色々なIF集   作:超人類DX

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前回とはなんの関係もございません。

記念第2弾です。


第2弾・もしも交わったら

 真実に到達させない。

 真実を改竄する。

 

 まるで違う様で似ているかもしれない過負荷(マイナス)を持つ二人は、決して出会ってはいけなかったかもしれない程に相性が良過ぎて、あまりにも世界にとって危険過ぎる存在だ。

 

 もっとも、二人の思考回路が世界征服に燃えてるとかならその通りなのだけど、生憎この二人の考えは日がな1日を縁側でお茶とお菓子片手にダラダラ過ごすという半ニートみたいな思考回路にかなり近いものがあるので、世界の理がねじ曲げられる的な心配はきっと無いと思われる。

 

 というよりは寧ろ、紆余曲折の後に消え去った柵から解放されたお陰でとても平和思考になっていたといっても過言では無いのかもしれない。

 

 …………それが良い方向に向かってるとも、悪い方向に向かってるともいえなくもなくなりつつあるのだけど。

 

 

 

 

 

 ソーナ・シトリーは現在の悪魔の中でも最高峰に終わってる存在だ。

 その破綻っぷりは実の両親や姉の顔をも嫌悪に歪ませてしまうレベルであり、当然彼女の存在は語ることもある意味でNGだった。

 

 真実に到達させずに過程だけを永久に――強引に繰り返させるという彼女だけのオリジナルな個性は其ほどまでに毒なのだ。

 しかも本人にはそれを制御する気がまるでない。

 

 彼女を怒らせたら永遠に過程を繰り返させられるループに引きずり込まれて地獄を見る。

 決して結果という真実にたどり着けぬままに……。

 

 だから彼女には共に戦う仲間は存在しない。

 何故なら彼女は戦うことを直ぐに放棄してしまうから。

 

 なにより、彼女の対となる真実の改竄の個性を持つ強烈な存在が傍らに居るので、他を必要としないから……

 

 

 

 

 

 

 兵藤一誠は幼い頃から元気な少年として両親から惜しみ無い愛情を注がれながらグレる事無く生きてきた。

 ……………いや、性癖関連に関しては既に5歳前から大人になりすぎてグレはじめてたかもしれないけど、それでも人格面では決してグレる事は無く、スクスクと育った。

 それはある秘密があったから……。

 

 

 しかしながら、そんな彼にもひとつだけ幼い頃から疑問に思う事があった。

 それは自分は両親から惜しみ無い愛情を注がれているというのに、明らかにもう一人――つまり彼にとっての兄弟となる()は両親から敬遠されているという状況に。

 

 

「ごめんくださーい」

 

 

 そんな状況に対してその兄弟は不満を持つ訳でも無く、贔屓されてる自分に対しても恨み言を言うでも無く、寧ろ普通に仲良くしてくれた。

 ()()()()により、一誠は当初その兄弟に対してかなりの不信感を持っていた。

 

 だが、ある時を境にその兄弟の全てを理解した瞬間、一誠は彼に対して持ち得る力を最大限に注いで彼を助ける事にした。

 何せ彼にとって兄弟――兄はちょっと貧弱な面が多々あるけど兄なのだから――――なにより同じだから。

 

 

「あら、いらっしゃい」

 

 

 さて、そんな一誠は今とある者の自宅を訪ねていた。

 少し古めかしくて、狭苦しそうなアパートの一室。

 

 そこには兄が気付いたら幼少の頃から仲良くなったひとつ年上の少女が一人で暮らしてるアパートであり、兄が家に居ない場合は確実といっても良いほど来ているだろう場所。

 

 

「おはようございます。

えーっと、頼まれたので来ました」

 

 

 黒髪に眼鏡。

 日本人離れした瞳と容姿。

 大人しめにいっても美少女と言える彼女が扉を開けて自分の訪問に対して出迎えてくれるその名は支取蒼那という。本名はソーナ・シトリーだが。

 油不足なのか、扉から軋む音を奏でさせながら出迎えてくれた――兄にそこはかとなく何かが似てる彼女に挨拶を済ませながら、一誠は完全に居るだろう兄の所在を確かめた。

 

 

「そう、別に私達の事は構わないで自分の事を心配したら良いのに……。

でも折角来てくれたし、これから朝ごはんを食べるけど、アナタもどう?」

 

「あ、じゃあ頂きます」

 

 

 微笑む少女――ソーナに一誠はお礼を言いながら中へと入ると、案の定テレビを見ていた兄がそこには居た。

 

