色々なIF集   作:超人類DX

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思いの外この二人は―――重い


第4弾・お互いしかない義親子

 自分以外の自分が居る。

 こんなクソみたいな世界なのだから、居ても驚きはしないし、正直云ってどうでも良い。

 

 俺と違って生きる希望をもっている事もどうだって良い。

 

 再起不能(リタイア)した自分にはもう抗う気力も雀の涙程度しかない。

 生きることを託されたからこそ生きなければならない――と、微妙に若返ってるヴェネラナのババァは言うけど、俺はもう生きるのにも疲れた。

 

 だから俺は間違いなく死を望んでいる。

 ババァには少しだけ生きると言ってはいるけど、俺は心の底で無惨に殺される事を望んでいる。

 足掻いた所で弱いままでしかなかった役立たずは死ぬしか使い道なんてありはしないのだから。

 

 でもババァを残して死ねるのかと問われてしまえば俺は死を躊躇ってしまう。

 ちっぽけなカスでしかない俺の中に残った、母親面するババァをこんなクソったれな世界に取り残して死ねばどうなるか位は馬鹿な脳みその俺でも流石にわかるから。

 

 堕天使や天使やハーフ悪魔が例え同類だとしとも所詮奴等とは別の世界を生きた存在だからどうしても信用はできない。

 所詮は他人でしかないしな。

 

 だから今は死ぬわけにはいかない。

 右目と腕を無くしてもまだ虫けらの様に生きている俺の残された成すべき事はババァを安全な世界へと送り届ける事。

 それを成し遂げるまで俺はまだ―――死ねない。

 

 この時俺は奴等を知る時までそう思っていた……。

 

 

 

 隻腕で隻眼。

 闘う者としては再起不能とも言えるだろう悪魔の執事は、別世界を生きた者達とは別行動をする形で今日は若返ったヴェネラナと人間界の町の郊外の川沿いを目的も無く歩いていた。

 

 

「良い天気ね……」

 

「……」

 

 

 亜麻色の髪の美女――というか今は美少女といえるだろうヴェネラナだった少女が、その後ろを黙々と黙って着いてくる右腕が無くて右目が塞がっている少年に話を振る。

 彼女の言う通り、少年の心の中とは真逆の青空が広がっているのだけど、日之影一誠の名をかつては持っていた少年の心は晴れにはならない。

 

 

「ほら、見てごらんなさい? あそこに居る親子連れを。

ふふ、和むわぁ」

 

「ただの他人だろあんなの」

 

 

 言い方からして既にめんどくさい男のオーラ丸出しであり、わざわざ話を振ってくる――今はシャルロットという名のヴェネラナに対して、今はギルバという名の日之影一誠は無愛想に吐き捨てる。

 

 

「そんな事より警戒して歩いてくれよ。

髪の色こそ違えど、アンタはリアスに似てるんだ。

馬鹿なクソ共がゴキブリみてーに寄って集る事だってあり得るんだからな」

 

「人を害虫駆除容器みたいに例えないでくれないかしら……? 言われなくてもちゃんと警戒はしているから安心なさい」

 

「……………なら良い」

 

 

 粗暴な口調は相変わらずで、こればかりは教育をいくらしても直らなかったとシャルロットは過去を思い返しながら苦笑いを浮かべる。

 もっとも、今の彼はそれほどに自分を心配してくれているという事なのだが。

 

 

「ふむ、良い場所ね。

少し休憩しましょう」

 

「………」

 

 そんなこんなで暫く川沿いを歩き続け、休憩をしようと言うシャルロットが土手にそのまま腰かける。

 

 

「? 何をボーッと突っ立っているのよ? アナタも隣に座りなさいな?」

 

「……」

 

 

 その姿を後ろから直立不動で眺めていたギルバにシャルロットがポンポンと隣の地面を手で叩きながら座れと促し、ギルバも無言で腰を下ろす。

 

 

「んー……んっ……! 何時以来かしらねぇ、こうしてのんびり出きるのって」

 

「さぁね。俺が生まれる前じゃないの? ババァだからな」

 

「そんな昔まで遡りはしないわよ……。

全く何時まで経っても人をババァ呼ばわりして……!」

 

「頬を膨らませても可愛くねーぞババァ」

 

