色々なIF集   作:超人類DX

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基本的に余計な事に首は突っ込まないスタンス


精々頑張って欲しいけど……

 只の悪魔とは違う。

 只のハーフ堕天使とは違う。

 只の元人間の転生悪魔とは違う。

 

 

 相対した者達が思った印象は不思議な程にカラッとした――悪く言えば周囲の出来事に関心がまるでない。

 

 

 寝床と食うものに困らないからという理由で、あのグレモリー家次期当主候補だった悪魔があっさりとテロ組織に属する。

 

 寧ろ所属すれば、恨みを持つだろう組織の者達から命すらも狙われて安らぎなんて無いかもしれないというのに……。

 

 しかしリアス・グレモリーは並の悪魔では無かったのだ。

 純血としての力もさることながら、彼女には何よりも不可思議ななにかを持っていたのだ。

 

 

「流石に強度ばかりは真似できなかったみたいだわ」

 

 

 種族問わず、あらゆる技能を吸収して再現する異能。

 グレモリー家としての力ではなく、彼女だけが持つオリジナル。

 

 あらゆる障害をはね除け、『自由』に、『真に信じた者と』先へ続く道を歩む事を夢見た事で発現した彼女だけの力。

 

 

「物干し竿じゃあね……」

 

「お、俺の神器と同じ力だと……?」

 

 

 正心翔銘(オールコンプリート)――一誠と朱乃との繋がりの強さと想いによって覚醒させたリアスの異常性。

 

 

 

 

 

 ディオドラ・アスタロトを利用した暗殺計画を見事に失敗してしまった旧魔王派の立場は、組織内においてその影響力を著しく減少させるに十二分だった。

 英雄の子孫を自称する英雄派には基本的に悪魔だからという理由もあってますます嘗められる訳で……。

 

 

「人が気持ちよくスーパーで買った花火で遊んでたってのによー? 邪魔するってのは無粋じゃねーのか? 折角線香花火の着火時間の更新が狙えたっつーのにさぁ?」

 

『…………』

 

 

 だが、嘗めて掛かった後ろに気分屋の三人組が居て、偶々気分を運悪く害したのがいけなかった。

 英雄派と呼ばれた派閥の主要メンバーはリーダーの曹操を名乗る青年をも含めた全員が、線香花火の火種を消されてカチンときた一誠と、後ろから一分程『観た』後に、英雄派の持つ力を『完全再現』したリアスと、わざわざ黒焦げにしてから戻してまた黒焦げにする朱乃によってボロカスにさせられてしまったのだ。

 

 

「どうよリアスちゃん?」

 

「神器の再現は結構難しいのよ。

観て覚えただけでは今のところこの程度が限界ね」

 

「なるほど、あの男の人の持っていた槍の神器を物干し竿で再現したのですね? 感じる力自体は似てますわ」

 

「二日くらい本気になれば、完全再現くらいまではこぎつけられると思うけど……元々神器の扱いは下手だから私には似合わないわ」

 

 

 パチパチと花火遊びをしながら、目の前でボロカスになって倒れてる面々等既に眼中にすら無いとばかりに、のんきな会話を展開させている気分屋三人組。

 最近この気分屋達が旧魔王派に対して肩入れしている可能性が高いという事を知った曹操達がそれを理由に襲撃したのだが、結果は線香花火の邪魔をされたという理由で執拗にぶん殴られて返り討ち。

 

 

「ご、ふ……」

 

「おーい、そこのデカブツ君。

君だけはそれなりのダメージで勘弁してやったんだ。

だからそこかしこに転がってる奴等の片付けをしろよなー?」

 

 

 相手にする気は無い。

 また相手にもならない。

 英雄派としての在り方を真っ向から否定されてしまったとしか思えぬ程の決定的な挫折を味あわされた。

 

 相手にされたのも、花火の邪魔をしたから。

 肩についたゴミを払いはするけど、わざわざ踏み潰す事はしない。

 

 すごすごと退散していく英雄派達にも目もくれず、ネズミ花火にはしゃぐ三人は今日も前向きだった。

 