 

「ん? あぁ、一誠か」

「『あぁ』……じゃねーよ兄ちゃん。昨日から帰って来ないから心配したんだぜ?」

 

「別に心配なんか、俺の行くところなんて決まってるじゃないか。

そこはもう少し察しといてくれよ」

 

「そら知ってるがよ……」

 

 

 蒼那が入れてくれた麦茶を飲みながら、一誠は寝室に使ってるだろう襖を挟んだ隣の部屋を見ながら兄の言葉に対してすこし唸る声をだす。

 兄と蒼那の関係性は、小さい頃から知ってるのでどんなものかは大体、一誠もそんな年頃だから理解してしまう。というか、そこら辺はやはり同じだからわかるのだ。

 

 

「ホント同じだわ。気質は別だけど」

 

「何が?」

 

「何でもないぜ。くくく……」

 

「??」

 

 

 言葉を交わさすとも解り合える……そんなパートナーを持つという意味で。

 

 

 

 

 

 理由はハッキリとしない部分は未だに多い。

 何でそうなったのか、そして何故自分達だけなのも解らない。

 幸福に到達してしまったが故にツケなのか。

 所詮マイナスは大団円では終われない運命だからなのか。

 

 それはとある者により最初の過負荷としてねじ曲げられてしまった二人にだって分からない。

 

 ただひとつ言える事は、大団円で終わる事が出来ないのなら、もっとひっそりと、静かに、植物の様に生きてみれば良い。

 

 考えた結果到達した答えは、ソーナのかつての眷属達を悪魔に転生させる事無く、またする必要のない人生を送らせる為のフォローを影ながら行う事だった。

 大っぴらなフォローは全てを台無しにしてしまうので、慎重に行った結果、今のソーナは眷属をただ一人しか持たない悪魔としてその日を適当に生きていた。

 

 変わらぬ想いを互いに抱く彼というパートナーと共に。

 しかしながら、全てが思い通りになった訳ではない。

 

 大半はギリギリの瀬戸際で何とか出来たが、その改竄を自らが行った結果、思いもよらない新たな運命が出現したのだ。

 

 

「ソーナ、ちょっと良いかしら? 少し相談したいことがあるの……」

 

 

 まずひとつ。

 ソーナ自身は最初から己の本質を隠す事無く生きてきたつもりで、当然周囲から異様な存在という烙印を押し込ませて敬遠させていたつもりだった。

 なのでソーナは勿論彼女からも頭のおかしな存在と見られて近寄られる事も無いだろうと思っていたつもりだった。

 

 だが、その彼女――つまり、リアス・グレモリーはそんなソーナの異質さに対して全くの嫌悪感を示す訳でも無く、寧ろそんな彼女を心配してあれこれと構ってくるのだ。

 今もそうだし、元々人間界の学校には彼というパートナーが確定的に傍に居ると決まった時点で通うつもりは無かったのだが、このリアスが一緒に通おうとしつこいくらいに誘ってくるせいで、結局ソーナは二度目の高校生をさせられていた。

 

 

「何かしらリアス? あまり私に近寄るのは良くないと思うわよ? それに彼はどうしたのよ?」

 

「一誠に内緒で来たのよ今日は」

 

「俺、席外しましょうか?」

 

「大丈夫よ(ソソギ)君。

逆にアナタが居てくれないとソーナのやる気度が下がっちゃうし」

 

 

 とある日の昼下がりの学園の、とある日陰空き教室で、常人が触れればそれだけで嫌悪に顔を歪ませるだろう負のものを撒き散らしながらお昼を食べてた、今はソソギという妙な名前となったマイナス一誠と、ソーナの二人のもとに現れた赤髪がとても特長的なソーナと同い年の少女ことリアスは、悪魔ですら異様さを感じてしまう二人のマイナスを前にしてもこなれた様子であり、また当たり前の様に持ってきたお弁当を食べ始めながら相談をしたいと言ってくる。

 

 

「相談というのは今後の傾向と対策についてなの」

 

 

 色々あって、かつての頃は自然と疎遠となってしまった訳だが、ソーナや雪の予測を越えたレベルにこのリアスの心臓は強い様で、いくら他の者にとっては吐き気すら覚えるマイナスを向けても普通に接してくる数少ない変人の一人だった。

 

 

「私に相談を持ちかける時点で間違えてると思うわよリアス?」

 

「相談というよりは単なる愚痴みたいなものだから……」

 

 

