兄様には心地良いのよ? アナタに愛されているという『安心』が……」

 

「俺にそんな価値があるのか?

……まぁ、レイヴェルとライザーが居なければ今こうして生きてる事もないってのを考えたら俺も似た様なものを感じてるけど」

 

 

 だから奇跡的に生きている今にレイヴェルは感謝している。

 そしてギルを捨て駒にしてくれた連中に胸を張りながら言ってやれる。

 

 

  ―――ありがとう、お前達の馬鹿さのお陰で彼の傍で生きていける。

 

 

 無論、この世界のリアス達の事ではない。

 彼女達にはこの世界の彼が居るし、正直その彼を含めてあまり関心はない。

 まあ、顔が同じなので意趣返しくらいはしてやりたいが。それだけの事しか関心は無いのだ。

 

 

「…………。あれ待てよ? この世界の俺自身って事は、もしかしてお前に惚れる可能性が……」

 

「はい?」

 

「やべぇぞ、もしそうなったら俺は俺自身をどうしちまうんだ? 我を忘れて本気でぶちのめしてしまいそうだぜ」

 

 

 故にギルの急に思い出したかのようなこの懸念だって無意味だし、ブツブツ言ってる彼に呆れながらレイヴェルは言う。

 

 

「仮に、本当に、天文学的低確率でそうなったとしても私は彼自身には興味無いから安心なさいな?」

 

「天文学的低確率? お前は自分の容姿の自覚はしてるのかよ? 良いか、俺だぞ? 違うとは言えあの俺だぞ? あの時ちょっと顔見せただけでこの世界の俺は鼻伸ばして『あ、かわいい……』とか言ってたんだぜ? その時点でリーチ掛かってるぜ間違いなく」

 

「だから? じゃあその仮定が本当だとしても私自身の気持ちが揺れ動くとでも?」

 

「別にそうは言ってないけど……」

 

「ギルって時々心配性というか、なんというか……」

 

 

 確かに彼はこの世界のギル自身。

 まだ真っ当な人生を歩んでいる一誠だ。

 しかしレイヴェルにしてみれば彼はそれだけの印象しか無い存在だし、可愛いと思われた所でどう思う事もない。

 

 

「はぁ……まったくもう!」

 

 

 レイヴェルにとって愛するのは、心の土台すらをも壊されてしまっても生きる事をどんな感情が理由としても諦めなかったギル自身なのだ。

 そこには何の偽りもない彼女の気持ちであり、まだ微妙に心配顔をしながらブツブツ言ってるギルに、レイヴェルは無理矢理自分の方へと向かせると、ビックリした顔をするギルと唇を重ねてやった。

 

 

「…………」

 

「ん、私が彼にこうするとでも? 私はそんな尻軽じゃ無いわよギル?」

 

 

 少しヘタレな所があるギルにはこういう強引さが必要なのはレイヴェルが何よりも分かっている。

 重ねた唇を離したレイヴェルの蒼い両眼を前にギルも小さく『悪い』と謝った。

 

 

「言っておくけど、例え事故だとしても彼に――そうね、アナタも大好きな胸を彼に触られたらぶちのめしてしまうわ」

 

「……おう」

 

「でもアナタは違う。

アナタには私の全てを好きにしても良いと思ってる。

この違いが全てだし、ふふん、寂しがりやで甘えん坊なギルにはこうして胸の中で抱いてあげてもよくってよ?」

 

「もうされてるんだけど……」

 

「でも、お好きでしょう?」

 

「……うん、レイヴェルの匂いがして安心するよ」

 

 

 要らぬ心配はするなと、彼を抱きながらレイヴェルは優しく撫でる。

 

 

「本当にギルは私が居ないとダメなんだから……ふふ、でも大好きよ?」

 

「俺も……」

 

「知ってる。ふふ……浮気したら許さないわよ?」

 

「するかよ……」

 

 

 ギルは自分やライザーが居ないとダメになる。

 そしてそんな弱いところを含めても大好きだから一緒に居る。

 

 かつて自分に下衆な手を差し出してきた、吐き気すら覚える男に向かってハッキリと言ってのけたその心は今でも変わらないし、彼との愛は空に輝く星達だけが見守っていた。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 始まるレーティングゲーム。

 互いに慎重な滑り出しだったが、やはり人数の差故にライザー達は籠城という手しか使えず、リアス達の攻撃を待っていた。

 

 そして案の定リアス達はライザー達の本陣に攻め入ってきたのだが……。

 

 

「感情がある生物は、誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる。

名声を手に入れたり、他者を支配したり、金儲をするのも安心するためだ。

結婚したり、友人をつくったりするのも安心するためだ。

誰かのために役立つだとか、愛だの平和のためにだとか尤もらしい台詞吐くことも、すべては自分を安心させるためだ。

安心を求める事こそ感情を持つ生物の全ての目的だ」

 

 

 待ち受けていたライザー・フェニックスは、リアス達の想像を遥かに越えた『器』だった。

 

 

「俺を倒すことでリアス・グレモリー……君は『安心』したい。

俺を倒す事で赤龍帝……君はリアス・グレモリーと俺の婚約を破棄して『安心』したい。他の眷属の者達も同様にな。

つまり『安心』を得る為に争う―――くくく、無論俺達もな」

 

「何が言いたいの……ライザー?」

 

「わからないか?」

 

 

 直後、本陣で待ち構えていたライザーと眷属として控えていたレイヴェルとギルの全身からそれぞれ炎が吹き荒れる。

 

 

『っ!?』

 

「俺の駒の数が少ないと少しでも有利を感じて攻めて来たらしいが、逆だリアス・グレモリー。

お前達はチェスや将棋で言うところの詰み(チェックメイト)に自ら飛び込んだのだッ!」

 

 

 大空・大地・夜。

 三種の炎が一斉にリアス達に襲い掛かる。

 

「無駄無駄無駄ァッ!! 貴様等はもう詰んでるんだよぉっ!!」

 

「なっ!? 動きが見え――ガハッ!?」

 

「部長! て、テメェこの包帯野郎! リアス部長をよくも!!」

 

『Boost!』

 

「うぉぉっ!! ………なっ!? 消え――」

 

「戦う相手はギル一人ではなくってよ赤龍帝さん?」

 

「き、キミはあのかわいこちゃ――ぎぇっ!?」

 

 

 両手と額に炎を灯すレイヴェルのボディブローが突き刺さり、白目を剥いて泡を吹きながら悶絶するこの世界の一誠。

 勝敗の行方は果たして……?

 

 

嘘です

 




補足

中の人ネタじゃないけど、意図的に彼に近い感じにはしてます。

もっとも、彼は二人を溺愛してるので悪の帝王にはなれませんが。


その2
鳥猫さんと違って距離感も近いので口調もより気安いですし、外だろうがふつーにイチャコラできます。


その3
ちな、ライザーさんは現在軽く女性不審です。

が、それを隠してアホな女好きを頑張って演じてるのですが――――




実はネタバレになるか知りませんけど、そんな彼の本質を見抜いてしまった、正真正銘この世界出身の女性悪魔が居たり居なかったり……。

あぁ、ちなみにどっかの魔王とかじゃないのは間違いないです。
どこかの貴族悪魔らしいです。

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