ゲスト出演は。
ただし、ひとつここで決めた設定が出ます。
最初に抱いた印象は、まるでゴミ捨て場みたいに腐りきってるといった所か。
まるでボウフラの様に涌き出るゴミ共。
鬱陶しいだけのゴミ。
なんの価値もなんの魅力も感じないクサレ共。
いっそ一気にぶち壊してしまおうかと思うくらいに腐敗した世界だけど、ひとつだけ壊すのを躊躇わせる理由があった。
それはある意味夢というかなんというか……。
確認できるだけであの人がなんと三人も存在しているのだ。
それも正であり、負であり、失っていたり……。
私の愛する可能性のあの人が……。
その者に対する想い方を他人が思うかと質問をすれば、誰しもがきっとこう答えるだろう。
『お前、頭おかしいんじゃないのか?』
……と。
腕をひきちぎられても、顔の判別すら出来なくなる程に殴られても、脚を砕かれようとも、目を抉られようとも、心臓を握り潰されようとも、内臓を引きずり出されても、てもてもてもてもてもてもっ!
あらゆる憎悪に対しても常に笑って、心底嬉しそうに幸福だと言い張る少女の精神状態はまさに異常だ。
それを世間ではマゾと呼ぶのだが、彼女の場合は少し違う。
それは誰に対してでは無く、その者ただ一人にその精神状態が浮き上がるという事。
それ以外の存在は等しくゴミであり、等しく餌でしかない。
「クッソ不味いなァ? 今時の養殖魚ですらこんな味は出さないってのに」
だから何も知らないで近付けば、食い殺されるのだ。
食べる事で際限無く進化し続ける真の化け猫に……。
「えーっと? はぐれ悪魔の姉を助ける……だっけ? ふふふ、貴方の頭の中は面白いね? ――――お前みたいなカスに助けられて恩を感じる事なんて欠片もねーよバーカ」
人を愛し、人以外を憎悪する赤き龍帝をそれでも愛する白い猫の餌として。
「ふぅ、これで20人目か……。
まったく、この世界は本当に狂ってる」
「あわわわ……こ、殺しちゃったの小猫ちゃん?」
「? 当たり前でしょう? いきなり出てきてキモい台詞をベラベラほざき散らされもすればシャクシャクもしたくなるって」
「ぼ、僕の知ってる小猫ちゃんはこんなバイオレンスじゃなかったのに……」
「世界も違えば人格も多少違う。
ふふ、先輩に何度もぶたれたお陰で私は今があるんだよ」
「…………」
とある都市のとある薄暗い路地裏。
じめじめとした嫌な空気を放つこの場所に居るにはあまりにも可憐――に、少なくとも見た目だけなら見える白髪の少女が金髪赤目で耳が少しだけ尖っている少女に手に付着した誰かの血を拭い落としながら、思い出をぶちまけてドン引かれていた。
「逆にギャー君こそ、私が知ってたギャー君とは違うね? ……………先輩にバラバラにされて死んじゃったし」
「うっ……! その話は聞いたよ。
凄い複雑だけど……」
一々言動がバイオレンスな友人に対して複雑な顔をするギャー君と呼ばれた少女(?)は、小猫と呼ぶ少女の記憶にある自分の末路にちょっと震えながら着ている白い学生服の右腕部分に付けられた『風紀』と書かれた腕章を掴む。
「でも何度聞いてもあのギャー君が『風紀委員会』に入ってただなんて驚き。
しかもあの先輩が風紀委員長だって事も――世界は違うけどさ」
「逆に僕は悪魔の人達がイッセー先輩のスキルを利用したせいで憎悪されて絶滅させてしまっただなんて信じられないよ……。
先輩は人じゃない僕にも優しかったのに……」
「世界が違えば生き方も違うって事だね。
ふふ、もっとも私はあの苛烈な先輩が大好きだからなんの問題もないし、他の種が絶滅しようが知らないけどね」
頬を染めながら下腹部辺りを撫でる別世界の小猫にギャスパーは微妙な顔をする。
聞けば聞くほど彼女の生きた世界のイッセーは狂暴で、自分の生きた世界の風紀委員長をしていたイッセーのイメージからかけ離れすぎている。
だって彼はハーフ堕天使である姫島朱乃を守る為に強くなり続け、自分の様な爪弾き者も優しく受け入れてくれたのだ……。
というか、人以外の種族でも基本的に胸が大きい美人には鼻の下を伸ばしていたし。
