色々なIF集   作:超人類DX

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ラキスケを持つ曹操

ナチュラルに母性本能を刺激させるヴァーリ。

そして彼は……アホだった。


ほのぼの孫呉日和

 食い意地の汚さが災いした結果、史実からとても逸脱した過去の世界へと飛ばされた三バカ。

 無論元の時代へと戻る事を第一の目標とし、それまでは戻るための手掛かり探しの為に孫呉と呼ばれる集団の下でセコセコ働いている。

 

 とはいえ、元々は孫呉の領土内で些細な理由で三バカが喧嘩をしてしまい、今で言う逮捕をされて、釈放の代わりに働くといった流れがあるので、忠誠心があるのかと言われると微妙に無いと言わざるを得ない。

 

 特に一誠は、その集団のトップクラスに位置する孫権という少女とあんまりにも反りが合わなさ過ぎて、本来なら処刑されてもおかしくない程の不敬めいた言動や行動をしていた。

 

 

「蓮華ちゃまー! あっそびましょー!」

 

「毎度その現れ方はなんとかならないのか!」

 

「俺だって来たくて来てる訳じゃねーんでね。

普通にしてたらうっかり罵倒しちまいそうだからこうやって少しお茶目っぽくしてるんだぜ」

 

 

 なんやかんや三バカがこの時代に飛ばされてから結構な時間が過ぎている。

 あらゆる手を尽くして元の時代に戻ろうとその間奮闘したけど、結局戻れずに居て、当初顔を合わせる度にメンチの切り合いをしていた一誠と蓮華もまあまあそれなりに互いのノリを理解できる程度の関係性になっていた。

 

 

「ジンガが蓮華ちゃまのねーちゃんとサボりに行ったし、ヴァーリは周瑜さんを探しに留守だし、じゃあ他の人達でもナンパしようにも、誰も彼もアンタの所に行けと取り合ってくれんし……。

何なの俺? 何時からアンタのボディガード的な位置になってんの?」

 

「ボディーガードとは護衛の事を言っているのか? だとしたら知るか。私だって事後報告で聞かされたんだぞ」

 

「ちきしょー、俺だって黄蓋さん辺りをデロンデロンに酔わせてお世話とかしてぇ……」

 

「………。お前は本当にそればかりだな。

二人の言ってる通りだ」

 

 

 何となく庭に出て陽を浴びながら、二人でお茶を飲みながら一誠とどうでも良い内容の語り合いが出来てきている蓮華。

 指摘されれば真っ向否定するのは変わらないが、恐らくは四六時中このちゃらんぽらんの相手をさせられてきた影響が彼女の中にも少なからず芽生えているのかもしれない。

 

 

「毎度毎度――あー……誰だっけ? あの結構良い格好してる人……甘寧さんだっけ? あの子に毎度殺されそうになるのも勘弁して欲しいんだよなぁ。

俺は嫌々仕事でやってるに過ぎねぇって言ってるんだけど聞く耳持たぬだもの」

 

「お前は斬っても死なんだろ」

 

「バカおめぇ、斬られたり殴られたりしたら痛いもんは痛いんだっつーの。

てかこんな調子で大丈夫なの? 近々大規模な賊討伐が始まるって聞いたけど」

 

 

 お饅頭的な甘露をムシャムシャ食べながら話す一誠に、蓮華は特に心配した様子は無い。

 ここに流れ着く前に、賊を逆にカツアゲしまくってたと蓮華は聞いてたので、どうせそんな流れになるだろうと思っているのだ。

 

 

「ごっそさん。

んじゃあ戻るわ」

 

「そうか戻るのか。

良かったよ、暫くお前の顔を見なくて済みそうだよ」

 

「そらこっちの台詞だ堅物女め。

へへん、精々眉間に皺寄せすぎてオバハンになってから後悔しやがれ」

 

「うるさいっ! 私はまだ若いから良いんだよ! 毎度そうやって額を小突くな!」

 

「なっはっはっはー!」

 

 

 ただ、去り際になるといつも無遠慮に額を小突いてくるのは個人的にムカつくのでやめて貰いたいが、ケタケタ笑いながら去っていくのを見ている内は多分やめそうにないだろう。

 本当に雪蓮みたいな――いや下手したらそれ以上にいい加減な男だ。

 

