色々なIF集   作:超人類DX

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守りたい。
けれど自分だけ老いることが無くなるのは嫌だ。


そんな葛藤を抱えたまま彼はずっと一緒である少女に打ち明けた。


選択の時間

 まだ小学生の頃だったか。

 

 よくわからない自尊心的なものが働いていた俺は、藍華と一緒に霊が出て神隠しにあうともっぱらの噂になっていた廃工場にて肝試しをした事がある。

 

 自尊心――というか、何でも良いから藍華にカッコつけたかっただけで巻き込んでしまったと今にして思えば悪いことをしてしまったと思う訳だけど、その時俺達は見たのだ。

 

 この世の生物とは思えない生物を……。

 

 幽霊だと思った俺達は怖くなって全力で逃げ、あれは夢だったんだと言い聞かせて忘れる事にしたけど、今になってアレは本物だったんだとわかった。

 

 だってこの世には悪魔等の人ならざる生物が存在していたのだと教えられたのだから……。

 

 そして今、俺はその人ならざる生物の一種に命を狙われているらしい。

 そればかりか、俺の周りに居る大事な人にも危害が及ぶかもしれない――とも。

 

 回避するには俺の命を守る代償を提示してきた悪魔達の眷属になる事だけど、俺はどうしても首を縦には振れなかった。

 

 何故なら、その悪魔が同胞を増やす為に行う儀式的なもので俺自身が悪魔へとなってしまえば、俺だけが歳を取らずに大事な人達に先立たれるのを見ていなければならないから。

 

 そして悪魔達が俺に言った『特別な力』というもの。

 

 それが()()()の意味を持つ事なのがまだわからない以上、警戒して損はないのだ。

 

 

 もしも、藍華()持つ方の特別な力だとしたら……。

 

 

 

 

 イッセーがオカルト研究部の木場くんに連れていかれたのを見送り、先に帰ってアイツの部屋のベッドでゴロゴロしながら待っていた私は、帰ってくるなり難しい顔をしている事に気付いて疑問に思った。

 

 

「おかえりー、どうだった? 近くで見た美男美女軍団は?」

 

「……………」

 

「……? どうしたのよ?」

 

 

 何時もなら『確かに美男美女だらけで、逆に萎縮しちまったぜ』的な返しが返ってくる筈なのに、終始難しそうな顔をしているイッセーは制服の上着を脱いでそこら辺に放ると、ゴロゴロしていた私をジーッと見ながらその場に座って一言。

 

 

「パンツ見えてんぞ」

 

 

 着替えるのが面倒で制服のままイッセーのベッドの上でダラダラしてた私にイッセーはパンツが見えてると言う。

 行儀も悪いし、制服が皺になるので、本当なら着替えるべきだったのだけど、今日の私はそれを後回しにしてまっていた。

 お陰でイッセーに指摘されちゃった訳だけど……まー、今更パンツのひとつやふたつ見られた所で恥ずかしいとは思わないので、身体を起こしてスカートを直して座り直す。

 

 

「私のパンツ見て動揺してたって顔じゃないわね?」

 

「まーね……」

 

「じゃあどうしたのよ? グレモリー先輩達と何かあったの?」

 

「……まーね」

 

 

 動揺してないのは確かだが、さっきから私の太腿をチラチラ見ながら、グレモリー先輩達と何かがあったりしいイッセーに詳しく話を聞いてみる。

 

 

「まさか告白されたとか?」

 

 

 ありえないとは思うけど、この前の天野夕麻さんみたいに告白でもされたとか……。

 いや、それは無いわね。天文学的低確率でそれが本当だったとしても、根が出不精がイッセーがその告白に頷くとは思えないし。

 

 

「されると思うのかよ?」

 

「いいえ?」

 

「……。ノータイムでハッキリ言いやがって。

その通りだよ、別に告白なんざされてないが、ある意味それ以上に面倒な話をされたんだよ俺は」

 

「面倒な話?」

 

 

 ほらね……と、顔にも言葉にも出さないけど、ほんのちょっとだけホッとしている自分が居ることを自覚しながら話を聞いてみると、どうやらイッセー的には唐突な告白をされる事よりも更に面倒な話をされたらしい。

 

 オカルト研究って吟ってるから、変な電波でも受信して悪魔召喚の生け贄の血でも寄越せとか言われたとかかしら?