と、自身の世界のイッセーの事を思い出し、ふと小猫を見ると小猫の視線がジーっと自分の胸元に向けられている。
「な、何?」
「……………………」
じーっと見られると恥ずかしくなるギャスパーが胸を庇おうとした瞬間、小猫の手が無遠慮にギャスパーの………『膨らんでいる』乳房を鷲掴みにした。
「……………………へぇ、良いね、ギャー君が女の子だった事に驚いたは良いけど、今の私より大きいなんてさァ?」
「いだだだだだ!?!? も、もげちゃうよ小猫ちゃん!?」
「もげちまえよ、ギャー君の癖になんで私よりあるんだゴラ?」
「し、知らないよぉぉぉっ!!?」
どうやら女状態になるギャスパーの方が小猫より大きいのにムカついたのか、ちぎらん勢いで鷲掴みにしてくる小猫にギャスパーは泣き叫んだ。
どうやら自ら身体の成長を止めたは良いが、それなりに胸の小ささだけは気にしていたらしい。
散々胸に嫉妬されたギャスパーは涙目になりながら、前を歩く小猫の後を歩く。
この世界に何故か飛ばされて以降、世界そのものがあの兵藤凛―――いや、凛とは比べてはならないレベルのヤバイ思考をした外部の者だらけと知った時は悪夢なら早く覚めてくれと泣いた日々だったが、この異常に強すぎる小猫と出会えたのは幸運だった。
ちょっと思考回路がヤバイが、この強さはかなり頼もしいし、普段は普通なのでギャスパーとしても最期まで凛に付いていった事で決別した小猫との友情をやり直せるのは素直に嬉しい。
なんというか、異常な思考回路はしてるけどある意味正直なのだ彼女は。
それは小猫自身も、思うところがあるのだろう、ギャスパーには時折胸の大きさで嫉妬してもごうとする時はあるが、基本的には優しかった。
「ぶぇっ!?」
「「!」」
そんな事を互いに秘めながら、この世界から抜け出す為に一次的な隠れ家にしている廃墟の前まで到着した小猫――というか白音とギャスパーは、その廃墟の窓ガラスをぶち破りながら足元に吹っ飛んできた人影にビックリする。
そして遅れて廃墟から殺意剥き出しな形相で出てきた人物にも続けてびっくりする。
「ま、待てって兄弟! ほんの冗談だっての! そんなに怒る事ないだろが!」
「やって良いことと悪いことがあるだろうがァ……!」
窓ガラスの破片が背中に何枚も刺ささってるのに気付いてないのか、茶髪の少年が片頬を漫画みたいに腫らせながら両手の指の関節をパキパキ鳴らし、瞳孔がこれでもかと殺意で開きまくりな――殴られた少年と瓜二つな容姿の少年に慌てて謝り倒している。
「………なにをしてるんですか?」
「! と、塔城さん! 俺の癖に全然ジョークが通じない俺を止めてくれ!」
「どけ白音ェ……!」
「……はぁ、今度は何をして怒らせたんでしょうか?」
小猫の存在に気付いた殴られた方の――白い制服を着て、右腕に『風紀』と書かれた腕章を身に付けた少年が止めてくれと小猫に懇願するも、事情を知らない小猫はまず何をしでかしたのかを聞いてみる。
「い、いやいっつもボーッとしてるからよ、俺と同じだから絶対好きだろうと思ってエロ本を差し入れしてみたんだよ……」
「え、えっちな本って……」
「エロ本? ……それだけで怒るとは思いませんが」
「折角だからと思って、悪魔っ娘モノを差し入れたんだけど……」
「あ、はい。殴られますよそれは」
どうやら人外嫌いな彼に対して、人外コスプレモノのエロ本を差し入れたらキレられたらしい。
小猫は世界が違えばこうも違うのかと、マジギレ寸前の赤いオーラを全身から放出し始めてる『先輩』こと一誠と、ギャスパーにとっての『先輩』である一誠を交互に見比べながらため息を吐く。
「とにかく落ち着かせてくれよ? あ、アイツ俺の癖に強すぎていつも喧嘩負けるし……」
「自業自得ですね。
私は知りませ――」
「良かれと思って、猫娘コスプレモノも差し入れたんだけど……」
「――――どうどう先輩。
こっちの先輩も決して悪気があった訳ではないですし、今は同盟関係なんですから……」
勝手にボコボコにされてろ。