 

「あ、またアイツを真名で呼び忘れた……」

 

 

 蓮華はそんな彼の対応に慣れ始めてる事を自覚しないまま深いため息を吐きながら少し残っていたお茶を飲み干すのだった。

 自分の忠臣が居なくなってる事に気付かず……。

 

 

「…………。はぁ……堕天使ねーちゃんとイケナイ事してーなぁ」

 

 

 蓮華の様子を何時も通り見て、適当に煽って妙な卑屈っぽさを忘れさせるという真似をし終えた一誠は、元の時代の事を思い浮かべながら、ノロノロと適当に歩いていた。

 右を見ても、左を見てもド田舎としか思えぬ光景は現代っ子の一誠にしてみればとても退屈としか言いようが無く、やってる事といえば堅物真面目の女の子のボディガード的な仕事。

 

 どうせなら妙齢の人妻オーラぶっぱなしてる女性の護衛でもしたかった……と、ブツブツ言いながら歩いていると、背後から耳通りの良い鈴の音色が聞こえる。

 

 

「ん?」

 

 

 わりと近い所から聞こえた気がした一誠は足を止めて振り向こうとしたその瞬間だった。

 鋭い殺気が一気に押し寄せてきたと同時に空を切り裂くような鋭い一撃が真一閃で一誠の首に襲いかかったのだ。

 

 

「あぶね」

 

「……!」

 

 

 が、その一閃は偶々一誠がそこら辺に生えてた桃の木枝によって防がれた。

 そしてそれと同時に襲撃者の姿を捉える。

 

 

「……あ、うん。だと思ったよ」

 

「チッ!」

 

 

 桃の枝ひとつに得物が阻まれたと舌打ちする目付きの鋭い深い藍色の髪をした褐色肌の少女に一誠はちょっとだけうんざりしたような顔をしながら後方に飛び退いた少女を見る。

 

 

「今俺を殺そうとした理由は何時もの通りで納得するとしてもさ……俺だって正直嫌なんだぜ? てか何時見てもホント良い格好してるね?」

 

 

 とか言いながら甘寧と呼ばれる少女の主に下半身辺りをじーっと見る一誠。

 彼女は蓮華の忠臣にして、一誠をかなり嫌ってる者の一人だった。

 何故なら蓮華に対して彼は本当に失礼で気安いのだ。

 殺害を試みた回数は数知れず。

 

 だが成功した試しはご覧の通り一度も無い。

 何故なら彼は腹が立つぐらいに――強いから。

 

 

「何だかなぁ、あの子に惹かれる子達ってみーんな似てるよなどっか」

 

「黙れ、殺すぞ」

 

「お、おいおい……何時にも増して怖いな」

 

 

 殺意剥き出しな目付きに一誠は参ったなと頬を掻きながら逃げてしまおうかと考える。

 無口な分、まだ甘寧に対してはめんどくささを感じないが、それでも蓮華に似てる部分を感じるので相手にはしたくはないのだ。

 

 

「どうして蓮華ちゃまのねーちゃんは俺を寄越したんだろうねぇ。

人選ミスとしか思え――あぶねっ!?」

 

「貴様が軽々しく蓮華様の名を口にするなっ!!」

 

 

 蓮華ちゃまと言った瞬間、目を見開きながら激怒した甘寧が得物を振り回しながら襲い掛かってきた。

 忠臣としてはある意味正解な行動だが、何時もの彼女の冷静さが失われてる点では減点だった。

 

 

「じゃあキミからも言ってくれよ、俺だって元の時代に帰る間に余計なゴタゴタとかは避けたいしさ」

 

「とっくに言ったけど却下されてしまった!! だからお前を殺すしかない!!」

 

 

 桃の枝ひとつで完全に防がれてる化け物じみた技術に当初は戦慄を覚えたが、あまりにも目の前の男がちゃらんぽらん過ぎて逆に怒りしか感じなかった甘寧はやがて駄々っ子の様に、なにがなんでも一撃見舞ってやるという意地っぱりが浮き彫りになりはじめる。

 

 

「この……化け物がァ!!!」

 

 