 

 

「小学生くらいの時さ、二人で夜こっそり家を抜け出して肝試しをした事を覚えてるか?」

 

 

 様々なイッセーにとって面倒だと思う事を頭の中で予測して考えていると、唐突に昔の話をされる。

 しかも肝試しという――ある意味忘れろと言われても無理な思い出のひとつの事を。

 

 

「よーく覚えているわ。

アンタが妙にカッコつけたがってた時期で、私に『幽霊なんか怖くないって所を見せてやる!』って言って連れ出してくれた時でしょう?」

 

「はは、まぁな。

で、その時の事を覚えているか?」

 

「………………よーく覚えているわよ。

笑えない夢みたいなものを見た事もね」

 

「……………」

 

 

 なんか妙にカッコつけようとしていた時期のイッセーに無理矢理引っ張られて行った廃工場での肝試し。

 『幽霊なんか来ても俺がぶっとばすぜ!』とかなんとか言ってた割には終始私の手を握って離さなかった――のは敢えて言わないけど、私とイッセーはそんな肝試しの時にあるものを見てしまったのだ。

 

 人とは思えない化け物が、何かをバリバリと噛み砕いている光景を。

 

 

「その話と今回の話に何の関係があるのよ?」

 

「…………どうやらアレは夢でもなんでもない現実だったって事だよ」

 

「へぇ? つまりあの時見た化け物がグレモリー先輩だったって訳?」

 

「そうじゃないけど、あの人達はどうにもそれに近い存在だったらしい。悪魔なんだとさ」

 

 

 Yシャツの第二ボタンを外しながらイッセーは、普通なら薬でもヤッてんの? としか思えない荒唐無稽な事を言い出す。

 グレモリー先輩達が悪魔――と言われても普通誰もが『何を言ってるの?』となるのは当たり前だし、私もあんな体験をしなければ信じもしなかった。

 

 でも今のイッセーの顔を見れば私は大体解る。嘘は言ってないのだと。

 

 だから茶化すこともなく私は真面目にイッセーの話を聞いた。

 どんなに信じられないお伽噺みたいな話でも私は全てを信じた。

 

 イッセーが特別な力を持っていたから、人に化けていた堕天使に命を狙われていた事も。

 それが失敗してもまた狙われる可能性が高い事を。

 

 私や両親達まで危ないかもしれないという事を。

 

 イッセーがグレモリー先輩達の正体である悪魔の眷属になれば命は保証されるかもしれない事を。

 

 そして……イッセーが一度はそれを断り、断った理由が私と一緒に年を取って死にたいからと言った事を。

 

 

「…………。よくもまあそんなクサイ台詞が出たものね」

 

「悪い……」

 

 

 誤魔化す為に私は半笑いでイッセーが悪魔の眷属ってのにならない理由を茶化したけど、私はちょっぴりだけ嬉しかった。

 悪魔になれば所謂不老長寿になってしまう訳で、私とイッセーは年の重ね方に差が出てしまう。

 私が老いてもイッセーだけは今と変わらない姿のまま……それを想像すると確かに寂しくて、辛い。

 

 イッセーもそれを感じたのだろう、だから断ったと聞いた時は、自分や両親達の命が危ないかもしれないというのに、嬉しく思ってしまっていた。

 

 

「一応断った理由を話したら、理解でもしたのか、脅威が無くなるまで護衛してくれるらしい」

 

「てことはオカルト研究部の人達はアンタの吐いた恥ずかしい理由を知ってる訳だ。微妙に私が恥ずかしいじゃない」

 