と、助け船を出す気にはなれなかった白音だが、殴られた方の一誠が口にした言葉を耳にした瞬間、ギラギラしていた目をしている一誠に飛び付いて止めに入った。
彼女も中々現金な猫娘なのだ。
「チッ……!」
結果一誠は止まり、荒い足取りで廃墟の中へと戻る。
「お、おおっ、助かったぜ塔城さん。
まさか違うとはいえ、キミに助けられる日が来るとは……」
「貸しひとつです。
今後は助けませんからね?」
「わかってるぜ。
しかし、ああも性格が違うとはね。
もっとユーモアを知らないと疲れんぜ?」
「イッセー先輩はユーモア過ぎるんです。
だから朱乃先輩に振られるんです」
「ぬ、ぬぐっ! そ、それを言うなよギャスパー……」
ピシャリと言うギャスパーに肩を貸して貰いながら立ち上がったイッセーは、過去の苦い思い出を掘り返されて結構傷ついた顔をする。
………どうやら彼等の世界では何かがあって姫島朱乃と完全に決別してしまったようだ。
「振られたね……」
「いやまぁ、俺みたいなのよりもっと普通の男と普通に生きた方が幸せだと思ってたし、あくまで俺にとっちゃあの人は朱乃ねーちゃんだからよ……」
「僕が止めなかったら風紀財団じゃなくてテロリストになってましたよね?」
「………いやまぁ、世界征服くらいはしてたかも」
「めっちゃ引き摺ってるじゃないですか……」
あはははと笑って誤魔化す風紀委員イッセーに白音はちょっと複雑な心境だったのと同時に、そっちの世界の朱乃はちょっと失敗したなと思う。
決して言葉にはしないが……。
「とにかくご飯にしましょう。
さっきまたウザいのをシャクシャクして、不味かったので美味しいご飯が食べたいんです」
「げ、またかよ……。
この世界のねーちゃんとバラキエルのおっさんは、朱璃さんを助けた男と微妙に幸せそうだし……。はぁ……」
「げ、元気出してくださいよイッセー先輩! 僕がついてますから……!」
「おう、ギャスパーだけだよ、俺に優しいのは……」
「……………」
微妙に立ち位置が自分と似ている。
だから白音は風紀をあんまり守らない風紀委員長のイッセーと彼の傍に居続けるギャスパーに少し優しいのだ。
一誠(D×Sトゥルーエンド)
赤龍帝(ベリハード一誠の存在により今は無し)
無神臓(極限)
もっとも狂暴と化した兵藤一誠。
塔城小猫(D×S白音)
幻実逃否(マイナス一誠と比べると弱い)
D×S一誠という概念を丸ごと愛し続ける白猫たん。
イッセー(風紀委員長イッセー・トゥルーエンド)
無神臓(ベリハード&D×S一誠の約半分程度)
行動選択を間違えて中途半端になってしまった一誠。
ただし、ある意味一番オリジナルに近い。
ギャスパー・ヴラディ(風紀委員長イッセー・♀)
時空を支配する邪眼王(極)――またの名を
姫島朱乃達と自ら決別したイッセーにそれでも付いて行き、後に立ち上げた世界自警団・風紀のNo.2
彼には暗闇から出る『勇気』をくれたというのもあって仄かな想いを抱いている。
………本人はエロ本のボインに夢中だが。
「お、怒るなって? ほら、お肉あげるから」
「次やったらマジで殺すかんな」
「わ、わかってるぜ」
「仲直りできたという訳で頂きましょう」
「いただきまーす」
別名・爆弾グループ。
あらゆる所で中途半端だったと、別世界の己を見て改めて自覚した風紀委員一誠こと、ややこしいのでこの世界では適当に誠という名前を名乗ることにした彼は、 とにかく馬鹿みたいに強すぎる別世界の自分と白音と行動しておけば、少なくともギャスパーに危害を加えられる事は無いだろうと思っていた。
「あーぁ、殴られるしで最悪だったぜ今日は」
「先輩が悪いと思います」
「そうかぁ? 俺自身なんだからエロ本にだって興味津々でしょうよ?」
「先輩であっても先輩自身じゃないのはもうとっくにわかってる筈ですよ? あの程度で済んだだけマシだと思わないと……」
「へーへー、まったく、怖がりだった癖に妙に説教臭くなっちまって」
夕食後、適当に部屋分けして決めた小部屋に入った誠とギャスパーは、狂暴すぎる一誠こと零についてを軽く話し合いながら着替える。
「しかし良いベッドだよなこれ?