「もうっ、また言った!」

 

 

 軽く鼻で笑う感じでババァ呼ばわりされ、シャルロットは頬を膨らませながら怒る。

 断っておくと、元々ヴェネラナの時点で娘のリアスとは姉妹だと言っても余裕で通じる容姿だったし、今は肉体的にも更に若返って居るので普通にババァでは無いし、今の絵面にしても実に可愛らしいお嬢さんだ。

 

 が、彼にとってはババァはババァらしく、頬を横からつねられても主張は変えないらしい。

 認めてしまえば完全敗北した気分になるから。

 

 

「この世界のグレモリー家はどうなっているのかしらね……。

サーゼクスは大丈夫なのかしら……」

 

「……………」

 

 しばらく頬をつねられながら、種類は知らない鳥が鳴きながら自由に空を飛んでいるのを何抜き無しに眺めていたギルバの耳に手を離したシャルロットが不意にこの世界の子を思い出したのか、心配する声色を放つ。

 

 この世界にはシャルロットとは別にハッキリとヴェネラナ・グレモリーという悪魔は存在している。

 所謂別世界のヴェネラナが産んだ別世界のサーゼクスとリアス。

 

 リアスはどうやら事情が異なる様だが、サーゼクスはこの前ヴァーリ・ルシファーから聞かされた話を思い返すに、正真正銘この世界のサーゼクスで間違いはないだろう。

 ……碌な目にあってるとしか思えないが。

 

 

「グレイフィアが別の野郎と『関係』してる上での結婚らしい。

……ミリキャスすらも生まれてねぇって事はそういう事なんだろう――政略的な意味で」

 

 

 そう、この世界ではミリキャス・グレモリーは存在すらしていない。

 何故ならグレイフィアとサーゼクスは籍の上ではそうだけど、そういう関係には至ってないから。

 何より、ヴァーリの話によればグレイフィアはそれよりも前に出会ったとされる誰かとそんな関係になっているらしいから。

 

 

「俺はしょっちゅう頭に来ると『殺す』だなんて宣うが、それを聞いた瞬間、あれほどその『誰か』に対して殺意を抱いた事はなかったぞ」

 

 

 知った上でサーゼクスと出会う前のグレイフィアに接触したのは間違いはない。

 だからこそ、かつての世界で仲睦まじすぎてイラッとすらしたこともあったギルバはその『誰か』が憎くて仕方なかった。

 

 

「およしなさい。

どうであれこの世界においてはサーゼクスはその誰かの後に知り合っただけの事なんだか。

グレイフィアにしてみればその誰かに対して先に心を惹かれただけに過ぎないの」

 

「……………」

 

 

 肉体的には再起不能でまともに戦える身体ではない。

 だから届かぬ殺意を持て余すギルバにシャルロットが宥める。

 そう……どうであれ、この世界のグレイフィアはその『誰か』を好きになったに過ぎないのだから。

 

 

「その誰かがグレイフィアと同じくグレモリーの使用人として生きていて、この世界の私に何かしているという面を抜かせば仕方ないことよ……」

 

「仕方なくないだろ。その時点でありえないだろ……。

クソ……!」

 

「怒ってもしょうがないじゃない。

今の私とアナタはただの関係無い外様なのですから」

 

「…………」

 

 

 この世界のヴェネラナになにか小細工をしている所を抜かせば害は無いと断ずるシャルロットに、ギルバは何も出来なくなってしまった己の無能さに毒づく様に舌打ちをする。

 そう、どちらにせよ自分達には何もできないのだから。

 

 

「リアスとソーナちゃんだけでも大丈夫だってわかればそれで良いのよ……」

 

 

 無力。

 その言葉が一体何度ギルバの心に影を落とし続けたか。 

 シャルロットの言うリアスとソーナはこの世界に居る二人の事を指していて、その二人は其々違い存在なのもわかっている。

 何故ならあの二人には再起不能にはなっていない己自身が傍に居るから。

 

 

「……………」

 

 

 それに比べて自分は……。

 右目は潰され、右腕も消し飛ばされ……それでも生き残ってしまったしまった死に損ない。

 かつての力はもう消えてしまったし、残ったものと言えば僅かに託された魔力だけ……。

 

 

 