 ちゃらんぽらんな癖に、ふざけている癖に、あらゆる面を嘗めている癖に、蓮華をバカにしている癖に。

 そんな男を斬り殺せない己の無力さが憎い。

 一度たりとも傷を負わせた事すら出来ないのが悔しい……。

 

 故に甘寧は一誠に対して化け物と揶揄し、渾身の一撃を今一度首筋に放った。

 

 だがどうせこれもあんな枝ひとつで防がれてしまうだろう……。そんな弱気な事も考えながら……。

 けれど。

 

 

「なっ……!?」

 

 

 その一撃は見事に一誠の首を捉えてしまった。

 いや、本来なら軽く捌かれてしまうことは甘寧だって予測していた。

 彼女が驚いたのは、その一撃を一誠が防がずに首を差し出す様に傾けて受けた事だった。

 

 

「いってて……ほらやっぱり痛いものは痛いっつーのに、人をマシンミュータントみたいに例えられちゃ堪らんぜ」

 

「…………ぅ」

 

 

 それでも渾身の一撃が首の筋肉で止められてる辺りは化け物といっても過言では無いのだが暫し甘寧は呆然としながらドクドクと赤い血を流しながら痛がる一誠を見ていた。

 

 

「確かにキミの言うとおり化け物なのかもしれないけどね。………化け物でなければ生き残れなかったし」

 

「な、何故今の一撃を避けなかった? 貴様なら簡単に――」

 

「だってしょうがねーじゃん、こうでもして止めないとキミは止まらないだろ?」

 

 

 『うわぁ、マジで痛い』と呟きながら服を血で染め上げる一誠に甘寧はちょっとだけなんとも言えない気分になった。

 それは結局この男にとって自分の怒りは幼子の駄々としか思われていなかったのだと。

 そこら辺を飛び交う蝿を追い払うのも面倒なだけだったのだと……。

 

 その瞬間、何かが甘寧の中でへし折れそうになり、持っていた得物を持つ手に力が抜けそうになった。

 

 

「でもその負けん気は嫌いじゃないぜ俺」

 

「………は?」

 

 

 思わず伏せていた顔を上げてしまう甘寧。

 既に首から流れていた血は止まり、傷口も徐々に塞がり始めているのが見えた気がした。

 

 

「そんなに俺が気に入らないなら、俺が不必要だとあの分からず屋のトップ達に教えてしまえば良いんだよ」

 

「……分からず屋って」

 

 

 本当にズケズケと恐れもせず言うなコイツ……。

 と、内心思いながらもいつの間にか話を聞いてしまっていると、一誠は言った。

 

 

「キミさ、筋は良いから進化してみない?」

 

 

 運命を変える言葉を。

 

 

「進……化……?」

 

 

 進化とはどういう意味なのかがイマイチわからない甘寧は自分でもわかるくらい困惑した顔をしていると、完全に傷口が塞がった一誠が服に流れた血が気持ち悪いと上を脱ぎながら口を開く。

 

 

「多分だけど、孫策さんは神牙に一度のされてから俺やヴァーリも同等の強さを持ってるって察して、キミの他にも俺を護衛役として蓮華ちゃま――じゃなくて孫権さんに寄越したんだろうぜ。

ならよ、キミが俺のやる気の無い護衛なんて不必要だって領域に進化すれば、聞いてくれるんじゃないかって話」

 

「私が……」

 

 

 露になった上半身はとても鍛えられていて、そしてありとあらゆる傷で覆われていた。

 その傷跡はちゃらんぽらんだけど、修羅に生きた証なのかと甘寧に思わせた。

 

 

「だから俺がキミの領域を更に引っ張り上げる。

そうなれば俺はお役ごめんでキミも俺にイラつく毎日を送る事も無くなる。

くくく、なぁ……これってお互いにとって良い話じゃあないか?」

 

「今よりもっと強く……」

 

 

 この男達みたいな、あの理不尽な領域に自分が……。

 甘寧とて武芸に身を置く者。彼等の示す未知の領域に興味が無いと言われたら嘘になる。

 だからとても……今初めて甘寧はこのちゃらんぽらん男の言葉がとても魅力的に思えた。

 

 

「孫権を守れる刃に」

 

「孫権の一の子分に」

 

「孫権の信頼を一番持つ者に」

 

「孫権をなにがあっても守れる強さに」

 