 

 まあ、声には出さないけどね。………顔見てバレてるかもだけど。

 

 

「でだ。

俺が目を付けられた原因が、あの人達曰く、『特別な力』を持っているかららしい」

 

「特別な力? ………これって、やっぱりそういう類のものだった訳?」

 

「いや、そっちの事かはまだわからない。

それとなく藍華の事を出してみたけど、お前の事は単なる一般人だと思っているみたいだからな」

 

 

 イッセーが部屋の主なのに、イッセーが床に座って、私がイッセーのベッドに座っているという変な構図のままオカルト研究部であった事を教えられていく私は、特別な力についての話になっていく。

 

 

「それはつまり藍華と俺が持つ『似てる感覚のする方の力』では無くて、龍のおっさんの方の事を向こうは言ってるんだと思うんだ」

 

 

 それについてはどうやら、私とイッセーが中学生になる直前くらいに『可能』にしてしまった、不可思議な力みたいなものの事では無くて、その少し後に突然イッセーの左腕に現れた真っ赤な鎧の腕みたいなものの事をグレモリー先輩達のいう特別な力らしい。

 

 イッセーはその力を龍のおっさんと呼んでいる訳だけど、実際なんとその力は声が聞こえて、しかも声質がとても渋いおじ様みたいな声なのだ。

 

 

「聞いてただろ龍のオッサン?」

 

『………。聞いてはいたがオッサンはやめろ』

 

 

 試しにイッセーがその力を左腕に纏う形で出現させてみると、龍のおじさんが如何にもオッサンと呼ばれて嫌そうな声を放って返事をしてくれた。

 

 

「何時聞いても良い声ねー……」

 

 

 それが本当に良い声なのよね。

 なんかもう、ラジオでもやってたら一晩中聞いていたいくらいに。

 

 

「えー? 俺はどっちかと云うとおっちゃん……てか藍華のお父ちゃんの方が良い声してると思うけどなぁ」

 

『…………』

 

「えぇ? そうかな……」

 

 

 ただ、イッセーはうちのお父さんの方が良い声だと思ってるみたいだけど……。

 てかイッセーくらいじゃないかしら? 普通ならビビって近づき難い雰囲気纏ってるお父さんに対しておっちゃんだなんて言いながら懐いてるのって。

 

 

『オイ、声の話なんぞどうでも良いだろ。

話が進まないなら引っ込むぞ俺は』

 

「あ、ごめんごめん。

でよ、龍のおっさん的にどうなん? グレモリー先輩の言ってる事ってマジなの?」

 

『嘘は言ってないだろうな。

お前の前にいきなり現れた女は確かに堕天使の類で俺を宿している――――まあ、俺であることまでは見抜けてないにせよ、神器持ちである事を見抜いて始末しようと考えているのはな』

 

「じゃあもうひとつの方は?」

 

『それは関係ないだろう。

何せ俺ですらお前とアイカの持つ不可思議な力については知らないし過去に前例がまるでない』

 

 

 龍のおじさんはそう言う。

 前例が無いか……。

 前にもこの龍のおじさんに言われたけど、それはつまり話した所でグレモリー先輩達でもわからないって事なのかしら。

 

 

『神器の類いでも力だが、お前達のそれは明らかに神器に近いものがある。

しかもアイカ……お前の力に関しては下手をすれば神にすら反逆できる可能性すら秘めている』

 

「…………。えぇ?」

 

「すげーな藍華。世界征服できんじゃね?」

 

「いやしないし。

豚に真珠よ私にしてみれば」

 

『あくまで可能性の話だがな……』

 

 

 そんな壮大な事を言われてもピンとなんて来る訳もないし、そんなつもりだってない。

 そもそも制御できるのにだって散々イッセーと頑張ってやっとそれなりに可能にしたってのに、振りかざして回る気なんて起きもしないわよ。

 

 