 

 

 

 

 花火の邪魔をされたからぶちのした。

 

 英雄派という派閥の事は知っていて、またうっとうしい存在だとも認識していたシャルバとクルゼレイは、相も変わらず気分屋過ぎる三人に呆れ半分と若干の慣れ半分で対応していた。

 

 

「人間連中がお前達に半殺しにされたのはわかったが、それよりも聞いたか? 白龍皇の所にいた猫妖怪の話を」

 

「私の元戦車の肉親の事なら聞いてますわ。

組織を抜けたことも」

 

「誰が抜けようが我々にとってもどうでも良いが、問題はその猫妖怪がお前達三人の事を話してしまっている」

 

「まあ、でしょうね」

 

「元々馬は合いませんでしたもの、彼女とは。

そりゃあバラされもしますわ」

 

「冥界に送り込んでいるスパイが突き止めたのだが、兵藤イッセー、貴様の弟がはぐれ悪魔だったその猫妖怪のはぐれの認定をサーゼクス達に直談判して取り下げさせたらしい」

 

「へー、やっぱそうなったんだ」

 

 

 変に乗せてくるのが上手い三人組に対して、微妙に協力的になってきている旧魔王血族二人の話に、わざわざ調達してきた機械で作ったかき氷を食べながら三人は聞いている。

 

 

「異様な程に貴様の弟とやらは冥界での発言力が高い。

が、同時に奴がその猫妖怪のはぐれ認定を取り消させる為にお前達の現在についてを暴露したお陰で、居場所が特定された様だ」

 

「しかもご丁寧に揃ってはぐれ認定でな」

 

「実際はぐれ者として見なされても仕方ないと思いますし、なにもおかしな点はないと思いますが」

 

「お尋ね者かぁ……。

これから大変そうだぜ」

 

「でも小猫ちゃんも漸くお姉さんと和解できる道筋が見えた様で、良かったですわ」

 

 

 はぐれ認定になりましたと聞かされても、やはり他人事の様な反応に、シャルバとクルゼレイはついでに作って貰ったかき氷を食しながら微妙な顔をする。

 

 

「なにも思わないのか? 向こうが貴様等を見捨てた分際で犯罪者扱いまでしてくることに」

 

「実際よくない組織に属していますからね。

しかも冥界に一度は攻撃をしかけましたし」

 

「そんな組織に身を置いていたその猫妖怪はアッサリと許されていあるのだぞ? おかしいとは思わないのか?」

 

「まぁ、大体彩也辺りが根回しでもしたんでしょう。

アイツは、自分が気に入った相手には優しくできる奴ですからねー」

 

 

 ヘラヘラする三人。

 兵藤彩也に、SSクラスのはぐれ悪魔の認定を取り下げさせるという、それほどまでの発言力がることにも不可解だけど、はぐれ認定をされてもヘラヘラできている――二人にしてみればガキでしかない年齢である三人の、おかしな方向に振りきれてるメンタルも理解しがたい所がある。

 

 

「本当に戻りたいとは思わないのだな……」

 

「戻る? 何故ですか? 私はグレモリーから勘当されたのですよ? 『勘当が嫌なら結婚しろ』とどうとも思えない男と結婚させられ掛けたのが嫌で、自分から飛び出したのです。

戻った所でデメリットしかありませんわ」

 

 

 今の自由が楽しくてしょうがないと本心からそう語るリアスに、シャルバとクルゼレイはそう思っているのなら都合が良いと思う反面やはり思う。

 

 これ程までの才を持ち、更には同等の才を持った眷属を二人も抱えているリアスを何故奴等は蔑ろにしたのかと。

 隠していたから聞けば理由にはなるが、それにしたってバカだとしか思えない。

 

 三人揃って癖は強いけど、その若さで自分達を一度は下せた力は確かに本物なのだから。

 

 

「ご心配なさらずとも、私達は逃げ足だけは自信があります。

捕まって情報が洩れる様なヘマはしません」

 