 別になにかをした訳じゃない。

 が、気づいたら懐かれた。

 これがひとつ目の変わった運命。

 

 そしてもうひとつ……。

 

 

「そろそろグレモリーの名前を捨てて一誠とどこか遠くへ行こうと思うのだけど……」

 

「……。真顔でいきなりね」

 

「何でそういう結論に至ったのかがまずわからないのですが……」

 

 

 彼女はどうやらソーナと雪に思っていた以上に境遇が『似ていた』らしい。

 ソーナが先を考えて雪と共にコソコソしていたのと同じで、どうやらリアスも何かに対してコソコソと動いていたらしい。

 

 

「この前遂に婚約の話が来てしまってね……」

 

 

 そうならないようにバカを演じてたつもりだったのだけど……と、遠い目をしながら言うリアスにソーナと雪は『そう言えばあの時もあったな』と思い返す。

 まるである程度未来が見えているという風に何故リアスが語るのか。

 

 それは彼女もまた……全く異なる地獄の様な世界を生きたリアス・グレモリーの今だからだ。

 

 

「無いとは思うけど、一誠がその相手を殺してしまう可能性もあるし、そんな事に手を汚すくらいなら私が始末してしまった方が良いと思うのよ。

だから今一誠に内緒で相談しようと思って……」

 

「「あー……」」

 

 

 マイナス一誠とは違ってかなりの激情家というか、リアスの事になると後先考えなくなるタイプの――名を譲った方の一誠について話すリアスに対して二人は納得したように声を揃えた。

 雪とは真逆の精神を持ち、その力も化け物レベルに強すぎて、しかもリアスもその彼と同等のレベルにまで到達しているという、二人にしてみればどうしようもない程の先に君臨する存在。

 

 ルール度外視状態でやりあえば食らい付けは出来るかもしれないが、ソーナも雪もできることならこの二人は相手にしたくない。

 

 

「それに、どうやら思った以上に『連中』の存在も多いみたいだし、下手に何かされる前にとんずらしてしまうかしらって」

 

「マイナスよりも悪夢な現実ね」

 

「存在自体を否定しようとしても出来なかったしなぁ」

 

 

 それに加えて、かつて兵藤誠八と呼ばれた男の様な存在がこの世界にはうじゃうじゃと居るという。

 既に何人かは一誠とリアスが秘密裏に始末してきたらしいけど、それでも後何人居るかはわからない。

 

 

「リアスちゃん! あのめんどくせー鳥公がリアスを出せって煩かったからぶちのめしちゃったぜ!」

 

 

 そういった手合いにはソーナと雪以上にアレルギー反応を示すリアスと一誠は、聞けばそういった手合いに人生を壊された苦い経験があったらしい。

 お陰で二人は出会えて唯一無二のペアへとなれたらしいが、それとこれとは別らしい。

 

 というか、基本的にリアスにちょっかいをかける存在は一誠が番犬の様に現れてズタズタにしてしまうのだ。

 今だって、折角リアスが傾向と対策をソーナに相談していた矢先に一誠がやって来て、その婚約者とやらを半殺しにしてしまったと言ってる。

 

 

「……一誠。

キミはどうやらかなり後先を考えないみたいだね。

俺も似たようなものだけど、君には負けると思うぜ」

 

 

 生きた環境の違いはこうも差異となるのか…と、雪は別世界の己自身ともいえる一誠に呆れた表情を向ける。

 

 

「しょうがないだろ。

じゃあもしシトリーさんが他の野郎にベタベタされてたのを見たらどうよ?」

 

「そいつの骨格と筋力を全否定した後、魚の餌にしちゃうかなぁ」

 

「だろ? 俺にとってはまさにそれなんだよ」

 

「なるほど、ならしょうがないね」

 

 

 だが、根が似てる部分もあるせいか、一誠の言葉に即時納得してしまう雪に、リアスは嬉しいと思う反面複雑だった。

 

 

「私の事情で、アナタが手を汚す事なんて無かったのに……」

 

 

 かつて自分の為だけに血塗れになり続けたからこそ、今はそんな事をしなくても良いと思うリアスに一誠は笑みを浮かべる。

 

 

「善人気取ってるつもりもないし、ヒーローになりたい訳じゃない。

俺はリアスと一緒に居たいから勝手にやってるだけだぜ」

 

「………。思ってはならないのでしょうけど、やっぱりそう言われてしまうと嬉しいわ一誠」

 

 