『だからお前達が固有で持つ力についてはなるべく触れ回るな。

お前達を見ている限りでは、『無意味な戦い』は避けたいのだろう?』

 

「まーね」

 

「戦いって言われても、喧嘩なんて出来ないわよ私は」

 

 

 無意味な戦いね……。

 この平和な日本で戦いだなんて言われてもよく分からないし何故私にこんなものがあるのかも解らないけど、もしイッセーが言った様に命を狙われているのだとしたら、何が出来るかわからないけど私も前に行かなければならないのかもしれない。

 

 じゃないとイッセーはきっと『無茶』をするから。

 

 

「はぁ、何でこうなったんだろう……」

 

『諦めるんだな。俺の宿主になるという事はそういう事なんだよ』

 

「宿主になるなんて頼んでねーよ。

あーぁ……」

 

 

 周りを巻き込んでしまっていたのに、それでも私の傍に居てくれたイッセーにまだ私は明確な返しをしていないのだから。

 

 

 

 

 

 ひょんな事から命を狙われている立場に押し込まれてしまったイッセーは、悪魔達の勧誘を断るものの、その悪魔達の何かに触れたのか、それでも脅威がなくなるまでの間は護衛することを約束された。

 

 そしてそれは早速明朝に訪れた。

 

 

「イッセー! イッセー!!! 起きなさい!!!!!」

 

「んぐぉっ!? にゃ、にゃんだよ……!?」

 

 

 それは一誠の母である兵藤三希に叩き起こされる事から始まった。

 

 

「アンタ一体何をしたの!?」

 

「な、なにが?」

 

 

 何時も誰かに起こされないと――基本藍華に起こされていた一誠は凄い形相の三希に一気に眠気を吹き飛ばされ、思わずその場に正座をしながら何を朝からこんなに怒っているのかがわからなかった。

 

 

「今ウチにアナタが通ってる学校の人達が訪ねて来たわ」

 

「は、はぁ……」

 

 

 訪ねて来たって誰の事だよ? と思いながらも聞いている一誠。

 普段は滅多に怒らない母だけにちょっと圧されっぱなしなのはご愛敬だ。

 

 

「誰なの? アンタいつの間に藍華ちゃんという子がありながらあんなに女の子と仲良くなって!」

 

「はい?」

 

「酷いじゃないの! まったくもうお祖父ちゃんに似て!!」

 

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待てや! なんの事だか全然わかんねーし、そもそも誰が来たってんだよ!?」

 

 

 この三希は藍華をめちゃんこ溺愛していた。

 それはもう、どうにかして息子とくっつけさせようと藍華の母と画策しまくってる程に。

 故にイッセーの祖父みたいにはさせんと徹底的な教育をしてきたつもりだったので、三希はどうにも藍華を裏切ったと思っているらしい。

 

 無論一誠はまったくそのつもりはないし、そもそも誰が訪ねて来たのかがわからないのでなんとも言えない。

 故に怒られながら下のリビングに行ってみると、そこにはちょっとビクビクしているリアスと姫島朱乃が居た。

 

 

「ふーん、一誠の先輩さんかぁ」

 

「は、はい……息子さんを是非我が部活にと思いまして、まずは仲良くなれたらなと……」

 

「決してやましい事は思ってません絶対に……」

 

 

 父の五郎。

 見た目は冴えない親父に見えるのだが、その実、藍華の父とは若い頃しょっちゅう喧嘩しまくってたらしく、キレると一番ヤバイ狂犬みたいな男であり、言葉使いこそ普通なのだが、どことなく狂犬オーラを醸し出しているので、リアスと朱乃は本能的な意味で五郎に対してビクビクしていた。

 

 

「まあ、良いけどね。

ウチの息子が手でも出してなければ関係ないし。

そうだよな一誠?」

 

 