「孫権だけではなくこの孫呉全土を守れる存在に」

 

「孫権が仏頂面じゃなくて笑顔にさせる忠臣に」

 

 

 

 

 

―――キミはなりたくないか?―――

 

 

 笑みを浮かべながら手を差しのべる殺意すら沸く程嫌いな男の言葉とその手を……。

 

 

「私にそれ以外の選択肢が無いのを見越して言っているだろう? 貴様は本当に最低な男だな」

 

「心配しなくても良い、割りと昔から自覚してるんだぜ俺は?」

 

「………もし叶わなかったら殺すからな」

 

 

 この男から吸収し、奪い返す為に甘寧はその手を初めて取った。

 

 

(て、天才過ぎるぞ俺! 成功したら俺はこのうだつの上がらん毎日ともおさらば出来る! ギャハハハ! 天才過ぎて自分が怖いぜ!!)

 

 

 本人は今の状況から抜け出して単に自由になりたい為の方便なのだが……。

 それは恐らく甘寧もある程度気付いているだろう。

 が、それで良い、重要なのは蓮華の護衛役を外させる事なのだから。

 

 故に一誠は本音と建前を入り交えながら甘寧の今立つ領域を更に引き上げるのだ。

 

 

「契約成立だな。

ふっふっふっ、俺は美少女相手でもこういう事は手は抜かないからな」

 

「当たり前だドスケベめ」

 

「結構! じゃあ早速だけど甘寧さんには――」

 

 

 ヴァーリと神牙があまり動けない今、自分が真っ先に動ける位置に戻って元の時代に戻る為の手を探さなければならない。

 等と考えながら早速甘寧にこの世界の常識からかけ離れた常識を教えてみようと思った時だった。

 

 

「一誠ェェェッ!!」

 

 

 向こうの方から一誠の名を怒声混じりで叫びながら全力疾走してくる者がひとり。

 

 

「れ、蓮華様?」

 

「あれ、何か怒ってね?」

 

 

 凄まじい速度で走ってくる者は蓮華であり、何やら激怒している……。

 いったいどうしたのだろうと、珍しく息ぴったりに甘寧と二人で首を傾げていると……。

 

 

「思春に何をしている! このドスケベがぁぁっ!!!」

 

「は? 何を言っ―――ひでぶっ!?」

 

 

 蓮華は走り幅跳びの世界記録もいけそうな跳躍をすると、そういえば上半身裸のままだった一誠の顔面目掛けて後にドロップキックと呼ばれる見事な両足蹴りをポカンとしていたその顔面にぶちかました。

 

 

 

 

 

 見事過ぎるドロップキックを顔面に貰った一誠は気絶こそしなかったものの、数メートルはぶっ飛んだ挙げ句顔面を殴打したせいで鼻血が止まらない。

 

 

「言ったろ。傷の治りは早いけど痛いものは痛いんだって」

 

「だ、だって仕方ないだろうが! 私にはお前が思春を襲った様に見えたんだぞ!」

 

 

 屋敷に出戻りさせられてしまった一誠は、甘寧に事情を聞いて誤解であることを知った蓮華に、慌てて鼻の骨を折って血が止まらない介抱をされていた。

 

 

「大丈夫ですか一誠様?」

 

「おう、もう治りかけてるから平気だぜ周泰ちゃま。

にしても、女にマジのドロップキックされたのは生まれて初めてだぜ……」

 

 

 微妙に素直に謝れないでアタフタしている蓮華の、一誠を挟んで反対側に座って傷の手当てをしているのは、蓮華と年が近い少女周泰だった。

 

 

「蓮華様のアレはどろっぷきっくと言うのですか……初めて聞きました」

 

「割りと良い体勢だったのに腹立つぜ……あーくそ、ここに来て災難ばっかりだぜ」

 

 

 どう謝罪の言葉を切り出して良いのか分からなくてオロオロしている蓮華をほっといて、微妙に懐かれてる周泰に代わりの服を貰った一誠は、赤を基調とした服に袖を通す。

 

 

「もう甘寧さんから聞いたと思うけど、俺は彼女にちょっとだけ闘い方を教えよう的な話をしてただけ」

 

「あ、うん……えーっと、この度はなんというか――」

 

「無理して謝らなくても良いよ別に。

俺を嫌いなのは知ってんだから」

 