「「………」」

 

「朱乃ねーちゃん、メロンシロップくれ」

 

「ん、どうぞ」

 

 

 ずっと密かに三人で鍛えていた。

 その言葉を聞いた時から、シャルバとクルゼレイも密かに思っている事があった。

 本気で鍛え直してみようかと……。

 

 これ以上の敗北の人生を覆す為に……。

 

 

「あぁ、それとあまりこの組織をあてにすべきじゃあないと思いますよ。なんでしたっけ? オーフィスの蛇でしたか? お二人も埋め込んでるみたいですけど」

 

「………。どういう意味だ?」

 

「以前組織に入ったばかりの頃に、私達三人もオーフィスから蛇を埋め込まれそうになった時に見たのですが、あの蛇は確かに力を急激に上昇させるみたいですけど、自分自身の力の成長を阻害させるのですよ」

 

「薬物ドーピングみたいなもんっすよ。

つまり頼りすぎてその蛇に喰わせて廃人コース」

 

「確かに嫌なものは感じたが……」

 

 

 気紛れながらも自分達よりも自由に前を歩くガキ共みたいに、己の足で先へと進む為に。

 

 

「その蛇をお二人の中から直して『戻して』差し上げましょうか?」

 

「ていうか、魔王様ならオーフィスなんぞのものに頼らんでもまだまだ進化できると思えますけどねー」

 

「兄が超越者と呼ばれてるくらいですし、きっとお二方も、まだご自身が気づいていない力を持っているかもしれませんわ」

 

「「………」」

 

 

 強い力を持ってこの世に生まれたが故にしなかった『鍛える』という行為を、隅に追いやられた魔王の血族者は始めるのだ。

 

 

 

 

 こうしてシャルバとクルゼレイは朱乃のスキルによってオーフィスの蛇を取り除かれると、初めて本気で鍛え直した。

 

 とある宇宙の帝王が強すぎる力をもって生まれ、生まれた時から宇宙最強だったが故に鍛える事をせず、故に伝説の戦士に覚醒した男に完全敗北をした様に、シャルバとクルゼレイは本気で鍛える事をしなかった。

 

 故に敗け、故にリベンジも果たせずじまいだった。

 

 だが宇宙の帝王が復活し、本気で初めて己を鍛えた事で神の気を持たずして神の領域に踏み込んだのと同じ様に、シャルバとクルゼレイはそこまでの才能は無いにせよ、現四大魔王達とは謙遜の無い力を秘めているには間違いなく、気分屋三人組の修行風景を参考にしたりしながら徐々に己の力を進化させていく。

 

 それこそ、英雄派面子を片手間に追い払えたり、リゼヴィムの一応の孫にあたる白龍皇のヴァーリが驚愕すらする程の成長を。

 

 

「まさか私にまだこれ程の力が眠っていたとは……」

 

「しかもまだまだ強くなれる感覚もある……」

 

 

 恋人のカテレアが殺されてから。

 兵藤彩也に殺されかけてから約数ヵ月。

 その雪辱を晴らさんが為に、ドーピングの力も捨てて鍛え直した結果、シャルバとクルゼレイの力は確かな上昇を果たしていた。

 

 その感に世間では色々な騒動があったりしたけど一切介入せずに鍛えまくっていた。

 

 

「驚いたな、君たちがあの二人を強くしたのか?」

 

「いいえ? 急にやる気になって鍛え出したのよ?」

 

「まあ、漫画で読んだネタを冗談半分で教えてみたりはしたけど」

 

「ネタとは?」

 

「手を合わせてから正拳突きをするみたいな」

 

「そうしたらお二人ともがそれを真に受けてやりはじめまして……」

 

 

 あまりの成長速度に目を張ると同時にちょっとワクワクしているヴァーリ。

 本人はとにかく強いものと戦える事が大好きなので、これによりシャルバとクルゼレイもヴァーリにとってのターゲットに入る事になったらしい。

 

 

「それはそうと、聞いたか?」

 

「「「?」」」

 

