色々なIF集   作:超人類DX

408 / 1033
ですです。

まさかの……的な


第6弾・謎の三人

 心優しいけど少しスケベな帝王が居た。

 

 帝王は愛される可能性を秘めていた。

 

 けれどある悪魔によって豹変した。

 

 その日以降、帝王は優しさを捨てて修羅となり、悪魔達を皆殺しにした。

 

 そして誕生したのは人以外の全てに憎悪せし、血に染まりし修羅の帝王…………。

 

 

 

 

 心に傷を負った白い猫が居た。

 

 白い猫は愛情を求めて悪魔の下に付いた。

 

 ところがある日悪魔が捕らえた帝王との出会いが優しき白い猫の心を豹変させた。

 

 一度は仲間の悪魔達共々、修羅と化した帝王に破壊された白い猫もまた狂気の想いを孕み、そして到達する。

 

 帝王を愛し続ける狂気の領域へ……。

 

 

 

 

 そもそもの話、白音や零にしてみれば転生者なる存在は知らなかったし、別に二人して元の世界で何をされた訳でも無かった。

 なので別に恨みなどは無い。

 

 無いのだが、この二人はあまりにも元の世界で修羅と成り果てているので、既に精神構造がおかしな領域に到達してしまっている。

 

 つまり二人にとって転生者は『邪魔をしてきそうな気に食わない奴等』という認識になってしまっているのだ。

 特に白音にしてみれば、意味の解らない言いがかりめいた理由で一誠――今は零という名前を使用している彼を排除してこようとする転生者は総じてゴミかカスと認識して居る。

 

 

「他の世界のもって意味ですけど、先輩って何でこんな連中に恨まれているんですかね?」

 

「さぁな」

 

「しかも殆どの理由が言い掛かりみたいな理由ばっかりですし。

えーっと、性犯罪者みたいな真似してる癖に主人公補正で何も罰が無い――でしたっけ? 身に覚えあります?」

 

「テメーが一番知っているだろ……」

 

「そうですよね。

先輩って寧ろ性犯罪者じゃなくて被害者みたいなものでしたし」

 

 

 何かの肉片と血糊が地面にべったりと付着してる殺人現場みたいな場所で暢気に話をする返り血まみれの白音を、不機嫌そうな顔で睨む零。

 この現場で何が起こっていたのかはあまり考えない方が良さそうだが、白音はクスクスと自身に付着した血を魔法みたいに一瞬で消しながら零を見つめている。

 

 

「でも私も悔しいんですよ? だって先輩のハジメテは私じゃなかったですし」

 

「……………」

 

 

 性犯罪者の癖に小猫と云々~ 等と宣いながら金色のオーラを纏って金髪に変わった男が襲い掛かってきたのを、ちょうどいい気分で零と遊んでいたのを邪魔されたと激怒した白音がその男を丹念に痛め付け、手足をもいで、目玉を抉り、叫び声が煩いからと喉も潰し、最期は頭を踏み潰して殺害した。

 

 小柄で大人しそうな美少女とは思えぬ残虐な殺害は、白音に言わせれば一言――『先輩との時間を横から邪魔したからのだから殺されて当然』――らしい。

 

 

「今お前が踏み潰して殺した何処の誰とも知らない奴はお前を助けるとか宣ってたが? ふん、そのまま助けて貰えば良かったんじゃねーの?」

 

「冗談でしょう? ご大層に周りの物を壊しながら仰々しいオーラを撒き散らしてただけのゴミに何を助けて貰うんですか? 助けたら惚れられる的な思考回路しかないバカになにを?」

 

「………」

 

 

 良心という概念は白音にない。

 あくまでも彼女にとっては正義なのは、零と共に居続けられるという事のみ。

 その邪魔を例え蚊程度の存在だとしても全力で潰す。

 

 虫けらの様に、最期は命乞いまでしていた男に聞く耳すら持たずに『死んじゃえ、バーカ』と嗤いながら呆気無く殺した白音は、邪魔者は居なくなったとばかりに常に不機嫌そうな零のぴったりと密着しながら、地面にこびりついた血糊を消し、歩き出す。

 

 

「さっきのカスのお陰で話が中断しちゃいましたけど、知ってます先輩? なんでもあの学園にはギャー君の所の先輩みたいな先輩が二人と、リアス元部長とソーナ・シトリーさんの他に……私が居るんですって?」