「………ご、ごめんなさい」

 

 

 ポキポキと自己治癒でなおった身体を慣らす様に首の関節を鳴らしながら立ち上がる一誠に蓮華も流石にしゅんとなってしまう。

 

 流石に冤罪で殴り飛ばしてしまった事に罪悪感を感じないほど蓮華も大人ではなかったのだ。

 

 

「あァ、服サンキューな。

洗って返すわ」

 

「あ、それなら返さなくても大丈夫ですよ一誠様。

元々一誠様の為に蓮華様がご用意していたものですので」

 

「え?」

 

「明命! そういう事は言うなっ! い、いやほら……着替えくらいはあっても良いだろうと思っただけで……」

 

「……あ、そう。

じゃあ一応貰うわ」

 

 

 甘寧が間近で見てる手前、変な事は言えない一誠は取り敢えずお礼を言うも、本人はまだ気にしてる様子。

 

 

「はぁ……」

 

 

 ちょっと調子が狂うので、何時もの蓮華に戻って貰おうと一誠は行動する。

 

 

「ねぇ蓮華ちゃま」

 

「な、なん――あいたっ!?」

 

「!」

 

 

 ピシッと軽く凸ピンを蓮華にした一誠。

 その瞬間甘寧が条件反射的に一誠に斬りかかり掛けたが、意図があると理解だけはしたのかギリギリ堪えていた。

 

 

「な、何を……」

 

「さっきの仕返し。

これでおあいこって事で、何時までもしょげるなよ」

 

「なっ! べ、別に私は――」

 

「あーはいはい。生真面目はだから嫌なんだ、ホント面白味の欠片もねーなアンタは?」

 

「んなっ! ひ、人がせっかくちょっとは悪いなと思ってたのに何だその言い種は!?」

 

 

 うがーっ! と何時もの蓮華に戻るのを確認した一誠は、今度は軽く指で何時もの通り額を小突く。

 

 

「俺の事なんて気にかけるな。

キミがそう思う価値なんか無いんだからよ?」

 

「そ、そんな事は……」

 

「………」

 

 

 そのやり取りを見ていた甘寧は少し処じゃない悔しさを覚えた。

 なんというか微妙に蓮華の扱いが上手いのだ。

 気にしてしょげる蓮華をわざと煽って調子を取り戻させたりするのが抜群に。

 

 

「結構蓮華様を気にかけてますよね一誠様は?」

 

「んぁ? まあ、これが仕事だからなぁ今の俺の」

 

「むー……ちょっと違う気がするのですが」

 

「何がだよ? 俺は出来ることなら人妻の色気ムンムンの女性の護衛がしてぇっつーの」

 

「ま、またそんな事をしかも明命にするな!」

 

「理解できない歳じゃねーだろ? ったく、潔癖性だと行き遅れて寂しい人生になんぜ?」

 

「うるさいっ! あちこちの女に鼻の下を伸ばしながら声を掛けて回るお前にだけは言われたくないわ!」

 

「ははは、そりゃそうだわな」

 

「うっ……! だ、だから突然素直にならないでくれよ……」

 

 

 まるで10年来の友の様にあっさりと蓮華の感情を引き出せてる一誠が甘寧はとても羨ましいのだ。

 

 

「あぁ、そういや聞いた? ジンガの奴やらかしたらしいぜ? 孫策さんに」

 

「む? なにをだ?」

 

「何でも訓練に付き合わせた時に、足を引っかけて二人してひっくり返ったら股ぐらに顔を突っ込んでしまったとか……」

 

「……。それはなんというか……」

 

「よく無事ですね神牙様は……」

 

「まあ、俺が羨ましい過ぎる念を爆発させてぶっとばしたから問題ないだろ」

 

「お前は本当に……」

 

 

終わり。

 

 

 とまあ、なんやかんや生真面目達相手にのらりくらりとやって来た一誠は、遂にキーマンとなるだろう青年と出くわせた。

 

 

「俺は北郷一刀、訳あって義勇軍を率いてるんだけど……」

 

「ほら来たヴァーリ、ジンガ!! 絶対彼は俺達と同じ感じの人だぜ!」

 

 