 

 しかしそんな喜ぶべき出来事ばかりでは無いのもまた事実であり、ヴァーリと一緒にやって来ていた美猴が微妙な顔をしながら口を開いた。

 

 

「組織自体は完全にその目的から外れてるが、トップのオーフィスが最近になって不安定なんだぜ」

 

「不安定?」

 

 

 手を合わせて祈りを込めてからの正拳突きをしているシャルバとクルゼレイの音を置き去りにしたひと突きを横に、美猴の言葉に対してリアスと朱乃とイッセーははてと首を傾げる。

 

 

「お前達はそれほどオーフィスと対面した事は無いからあまり知らない様だけど、最近オーフィスは一人でフラフラとどこかに行くことが多くなったんだ。

それまではヴァーリが成り行きでよくオーフィスと話をする事があったんだけど、それも最近少なくなってな」

 

「へぇ、話なんか成立するんだ。あの電波を常に受信してそうなドラゴンさんと」

 

「意外と話せるぞ。

本来の目的の為に設立した組織が暴走してると落ち込んだりな」

 

「へぇ? 意外な一面ですわね」

 

「で、そんな意外な印象があったドラゴンさんがなんだっての?」

 

「あぁ、最近様子がおかしいと思ってヴァーリと俺とで一人どこかにいくオーフィスの後を追ってみたんだけどよ……どこに行ってたと思う?」

 

 

 別に仲が良いわけではないが、接触の機会が多いせいか、シャルバとクルゼレイに続いて話をする事の多いヴァーリと美猴の複雑そうな顔をしながらの問い掛けに対して、リアスと朱乃とイッセーは一瞬でピンときた。

 

 

「まさか、俺の元実家とか言わんよな?」

 

「「………………」」

 

 

 ピンとは来たものの、流石に嘘だろと思って言ってみたが、二人の顔を見てそれが本当なんだとすぐに理解した。

 

 

「アイツ逆にスゲーな。

どこで知り合ったのは知らないけど、オーフィスとまで仲良く出来んのかよ」

 

「オーフィスにそれとなく聞いてみたら所、自分の求める静寂に近いものを奴から感じるらしい」

 

「マイナスイオンのオーラでも出してるのかしらね? 私にはイマイチわからないけど」

 

「嫌われてますからね私達は……」

 

 

 

 ここまで来ると逆に感心すらしてしまうと、イッセー達は彩也という存在の謎さ加減に対して呟いていた。

 

 

「ふぅ、一息吐こうかクルゼレイ―――む、貴様はヴァーリ・ルシファー。何の用だ?」

 

「また兵藤イッセーに挑みにでも来たのか? 懲りぬ奴め」

 

「違う。最近オーフィスが一人で兵藤彩也の所に行くようになったという話をしに来ただけだ。

貴方達もこの聞いてないだろう?」

 

「なんだと? 何故奴の所にオーフィスが?」

 

「気に入ってるみたいなんだとさ」

 

「猫妖怪に続いてオーフィスか……。

この組織ももう長くないのかもしれんな……」

 

 

 鍛えたお陰か、シュッとした筋肉を搭載している二人が水を飲みながら禍の団という組織の先が短いことを予見する。

 

 

「オーフィスの事だ、ベラベラと組織の内情を話してしまっている事もありえる。

つまりこの場所の事もバレているかもしれない」

 

「嫌に楽観的な言い方をするな……?」

 

「この三人を見てると多少は影響もされるさ」

 

「それに今更騒いだ所で現実は変わらん。しかし兵藤イッセー、お前の弟はなんなのだ? お前達に対して風当たりが強いと思えば、敵に対しては妙に寛大じゃあないか」

 

「さぁ? 俺は昔から嫌われてましたのでわかりませんよ。

寛大になってるのは、あのメロン搭載したボイン猫さんが美少女だからとか――あ、そういや今のオーフィスの姿って女の子だったっけか?」

 

「そんな単純な理由なのか……? だとしたら私はそんな奴に敗けたのか……」

 