「大丈夫だろ。ポンコツに成り下がった俺じゃねぇ俺が居るんだからよ……」

 

 

 シャルロットは生きるべきだと言うけど、何を根拠にして生きれば良いのかわからない。

 今のギルバには上を見て貪欲に生きようとする意思が欠如していた。

 

 

 

 

 

 当たり前といえば当たり前だし、私とてそのショックを引きずっている。

 やっと掴めた繋がりすら壊され、生き残ったのは私とこの子だけで、力をも失った今はギルバと呼ばせている一誠の視線はあの頃のギラギラした貪欲さは無い。

 

 本音を言えば私だって泣きたい。

 愛する家族を壊され、故郷を蹂躙され、帰るべき場所も消され、こんな悪夢みたいな世界に弾き出されて泣きたくならないというほうが無理な話。

 けれど私が泣くわけにはいかない。

 

 私以上に失ったこの子の前で泣くわけにはいかない。

 血の繋がりこそないけど、確かに私はこの子を――一誠を家族だと思っているから。

 

 母である私が弱音を吐いてどうする? 私を守る為に腕と目を失ったこの子を今度は私が、どんな手を使おうとも守り通す。

 

 例えこの身が汚されようとも……。

 

 それなのに……。

 

 

「それ以上その女に近づいてみろ……! 考えうる手を総動員してテメーに地獄を見せてやるっ!!」

 

「片目と片腕も無くて、そんなボロボロにされてる癖に言うだけは一人前か。

少し驚いたけど、所詮口だけなのは変わらないってところか……」

 

「ぐっ……!?」

 

 

 私はまだ……この子に守られている。

 力を失って戦える状態ではないあの子に……。

 

 

「よしなさい! ……………用があるのは私でしょう?」

 

 

 この世界は狂っている。

 かつて一誠を一誠としての全てを奪い去った男と同質の存在が数えるのも馬鹿らしくなるほどに存在していて、今も散歩の帰りに突然現れた異様な雰囲気を持つ青年に襲われている。

 ギルバを一誠と断定し、右目と右腕が無いことに驚きはしたものの、それなら好都合だと叩きのめし、今私の目の前に立っている。

 

 

「用があるといえばある。

キミはまず悪魔だな?」

 

 

 不自然な程に顔の整った青年の質問に、血塗れで倒れるギルバを抱き抱えながら私はその通りだと頷く。

 こういう事にリスクを避ける為に、私もギルバも変装していたのに、結局はばれてしまった。

 ならば腹を括るしかないと私は決意する。

 

 

 

「そうだとするなら貴方にどんなご関係が?」

 

 

 ………流石に私がヴェネラナであることは見抜いていない様だが、リアスに似ている私の存在は彼の様な者に目を付けられるらしい。

 

 

「何で人間界(ここ)にキミの様な悪魔が居るのか。

……グレモリーの関係者か?」

 

「いいえ、私はしがない下級悪魔。

グレモリー家とはなんの関係もございません」

 

「それにしてはリアス・グレモリーに顔が似てると思うがな」

 

 

 何かを怪しむ男に私は澄ませた顔を崩さずに惚ける。

 

 

「他人の空似という事もありえるでしょう?」

 

「……。まあ、なんでも良いけど、そこの彼は人間だろう? 右目と片腕が欠損しているのには驚いたけど……」

 

「彼は不慮の事故で家族を亡くし、自身もその事故の後遺症に苦しんでいるのを悪魔である私が対価を支払わせる事で引き取っているだけです」

 

「不慮の事故……ねぇ」

 

 

 ……………。あまり誤魔化せてない気はするけど、こうなれば思い付く限り嘘で誤魔化し続けてあげましょう。

 本来のギルバならなんて事にもなりはしない筈なのに、こんなボロボロにしてくれた相手なのだから遠慮なんてする気はない。

 そう思い、イザとなれば戦うという覚悟をしている私にその男が突然手を伸ばしてきた。

 

 

「どちらにせよ、キミの事はちょっと調べる必要がありそうだから、一緒に来てくれないかな? そいつはそこに置いてさ?」

 

 

 ! 目の色が変わった……? それと同時に私の中に何かが入り込んでくる様な感覚が……。

 

 

「キミに興味が沸いたから、キミの事を知りたいんだ? なぁ……良いだろう?」

 