 

「それが?」

 

 

 飼い主にしか懐きませんよオーラ全開で零に甘えながら白音はかつて在籍したこともあった学園内の事情を語る。

 

 

「その私以外にも私にとっては姉であった黒歌ともう一人、見知らぬ男性が居るとか」

 

「………」

 

 

 じゃあさぞもう一人のお前は、お前と違って素直でかわいらしい、クソむかつく猫なんだろうよ。

 そう毒づきながら話だけは聞いている零。

 

 

「顔立ちは先輩とは違いましたので、別世界の先輩では無いみたいです。

別にだから何だという話なんですけど、もう一人の私と姉と共に居るっていうのが気になるので……」

 

「……」

 

「どっちだと思います? 私としては変ないちゃもんやら、先輩との時間さえ邪魔されなければ何でも良いんですけどね。

向こうには別の先輩と元部長と元生徒会長も居ますから」

 

「ふん」

 

「だって私はもう先輩の所有物ですからね……♪」

 

「捨てようとしても勝手に戻ってくる呪いアイテムの間違いだろ」

 

「ええそうですよ? どこに逃げても私は必ず先輩の傍に戻りますから………」

 

 

 などと、見た目の容姿にまるでそぐわぬ、妙に艶かしい表情や声を放ちながら零の傍を離れない白音。

 彼女にとって善は零との邪魔をしない存在。

 悪とは邪魔をする全てなのだ。

 

 

 

 

 

 外様は外様らしく細々と生きていた方が、迷惑にもならないし身の丈に合ってる。

 だから己の許容を越える欲は求めてはならない……。

 

 幼き頃からそう教えられてきた青年は、苦労に苦労を重ね。挙げ句不運な死を若くして迎えてしまった。

 

 だが青年は生き返る事になった。

 全く異なる、お伽噺の世界の住人として――しかもその主人公の兄として……。

 

 

 無論青年は恐れた。

 自分の存在が弟――つまり主人公になりえる彼の邪魔になってしまうのではないのかと。

 だから両親が事故死した際、青年は己をどこまでも責め続け、そして告白したのだ。

 

 自分は兄などではない外様。

 こことはまるで違う世界で生きて死に、そのまま消え去る筈だったのに兄として転生した。

 

 そしてその事が原因で両親は死んでしまったのかもしれない……と。

 

 

 だが弟は……幼い頃からずっと優しくしてくれた兄を知っていたので責める事もしなければ、兄が理由で両親が死んだ等とは欠片も思わなかった。

 学校の合間に働き続け、自分を食わせてくれる兄。

 

 その事に一切の愚痴も言わない兄。

 

 どんなに辛くても、決して諦めない事を言葉では無く行動で示してくれた兄。

 

 そして兄が何時でも懐かしくも寂しげに語る『祖母』の言葉……。

 

 その全てが弟の人格を決定付けたと同時に、折れぬ心を確立させた。

 

 転生者である兄を慕い、協力しあい、生きる。

 それが弟……一誠の精神であり生きる強さへと繋がった。

 

 色々な者達との出会いと成長が兄弟の名を広め、何時しか黄金の狼を纏う兄と赤き龍帝の弟という強さへと変わる。

 

 

 そしてこれからも二人は仲の良い兄弟として生きる――そのつもりだったのだ。

 

 

  …………………悪夢の様な世界へと飛ばされるその日までは。

 

 

 

 

 

 

 兵藤誠牙は自身にどんな力が備わろうとも決して傲る事無く、またその力を利用して金持ちになろうとも考えずにコツコツと地道に働いて弟の一誠や、さまざまな事情で家を持たぬ者達を食べさせてきた。

 

 それは彼の祖母による教えの賜物だった。

 しかしそれでも、この世界はあまりにも恐ろしかった。

 

 

 

「誠牙……また変な男に声を掛けられたわ」

 

「私もです。

多分誠牙先輩の言う人達だと思います」

 

「……そう、か。

ごめん……」

 

 

 兵藤一誠の双子の兄として必死に生きた誠牙は起きたと同時に変わり果てていた世界にゾッとしたのと同時に自身の容姿が転生前に戻っている事に気付いた。

 すっと通った鼻筋にシャープな顎、薄い唇。精悍な顔立ちの美丈夫……。

 