「あくまで予測ですよ。

その通りだとしたらリアスちゃんと朱乃ねーちゃんが目の敵にされてる意味がわかりませんし」

 

「あら、その言い方だと私と朱乃は美少女なのかしら?」

 

「嬉しいわ一誠くん」

 

「事実そうだろ? 学校通ってた時も持て囃されてたじゃん。学園二大おねーさまってね。別にお姉さんキャラじゃないけどさ」

 

 

 確かに見た目はどちらも間違いなく美少女なのにも拘わらず、何故か異様に二人が嫌われてる事を考えれば、一誠の説は説明がつかない。

 だが彩也が女性に対してはかなり寛大な態度なのは事実だし、実際これまでも一々そこまでするかと思う様な相手(女)に対して親身になってる面が多々あるし、家が無いと言えば家に住まわせる等もしている。

 

 

 

「黒歌は今現在妹共々兵藤彩也の家に住んでいる様だぞ」

 

「最近自宅をリフォームしたらいぜ?」

 

「マジで? あの親父にそんな甲斐性があったのか……もう5年はまともに顔を合わせちゃいなかったけど」

 

 

 とにかくイマイチ彩也の価値観がわからないが、オーフィスがそんな彩也を気に入り始めてるのは事実。

 それはつまり、遠からず組織が自然消滅する事を意味している。

 

 

「組織が崩壊したら、私達で行動しなければならないわけか……」

 

「この前の失敗で私達についた悪魔の大半が殺された。

決して楽ではないが、やれないこともないだろう」

 

「俺達も組織が崩壊したら暫くは放浪の旅にでも出ようと思っている。修行も予てな」

 

 

 それならば先を見据えて行動しなければならない。

 元々それぞれオーフィスに対して忠誠心がある訳でもなかった為、すんなりと行動方針もきまった。

 

 せめて一泡吹かせてやりたい気持ちもあるけど。

 

 

「どこかに良い物件はないもんか……」

 

「ここなんてどう? 家賃二万円にしてお風呂とトイレもあるわ」

 

「悪くないけど流石に三人で住むには狭すぎだろ。間取りが2Kじゃん……」

 

「寝る時は、三人でくっついて寝れば問題ないわよ」

 

「くっついてって、そんな簡単に二人は言えるけどさぁ。

そんなんされたら俺は毎晩寝不足よ? どこがとは言わないけど腫れが凄いことになって辛いし絶対」

 

「だからその腫れを私達で治めれば良いじゃないのよ。ね、朱乃?」

 

「そうよ。

何時も一誠くんって、変な所で遠慮するんだから。その癖私かリアスが甘やかせてあげると全力で乗っかるくせに」

 

 

 どちらにせよこの三人は住み家が無くなる事の方が残念らしくて、後はいつも通りなのだが。

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 組織もあまり先は長くない。

 そんな予感を感じて各々が生きるための準備をしていた頃。

 

 世間ではオーディンがどうとか、ヴァルキリーがどうとか、修学旅行がどうたらこうたらだとか、サマエルがうんたらかんたらだとかとかとかとかとかと、色んな騒動があったらしいが、彼等にはなんの関係もきっとないだろう。

 

 何故なら、彼等は彼等で衝撃的な展開を前にしていたのだから。

 

 

「……………………」

 

「貴様、サーゼクス……!」

 

「何をしにきた! 自分の子供まで連れて……!」

 

 

 すっかり修行慣れをして、凄まじき成長を遂げたシャルバとクルゼレイは、突如として現れた宿敵の一人たな対してバリバリの警戒心を抱いて殺意を向けた。

 

 が、どこかがおかしい。

 何故か自分の子供を連れてるし、その子供共々ショボくれているのだ。

 なんだ? と顔を見合わせていると……。

 

 

「ごめん、もう僕魔王じゃない。魔王辞めた。というか全部捨てた」

 

「「………………は?」」

 

 

 コイツは何をほざき散らしている? 魔王をやめた? 自分達から奪っておきながら辞めたと?