塔城さんが『落ちてたから拾ってきた』って言ってたけど、捨てた奴はよほどの金持ちなんだろうぜ?」
「…………」
廃墟にまるで似つかわしくない家具に囲まれ、ベッドに至ってはどう考えても落ちてた訳じゃないだろう高級そうなベッドを、拾ってきたという言葉を信じてる誠にギャスパーはちょっと笑ってしまう。
「? なんだよギャスパー?」
「ふふっ、いや、先輩はホント先輩だなぁって……」
「はぁ?」
不器用でバカ。そして自分みたいな者にも分け隔てない。
そんな彼こそがギャスパーにとってのイッセーであり、彼が自ら孤独の道へと進むその後ろを付いていこうと思った人。
まだ他人に対して人見知りするギャスパーだけど、彼の前では普通になれる。
「む……隣の部屋からユーモアの無い俺と塔城さんの如何わしい声が聞こえる……!」
「や、やめてくださいよ! 壁に耳なんて当ててみっともありませんって!」
「ええぃ! これは風紀を乱していないかの確認なだけだ! 決して羨ましくなんてないかんな!」
「駄々漏れじゃないですかー!」
隣から聞こえる男女の声色を聞いてしまってちょっとドキドキしてしまいながらも、誠を止めるギャスパーはある日を境に男だった性別が女に固定された。
それは彼女自身の笑えやしない壮絶な過去を『克服』した証であり、その克服までの間を最期まで助けてくれた盗み聞きというみっともない真似をしてる彼との絆の証。
「第一虚しくなるだけですよぉ!」
「ぐ! そ、それを言われると確かに虚しくなる。
………はぁ、寝るか」
だからわざと嫌われ、決別する事で孤独になったイッセーに付いていった。
それがベストな選択なんだと寂しそうに笑う彼を支える為に……。
「はい、先輩も一緒に寝ましょう?」
「はぁ……ホント人生って儘ならないぜ。
お前だけが優しくしてくれるだけマシなんだろーけど」
「感謝してくださいよね本当にっ!」
「へーへー………ぐー」
「ね、寝付き早っ!? ……まったくもう」
色々な冒険をした。
色々な経験を教えてくれた。
どんくさくて足手まといな自分に嫌な顔しないで、何時だって手を差し伸べてくれた。
「くかーくかー」
「はぁ、先輩にとって僕は何時までも子供なんですね……」
一から再スタートし、世界を巡り、時には食べるものに困ったりもしたけど、一度も辛いとは思わなかった。
味気ないパンを二人で分け合った時の味は忘れないし、風紀という組織を作り上げた時の喜びは昨日の事のように覚えている。
何時だって彼の傍に居た。何時だって彼は自分に優しくしてくれた。
大切な幼馴染みから永遠に誤解されたまま生きる道を選んでも決してその辛さに八つ当たりはしなかった。
だからギャスパーは誠が大好きだ。
「うぅ……た、確かに隣のお部屋から声が聞こえて変な気持ちになる……」
「くーくー」
「なのに先輩は呑気に寝ちゃって……」
太陽が苦手な自分を陽の光の下に連れ出してくれた。
そんな彼がギャスパーは好きなのだ。
「ちょっとくらいなら良いよね……?」
だから……だから、さっさと呑気に寝ている彼に身を寄せ、その体温を感じながらギャスパーは安心して眠る。
隣から聞こえてくる声のせいでちょっとムラムラしちゃうけど、何時か泥酔した勢いとかでも構わないから彼に迫られたら良いな……と、割りと大胆な事を思いながら。
補足
ネオ白音たんと彼が出たらさ……まあ終わる訳じゃん?
でもほら、所詮適当話やし、出しちゃえ的な?
ちなみに、最初辺りにリーアたんとソーたん達の会話に出てきた猫姉妹とは関係ない猫さんです。
その2
トゥルーエンド後の風紀委員一誠は、ギャーきゅんと一緒にその後生きてました。
んで、二人で団体を作り上げて幸せに暮らしていたら飛ばされましたとさ。
その3
風紀委員が恐らくは一番オリジナルに近いかも。
とはいえ、男の娘と思われて何もされてないギャー君の秘密をもし知られたら出撃はしますがね。