 五郎がちょうど三希に押される形でリビングに入ってきた息子に話しかける。

 眼鏡をクイッとやりながら『私はしがないおっさんですが?』みたいなオーラを出してるつもりなのだろうが、却って変な威圧感がヤバイ。

 

 

「この人達は部活に勧誘してきた人達で、別にそれ以上でも以下でもないよ」

 

「本当だろうな? もしそれが嘘だったら……」

 

「嘘じゃねーっつーに」

 

 

 この五郎も藍華をめちゃんこ溺愛してる。

 そらもう二人が18になった瞬間、婚姻届を役所に提出する準備すら怠らない程度には。

 変な威圧感を前にすっかり萎縮してしまってる二人にちょっと同情してしまったイッセーは、とにかく何でもないと言い切るのと同時に、ふと木場祐斗と塔城小猫の姿が無いことに気付いた。

 

 

「あれ? 木場君と塔城さんが居ませんけど……」

 

「あ、うん。あの二人は桐生さんの家の方に……」

 

「む、藍華ちゃんの所に?」

 

「それは何故かしら?」

 

「え、ええっと、彼女も我が部に勧誘してみたいなー……みたいな」

 

 

 どうやら残り二人はとなりの藍華の家に行っているらしい。

 それはつまり――

 

 

 

「……………」

 

「あ、あの……」

 

「……………………」

 

「………………。キミは藍華のなんだ?」

 

「お、同い年ってだけで……あの、別になにもしてません……」

 

「塔城さん、トースト食べる?」

 

「あ、はい……いただきます」

 

 

 見た目からして厳つい藍華の父親を相手になければならない訳で……。

 ある意味大変だなと一誠は彼に同情するのだった。

 

 

 こうして変な誤解をされてしまう朝を乗り切った一誠は、出てきた頃には顔が真っ青になってた木場祐斗と、逆に朝御飯をご馳走になってホクホクした顔をしてる塔城小猫を連れた藍華と合流し、そのまま連れていかれる形で学園旧校舎の部室へと招待される事になった。

 

 

「びっくりしたわ。

その……アナタ達のご両親って結構恐いのね」

 

「そうっすかね?」

 

「別に普通だと思いますが……」

 

「いや本当に怖かったよ。特に桐生さんのお父さんは……」

 

 

 力とかじゃなくて、なんかもう生きた経験的な意味合いの差で負けた祐斗が心底怖かったと言う。

 もっとも、一番被害の少なかった小猫だけはホクホクしてたけど。

 

 

「ご両親の前ではできないお話だからここでするけど……。

えーっと、こうして向かい合って話すのは初めてよね桐生藍華さん?」

 

「そうですね。

全生徒の憧れの的であるオカルト研究部の人達とまさかこんな形で向かい合うことになるとは私も驚きです」

 

 

 紆余曲折あったが、昨日一誠に話を聞かされていた事もあって、リアス達が単なる人気者ではないことを知っている藍華はぺこりと頭を下げる、

 

 

「イッセーから大体話は聞きました。

まぁ、信じられない話ばっかりでしたけど……」

 

「あ、聞いたのね……」

 

「そりゃ話すでしょ」

 

「…………」

 

 

 若干眠そうな一誠の言葉に、リアス達はちょっと微妙な顔だ。

 いや、話す手間は省けたが、こういうのは自分達が話してこそナンボだと思ってたので。

 

 

「それでアナタは信じるの? 私たちが悪魔だって事を」

 

「まー……半々でしょうか? ピンとこないですし」

 

 

 これは嘘だ。

 イッセーの話に嘘が無いのと、龍のおじさんの存在も既に認識していたので、そんな存在が居てもなんらおかしくはないと思っている。

 

 

「………」

 

 

 でなければあんな朝っぱらからいきなり家を訪ねて来る理由もない。

 何の接点も関わりもなかったのだから。

 

 等と心の中で思いながら隣に座っていたイッセーを見ると、うつらうつらと眠そうに首を揺らしている。

 

 

「眠そうね……」

 