 かつての姿に戻っている事に誠牙は驚いたし、共にこの悪夢めいた世界に飛ばされてしまった小猫やその姉の黒歌も一誠と瓜二つであった容姿の誠牙の容姿に驚いた。

 

 もっとも、喋り方やら放たれる優しげな雰囲気ですぐに慣れたし、黒歌に至ってはそんな誠牙に対して変わらぬ愛情を示してたのだけど。

 

 とにかく元の姿に戻った誠牙達がまず始めたのは、一誠の捜索だった。

 いや一誠だけではなく、一誠や誠牙にもっとも近しい存在は探した。

 

 だがこの世界の者達は既に殺されたか、それとも違う人格であるか……そして複数の一誠が存在し、誠牙にとっての一誠は存在していなかった。

 代わりに居るのは自分と同じ様な存在――それも一誠やリアスといった者に何故か大きな悪意を向ける者達。

 そして小猫や黒歌に対して欲―――言い方を変えれば大量の陰我の目を向ける者達だった。

 

 

「大丈夫だったか?」

 

「うん、触れて来ようとしたけどなんとか逃げてきたにゃん」

 

「あの人達、皆眼が怖いんです……」

 

「……もしかしたらだけど、転生させるは良いけど人格に問題がある者を全員この世界に押し込む事で完成してしまった世界なのかもしれないな」

 

「そんな……じゃああの一誠先輩達は?」

 

「ずっと見てきたけど、もしかしたら俺たちとは更に別の時空から来た一誠達なのかも……。神が手に負えなくなった転生者達を始末させる為に無理矢理連れてきた……」

 

「そんな……いくらなんでも勝手すぎる……!」

 

 

 誠牙の考察に黒歌が怒りを露にする。

 確かにその神とやらのお陰で自分は誠牙と出会えた。けれどそれとこれとは話が別だ。

 黒歌は他の時空から連れ込まれた一誠達事も含めて、尻拭いを押し付けてきた神に怒りが込み上げてくる。

 

 

「大丈夫、二人の事は死んでも俺が元の世界に帰す。

例え俺だけが取り残されても……」

 

「そんなの嫌よ! 誠牙だって私達の世界の存在じゃない!」

 

「そうですよ。

仮にもし先輩が私達だけを返したら向こうで一誠先輩に怒られます。

だから帰るときは一緒です」

 

「……今の俺を見て一誠が驚くと思うけどね」

 

 

 帰る事。

 それが三人の望む願い。

 その為には協力者が必要……故に三人は危険を覚悟で駒王学園へと入り込み、リアスとソーナ――そして違う世界の二人の一誠を見ていたのだ。

 

 

「そういえば誠牙の金の鎧みたいな、色は違うけど似た鎧を纏う三人組が居るって噂を聞いたけど……」

 

「それが転生者なのか、それとも抗う者なのか……て事だよね姉さま?」

 

「うん、もし抗う者なら協力してくれないかなって思って」

 

「……探してみる価値はありそうだ」

 

 

 帰る為に。

 細々と生きていた黄金騎士は黒い猫に愛されながら頑張るのだ。

 

 

 兵藤誠牙(転生前の容姿)

 

 黄金騎士・牙狼

 

 凄まじく奥ゆかしい転生者。

 

 

「ふふん、良い情報だったでしょ誠牙? もっと褒めてくれても良いにゃ?」

 

「えーっと、ありがとう……?」

 

「むー! そこはおっぱいを揉みながら『じゃあ俺の子供を産んでくれ』って押し倒してよ!」

 

「え゛? ……ご、ごめん、俺にそんな度胸なんて無いよ……」

 

「もー! ほんとにヘタレなんだから!」

 

「姉様がグイグイ行き過ぎなんですよ。

……私も一誠先輩に対しては人の事は言えないけど」

 

 

 

 




補足

シリーズでも数少ないまともな転生者の彼が出陣。

一誠の双子の兄としての容姿が転生前に戻っています。

ちなみにモデルは『優しい目をした冴島鋼牙』

つまり元からイケメン


その2
力もまんま黄金騎士。

ただし気質は鋼牙さんっつーよりは息子さん気質


その3
女性関係はヘタレっつーか、自分はやめた方が良いと卑下タイプです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。