 

 

「わざわざそれを言いに死にに来たのか貴様は……」

 

「よかろう、一思いに殺してやる」

 

 

 すっかり部下として重宝する様になったリアス達には悪いが、コイツはこの場で殺してやるとシャルバとクルゼレイは腑抜けになってるサーゼクスに魔力を放とうとしたその時だったか。

 

 

「くくく……くくくくく!」

 

 

 突然笑いだしたサーゼクスが顔を上げると……彼は泣きながら笑っていた。

 気でも触れたように。

 

 

「ぐ、グレイフィアが兵藤彩也と寝てるのを見ちゃったんだよ。

リアス達を勝手に追い出したばかりか、今度は僕の妻まで………あは、アハハアハアハ――――――――――――――もう殺せよ!! どうせ僕は行動もなにも遅い奴さ!! だから僕を殺せよォォォッ!! 死ねってことだろ!?」

 

「「…………」」

 

「ヒック……グスッ……」

 

「しかもその時の光景をミリキャスは見ちゃったしさぁ!? 死ぬしかないだろ!? 殺してくれよいっそ!!」

 

 

 嫁が寝取られた。

 それを周りがどういう訳か祝福している。

 彼を許さない方が許されないという風評に対して遂に堪えられなくなってしまったサーゼクスのヤケになった叫びに、シャルバとクルゼレイも圧されてしまう。

 

 

「わかるかっ!? 嫁さんが遥か年下の小僧の【自主規制】に突っ込まれて【自主規制】して悦んでるのを見てしまったショックがさぁ!?」

 

「い、いや…」

 

「お、落ちつけよサーゼクス。らしくないだろ……」

 

「なによりも許せないのは、自分の子供がショックを受けてるのに開き直った事だよ……!」

 

 

 あまりの取り乱しっぷりに、復讐の事は一旦横に置いてサーゼクスを落ちつかせる二人。

 

 

「だから全部捨てて飛び出したって訳。

ここにリアス達が居るのはわかってるよ、オーフィスが彼に手懐けられた事で禍の団が崩壊した後に、キミ達が組織したグループに所属していることもね」

 

 

 ヤサグレてるのか、出されたステーキをフォークでブッ刺して乱暴に食い散らかすサーゼクスにドン引きするのは、紛いなりにも彼の人となりを知ってたからなのかもしれない。

 

 

「いや、ホントに彼は魅力的なんだろーねっ! グレイフィアとセラフォルーと同時に寝たこともあるし!!」

 

「兵藤イッセーの予測が半分当たったのか……」

 

「今の冥界はメチャクチャじゃないのか?」

 

「ふん! もう知らないよあんな所! 崩壊しようが関係ないねっ!!」

 

「………………」

 

 

 余程頭に来てたのだろう、この後二人は散々サーゼクスの愚痴に付き合わされた。

 

 

「リアスお姉ちゃん!」

 

「み、ミリキャス!? どうしてここに……!?」

 

「お、お母さんが……違う男の人と一緒の寝室で苦しそうな声を出してるのを聞いて中を覗いてみたら、は、裸で抱き合ってて……」

 

「……………………………。アイツ、やりやがったぞ遂に」

 

 

 そして、これまでとは別種のやらかしをやった彩也に、三人はまだ子供なミリキャスがショックで泣いてるのを慰める。

 

 

「流石に人妻はダメだろ」

 

「お母さんだけじゃないよ。

前も日本の京都で知り合ったっていう狐の妖怪の母子とも……」

 

「私達という嫌いな存在が居なくなったから、暴走でもしてるのかしら?」

 

「そこまで行くと逆に凄いと思えますわね。

揉めたりはしないのでしょうか?」

 

 

 調子に乗っているのか、それとも一度解き放った欲望が制御不能なのか。

 とにもかくにも彼の行いはそろそろ無視ができなくなるのかもしれない。

 

 

 

 

なんてね。

 

 

 

 




補足

組織がなくなるフラグが立っても物件探しをし始める。

何故なら彼等はこだわりがないから。


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