 

 そして放たれる言葉が直接頭の中に入り込るとの同時に男の手が私の頬に――――

 

 

「ギィヤァァァァァッ!?!?!?」

 

 

 触れられる………事は無かった。

 何故ならば男は突然を手を引っ込め、激痛に顔を歪めながら悲鳴をあげたのだ。

 

 

「ぺっ!」

 

 

 昔を思わせる目をしたあの子が、私に触れようとした男の手の指を食いちぎって地面に吐き捨てた事で……。

 

 

「て、テメェェェェッ!!! 俺の指をォォォッ!!!」

 

 

 先程までスカした態度をしていた男が目に見えて下品に激昂しながら、ダメージが抜けてないのかまだ身体をふらつかせながら立つギルバを痛みで涙目になりながら睨む。

 

 

「この女に触れたら殺すと俺は言っただろ。

指の一本や二本ちぎれた程度で喚くなよ」

 

 

 口の中に残った血も吐きながら、ギルバは私の前に盾になるように躍り出て、反省も後悔もしていませんな態度で煽る。

 

 

「殺す! 兵藤一誠にツラが似てるだけの俺と同類かもしれないと思ったが、テメーは今殺す!!」

 

 

 そう言った男は見たことも感じたこもない異質な力を放ち始め――

 

 

「ごっ!?」

 

 

 ―――る前に、ギルバの爪先が男の鳩尾を貫いた。

 

 

「ほらな、貰い物の力を持つ奴は何時もそうだ。

わざわざ相手が待ってくれるとでも思ってるのか? ここは舞台演劇じゃねぇんだよボケが」

 

「うげぇぇぇっ……!!」

 

 

 堪らず胃のものを血混じりに地面に吐きながら苦しみにのたうち回る男にギルバは冷酷な表情で見下ろす。

 

 

「俺個人が気に入らねぇってんなら別にどうでもよかったが、この女にテメーは何かがしようとしただろう? ………もっとも、テメーみたいな力を振りかざして全能ぶってるだけのクソ餓鬼がこのババァに通用するとは思えねぇが」

 

「ま、またババァって……!」

 

 

 然り気無くババァと言われて思わずムッとなってしまう私をギルバは無視して、のたうち回る男の頭を執拗に踏みつける。

 

 

「テメーにさっきボコられて血ィ流したせいなのと、ババァに触れようとしたところを見たせいか、久々に『ハイ』ってのになってるぜ俺は。

そのせいか、今頭の中にディープ・パープルのhigh way starって曲が流れっぱなしだぜ……!」

 

「やべろ!? ぶぎぃ!? ぶごっ!?」

 

 

 スキルは失ったし、右目も右腕も無い。

 けれどそれまでに培った経験までは失っている訳ではない。

 故にギルバは確かに弱体化をしてしまってはいるけど、決して弱いわけではない。

 かつて一誠が私達とふれあう事で宿した魔力を――器用に足に消滅の魔力を纏いながら的確に男の身体を消しながら蹴り潰していく姿は――反抗期全盛期の頃を思い起こさせる。

 

 

「死に損ないなのも認めてやる。

今更ムシが良すぎるってのも自覚してる。

けどこの女を――ヴェネラナのババァにふざけた真似をするなら実の親でも殺す……!」

 

「ぎ、ギルバ……」

 

 

 結局男は力を解放する間も無くギルバに踏み殺されて消し飛んだ。

 かつては力任せで、宿した私達と同じ力に頼ることの無い強引な戦い方をしていたギルバが今、私の系譜であるバアルの消滅の力を使っている。

 私を守る為に……。

 

 

「ぐっ……」

 

「!? 一誠……!」

 

「チッ、本当に血を流しすぎた。

頭がクラクラしやがる……」

 

 

 全てが終わったその瞬間、ギルバは頭から血を流しながら倒れそうになるのを私は思わず本当の名前を呼びながら身体を支える。

 

 

「割りとギリギリだった。

今の奴が馬鹿で助かったよ……でなきゃアンタをラチられてた」

 

 

 生温い鮮血が私の服を赤く染め上げる。

 やっぱりギルバは力を殆ど失っているのが分かる……。

 昔なら何度叩きのめされても立ち上がるタフネスがあったのに、今のギルバにはそれが……。

 