 迫る黄巾の乱などそっちのけで北郷一刀という青年にどうやってこの世界に来たのかを問い詰める一誠は、謎の鏡の事を知る。

 

 

「よーし! 一歩前進だ!」

 

「鏡を探せば良いんだな?」

 

「この時代にあればの話だけどな」

 

 

 やっとひとつ手がかりを手に入れられてすっかり気分が良くなった三バカ。

 しかるに雪蓮や冥琳辺りは若干ながら微妙な気分だったらしい。

 

 

「あぁ、そういえば冥琳はストレスで胃を患ってたらしくてな。

取り敢えず俺の血を飲ませてなんとかしといたぞ」

 

「は!? ちょっと待てヴァーリ! お、お前なんで周瑜さんの事真名で呼んでるの!? てかなに血って!? そんな事したら逆にヤバイだろ!?」

 

「仕方ないだろ、隠れて血まで吐いてたのを見てたら忍びなかったんだよ」

 

 

 などということもあったから。

 

 

「お前はお前で孫策さんと楽しそうだしよぉ……!」

 

「いや、完全に俺は振り回されてるだけなんだけどな」

 

「お前等この前だって二人してどっか行ってたろ……そういうのやめろよな」

 

 

 懸念していた事が不安になる一誠。

 だが……。

 

 

「さぁ! このおっぱいドラゴンが来たからにはもう安心だ! フハハハ!! 喰らえィ! ビッグバン・ドラゴン波!!」

 

「凄いのだ! あの赤いお兄ちゃんの手からドーンってなってるのだ!!」

 

 

 本人は本人で別勢力のちびっ子のツボを押さえてしまっており…。

 

 

「あ、あのさ一誠だったか? あれから鈴々達が会いたいって……」

 

「へ? なんで?」

 

 

 元々子供とまんま同じ目線で語らえるという事もあって、変態ながら子供には好かれやすい一誠はちびっ子達の中ではちょっとしたヒーローになってた。

 もっとも、年頃の女性達にはドン引きされるのは他勢力でも変わらないが……。

 

 

「おい一誠、遊んでないで早く戻れ」

 

「え? あ、おう……なんだよ二人して引っ張るなし」

 

「うるさい! 早く来い!!」

 

「幼女にまで手を出す外道め」

 

「はぁ!? 違うんだけど!? 俺は純粋に子供のヒーローをだな――」

 

「女の乳房の事を子供相手に連呼させる時点で有罪だ馬鹿!」

 

 

 そんなやり取りを隠れてヴァーリと神牙がロリコンだと嗤い……。

 

 

「あーあ、孫策さんがあのステレオみたいにアホそうな金髪さんの首はねちまったよ。

ちぇ、ちょっと好みだったのに――いでででで!? 無言で二人してふくらはぎを蹴るなよっ!?」

 

「「………」」

 

 

 微妙に腹立つ生真面目コンビに振り回され始める彼は結局一誠なのかもしれない。

 

 

「そこのお姉さん、こんな賊退治より、俺とお股の賊退治でもしませんか―――」

 

「……それ、今私に言ったのか?」

 

「どっちに言ったのか今すぐ答えたら許してやらんこともない」

 

「……………すいません、後ろ姿しか見えずに間違えましたので今のノーカン――」

 

「思春、右を頼む」

 

「はっ」

 

「ぎぇぇぇっ!? ちょ、ちょっと進化したと思ったら思いの外強くなりすぎたお前等! う、腕が折れるぅぅ!!!」

 

「だから早く答えろ。

どっちに言ったんだ? ん?」

 

「素直に答えたら楽になれるぞ?」

 

「だから人違いだって言ったろーが!! 誰が人の腕へし折ろうとするゴリラ女共なんぞに声を掛けるかよ!」

 

「あら酷い人。そうさせたのはアナタなのに……」

 

「全くですね、だから早く答えろ」

 

「じゃ、じゃあ呂蒙さ――いだい!?」

 

 

 三バカトリオから凸凹トリオに……

 

 

 終わり




補足

忠臣ちゃんパワーアップさせたら俺クビになれんじゃね? という思想を持つが、そんな上手く行くとは思えないよね。


その2
果たして彼はこの外史にておっぱいドラゴンとして名を上げるのだろうか……。


その3
そして子供にだけは無償に好かれてしまうのか……

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