「朝が弱いんですよ。

今日は何時もより早く起こされたみたいですかや尚更」

 

 

 登校時間の一時間前には来ているので、余計眠いだろう姿にリアス達も苦笑いしている。

 仕方ない……そう思った藍華は言う。

 

 

「少し寝かせてあげても? イッセーから聞いた限りでは私にもお話がしたいとの事ですし」

 

「ええ、構わないわ」

 

 

 リアス達に確認を取った藍華は、こっくりこっくりしてるイッセーに声をかけた。

 

 

「眠いなら寝てなさい」

 

「ん……」

 

 

 そう言って身体を引き寄せた藍華はイッセーに膝枕をしてあげる。

 

 

「くーくー」

 

「これで良しっと。

それでお話というのは?」

 

「……。あ、うん。

昨日彼から大体聞いているみたいだからそこら辺の事は省くけど――」

 

 

 やっぱり仲が良いのね。

 自然と普通に身体の接触を許している藍華にそんな事を思いながら、リアスは藍華との会話を開始する。

 

 

「なるほど、イッセーの持つ神器という力を狙っている堕天使というのが私も見た天野夕麻さんって訳ですか」

 

「ええ、それを阻止する為にいきなり朝お邪魔したの。

……なんとなく護衛は必要なさそうなご両親達だったけど」

 

「んー………」

 

 

 会話の最中、膝枕されていたイッセーが寝返りを打って、ちょうど顔が藍華の股ぐらに当たっている。

 しかし本人はまるで気にせずにイッセーの頭を撫でながら話を聞いている。

 

 

「なんだか申し訳ありませんね。わざわざ……」

 

「いえ……うん。

一応この街の管理を任されている身としてはね……」

 

「んー……!」

 

「っとと……。それで、イッセーを悪魔にするという話をされたとか」

 

「ええ、そうする事で立場上においても護れると思ったのよ―――――ねぇ、さっきから彼が凄いことになってるけど大丈夫なの?」

 

 

 だがリアス達はちょっとばかり集中できない。

 何故なら膝枕だけだったのに、時間が経つにつれてイッセーが藍華の腰に腕を回して抱き付き始めているのだ。

 

 

「あぁ、平気です。何時もの事なので」

 

「そ、そう」

 

「でもあの……彼の顔の位置が……」

 

「恥ずかしかったですけど、今はもう慣れましたので」

 

 

 密着度が上がるほどイッセーが心地よさそうな声を出しているのがまたなんとも言えない気分にさせられる。

 最早膝枕じゃなくて抱き枕にされているのだから。

 

 

「ふふ……」

 

「制服が皺になるからあんまり動いては欲しくないけど、言っても聞きやしませんでしたので」

 

 

 そんな光景を前に、リアスは藍華を理由に勧誘を断ったのは本当だったのだと改めて納得するのと同時に、藍華が少し羨ましかった。

 別にイッセーがどうとかでは無く、自分の様にグレモリーの名前を目的に近寄ってくる男じゃなく、いち個人として見てもらえている藍華が。

 

 

「私の本音としては、兵藤君……そしてアナタにも我々の仲間になって欲しいのよ。

そうすれば安全面の保証ももっと強くできるし」

 

 

 しかしだからこそ欲しい。

 自分でもわからないし、藍華を直で見て予感したのだ。

 この二人がきっと『化ける』という事を。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 二人だけが持つ不可思議な力は、お互いをフォローし合える程に相性が良い。

 そして二人が共に出向けばその力はより昇華していく。

 

 

「恨みは無いし、別に阻止したいからとかじゃあない。

単純にうちの王様がアンタを嫌がってるもんだからね」

 

「これも恩返しのひとつなんで、勘弁してくださいね?」

 

 

 『意思』を必ず『実現』させる異常。

 『何か』を『奪う』異常。

 

 

「始めるぞ龍のおっさん!」

 

『おっさんじゃないドライグだ』

 