 

「俺の事なんてどうでも良い、問題はアンタだよ。やっぱりアンタまで狙われてるじゃないか、ちくしょう……」

 

 

 このままでは帰れないと判断した私は、ギルバを偶々見つけた廃墟に連れていき、そこで傷の手当てをする。

 その間、この子はずっと私が他にも目を付けられるかもしれないと懸念して顔を歪ませていた。

 

 

「あのクソ共はツラさえよければ何でも良いのか? 冗談じゃねぇぞちくしょうが……」

 

「リアスに似ているから……だと思いたいけど」

 

「いや、グレイフィアにすら手を出せるんならもうそう考えるしかねぇ。

下手したらアレだな……あの狐の親子も終わってるかもな……」

 

 

 狐の親子。

 かつて後継者候補だった一誠を気に入って何度も拉致しようとした八坂親子の事を言っているのだろう。

 確かにそれを言われるとあり得なくもない気はする……。

 

 

「……まぁ、あの狐共がどうなろうが知ったことじゃないが、ババァだけは駄目だ。

アンタだけは……」

 

「……。でもその都度貴方が怪我をしたら……」

 

「アンタを目の前で奪われるくらいなら死んだ方がマシだ。

俺は確かに生きる気力は無いかもしれないけど、ババァが奪われるのだけは嫌だ……!」

 

 

 そう言いながら左手で私の手を握って俯くギルバは震えている。

 反抗期が終わったせいなのか。それとも私しかもう居ないのか……この子は私を失うことを恐れている。

 

 

「…………私も強くならないといけないわね」

 

 

 私はそれに対して笑みを溢しながら母として安心させる。

 ………でも本当は違う。本当は私も同じ。

 

 私だってジオティクスやリアスやサーゼクスやミリキャス等の家族を壊された今、この子だけしか居ない。

 この子だけしかヴェネラナとしてさらけ出すことができない。

 

 きっと間違っているのかもしれないけど、歪んでいるのかもしれないけど私は……。

 

 

「ほら動かないで! こんな所まで傷を作って……私の為に……」

 

「それしかもう生きる意味がわからないんだよ。

散々アンタを拒絶しといて今更過ぎるけど、俺にはもうアンタしか……」

 

「心配しなくても大丈夫です。彼らに屈するくらいなら私も死を選びます。

だから心配しないで……」

 

 

 この子に依存してしまっている。

 同じように、この子がもし別世界のあの別世界のリアスやソーナちゃんと仲良くなってしまったらと思うと―――我ながら最低だと言う自覚はしてるけど、それがとても嫌だと思っている。

 

 

「これでは暫く帰れないわね。

ちゃんと見ていてあげるから暫く眠りなさい一誠……膝を貸してあげる」

 

「良いよそんなの―――」

 

「無理はいけません! ほら、だまって寝る!」

 

「わっぷ!? お、おいババァ! これ膝枕じゃなくて単なる―――」

 

「どちらも同じでしょう? それにババァには何も思わないのでしょう? こんなババァの胸になんて?」

 

「何言ってんだアンタ……で、でも眠くなって…………」

 

 

 私だってこの子しか居ないのだから……。

 

 

「守るって、そんな啖呵を目の前で切らないでよ……。

だから私は……」

 

 

 

 抵抗するギルバを昔からのやり方である『胸で抱く』方法で落ち着かせた私は、そのまま眠ってしまった大切な子の背中を撫で続けながら――自分がこの子に思ってはイケない事を想い始めている事にため息を洩らすのだった。




補足
すっげー簡単に言うと、互いの傷を互いで舐めあってる的な感じ。

だから互いに依存度が凄まじく、反抗期終わりもあるせいか、ヴェネラナさんにちょっとでも手を伸ばすだけで指を食いちぎられます。


その2
相手が自己顕示の強い間抜けだったお陰で今回は勝てましたけど、素面だったらまず今の再起不能の執事では負けます。



………まあ、BBAことヴェネラナ様はそんな簡単に拉致られる訳でもありませんがね。


その3
今の執事はスキルを失って成長不可能。
ただし、経験と身体能力はそれなりに残ってる。
消滅の魔力をある程度扱える。

……ぐらいですかね。

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