 その為には神にすら反逆した愚か者。

 それが無限の進化の異常性を持つ少年と、あらゆる技術を吸収し続ける異常性を持つ悪魔の少女の軌跡。

 

 

「やってしまったのなら仕方ないわ。

借りはあるし、暫く私と雪でバックアップはしてあげる。

一応使いようによっては私と雪のマイナスも役には立てるでしょうし」

 

「今度なんか奢ってよね」

 

「任せろ。

もし今度シトリーさんにちょっかいかけそうな奴と出会したら、協力してそいつをぶちのめしてやろうぜ」

 

「……。多分ソーナにちょっかいをかけられるメンタルを持つ者はそう居ないと思うけど……」

 

 

 ソーナと雪と同じ様に、互いの特性を理解し合い、交わることで完全無欠なペアへと到達した存在。

 それがリアス・グレモリーと兵藤一誠の秘密なのだ。

 

 

 

 ソーナ・シトリー

 マイナスを抱えて生まれ、マイナスを抱えた人間の少年に出会うことで隠すのを辞めた悪魔っ娘。

 

 悪循完(バッドエンド)

 結果に到達させず、過程を強制的にループさせる過負荷。

 雪との相性は気持ち悪いレベルで良すぎる。

 

 

 兵藤 雪(マイナス一誠)

 所謂オリ兄によって性格を卑屈化させ、結果吹っ切る事でマイナス覚醒し、悪魔っ娘と共に生きた元・人間

 

 幻実逃否(リアリティーエスケープ)

 真実を否定し、思い描く幻実へとねじ曲げる過負荷。

 ソーナとの相性がやはり気持ち悪いレベルで良すぎる。

 

 

 

 リアス・グレモリー

 転生者に無能と罵倒された挙げ句友人・親の信じられる者全てを奪われ、ゴミの様に捨てられた先に出会えた少年によって立ち直れた悪魔っ娘。

 

 正心翔銘(オールコンプリート)

 あらゆる技能を学習し、即時扱える異常性で、後述する少年の異常性を取り込む事でより強くなっていく。

 

 

 兵藤一誠

 両親を殺された復讐の果てに出会えた悪魔の少女に惚れ込み、彼女の為に生き続ける――最強災厄の赤龍帝。

 

 無神臓(インフィニットヒーロー)

 あらゆる環境に即時適応し、無限に進化を促し続ける異常性。

 リアスと交わることで彼女の異常性を少しだけ含ませている。

 

 

「でも改めると不思議よねお互い。

私にしてみれば一誠と同一人物ともいえる雪君がソーナとそんな仲だなんてと思うし」

 

「反対に私はアナタがスキルを持ってる挙げ句雪と同一人物の一誠くんとそんな仲なのに驚きだわ。

それに、この前二人して人も寄り付かない山の中に入ってあんな事してたなんてのもびっくりだわ」

 

「うぇ!? み、見てたの?」

 

「気になったから雪とついていっただけよ。

……結構大胆なのねリアスも?」

 

「い、いえ、実は初めてがあの山の中にあった小さな洞窟の中だったから、つい懐かしくなって……」

 

「外って中々レベル高いね俺も流石に家だぜ?」

 

「仕方ないだろ、当時リアスちゃんを匿ってた時期で、俺も家なんてなかったんだから……」

 

 

 違う経験を経た者達がタッグを組む話。

 

 

「ソーナだってこの前、旧校舎の空き教室でそういう事をしてたじゃない……」

 

「してたわよ? それが?」

 

「ひ、否定しないのね……微妙に負けたわ」

 

 




補足

大体お分かりでしょうが、マイナス一誠とシトリーさんとベリーハード世界の二人のプチクロス。


基本的になにかされた時の仕返しがえぐいマイナスペアと、わかりやすいくらいリアスちゃんバカでやることがストレートな異常者ペアの………安心を求める旅みたいな話かな。


その2
Q.他の皆はどうなったか。

A.多分うようよ居るらしい誰かさんの毒牙にでも掛かって幸せに生きてるんじゃありません?


その3
Q.続くとするならその者達は出るんですか?

A.続ける気なんてございませんが、多分出るんじゃありません?
ベリーハードとマイナスのツインズイッセーが魔王みたいに鬼畜対応しちゃうと思いますけど。


その4
実は裏話に、リアスと仲良しのベリーハード一誠を見て、若干ながら自分の胸が少なくて、ちょっとしおらしくマイナス一誠に聞いた事があるらしい。

即時押し倒されて即解決しましたけど。

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