「っ!? 神器の人格が背後霊みたいに……!?」

 

「聞いたこともないぞあんなの!?」

 

 

 そしてイッセーだけが前例が無いとも知らずに至った、龍の意思を背後霊の様に具現化させる技術。

 

 

「行くわよイッセー! 龍のおじさん!」

 

「おうっ!」

 

『龍のおじさんじゃないドライグだ!!』

 

 

 立ち向かう者(スタンドアップトゥ)

 歴代赤龍帝に無い新たな領域。

 初期はデフォルメされた可愛らしいドラゴンのビジョンが牙を飛ばすだけの力。

 

 

「ドラゴンフォースstage.2!」

 

 

 そのビジョンはやがて逞しい人型へと進化していく。

 

 

「stage3!」

 

『やっと直接俺も殴れるぞ……!!』

 

 

 ビジョンと化したドライグがやがて戦闘可能となり……。

 

 

「stage4……!」

 

 

 完成へと到達する。

 

 

「藍華が奪う事で俺の『意思』は実現する――俺達の意思は滅びない!」

 

 

 

 

 

 

 

「『オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」』

 

 

 意思へと到達するまで決して滅びぬ領域へと。

 

 

「俺と藍華の『意思』は滅ばねぇ! 誰にも邪魔はさせやしない!」

 

 

 確殺の赤龍帝へ……。

 

 

 フォース・タクス・ドラゴンstage.1(というかドライグ)

 

破壊力―E

スピード―E

射程距離―E

持続力―C

精密動作性―E

成長性―A

 

 

 stage.2

 

破壊力―D

スピード―D

射程距離―D

持続力―C

精密動作性―D

成長性―A

 

 

 stage.3

 

破壊力―B

スピード―C

射程距離―C

持続力―C

精密動作性―D

成長性―A

 

 

 stage.4

 

破壊力―なし

スピード―A

射程距離―C

持続力―B

精密動作性―C

成長性――なし

 

 

 

 龍のおっさんことドライグに歴代には無かった独自の考えを示した結果生まれた『物理干渉可能なビジョンとしてのドライグ』。

 効果は本体に対して一定時間経過後に力を倍加させる能力と、牙を飛ばす能力。

 

stage1は倍加も牙を飛ばす力も貧弱過ぎて話にならなかったが、stage2とstage3と成長していくことで本来の赤い龍の力へと成長していく。

 

そして藍華と一誠の異常性が極限にまで噛み合う『ある夜の出来事』によってstage4へと成長し、その限界の壁は完全に突き抜ける。

 

 奪う異常と絶対の異常とドライグの力が合わさる事で放たれる攻撃は『滅びぬ無限の意思』と化し、例え不死だろうが神だろうが『必ず殺す』まで『逃げる者の力や周りの全てを奪い』ながら、『無限に攻撃力が倍加して』追いかけ回すという、傍迷惑な攻撃と化す。

 

 

 但し、発動するには時間が掛かるのでおいそれとは使えない。

 

 

 

そして――

 

 

 

 

stage.0

 

破壊力―なし

スピード―なし

射程距離―なし

持続力―なし

精密動作性―なし

成長性―なし

 

 

 平行世界のパパドラゴン化してるドライグと『無限進化の異常性』を持つ少年との偶発的な接触により到達したビジョンを越えたなにか。

 

 

 まあ、全部嘘だからはっちゃけた。




補足

……あれ、スタンドバトル系みたいな話になっちまった。

まずいぞ、こうなったら桐生さんにも立ち向かう者を……! なんてね。


その2
仮に眷属になろうとしてもさ、これ考えたけど無理じゃね? 駒余裕で足んなくね?

桐生さんがギリギリ可能だとしても断られるに決まってるし……リアスちゃまも強くならんと!


その3
別にご両親が嶋野の狂犬とか堂島の龍だったわけではないです。

ただ、雰囲気がなんか似てるらしいけど。

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